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ざまあの呪い〜どうやら神様は私を断罪したいらしい  作者: ありま氷炎
Chap 1 異母姉を虐げ、ざまあされる呪い。
1/7

1-1

「殺してやる!このアバズレ!」

「あ、アバズレ!?はあ?」


 また勘違い!?

 なーにもしてないのに、また言いがかり。

 本当いい加減にしてほしい。色目をつかったとか、男を奪ったとか、話しただけなのに!


 私の態度はなんか、ますます怒らせたみたいで、髪を振り乱した女は血走った目で、包丁を取り出した。


「え?嘘!なにそれ!」


 覚えもない事で恨まれる事や、絡まれることはたくさんあった。

 突き飛ばされたりした事もあった。でも刃物は初めてだ。


「誰か助けて!」


 叫び声は聞こえたはずなのに、誰も助けてくれない。

 女が振り上げた包丁の刃がキラリと光り、激しい痛みを襲う。

 

「いやああ!死にたくない!」


 私が何したの?なんでこんな目に!

 肩を切られて必死に逃げようと体を動かす。

 二度目の衝撃。

 背中から刺されたみたい。

 口から血がこぼれる。


「痛い!痛い!痛い!死ぬたくない!」

「殺してやったわ。これで晃は私だけのものよ!」


 晃?誰それ?

 女の狂ったような笑い声の中、私の意識は失われていく。


 血溜まりの中、私は意識を手放した。


 それが、私の前世、花園麗美の最期だった。

 現実世界のサキュバスと呼ばれたこともあるお色気たっぷりの女。

 可愛い容姿を売りにして、男どもの間を飛び回る。恋人や既婚者をこぞって狙って誘う。

 そんな噂を立てられ、淫売、売女、アバズレ、このような言葉を何度も吐かれた。

 男からは下心たっぷりの目で見られ、女からは嫌悪される。


 麗美わたしは、そんな自分が大嫌いだった。

 だから、生まれ変わったら、地味でいわゆる干物系の女性、もしくはもっさりしたオタ男に。

 そう思っていたのに、生まれ変わっても同じだった。


 ローラ、八歳。

 ふわふわの金色の髪に、大きな水色の瞳の愛らしい少女。唇は肉厚で、口元に小さなほくろがある。八歳なのに、すでにちょっとばかり色気を感じるくらいだ。まだ八歳なのに。

 そんな女の子、それが今の私。

 前世の記憶がなければ、こんなに可愛く生まれて嬉しかったかもしれない。

 だけど、私はこんな男ウケがしそうな容姿が大嫌いだった。 

 しかも生まれた環境もいまいちだ。

 母は娼婦、父は伯爵。父には妻がいて、普段はマッケンジー家に住んでいる。

 いわゆる私は不貞の子。

 伯爵に見染められた母は娼館から身請けしてもらい、小さいけど家を買い与えられた。父の奥さんは病弱で後少しの命だと危ぶまれているそうだ。

 母は、「あの女が死ねば、私たちは大手を振って屋敷に迎い入れられる。娘がいるけど、ヘンリック様はお前の方が可愛いと言っているから安心おし」ととんでも無いことを言う。

 母の容姿は私と同じ。メロンのような乳房にぐっと引き締まったウエスト。お尻は大きくて、肌は白い。子どもを産んだとは思えないくらい、スタイル抜群だ。

 この母を見る限り、私の将来は決まっている。母そっくりの妖婦になるはずだ。


 最悪だ。前世より最悪だと思う。前世はあんな死に方したけど、両親ともまともだったし。浮気の末の子でも無い。ちゃんとした二人の子だ。仲も良かったと思う。


 だけど、今は……。


 っていうか、奥さんが亡くなったら、屋敷へ移る?

 なんていうか厚かましい。

 しかも私より一つ年上の娘さんがいるみたいじゃない。

 お姉さん。姉がいることが嬉しいけど、ちょっと嫌な予感がする。

 こんな話、こんな設定の小説を前世でたくさん読んだ気がする。

 父と母と一緒に異母姉を虐め抜き、最後はざまあされる。私の末路はギロチンじゃなければ、炭坑行きか、問題ありまくりのじいさんの後妻行き。


 そんなの嫌だ!


 聞いてみると、父は婿のようだ。だったら、奥さんが亡くなって伯爵位を継ぐのは「姉」だ。なのに、母は浮かれまくっている。


 これはまずい。


 私はまだ八歳。

 たとえ姉虐めに加担しなくても、ざまあを喰らう可能性がある。

 姉を助ければいい?八歳の私が?どうやって。母も父も自己中心的で浅はかで人の話をまったく聞かないタイプ。本当、ざまあされるためにいるような存在よね?

 とりあえずどこか避難先がないかと、探すことにした。

 このまま一緒にお屋敷に行くと、とんでもないことになりそうだから。

 目立つから、男の子の格好をして、母の目を盗んで出かける。そうして見つけたのは孤児院。自分で行ったり、母のそばで日曜日のバザーを見たりして、私は避難先を孤児院に決めた。

 しばらくして父が来なくなり、久々に来たと思ったら喪服姿。

 けれども満面の笑みで。


 どうやら奥さんが亡くなってしまったらしい。

 二人して嬉しそうにしていたのが、信じられなかった。

 私は早朝逃げ出し、孤児院の扉を叩いた。


 必死に頑張ってお手伝いするので置いてくださいと頼み込んで、無事に孤児院の子供の一人になった。数日間、もしかしたら母や父が探しにくるかもしれないとドキドキしていたけど、何にもなかった。

 ほっとしてるはずなのに少し寂しくて、ちょっと嫌になった。


 孤児院は貧しかったけど、将来独り立ちできるように読み書きなども教えてくれる健全な孤児院だった。食事はカチカチのパンと具のないスープが多かったけど、みんな明るくてそれなりの楽しかった。


 日々が過ぎていき、十二歳になった。

 孤児院にきて四年が過ぎた。

 十四歳から働けるので、来年からは就職活動だ。住み込みで働くことが多いので、男の子の場合は港の荷物運び、お屋敷の下男、飲食店が最多だ。女の子はお屋敷の女中、飲食店など。だけど、気をつけないといけないのが飲食店。中には体を売らせる目的で雇うところもあるから、雇用主とはしっかり面談する。孤児院の先生たちは本当に善良な人たちだった。


 だから……


「ローラ。嫌ならいいのよ?」


 十三歳の誕生日が過ぎた頃、養子縁組の話があった。

 娘に迎えたいという人達は、リーソン男爵夫妻。日曜日のバザーを手伝う私を見て、養女に迎えたいと思ったらしい。

 どうやら亡くなった娘さんに私が似ているみたいなのだ。

 優しそうな夫妻で、謝礼金も孤児院に振り込まれる。

 四年前、いきなり扉を叩いた私をすんなり受け入れてくれた孤児院に恩を返したくて、この話を受けた。




 

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