α-056 賭けの勝敗
場所は昨夜の宿。さあ、いかれたメンバーを紹介するぜ!
楽しげなパテラスと恍惚としたバインディア!
不機嫌なゼノビアと憂鬱なココノエ!
居眠りしているシロとある女性に戦慄している俺!
食台を囲む面々。女将さんが料理を持って来て、そのまま帰るような不穏な雰囲気。ドウシテダロウナー
「さあ! 結果発表だ!」
口火を切ったのはパテラス。凄い勇気。
「ワタクシとパテラスで、金貨11枚と銀貨38、銅貨が54ですわ」
バインディアが3つの小袋を机に置く。チャリチャリと小気味良い音、澄んだ綺麗な音、鈍い金物の音が鳴る。
金銀銅を打ち合わせた時に鳴る、独特な音だ。ちなみに俺は、銀の音が好きだ。
さて、まぁ、日本円に直せば12万3854円。一日でコレか。いかれてんなぁ!? 水商売ですかね?
「はぁ……俺とシロで金貨8枚と銀貨51、銅貨が2だ」
俺は金の入った大袋を机に置き、投げやりに答える。
余剰の金貨と銀貨と銅貨は、例の機械を売った値段だ。
本当に金貨1枚と少しで売れた。
いや、十分な稼ぎだとは思うけどなぁ……賭け事だしなぁ。
「ほうほう、な〜るほど。少なくとも、俺たちゃビリケツじゃあ、無くなったな!」
くぁ〜ムカつく!
「んで? ゼノビアとココノエは?」
「…………………」
ココノエは無言。いや、口をモゴモゴしている。
と、見かねたのか痺れを切らしたのか、ゼノビアが口を開く。
「ゼロだ」
「「は?」」「あら……」「スー、スー」
ゼロってことは、つまり0円って事なんですね。
なるほど? ゼノビアが不機嫌だったのはそう言う事か。
大方、ココノエがやらかしたんだろう。
「おいおい、ゼロって……銅貨1枚も稼いで無いのか?」
パテラスが、かなり驚いた表情でゼノビアに問う。
う〜ん。すくなくとも、ここら辺の生物を狩って素材を売れば、それなりの金にはなるしなぁ。
ゼロ、ねぇ。
「いや、稼ぎはしたがな。スラれた。私もココノエもな」
わぁ、悲惨。
「ちなみに、どのくらい稼いだんだ?」
「金貨9とはした金がいくらか。スッた輩は見つからず仕舞いだ」
ふむ。つまり、ゼノビア達がスリに会わなければ、俺達の負けだったって事か。
「ふむふむ? つまり、スリに会っていなければクラビス達の負けだった訳か。命拾いしたなぁ」
「全くだ! まぁ、スリを見つけたら感謝しとくよ。お返しにグーパンを贈呈しておこう」
少なくとも、俺達の本来の目的は金稼ぎであって、賭けでは無い。
さて、とりあえずは不戦勝か。不本意だが、勝負は勝負。時の運の実力の内という事で、ゼノビア達には納得していただこう。
「ちっ……私はつくづく運が無い。さぁ、何を奢らせようって言うんだ?」
と、少しばかり楽しげな口調のゼノビア。ごねるかと思ったが、意外にもあっさり負けを受け入れた。
「おっ、諦めが良いねぇ。んじゃあ、安酒を一杯頼む」
「やはり、まともな人生を歩んで無さそうだな。祝いに安酒とは……」
まぁ、あの風態と知識量でまともなヤツだったら、逆に困る。
「ワタクシは……あぁ、シルコムドルセをお願い致しますわ」
「メニューに無いが?」
「手製のパンがありましたわ」
この世界のパンは、トリティコムの粉で作った物が主流らしい。つまり、材料はあるみたいだからゼノビアが作れと。
バインディアはそう言っているのだ。
「……まぁ、携帯食になるか」
持ち運びはどうするんでしょうね。あんなベタベタな食い物。
「隊長、面目無いです……」
縮こまって、もはや一種のオブジェになりかけていたココノエの謝罪。そういやココノエとはあんまり話して無いなぁ。
「嘆くなココノエ。謝罪をするなら、スッた犯人を連れて来い」
やだ惚れそう。俺よりも、人を使う素質が十二分にありますねぇ……人を使うってどうやりゃ良いんだ。もっと人と関われば良かったよコンチクショウ。
裏切りは得意なんだけどなぁ。
「カッコ良いねぇゼノビア。お前が反乱でも起こせば、拠点制圧とか出来そうだな」
「茶化さないでくれクラビス。……あと、一応お前は私より上の立場だからな? ココノエも、私を立てるよりクラビスを立てろ」
おっと怒られた。上、ねぇ。ついて来てくれるのは嬉しいが、どこか他人行儀だな。
「上って……仲間じゃないのか?」
「今は、な。あの憎き怪物を倒した暁には、仲間に入れてくれ」
そう言って、ゼノビアは厨房に姿を消した。
「むむむ……人を、立てる。これは難題。意識するとできないですね。兄者に接するようにすれば良いのか……?」
ココノエは思案中。考えが声に漏れるタイプなのか?
まぁ、俺が何か言うべきでは無いので、人を立てる方法については黙っておこう。
そもそも、俺は人の立て方を知らないしな。
犯罪も、独りの方が逃げやすかったし。
大事な物を失うのが怖かったら、最初から壊しておけば良い。……まぁ、実行する前に失ったが。
「おい、クラビス。シルコムドルセの作り方を教えてやる。厨房に来い」
と、ゼノビアの声。
随分と唐突な申し出だが、シルコムドルセの作り方は知りたい。トリティコムとか甘汁とか、見たこと無いからな!
「そりゃありがたい! 今行くよ」
という訳で、俺は厨房へと向かった。
※作者の勝手な都合により、もう少しで打ち切ります。……が、しかし。リメイク版を2024年頃に投稿予定です。
ご愛読ありがとうございます
作者、及び椎尾光弥から愛を込めて




