α-043 既視感
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
入り口から中を除く。が、暗闇に閉ざされており、下に降りる梯子ぐらいしか視認できない。
「……床が見えないな。これで小型の迷宮なのか?」
「正確にはダンジョンですね。これは、古代の遺物……なんらかの乗り物か建物が無人になったことで、魔物が発生したモノです」
あぁ、拠点の迷宮以外はダンジョンって呼ぶんだっけか。
「魔物?」
怪物とは別物か?
「魔素から発生した何かです。似たモノだと、悪魔とかですかね。基本的に、ダンジョンの外に出たら消滅します」
「へぇ。だから解体しても大丈夫なのか」
「そういう事です。……さて、500数える程は経ちましたが。迷子ですかね?」
皮肉かな? 皮肉だと良いな。
それにしても、まだそれしか経ってないのか〜。あ、この高さならライゴウが見えるんじゃないか?
そう思い、来た方向を見にドームの縁に移動する。
……白い、雪煙が見える。それと若干の炎らしき赤い光。
なんだろう、デジャヴかな。月光で見た気がするなぁ。
「シロ。既視感」
俺は指を差し示す。
「? どうしたんです……ああ。なるほど」
俺の行動を不思議に思ったのか、シロが隣に立ち、その景色を見て合点を得たという顔をする。
いや、呆れかもしれない。
「ちょっと助太刀してくるわ」
「乗ってきます?」
シロが杖を持ち上げて示す。
気持ちはとてもありがたい。けど、ノーティアがとある知識をくれたので、それを実践したい。
「試したい事があるから、ダイジョブ」
「? そうですか」
そうです。……さて、まずは金色魔法。
俺は擬似:金色魔法で背中に鎖を生やし、それを鳥の翼のように整形する。できた翼に魔力を込め、同時に対物結界を纏わせる。
翼の感覚を感じたら成功らしいが……おっ、感じる! てか、動く!
鎖で出来た翼をバサリと動かし、風を漕ぐような感覚を覚える。翼を大きく展開し、そのまま力を込めて一羽ばたき。
「うおぉぉぉぉお!? 意外と飛ぶなぁ!」
思った以上に上空に翔び上がり、地面に爆風を巻き起こす。一種の攻撃手段に使えそうだ。
……まぁ、シロは一切動じてないけど。
「よく考えましたね。もう少し練習は必要そうですが」
シロが杖を握って登ってくる。どういう原理なんだか。
「あ〜悪い。まぁとりあえず、あのでかいやつをぶった斬って来る」
「怪我に気をつけてくださいねー」
「あいよ」
俺は翼を畳み、頭から自由落下。トラウマが蘇りそうだが、捻じ伏せる。
地面が近づき、充分に加速した状態で翼を再び展開。翼が風を受け、身体が後ろに吹っ飛ばされる感覚を覚える。
自由落下のスピードを保ったまま、滑空する事に成功した。元の世界の飛行機ほどの速度は出ないが、まぁ、生身ではこのぐらいが限界だろう。
「うぉっ、速ぇー!!!」
翼を羽ばたかせ、加速。ゴーグルが欲しい。
腕輪の効果を上回るような極寒の風を感じるが、気にしちゃいられない! アドレナリンがドバドバだ!
