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改造空母機動艦隊  作者: 蒼 飛雲
改造空母
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第1話 改造空母

 兵棋演習を何度繰り返しても、導かれる答えはいつも同じだった。

 前提は彼我の前衛艦隊に含まれる空母同士による洋上航空戦。

 互いに発見した相手に多数の艦上機を差し向けて殴り合う。

 それは未知の、これまでない新時代の海戦の形態とも言える。

 そして、その結果は双方刺し違え。

 言葉を変えれば、多数の空母と飛行機をすり潰す一大消耗戦。

 それは間違いなく国力に優れた仮想敵を利する。

 太平洋の向こうにある彼の国は、その気になれば空母の一〇隻や二〇隻程度、それこそあっという間に造りあげてしまうだろう。


 その空母という艦種は、自艦が搭載する飛行機を使って水上打撃艦艇をアウトレンジすることが可能だ。

 敵に内懐に飛び込まれない限りは、相手を一方的に殴り続けることができる。

 ただ、空母はその性格から艦内に爆弾や銃弾、それに魚雷や航空燃料といった可燃物や爆発物を満載している。

 また、飛行甲板に爆弾を食らえば、よほど当たりどころに恵まれない限り飛行機の離発着能力を喪失してしまう。

 ひとたび守りに入れば、空母ほど脆弱な艦種も他には無い。


 その空母は戦艦ほどではないものの、しかしその建造費は極めて高価だ。

 そのような貴重な空母を戦闘のたびに失えば、それこそ帝国海軍の財布がもたない。

 空母を無為に失わないためには弱点である飛行甲板に装甲を施し、さらには襲いくる敵機を撃攘するための戦闘機を増やす以外にこれといった方策は無い。

 もちろん、高角砲や機銃といった対空火器も多ければ多いほど良い。

 しかし、そうなると艦型は肥大化し、建造のための費用や資材は莫大なものとなる。

 ただ、そうなってしまえば今度は戦艦や巡洋艦といった他艦種の建造に差し障りが出てしまう。

 あちらを立てればこちらが立たず。

 貧乏海軍としては、非常に頭の痛い問題だ。


 「空母については特務艦や、あるいは代替艦が建造される予定の旧式戦艦を改造すれば良い。それと、脚が速ければ商船でも構わない。そうであれば、新しく空母を造るよりも遥かに安上がりで短期間に数を揃えることができる。

 いずれにせよ、ひとたび機動部隊同士の戦いが生起すれば、かなりの確率で失われる空母をわざわざ新造するのはもったいない。一隻の正規空母を建造するくらいなら、二隻乃至三隻の改造空母にその予算と資材を充てたほうがよほど効率的だ」


 誰が言い出しっぺなのか、今となっては定かではない。

 しかし、誰が言ったのかはともかくとして、飛行機屋はこの措置に猛反対する。

 発達が著しい飛行機に対し、改造空母ではその将来性や冗長性について、いささかばかり不安があるからだ。

 新しい酒は新しい革袋に盛れというのは飛行機と空母にも通じると彼らは考えている。

 だが、帝国海軍の主流は鉄砲屋であり、それに次ぐのが水雷屋だ。

 そういった連中は空母や飛行機に予算が流れることを好まない。

 その分だけ戦艦や巡洋艦、それに駆逐艦が割りを食うからだ。


 予算獲得におけるパワーゲーム。

 そこにおいて、発言力が大きいのは当然のこととして鉄砲屋それに水雷屋となる。

 だから、マル三計画の試案では戦艦をはじめとした水上打撃艦艇の充実こそが最優先として打ち出される。

 一方で空母の新造は当分の間これを見合わせ、改造空母を整備することとされた。


 当然のこととして、飛行機屋はこれに異を唱えた。

 その急先鋒だったのが航空本部長の山本中将だった。

 飛行機屋のトップを自認する彼は、兵力量の決定権を持つ軍令部やそれに予算を管轄する海軍省にねじ込んでいった。

 もちろん、煙たがられることは承知の上だった。

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