α-032 金の鎖
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
「うわぁぁぁああぁああ!!!」
その日は、悲鳴から始まった。
「なんだぁ!」「ニグリスの声か!?」「むっ」「んぁ?」
パテラス、ゼノビア、ココノエ、俺の順で飛び起きる。
現在の見張りは、おそらくニグリス。
敵か?
「た、助けてくれぇ! 金が、く、くさ……」
ニグリスの叫ぶ声が続く。
草?
「ったく、日も昇ってねぇ時間からなんだ、よ……」
パテラスが、扉を開けたままの姿勢で固まる。
扉の外に見える景色は、金色の鎖、鎖、鎖……
その内の一本の鎖に、ニグリスが縛られていた。
「助け、助けてくれぇ! 死にたくない、俺はまだ死にたくない!」
ジャラジャラと音を立て、鎖がニグリスの身体に巻き付いていく。
そこへ、不意に聞こえる綺麗で透き通った声。
「大丈夫、大丈夫。貴方は幸せになるのですよ。さあ、身を委ねて……」
「いっ嫌だぁぁぁあああァアアハハハハハハ!! しっしあ、幸せ! 俺、幸せぇえアハハハハ!」
ニグリスの表情は、恐怖に怯える表情から、恍惚とした表情へと変わり、狂ったように笑い始める。
そして———
ゴキリ
ニグリスは、首があらぬ方向へと捻じ曲げられた。
そのまま身体を回転させられ、肉の千切れる音を発しながら首を捻じ切られる。
ニグリスの身体は、鎖が唸ったと思うと遥か遠くへと投げ捨てられた。
首は、鎖が大事そうに上へと持っていく。そして、視界から消えた。
「おい、パテラス。ありゃなんだ?」
「……俺より、ゼノビアの方が詳しいと思うが」
ゆっくりと、俺とパテラスはゼノビアへと視線を向ける。
「声からして、間違い無い。金鎖協会の教祖。千年を生きる悪魔。そして、私達姉妹の育て親、シスター・バインディアだ!」
ヤベーやつじゃねぇか! え? 俺達終わった?
「……パテラス、エンジンは?」
「聞くなクラビス」
脱出不可能、と。戦闘かな〜? シロは……無理だ。未だに起きねぇ。
「ゼノビア、説得できるか?」
「……アレは育ての親だが、それ以前に悪魔だ。契約に基づいて育てたと言っていた。出て行く時も、契約を果たしたとか言っていたからな。不可能だろう」
ぬうぅ……倒すしか無いのか。勝てる気がしないけど。
「じゃあ、パテラスがエンジンを修理。俺達が相手取って、修理が完了したら全力で逃げるってのは?」
パテラスは少しだけ思案し、顔を上げる。
「……現実的な作戦だな。修理にかかるのは5分弱だなぁ」
よっし!
「じゃあ、それで。俺とゼノビアが前衛、ココノエはパテラスと船の防御を」
俺は作戦を決定すると、外に飛び出した。
未だ日の昇らぬ暁の空
散々と輝くは黄金の鎖
満月の如き黄金の玉は
美しき淑女を包み隠す
「お話し合いはお済みですか? ワタクシは、シスターバインディア。さあ、貴方も共に祈りましょう」
かくして、戦いの火蓋は落とされた。
船の上空に浮かぶ、金の鎖で作られた玉から数多の鎖が襲い来る。
「カルテット!」
ココノエが叫ぶと、目の前に光り輝く壁が展開される。
鎖は壁に阻まれ、初撃の直撃を避けられた。
「悪い! 助かった!」
俺はココノエに礼を言い、空に浮かぶ金の玉をアナライズする。その結果、いくつかの事がわかった。
まず、あの鎖は魔法を吸収する。俺のような、剣に魔力を込めて形作る刃は、効果が無い。
次に、質量を持っている。つまり実態があり、切る事は可能。
最後に、鎖は魔素で形作られている。ということは、アイスカッターこと吸魔のナイフなら、簡単に切れるという事だ。
「ふむふむ、蒼色魔法の防壁ですか。……コレも防げるのでしょうかね?」
嫌になるほど美しい声が、脳内に反響する。
「がああぁぁぁあ!?」
甘い、甘い声。
「楽になれる」「幸せを」「さあ」「身を委ねて」
耳を塞ごうと声は止まない。甘い故に、痛いのだ。
脳が溶ける感覚がする。頭を割って、脳を外に出したい。
「せいっ!」
ゼノビアの気合が聞こえる。その瞬間、何かが切れる音がして、声が聞こえなくなる。
「あらゼノビア。貴女には効きませんでしたのね」
「何年も見てきた。対処法ぐらい、知っているとも」
ゼノビアが、言葉を交わしつつ俺を庇ってくれている。
今のは何だ? いや、まずは立って武器を構えろ! 対処法はあると言っている! 考えるのは後だ!
