α-004 シロと指輪
振り返ると、白いローブに身を包んだ、小柄な人影があった。近くには、賢者がよく持っているような、木製の木彫り杖が浮かんでいる。埋め込まれた水晶が神秘的で綺麗だった。
「初めまして、シロと言います。女神様の付人でしたので、貴方様のナビゲーターを務めさせていただく事になりました」
白い綺麗なセミロングで、金色の眼が特徴的な同い年ぐらいの女の子だ。
挨拶と共に軽く頭を下げ、手を差し出してくる。杖も、礼をするかのように少し前に倒れる。
「あ、あぁ。初めまして、神奈月 光だ。よろしく、シロ」
同じくお辞儀をしながら握手を交わし、自分の名前を名乗る。
すると、創造神が後ろから
「あ、神奈月クン。君の名前は、これから行く世界で浮いちゃうからね。"クラビス"と名乗るように」
振り返りながら問い掛ける。
「別にいいけど……何でその名前?」
なんか意味でもあるのか?
「特に意味はないさ。響きがいい感じだろ?」
創造神をジト目で睨みつつ、シロに向き直ると……なんか魔法陣的なものの中心に立っていた。
「あとは特にありませんか? 創造神様」
創造神は苦笑いしながら、空間に亀裂を作り、なにやら指輪のようなものを取り出す。
「忘れる所だった。神奈……クラビス、これを」
少し口調を真面目にした創造神が、それを差し出す。
「……これは?」
受け取ったものは、霞んだ金色のシンプルな指輪だった。真ん中には、透明な石が嵌め込まれていて、中で金と白の光が薄ぼんやりと光っている。
「それは、"保存の指輪"と言ってね。僕が力を込めたものなんだ。色々できるから、詳しい事はプ……違った。シロに聞いて」
プ……? 何だ? ……まあいいか。
指輪を着けようとすると、いつのまにか右手の親指に付いていた。
……怖ぁ。外そうとしても、指が指輪をすり抜ける、と。どうなってんだ? しかも、いつのまにか服が変わってるし。
見ると、なめし革のようなもので作られた茶色の服と、ぼろいフード付きのマント。腰には短剣とベルトポーチが2つと小さな丸い水筒が1つ。両胸には、試験管のようなものが3つずつ着いている。
……てか、この指輪ってどこかで見た覚えがあるんだが。
「クラビスさん、こちらへどうぞ。能力を付与します」
魔法陣の中心から女神が俺に呼び掛ける。思考を中断してそっちに向かう。
魔法陣の中心に俺が立つと、女神が俺の頭に触れ、そのあとシロが何かの呪文を唱える。
その儀式的なものは、ものの数秒で終わる。
創造神が、それを見て声を掛ける。
「さあ、準備は整った。では、頼んだよ」
「よろしくお願いします」
「あぁ。任された!」
「それでは」
そう言って、シロが杖先で床で叩くと、さっきとは違った魔法陣が展開される。
つぎの瞬間、視界がグニャグニャと歪み、俺は気を失った。
◇ ◇ ◇
「見ました!? サムズアップしてましたよ!」
「あぁ、見たよ! はぁ……緊張した。もうやりたくないね」
「上司が名前を間違えた時は焦りましたよ。 気をつけて下さいね?」
「あれね! 睨まれた時は冷や汗が止まらなかったよ。よかったー、消されなくて」
「さて、これからどうなるやら」
「運命の神のみぞ知る、ってね」
「笑えないです」
「……さーて、スカーハに見つかる前に仕事しなきゃね」
「頑張って下さい。私はノーティアとお茶でも飲んできます」
「冷たいなぁ。僕の補佐でしょ? 手伝ってよ」
「仕事って、シスターに話し掛けることでしょう? あの人、上司の言葉しか聞かないから、手伝うにも手伝えませんよ」
「はぁ、仕方ない。僕のお茶と菓子、残しといてよ?」
「アルテナとラビが来なければ、残ってますよ」
「望み薄、と。テティとフェンリルは?」
「仲良く読書してますよ」
「はぁ〜。じゃあ、フェンリルと戯れるのを楽しみに、仕事してくるよ」
「では。……さて、お茶はたしかあそこに……。ノーティアー? お茶を入れますよー?」
やあ諸君!ノーティアだ!
作者が寝坊したせいで投稿がおくれたぞ!ごめんな!
……さてさて、今日はやっとヒロインが出てきたな。第4話でヒロイン登場って遅くないか……?
……っと、茶会の時間か。私は茶よりもカプルスの方が好きなんだが……まぁいい。次回からやっと異世界編だな! ……異世界? 異世界か。
後は……あぁ、「よければコメント、レビュー、Twitter(https://mobile.twitter.com/Siloillost)のフォローをお願いします!」
さてと、ヘルメア様を待たせるわけにはいかないな。……いや、今はハイだったか。
じゃあな諸君!また次回で!