α-005 ファーストコンタクト
目が覚めると、そこは人々が行き交う街中だった!
なんて事はなく、見渡す限り雪、氷、岩……。しかし世界は、見たことの無いような、それでいて懐かしさを覚える色で満ち溢れていた。空は薄灰色だが、青と認識できる、そんな色だ。赤とも白とも取れる神々しい夕日が綺麗だった。
俺達は、さっきまでいた神殿を、岩で表現したような建造物の中心にいた。印象としては、ストーンヘンジって感じだった。
「あ、起きましたか? 異世界クスクルザへようこそ。歓迎します」
声のする方を見ると、フードを外したシロがいた。
異世界クスクルザ? 地球みたいな、この世界自体を表す名詞かな? とりあえず……どこだ? ここ。メッチャ寒いんだけど。
「ああ。それで? ここは?」
「ここは……あ、丁度いい機会です。地面に向かって"アナライズ"してみて下さい」
そう言って微笑む。そっか! どうせなら試さなきゃな! ……えっと、心の中で唱えればいいのか?
《約束の地:蜿、莉」縺ョ驕コ霍。縲ょ、ァ讓ケ縺ョ遞ョ縺御ソ晉ョ。縺輔l縺ヲ縺?k》
その瞬間、視界に文字が現れる。
うっわ、地名以外の情報が文字化けしてやがる。へぇ、でもちゃんと使えるみたいだな。
「約束の地って出たが?」
「では問題ありませんね。道中、指輪の説明をします。急いで移動しますよ。乗って下さい」
そういうと、杖を伸ばして横向きに浮かす。魔女の箒の柄の部分だけみたい。
俺が乗ると、杖を発進させる。遺跡はものの数分で見えなくなった。不思議なことに風を切る音はするが、なぜか風圧を感じない。これ以上寒くなったらたまらない。
「何でそんなに急いでるんだ? ここで暖をとった方が良くないか?」
俺はシロに訪ねる。シロは、後ろを一瞥してから話し出す。
「今夜はタイミングが悪いので。……指輪に向かって"マップ"と言ってみて下さい」
言われた通りにすると……視界の左下にミニマップが現れる。同時に方角が示されたので確認すると、太陽は西に沈むようだ。そして、進行方向は北西。今は北半球にいるようだ。
「おぉ、すげえ! ……すげえけど、これが何?」
「では次に"拡大"、"即時"と言って下さい」
同じように従うと、マップが拡大され、天気予報のリアルタイムのような映像に変更される。
……えっと、さっきの約束の地とやらがこれで? 俺がこれかな?
「なんか、上から俺達を見てるみたいなんだけど……」
「問題なさそうですね。私達の後ろに、赤色の帯が見えるでしょう? それが最大の理由、"赤吹雪"です」
吹雪、ねえ。確かにヤバイけど、止まって穴でも掘って隠れた方がいいんじゃ?
そんな事を考えながら後ろを振り返ると、赤色の吹雪が見えてきた。それと同時に聞こえる規則的な風の音。
「あの、シロさん? あの吹雪、結構早くないですかね? 止まって穴でも掘って隠れたほうが安全じゃないか?」
そう俺が言うと、シロが杖を止めて足元を見るよう促した。
……まぁ、そうだろうとは思ったが、とんでもなく硬い。よく見るとぼんやりと光を放っているようにも見える。
「この氷を砕いて、2人分の空間を作れると思っていらっしゃるのですか?」
「ごめんなさい。 ……え、じゃあどうしろと?」
「……あの吹雪が赤い理由ですが、巻き込まれた生物の血で染まっているからです。雪ではなく、氷柱が降り注ぎますので」
何で今その話!? 尚更どうしろってんだよ! 初日からミンチになれと?
