α-037 パテラス
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
組分けも終わり、寝ようとする。
「クラビス。お話があるって、私言いませんでしたっけ?」
デスヨネー。寝て逃げてしまおうと思ったが、そんな事は許していただけませんでした!
「忘れてない、忘れてないとも」
「……では、外で話しましょうか」
シロが杖を出し、船の床を突く。コォンと綺麗な音が鳴った。
転移した先は、サバイバーズキャンプの背の高い建物の上。氷原の万年氷が星々を映し、第二の宇宙を作っていた。
「ほ〜、綺麗だな」
素直な感想を漏らす。ウユニ塩湖の写真を思い出した。
まぁ、話を逸らしたいという思いもあったが。
「そうですね」
シロが同意を示す。上手く話から意識を逸らせたようだ。
しばらくの間、その景色を眺める。
「ありがとうございました」
シロが一言だけ呟く。
おそらく、意識を取り戻せた事だろう。
俺じゃなくて、バインディアが治してくれたんだけど。
「お礼はバインディアに言ってくれ。俺は、特に何もしてない」
「……そうですか」
シロが少し笑いながら応える。どことなく嬉しげだ。
「そういえば、ゼノビアの件は何だったんだ?」
ふと、月食での会話を思い出す。パテラスに協力していた経緯について、話してもらう約束をしたのだ。
「アレですか。詳しい事は知りませんが、ゼノビアさんを無力化する弾が欲しいとおっしゃったので」
「協力したと?」
シロがコクリと頷く。パテラスの怪しさレベルが上がった。
……でもなぁ、他の傭兵とかココノエも協力してたし。やましい気持ちでやったんじゃ無いだろうしなぁ。単に特攻させたくなかっただけか? いや、理由が無いな。
「何で、初めて会ったような人を助けようとしたんだろうな」
しかも、自分とは違うリジェネ。
「そうですね……あ、そうそう。この世界で黒髪は珍しいんですよ」
思案する俺を見てか、シロがポツリとそんなことを言う。
「俺も黒髪だけど、珍しがられた事無いぞ?」
「髪色で色々言う人が、この世界にいないだけです」
なんて素敵な世界。日本人に、この世界の人々の爪の垢を煎じて呑ませたい。
「……ところで、なんでいきなり?」
「ちょっとしたヒントです」
ヒント? 黒髪が?
黒髪と言えば優勢遺伝か。ハーフの子供は、黒髪になりやすいって言う。
……そういえば、ゼノビアは黒髪だし、パテラスも白髪が多いけど黒髪だな。
「ん? あれ、パテラスって探し人がいるって言ってたよな」
「言ってましたね」
ほうほう。そして嫁さんがいる事も、いつか聞いたな。確か、ロケットにその写真が入ってる的な事も。
「あっ」
「気付きました?」
確信は持てないけど、そうだったら辻褄は合うか。
「何で打ち明けないんだろうな」
「……捨てた子供に、どんな顔して会えば良いと思います?」
それもそうか。
「おい、嬢ちゃん。余計な詮索はしなくて良いんだ」
不意に、背後から声がする。パテラスだ。全く気が付かなかった。
「ここ、結構高いと思うんだけど」
「ふん。高いところに音も無く、素早く登らなきゃあ、スナイパーなんてやってらんねぇよ」
パテラスが鼻で笑いながら、腰を下ろす。
「盗み聞きですか?」
「まぁ〜、ちょっと気になったんでな。老人の出来心だ」
影も無いのに、どうやったのか甚だ疑問だが。
「で? 本当なのか?」
言われた手前、詮索は良くない。良くないが、そう言われたら散策するほかないでしょ!
「………………まぁ」
『言質いただきました』
『でかしたシロ!』
パテラスの一言に、念話で反応。もちろん俺もシロもポーカーフェイス。シロとの親密度が上がった気がする。
「上の方は、薄ら気付いてそうだがなぁ。いや、聞きたいのはそこじゃないか……」
パテラスが溜め息を吐く。白い息が空に溶ける。
「何で捨てた?」
「捨てたくて捨てたんじゃねぇ。出来れば、俺も一緒にいたかったさ。愛する妻との、俺達の宝物だ」
パテラスが、過去を悔いるような顔で吐き捨てるように言う。怒りも混じっているのか、声が震えている。
「詳しくは言えんが、まぁ、暮らしていた所が襲われたんだ。そいで、旧友の悪魔に頼んで育ててもらったってトコだ」
パテラスは、首元のロケットを見ながら噛み締めるように、一言々々絞り出す。
悪魔……バインディアか。確か、契約とか言ってたしな。旧友ってどういうことなんだか。まぁ、そこら辺はどうでも良いか。
「……何を、対価にしたんだ?」
「寿命を少しと、子種。それと……嫁の名前だ」
うわぁ……中々に重たいモノを。悪魔って言っても、淫魔だからなぁ。妻子持ちでソレは寿命よりキツイかもしれない。
名前も、かけがえのないモノだろうに。思い出よかマシかもしれないが。
この話は切った方が賢明だな。他の話題は……あ、ロケット。ちょうど良いや。
「あー、ところでそのロケット。万年氷で開かないって言ってたけど、開くんだろ?」
万年氷は、魔力を抜くと液化する事は分かってる。熱する方法もあるみたいだけど、条件がイマイチ分からん。鍋では溶けたのに、あの戦火で一切溶けてる気配がしなかったし。
「凍りついてすらいねぇよ。そういう金属でできてる。ほれ、これが俺の嫁さんだ」
パテラスが、ロケットを首から外して中を見せてくれる。俺とシロは覗き込み、その写真を見る。
右側に写っている女性だろう。
栗色の髪、犬らしき耳、顔はゲームとかで見る、犬の獣人のような顔。凛々しさと柔和な雰囲気を感じる。
白衣を羽織り、腕に抱いた赤子に慈愛の目を向けている。
赤ちゃんの髪は母親と同じ栗色。犬耳は無かった。
パテラスは笑顔。女性の左肩に腕を回し、右手で赤子の頭を撫でている。白髪もなく、若者といった風貌だ。
「綺麗な人だな」
素直な感想だ。見ていて癒されるとかでは無く、偶像崇拝的な綺麗さだ。
「良い、家族だったのですね」
パテラスは、答えなかった。ただ少しだけ三角帽子を傾けて、目を隠した。
はい、皆さんこんにちは。作者です。
ノーティアさんは休暇です、はい。
まぁ、今回話すことは特に無いのですが。
次回は今回の続きです。では、また。




