α-006 艦内にて
俺達は、寝泊まりする部屋として小さな相部屋をあてがわれた。明かりは、光る石を入れたランタンが1つだけ天井からぶら下がっている。旅をしている男女だから問題ないと思われたらしい。
ふと、創造神の言葉を思い出す。
「そういえば、指輪の機能ってマップ以外に何があるんだ?」
「服装変化、加護の保存、念話、肉体の安定化の合わせて5つが解放されている機能です」
服装変化は、指輪を付けた時から自動で発動してるな。念話もテレパシー的なやつだろう。あとは……
「加護の保存と肉体の安定化ってのは?」
特に最後のが不穏な感じがする。
「加護の保存はこの後、実際に見せます。肉体の安定化は、体温の調節と、あなたの肉体がこの世界で崩壊しないようにする効果です」
「じゃあ、指輪が外れると俺は崩壊するってことか?」
まぁ、指輪に触れないから外れることは無いと思うが。あと、砂漠なのに暑くも寒くも感じないのはそのせいか。
「ええ、全身がひび割れて塵になります。ただしそれは、あなたの肉体がこの世界に馴染んでいない段階での話です。あと1週間もすれば外れても問題ありません」
全身がひび割れて塵になるって……サラッととんでもないこと言ってんなぁ!? 向こう1週間は何が何でも指輪を死守しよう。
「それで、加護の保存は?」
「その問いに答えるには、加護から説明しなきゃですね」
曰く、加護とはこの世界の全ての生物が持っており、加護に対応した魔法か技を使えるとらしい。
たとえば、シロは白の加護を持っているため、白色魔法とやらが使えるという。
他には、金、銀、黒、赫、蒼、翠そして無色の加護があるらしい。ただし、黒と銀の加護は魔法が使えず、代わりに"巧手"という技が使えるらしい。
「なんとなくわかった。ちなみに俺はどんな魔法が使えるんだ?」
氷原を進んでいたときも、炎とか出ないかな〜とか思ってたのだが、何も出なかった。異世界といったら魔法だし? やってみたいんだけどなぁ。
「そこが加護の保存に繋がってきます」
「?」
「いいですか? 無色の加護はその名の通り、何も色が無い。つまり、何もできないんです!」
ナ、ナンダッテー!
「じゃあ、炎とか出さないの……?」
マジかー
思いっきりヘコむ俺に、シロが優しげに声をかける。
「言い方が悪かったですね。色がないということは、何色にも染まれるということです」
その後の説明をまとめると、無色の加護持ちだけが使える"色彩変化"という魔法と、指輪が保存している色の加護の情報を合わせると"疑似:○色の加護"を使えるらしい。
「それで、この指輪に加護は保存されてるのか?」
保存されてるなら魔法使えるんじゃね?
「ええ。白と金の加護が保存されていますね」
「どんな魔法が使えるんだ?」
「白は発生と消滅の魔法。金は再生と束縛の魔法が使えます」
随分と大層な名前の魔法だな。白は攻撃、金は補助魔法ってところか?
「へぇ……なぁ、白色魔法、ちょっと見せてくれよ」
そうリクエストすると、シロは少しだけ思案して、杖をどこからともなく出現させる。
「演算切替:ゼロ」
嘆息しながらそう呟くと、部屋の明かりが消え、闇に包まれる。
「うぉ……何だ? いきなり消えたぞ?」
シロから少し笑った気配がした。
「演算切替:イチ」
その呟きと同時に光が戻る。
「おお、今のが?」
思ったより大した事ないか? 明かりを消して付けただけじゃん。
後でわかった事だが、これはかなり高度な魔法だった。ランタンの中に入っている石は"光石"といい、大気中の"魔素"と呼ばれるエネルギーを光に変換している。
それは半永久的であり、もし瞬時に光を消すなら魔素を光石と部屋内から消し去り、部屋の外から入ってくる魔素を遮断しなくてはならない。
「ええ。石から魔力を消して戻しただけですが」
繰り返しになるが、"消して戻しただけ"ではない。というか、通常の白色魔道士は演算切替ができない。そのため、自身の魔力を使うか大気中から無制限に魔素を吸収し、最終的に若くして死ぬことが多い。
これができるのはシロと他数人だけだ。
「へぇ、じゃあ俺もそういうことができるようになるのか?」
「いえ、難しいですね。無色の加護で再現できるのは大まかな性質だけですので」
聞く限り、無色の加護の適性があるからって選ばれる理由がわからん。金の加護でもいい気がする。それとも、能力付与は女神にしか出来ないのか? いや、でもシロも魔法陣にいたし……わがんね。
「そうか……いや、でも、練習すれば炎を出したりすることも出来るようになるのか?」
「ええ。……まぁ、その内に出来るようになりますよ」
二人は話し、夜は更けていく。部屋は二人の声で満たされていく——
やあ諸君!ノーティアだ!
今回は……特に言うことが無いな。強いて言うならシロ様がお強いと言う事だけか。
えー、次回は小戦闘会だな! 私は興味が無い!
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