……遺跡が見えなくなった秒数と、俺の目線の高さからザックリ考えて、秒速20mちょいってところで進んだはずだ。なのに、最初は見えなかった砂嵐が背後に見える。詰んだわ、さよなら俺の第二の人生。
絶望する俺に、シロが問い掛ける。
「ところでクラビス様、運命って変えられると思います?」
唐突な問い。無理矢理な話題。そしてむず痒い敬称呼び。
「クラビスでいいよ。俺は、運命は変わらないと思う。進んだ道を運命と呼ぶと思うんだ。過去を忘れたり、消したりすることはできても、その事実は変わらないだろ?」
そう答えると、シロはどこからともなく取り出したガラス玉を、空に放る。
「面白い答えですね。私と話が合いそうです」
笑ってそう応える。放ったガラス玉は、消えつつある夕日の光に瞬いて、強烈な光をほんの一瞬だけ発する。
「おい! お前達、そこで何してる! 赤吹雪が来るぞ!」
突然、右側からくぐもった声が掛かる。ガスマスクのようなものを装着し、何かの生物の甲殻のようなもので作った、鎧のようなものに身を包んだ人物が見える。バイクに似た乗り物に乗っており、後ろには何か黒っぽい四角い物体が積んである。
「サバイバーに襲われて遭難していたんです。軍隊の方ですよね? 助けて下さい!」
シロが、ガスマスクに大声で応える。
……サバイバー? 世紀末にヒャッハーしてそうな奴らだろうか? よく知らないから任せとこう。
ガスマスクは近くまで来ると、見定めるようにして問い掛ける。
「ぬ……名前と職は?」
「私はシロ。白色魔導士です。こっちはクラビス。旅人です」
俺は旅人かぁ。要は無職ってことか。無色の加護持ちだからかな?
「軍隊とわかっていて、この時刻……。あい分かった。某はココノエと言う。後ろに乗れ。今席を空ける」
◇ ◇ ◇
バイクのような乗り物(連絡船と言うらしい)に俺達を乗せると、2分ほどででかい戦車のような乗り物に着いた。全長40mはありそうだ。アナライズすると、"高速偵察艦-フブキ"と出た。
艦内に入ると食堂らしき部屋に通され、棒状の粘土のような物体が渡された。
……不味い。ネチネチした食感で、少ししょっぱくて辛い。シロの皿を見ると何も無くなっていた。
「よう、ご両人。腹は膨れたかい?」
そう言いながら、黒髪短髪のマッチョが入ってくる。声からして、さっきのココノエだろう。
思ったより若いな。俺より5つ上ぐらいか?
後ろには、黒髪ロングでイヌミミと尻尾の生えた女性がいた。綺麗な小麦色の肌で出るとこが出ている。赤い目が特徴的だ。雰囲気的には、聖騎士って感じだ。
「ああ。おかげで助かった。ありがとう」
立ってお礼を言うと、ココノエは民間人を守るのが仕事だと言って頭を上げるよう促す。
「さて、私がこの砂嵐隊の隊長、ゼノビアだ」
聖騎士はゼノビアと言うらしい。俺とシロも軽く自己紹介をする。
「この艦はこれから母艦に帰投するのだが……君らは、行くあてがあるのか?」
どうやら今いる艦の戦闘部隊の隊長がやって来た。お偉いさんだぁ。ちなみに艦は停止して吹雪をやり過ごすようだ。
……行くあては当然ながらないんだよなぁ。この世界に来たばっかりだし、知らない事が多すぎる。
「いや、特にないんだ。……母艦に戻るんだろ? 連れてってくれないか?」
このでかい艦の母艦とか見て見たいし。
「ふむ……母艦に連れて行くのは構わんが、生憎人手不足でね。働いてもらうが、問題ないか?」
「どんな仕事だ?」
さすがに素人に危ない仕事はさせないだろうが……
「なに、ちょっとした掃除だ。装備は貸してやる」
意味深に笑いながら、断らないよな? という態度を言外に滲ませる。
……すごく嫌な予感がする。
やあ諸君!ノーティアだ!
今回は……やっと地に足ついたか。世界の名前はクスクルザ、1000余年前から続く世界だな! 因みに古代文明の世界はトク……
わあああぁぁぁあぁあ>
何だ作者、何の用だ
まだ言わないで>
あっ悪い……
コホン……あー、次回はフブキ艦内での話だ!
それと、「よければコメント、レビュー、Twitter(https://mobile.twitter.com/Siloillost)のフォローをお願いします!」
じゃ、次回でな!