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ざまあの呪い〜どうやら神様は私を断罪したいらしい  作者: ありま氷炎
Chap 3 妻子持ちの記憶喪失の男と結婚してざまあされる呪い。
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3-1

 タングル先生の弟子になって、三ヶ月が過ぎた。

 日々の日課は早朝、獣が出ない森でタングル先生の奥さん、アグネスさんと一緒に薬草を摘む。

 採取が難しい薬草は、ギルドにお願いして護衛に付いてきてもらったり、貴重な薬草は採取依頼している。


 最初の一ヶ月はひたすら薬草の名前を効用を覚えた。

 実はあんまり頭が良くないので、兄デルヴィンに買ってもらった手帳に絵付きで薬草の名前と効用を書いている。

 タングル先生やアグネスさんに絵が上手いと褒められてちょっと嬉しい。

 一応タングル先生の知識でもあるので、デルヴィンには見せていない。

 本当は手帳をもらったので、見せたい気持ちはいっぱいだけど。


 二ヶ月前から、少しずつ煎じるお手伝いをしている。

 匂いがものすごいきつくて、慣れるのが大変だった。

 でも慣れないと一生薬師にはなれないので頑張った。


 三ヶ月の今は、一種類の薬草、傷口に塗る塗り薬を作れるようになった。

 ペースが遅い?いいの。

 兄はたまに遊びにくる。

 そして美味しそうなお菓子を差し入れてくれるのでとても嬉しい。

 タングル先生たちにも好評なお菓子ばかりだ。



「あれ?」


 今日は川の近くに薬草採取に来ていた。

 すると妙なものを見かけた。


「人?!アグネスさん!人です。人が倒れてます」


 川に半分体が浸かっていて、仰向けに男の人が倒れていた。


「息はしてる?」


 足早に川辺に向かった私に、アグネスさんが尋ねる。

 私は彼の鼻の近くに手を当てて、息を確認した。


「してます!」

「まずは引き上げようかね」


 急足で到着したアグネスさんと一緒に私は水に浸かった男の人を陸に完全に引き上げた。


「これは人を呼んだほうがいいね。ローラ、タングルに知らせた後、街の警備兵に伝えてもらえるかい?」

「はい!あの、でもアグネスさんは?」

「私はここでこの人が獣に襲われないように見張っているよ。傷もあるし簡単な手当もできる」


 アグネスさんは薬師ではないけど、タングル先生の隣で簡単な怪我の手当てなどを手伝っている。タングル先生は医師ではないけど、薬師として軽い傷の手当てや比較的病状の軽い病気については店で診ることもある。

 医師と違って料金も安いので頻繁にお客さんはやってくる。でもタングル先生は引き際を知っているので、本当に簡単なものしか治療しない。残りは紹介状を書いて医師の元へ行くように勧めるのが普通だ。


「ローラ。お前のほうが足も早いだろう?さあ、早く助けを呼んできなさい。手遅れになるよ」

「手遅れ?!」


 さっと見たところ大きな外傷はないみたいだけど、私にはわからない。


「じゃあ、行ってきます」


 アグネスさんにその場を任せて私は街へ走り出した。


 その後、警備兵とタングル先生の手によって、男の人は街へ連れて行かれた。もちろん、医師のところへ直ぐに連れて行く。外傷は軽くて、どこも折れていない。問題は記憶がないだけだった。

 身元もわからず、どうしていいかわからない彼の身をタングル先生が引き取った。

 ものすごい嫌な予感がしたのだけど、記憶喪失の男と一緒に暮らすことになってしまった。


「ローラさん」


 記憶喪失の男は、整った顔をしていた。

 王太子殿下やアイザック様と異なって、ちょっと野性味のある美形。

 記憶がない彼は柔らかな口調で、私の名を呼ぶ。

 採取に出かけたり、街に買い物に出る時は、フード付きのローブを羽織っている。最初は何も変装しなかったのだけど、やっぱり下卑た目を向けてくる男や嘲りの視線で見る人がちらほらいて、容姿を隠すことにした。

 みんながみんなそうじゃない。

 だけど、ちょっと怖い。

 タングル先生の家では普通にしていて、店に立つ時だけフード付きローブを身につけている。だから、この記憶喪失の男ージョン《仮》は私の本当の姿を見ることができる。下卑た目を向けてくるようなら、家を追い出すからとアグネスさんに言われたのだけど、まあ、そういう視線を向けてこない。

 だけど、なんだか気になる視線なのだ。


 えっと、私のこと好き?


 そんな視線だ。

 犬っころのように真っ直ぐ目を向けてくる。


「採取にいくなら私も行きますよ」

「それなら、頼むわね。ローラを襲うんじゃないよ」

「なんですか、それ。そんなことあるわけないじゃないですか!」


 ジョン《仮》はいい人だ。

 タングル先生とアグネスさんも気に入っている。

 力持ちなので、仕事を色々頼めるし、森の採取の護衛にもなる。

 タングル先生の家に来てまだ一週間なのに、すっかり馴染んでいた。


「じゃあ、お願いします」


 ジョン《仮》と二人で採取なんて気が進まないけど、タングル先生もアグネスさんもたまには二人っきりになりたいだろう。

 まあ、お二人とも高齢だけど。

 とりあえずジョン《仮》と出かけることにした。


「ローラ。こいつは誰だ?」

「そういう貴方は?」


  採取をしていると急にジョン《仮》が剣を構え、同じく剣を構えた兄デルヴィンが現れた。

 兄は地方へ二週間ほど出張。なのでジョン《仮》の事も知らない。


「兄上!この人はタングル先生のところの居候です」

「居候?一緒に暮らしているのか?」

「そうですよ。兄上」


 なぜかジョン《仮》が代わりに答えていた。


「兄上と呼ぶな!」


 すると兄が怒鳴り返す。


 うーん。

 面倒な事になりそう。

 とりあえず採取を終わらせ、タングル先生の家へ戻る事にした。

 帰り道も二人で不毛なやり取りをしていて、かなり疲れてしまった。

 デルヴィンは何でこうシスコンを拗らせてしまったんだろう。

 謎だ。

 





 






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