α-035 津波
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
文字通り、闇。空は闇に覆われ、目の前すらも視認できない。……いや、バインディアの鎖とグレイプニルは見える。
「こいつぁ珍しい。日が昇ってんのに、"闇夜"か」
パテラスだろう声がする。気配で、武器を構えたのが分かる。……なんでだろ。俺一般人だけど。
『闇夜?』
シロに、念話で問いかける。寝てるかもしれないが、これは確実に異常事態だ。
『全力で警戒してください。差し迫ってくる気配を感じたら、逆方向に攻撃を。クラビス、貴方が倒さねばならない5体目の怪物です』
緊迫した声色で、シロが饒舌に応える。
昼間は全力で戦えるからと、普段は油断しているあのシロがだ。
そういや、5体目の怪物って概念とか現象なんだっけ。
"闇夜"自体が怪物なのか?
ジャラジャラと、幾本もの鎖が擦れる音が聞こえる。
薄ぼんやりと、俺たちを守るようにドーム型の鎖の壁が見える。十中八九、バインディアだろう。
「カルテット」
ココノエの、バインディア戦の時に使われた言葉が聞こえる。確か、効果は巨大な障壁を生み出すことだったか。
俺は、武器を抜いていない事に気付いた。静かに、息を長く吐き、短剣に魔力を込めて抜く。左手は前に出し、丸い障壁を拳に生み出す。
やはり、自然な動きで構えが取れる。俺は短剣術やフェンシングはやったことが無い。だが、この構え方はネットで見つけたフェンシングの構えにそっくりだ。
戦い方は、剣道に近いが。左手もフリーなのが良い。結界だから、両手で持つ時に魔力を抜くだけだ。
さて、どこから来るかな……いや、来て欲しくないけど。でもまぁ、敵の姿くらいは知っておきたい。ホラゲーとかも、分からない敵って怖いじゃん。
が、唐突として空は晴れる。視界いっぱいに広がるのは金の鎖。思ったとおり、バインディアが鎖を展開していたようだ。
「あら、晴れましたね」
「……祈ってる場合じゃ無さそうだがな」
パテラスの言葉通り、遠くに壁のような影が見える。
俺がマップを開き、その影の正体を察する。
津波だ。
「パテラス! エンジンは動くんだな!?」
「あたぼうよ!」
全員、ダッシュで船に乗り込む。
「操縦は?」
シロかバインディアができると良いが。
「ワタクシが、鎖で舵取りいたしますわ」
なるほど、問題がなくなった。
「ゼノビア、ここから近い拠点は?」
ゼノビアは思案し、懐から時計のような物を取り出して応える。
「第二だが、この船ではたどり着けん。サバイバーズキャンプに向かうべきだな。西北西、正確には295.3度」
「バインディア、行けるか?」
「問題ありませんわ、最大出力でお願いします」
ココノエが、操縦席に座りエンジンのギアを入れる。
出力を考えなくて良いならば、ギア入れくらいは出来るらしい。
船尾に付いたエンジンが唸りを上げ、様々な計器の針が忙しなく動く。
船は、加速を始める。倒れないよう、俺達は姿勢を低くして床に手をつく。
エンジンの音に混じって、激しい波のような音が聞こえる。津波との距離が縮まりつつあるようだ。
「クラビス、アレを十字に切って下さい」
シロさん!? 何言ってんの???
が、シロは杖で床を突き、俺とパテラスを連れて船の上に転送する。可哀想なパテラス。なぜか巻き込まれた。
もはや、城壁のごとく巨大な津波が目の前に見える。万年氷と光る水で構成された津波だ。見ればわかる、アカンやつや。
「あーもう、やるしか無いじゃん」
短剣を抜き、魔力を込める。盾は出さず、大剣に見えるほどに魔力を込めた短剣を両手で握る。どうやら、シロが魔力を提供してくれたようだ。
「めぇぇえんっっっ!!!!」
上段に構え、気合と共に振り下ろす。面と言ってしまうのはご愛嬌。
魔力の固まりのような光が、壁を二分する。
続けて、一閃。
「どおぉぉぉぉおっっ!!!!」
間違えても、振り抜いて2人を斬らないように注意する。
十字に切れた壁の先から、まだ少しだけ暗い東の空が見える。
「パテラスさんっ!」
シロがパテラスに叫ぶ。
「なぁる程なぁ。俺も上に飛ばされたのは、そういう事か」
パテラスはファイルノートを構える。
「どいてろ、クラビス。トリスタンっ!!」
パテラスの銃が大きな唸りを上げ、金色の光がヒビのように漏れ出す。
刹那
音も立たず、辺りを金色に包み、輝く光の条が十字の中心に吸い込まれる。
後に残ったのは、轟音と熱風。
壁には、巨大な穴が空いていた。
「おお……やっぱすげぇな」
「ま、コイツがありゃ誰でも撃てるがな」
パテラスは、少しだけ寂しそうに武器をしまう。とても反応し難い。
「ふぁ……では、後処理しますね」
シロが船を覆う障壁を展開し、津波の波飛沫……いや、もはや砲弾クラスの氷塊から船を守る。
船に波が追いつき、通り過ぎていく。大穴の中をくぐり、無事にやり過ごした。
「肝が冷えたな」
パテラスが呟く。
「しっかし、何でいきなりあんなのが?」
「知らん。俺はあんな現象を見たこたぁない」
さいですか。あと、シロの転移魔法はノーリアクションでしたね。まぁ、その方が都合が良いかもしれないけど。
◇ ◇ ◇
「と、ここまでがバインディアとの出会いだな」
「ワタクシ、それほど強く攻撃してませんよ?」
「いや、あの時は俺が単に弱かっただけだから」
「今じゃ見違えましたね」
「シロも大概だと思うけど?」
「まだ根に持ってるんです?」
「マジで焦ったからな!?」
「カッコ良かったですよ」
「あらあら、仲良しですわね」
「お姉ちゃん……」
「良いッスねぇ。微笑ましいッスねぇ」
「お前、本当に私のノロケを嫌ってた奴か?」
「ごめんなさい」
「というか、某の印象薄すぎないか?」
「実際それほど喋ってなかっただろ?」
「今と同じ位には喋っていたが」
「あれー? そうだっけか?」
「……拙者はいつ出てくるのでござるか?」
「ああ、初めて出会ったのはキャンプでか。じゃ、その話をしてくよ」
やあ諸君! ノーティアだ!
今回はなんとも言えない内容だったな!
作者よ、スピンオフを読んでいないと津波が唐突すぎて、読者を置き去りにしてるぞ。
さて、次回は……サバイバーズキャンプでの話か。
じゃ、次回でな!




