α-033 合格判定
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
———パキィン
ガラスと金属の割れるような、綺麗な音が聞こえる。
"世話かけさせやがって"
"あらあら。狙撃の腕は健在なんですわね、塔人さん"
"師匠……いや、旧友から頼まれてんだ。クラビスって坊主を助けてやれってな"
甘い声に支配された脳に、そんな声が聞こえた気がした。
身体が浮遊感を覚える。甘い声が止み、足の痛さで覚醒する。
落ちてる……落ちてる!? 受け身、いや、体勢を……
「ぐあぁぁあ!!!」
硬い氷の上に叩きつけられる。傷口から噴き出る血は、瞬間的に凍結され、氷柱となって傷をえぐる。
痛ってぇ……が、身体は無事。
おそらく内臓も無事だろう。……骨にヒビは入っただろうが。丈夫な身体で良かった。
そんな俺を見たのか、天球から声が聞こえる。
「むむ……テンタクルスを生き延びましたか。これは、ワタクシが直接お相手しなければなりませんわね」
ゆっくりと、空から金の玉が降りてくる。
氷に触れると、花が開くように鎖がほどけ、中から女性が現れる。
貫頭衣に似た純白の修道服を身に纏い、周りには金の鎖と不思議な光を放つ紐が浮かんでいる。
肌は白く、金色の髪との対比が美しい。
しかし、開かれた金の眼は濁っており、どこか悲痛なモノを感じさせる。顔は誰が見ても美しいと言える程に整っていて、ある種の不気味さを覚えた。
「さあ、ワタクシの腕の中で果てなさい」
そう言うが早いか、周りに浮かんでいた鎖が高速で回転を始める。魔素が引き込まれていくのを感じるほど、濃密な魔力が鎖にまとわりついていく。
遂には、足下が濡れ始める。
……なるほど。狙いはソレか。
恐らく、液状化させた万年氷に再度魔素を注入して、こちらの動きを封じる算段だろう。
つまり、今俺がすべきは
「うおぉぉぉおおぉぉお!!」
考え無しの突貫。
空に逃れる? むりむり。俺、飛べないもん。
少なくとも、鎖は腰より上で回転している。
よって、突っ込んで距離を詰め、足を斬り飛ばすのが俺にできる最善手。
鎖は切らなくとも、人体は斬れる。ソルで確認した事実だ。
バインディアも、まさか突っ込んで来るとは思わなかったのだろう。対応が、数秒遅れる。
鎖が下に降ろされ、ずっと浮かんだままだった紐で応戦してくる……が、紐は俺に触れる事は無かった。
「……あら? 貴方もしかして……」
何か聞こえたが、今更止まる気は無い。
腰から短剣を引き抜き、魔力を込める。
そのまま、低い姿勢で一閃。
「っ……ぅおりゃあぁぁっ!!」
駆け抜ける。前のように、斬る手応えが無い。
地面に手を付き、身体をドリフトのように回転させ、残心。剣道の基本だ。
足の切れた敵を警戒しようとして……そこにいたのは鎖でできた人形。嫌な汗が、背中を伝う。
ふわりと鼻をくすぐる、甘い香り。背中に当たる、柔らかい感触。チャリチャリと鳴る鎖の音。
背後から、抱きつかれた。鎖も全身に絡みついてくる。
健全な男子ならば飛んで喜ぶ事だが、今はそうではない。
なぜか身体も動かず、死を覚悟し目を瞑る。
せめて、人生の最後は笑顔で———
そんな事を思って、笑おうとした時だ。
「クラビス様、ですわね?」
耳元から、囁かれる。
……え? うん……え?
「そう、だけど」
何? この声は、バインディアだよな? 敵だよな? 面識ないよね?
「なぜ」しか頭に浮かばない。
ぐるぐるとそんな思考を巡らせている間に、失った腕に鎖が寄っていく。やがて鎖は腕の形を成し、元の腕と遜色がないほどのモノとなった。
「コンペインセット」
バインディアの声で、我に帰る。手を放され、腕の感覚が戻っている事に気づく。
振り返ると、そこには慈愛の笑みを浮かべた淑女が立っていた。
「おめでとうございます。合格ですわ」
そんな事を言われた。
◇ ◇ ◇
戦闘が終わり、向こうが降伏? したので、現在は船内に戻って来ている。
「……で、どういうことだ? バインディアさん」
シロを膝に乗せ、優しく頭を撫でている彼女に、俺は問いかける。
「フフフ。まぁ、まずはお茶でもいかがですか?」
そう言うと、紐を使って器用に茶を淹れる。
柔らかい、紅茶に似た香りが船内に漂う。
因みに、パテラスは未だにエンジンの修理をしている。
ココノエとゼノビアは、気を遣ったのか外で見張りをして来ると言って出て行った。
「………どうも」
俺はユノミを差し出し、お茶をもらう。ミスマッチに思えるが、なぜかこのユノミで飲むと安心するのだ。
バインディアさんも、特に気にした様子は無い。
「毒は入れてませんわよ」
そう言って、バインディアさんがお茶を静かに飲む。もちろん、紐で。ソーサーとかの音も鳴らない。
怪しむのも失礼かと思い、俺は音を立てないように注意して飲む。
「……………!」
めっちゃ美味かった。
正直、俺は緑茶やほうじ茶派であり、紅茶はあまり好きでは無かった。しかし、それを覆すほどに美味い紅茶だった。
それを見て、バインディアさんが上品に笑う。
「お気に召したようで何よりですわ。
……はぁ、やはりダルジーリングは良いですわねぇ。墓場ヶ原で祈っていた甲斐がありましたわ」
ダル……なんだって? たぶん茶葉か何かの名前だろうが、よくわからなかった。
いや、だけど本当に美味いな。コレ。砂糖とか入ってないのに甘く感じる。
ゆったりとした時間が流れる。
「さて。落ち着いて来たようなので、少々お話しましょうか」
バインディアさんが、柔らかい笑みを浮かべながら話を始める。
「ん、ああ。それで、合格とやらは?」
戦闘終了時の、あの言葉。何に対しての合格なんだ?
「ああ、それは簡単な事ですわ。ワタクシを地に落とし、このグレイプニルが貴方に攻撃しなかった。それが合格ですわ」
バインディアさんが、中に浮いている紐を示す。
不思議な色をした紐が、俺の復元された腕にゆらゆらとまとわりつく。嫌な感じはしなかった。
"気に入られたようですね"とバインディアさんが微笑みながら言う。ちょっと怒りを感じた気がするが、気のせいだろう。
「その、グレイプニルはなんだ? 普通の紐じゃないとは思うけど」
グレイプニルと言えば、フェンリルを封じている紐の名前が思い浮かぶ。ドワーフに作らせた魔法の紐とか、そんな感じの代物だった気がするけど……
いや、グレイプニル。君巻き付きすぎじゃない? 俺の右腕まで巻きついてるけど。……罠じゃないよね?
「金の加護を持つ方と、あの方を信仰している方に対して攻撃する事がない、魔法の紐ですわね」
バインディアさんが、やはりと言うかなんというか、微笑みながら答えてくれる。
まて。待って。俺の加護は無色だ。つまり、グレイプニルが俺に攻撃しなかったという事は
「俺、あの方とやらを信仰してるの?」
「いえ? 貴方、金の加護持ちでしょう?」
即答された。ますます訳がわからん。
やあ諸君! ノーティアだ!
さっさと終わらないのか、この話は!
もう飽き飽きなんだ作者よ!
残念ながら次回もです>
はぁ……という事だ。我慢してくれ諸君。
じゃあ、次回でな。