雪煙の近くまで、ものの数秒。腰の短剣に魔力を込め、眼科に見えるライゴウとすれ違う。
雪煙に飛び込む瞬間、翼を大きく羽ばたかせる。
その勢いのまま、剣を抜き放ち———
一閃
雪煙が真っ二つに割れ、アイスワームの中身が見える。
体液すらも噴出せず、斬られた事に気付かないのか、ライゴウを追跡する。
ついに追いつき、獲物に食らいつこうとして———口がない事に気付く。声も立たず、その巨体は氷原に没した。
因みに俺は、魔力を剣に込めすぎたことで翼が消え、同じく氷原に没しました。
「……………締まらねぇ」
◇ ◇ ◇
「いやはや辱い。やはり、他に脚着かぬと技を振るえぬ故。誠に助かった。有難う御座いまする」
ダンジョンに着いて、ココノエの開口一番がコレだ。
謝罪。あれ、コイツ良いやつじゃん。
「痛つつ……や、気にすんな。無事で良かった」
俺はシロに回復して貰いつつ応える。
ライゴウに関してだが……正直なところ、虫と一緒に斬ったかと思ってた。ちょっと興が乗ったか。
「全く……クラビス、あなたはもう少し自重したらどうですかね」
シロは呆れの声音で俺を咎める。
墜落した後、呆れた顔をして転移して来たシロ。慈愛の表情が隠れていたが、それは言うまい。
あと回復魔法だが、めっちゃ気持ちいい。バインディアとは違った回復方法なのだろうか。暖かい魔力が、背中についたシロの手の平から流れ込んでくる。
「はい……反省してます」
「なら良いですけど」
シロはジトッとした目で流し見て来る。
本当にキャラ違うなぁ。いつもこうなら良いのに。まぁ、眠たげなシロも好きだけど。
「仲睦まじくて良いでござるな」
「そう見えますか」
……どっちの意味だろうか。元の世界のトラウマが蘇る。
友と思っているのは自分だけだった。よくある話だ。
「然り」
ライゴウは大仰に頷き、
「……そうですか」
シロが、少しだけ微笑んで答える。
少し、救われた気がした。
よく考えれば、前世は散々だった。
俺は頭が良く、スポーツもそれなりに出来たが、学校ではどこか独りがちだった。
18になり、進路も決まった。側から見れば順風満帆とまではいかないが、幸せだったろう。
俺も、そこまでは"良くも悪くもない、普通の人生"と思っていた。だが、その辺りで父親が死んだ。
暑い、夏の日。トラックに撥ねられた。即死だったらしい。運転手はビビったのか逃げてしまい、終に捕まらなかった。
母親は、よほどショックだったのか寝たきりになった。
病気ではなく、心労だとか医者が言っていた。が、結局のところ、ガンに行き着いた。
母親は、父親の名前と俺の名前を交互に呼び、謝っていた。
"巻き込んでしまってごめんなさい、幸せになってください、過去に囚われないで下さい"
延々と、謝罪はその言葉だけ。
抗がん剤の影響だろう。ロシア人だった母親の綺麗な白髪は抜け落ち、頬は痩せこけ、肌は血管と骨が浮き出て、病的な白い肌となっていった。見苦しい姿だった。
俺は、母親の延命を選んだ。
金が、必要だった。
父親の保険金は、全て母親の延命に消えた。
薬と葉っぱを売った。
裏切られたかつての友らしき人間を、ネズミの餌食にした。
腎臓を売った。
何度か、手を赤く染めた。
闇金はしなかった。保証人がいなかったからだ。
酒が無ければやってられなかった。煙草は、母親の体調に良くないと思い、やらなかった。
そんな生活を2年と少し。
死んだ。
俺だけが見守る中、静かに逝った。
不思議なもので、死に顔だけは生前と変わらぬ柔らかい笑みを浮かべていた。
遺言で、遺灰は米国の"デビルズタワー"とやらに撒きに行った。バレないよう、こっそりとだが。
父親と出会った地だとか言ってたか。
帰国して、俺は……俺はどうしたんだ?
「……ス殿、クラビス殿!」
突然の声に引き戻される
「っおぉ……どうした?」
「いや、なに。心此処に在らずといった様子だった故。どうかされたか?」
ライゴウが顔を曇らせ、首を傾いでいる。
「いや、この遺跡について考えてただけだ。なんでもない。サクッと探索を終わらせよう!」
嫌な思い出を振り払う。ここは異世界クスクルザ。極寒の、残酷な世界。
前世の事より、目の前の事に集中しなければ生きられない。
迷いと恐れを振り払うように、俺は高く跳んでドームへと着地する。
はい、皆さんこんにちは。作者です。
クラビスの過去をサラッと出しておきました。
まぁ、水増しを読んでくれないのは悲しいのでね。
では、短いですが、また次回で。




