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子供向けのお話シリーズ

月と太陽が重なる日~重陽の節句~

作者: 日浦海里

今日は重陽の節句。


重陽(ちょうよう)の節句は、古来中国より伝わった厄払いの伝統行事「五節句」の中の一つです。

五節句とは、人日(じんじつ)上巳(じょうし)端午(たんご)七夕(しちせき)重陽(ちょうよう)を指します。


中国では、奇数は縁起の良い「陽数」とされています。

同じ奇数が重なる日は「陽」の気が強くなりすぎるため

不吉と捉えられ、「重日」という忌み日とされたため

三月三日や五月五日といった日に

厄を払うための儀式が行われてきました。


五節句のまつりごとに

どこかしら共通点があるのはその名残です。


重陽の由来ですが、九は奇数の中でも最大の値とされています。

最も「陽」の気が大きい数値が重なる日、ということで

「重陽」と呼ばれるようになったということです。


強すぎる力は人にとって良くないものという考え方が、

天子(皇帝)という絶対的権力の下で国を治めていた中国の中で広まっている

というのは面白いですよね。


強すぎる力と言うと、

この時期に思い浮かぶものに「台風」があります。


重陽の節句では、家にいてはならず、安全な場所に避難しなさい、ということを示す

登高(とうこう)」と呼ばれる小高い山に登る慣習があったとされています。


時季を読むことに長けたある識者が、自身の弟子に対して、

「近く村に災厄が起こるから、グミを入れた赤い袋を持ち、山に登りなさい。

 山頂でグミを食べ、菊の花の酒を飲めば、この災厄から逃れられる」

と伝え、実際に災厄から逃れることが出来たのが、

この慣習の始まりとされています。


昔は今よりもずっと家屋はもろく、

台風の時には、家屋の中よりも、自然の中で身を守る方が

安全だったのかもしれません。


この伝承の中では、グミや菊の花、といった道具も出てきますが

これらも重陽の節句には欠かせないお供え物です。


グミや赤い袋は、古くから魔除けの色とされているもの

菊の花は、防虫効果を持ち、物持ちが良くなったことから、

邪気払いや長寿の効能を持つ花として知られています。


重陽の節句が「菊の節句」と呼ばれているのは

この時季に美しく咲く華であり、

薬草としての効能も持っていたことから

長寿祈願に最適だったからかもしれません。


重陽の節句のいわれには、もう一つあります。

五節句は、それぞれの季節に合わせた厄除けの行事と

陰陽の考え方が繋がって出来た節目のお祝い事です。


人日は人の飼っていた動物たちを元日から順に敬い

七日目は人そのものを敬う日とされています。

上巳は女の子を祝う節句。

端午は男の子。

七夕は夜を。

重陽は菊の花。

太陽を重ね合わせる花でもあるため、昼を祝う節句といってもいいでしょう。


最初の人日は人全体なので、陰陽双方を含み、

上巳は女の子なので、陰陽的には、陰。

端午は男の子なので、陽。

七夕は夜なので陰。

重陽は昼で陽

を祝う節句となっています。


五節句最後、すべての陰陽を重ね合わせた節句ということで

「重陽の節句」とする、という話もあるそうです。


重陽の節句が五節句の最後、ということでもう一つの慣習も。

「後の雛」という慣習です。


桃の節句で飾ったひな人形を、

半年後の重陽の節句で虫干しのために再び飾り

健康、長寿を祝った風習です。


桃の節句が幼い女の子のための節句なら

こちらは大人のための節句、とも言われています。


陽の節句ながら、女性である陰も祝う節句から

重ねて祝う、重陽という言葉が来ているのかもしれません。


各種節句は元は旧暦に合わせた祝いであり、

菊の花が最も綺麗なのは旧暦九月。今の十月頃になります。


他の節句ではひな人形や、こいのぼりなど

多少季節がずれても問題のない縁起物が混ざっていたことで

人々の慣習として根付いていますが

重陽の節句は菊の花が咲く時季に合わせた祝いであったことから

人々の生活に根付きづらく、

今はあまり祝われていないのかもしれません。


太陽のような、月のような、

穏やかな色で輝く菊の花


もしも機会がありましたら、

その花びらを浮かべて呑む菊酒を片手に

夜を過ごされてみてはいかがでしょうか。

今回のフィクション部分は、

二回目に重陽の節句の謂れを説明した部分、

陰と陽両方のお祝いごとを重ねて祝う節句だから

でした。


九という強い陽の気が重なるから「重陽」という方は

実際に言われている謂れです。


一方で、

それぞれの節句の陰陽の組み合わせは

それぞれの節句に名前がつけられた後、

慣習化したものもあります。

女の子の祝い事や、男の子の祝い事は

日本に伝わった後、日本独自の発展を遂げた節句のため

中国古来の名前とは関係性はありません。


いつもは、調査不足で諸説の1つの可能性もあります、

と言っていますが、今回は間違いなく「嘘」ですので

ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  お祝いする習慣どころか、言葉自体初めて聞くような節句。  もちろんどこが…などわかりません(笑)。  勉強になりました。 [気になる点]  グミ、植物のですよね。  あまり一般的でないか…
感想一覧
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