「っ……悪い、油断してた」
「気にするな。アレは、カラクリを知っていなければ即死する技だ。細い鎖を断て。もしくは避けろ」
ゼノビアは俺が立ったのを確認すると、盾を構えて突貫した。ランスの先が20に分かれ、天球を支える、人の胴ほどはある鎖をえぐる。
「あら?」
天に浮かぶ金の玉が、少しだけ揺れる。
「なるほどな」
俺もそれに習い、近くの鎖をアイスナイフで切る。
思った通り、抵抗無く切れる。
残った鎖は、地上に2本と空に1本。
空の鎖を切らなければ、おそらくバインディアは落ちてこない。だが、地上の鎖を切っただけで、攻撃してくる鎖の軌道が定まらない。
つまり、被弾するリスクが減ったのだ。
「あらあら。これでは、あの方に供物を捧げられませんわね。どうしましょう……」
そんな声が天球から聞こえる。
ゆったりとした喋り方だが、攻撃は苛烈。
全方位から迫る鎖、ゼノビアが言っていた細い鎖、もはやソニックブームが巻き起こる薙ぎ払い。
1秒でも気を抜けば、確実に死ねる。
疲労は今のところ感じないが、目で追いきれない。
後ろからの攻撃は、音でなんとなくわかる。
問題は、細い鎖だ。5ミリ程の太さで、当たればまたあの声に苦しむ事になる。
どうしろってんだ! 鎖の連携がエグい! もう一本の鎖まで全然進まねぇ……
「パテラス! あとどのくらいだぁ!?」
もはや永遠に感じる戦闘。思わずパテラスに催促をする。
「あん? まだ戦闘開始して60も数えてねぇぞ?」
衝撃の回答。つまり、この時間をあと4回は繰り返せと?
うん、確実に死ねる。
そんな事を考えていたとき、不意に手を叩くような音がする。
「ふむ、これ以上あの方を待たせられませんわね。籠の中に閉じ込めましょう」
周囲に、巨大な7本の柱……いや、鎖が出現する。
恐ろしいことに、その極太の鎖から無数の鎖が飛来してくる。まさに、金の雨。ご丁寧に、全て細い鎖。
バッカじゃねーの!? 捌ききれんわ!
結界を張ろうと、あの鎖は通り抜けてくる。よって被弾は不可避。ココノエとゼノビアの位置までは、走っても間に合わない。
つまり、俺の取る行動は
「耐えるっ!!」
先程は精々2本程度しか刺さらなかったのだろう。
今回は、軽く1000を超える鎖が突き刺さる。
まさに地獄。自分で頭を割ろうとするたびに、足にアイスナイフを突き刺す。痛みで一瞬だけ自我を取り戻せるのだ。
ソレを、何度か繰り返す。
時間にすれば、20秒も無かっただろう。
しかしその間に、俺は30は足にアイスナイフを突き立てた。永遠にこの地獄が続くかに思えた。
けれども、唐突にその地獄は終わる。突き刺さった鎖が連結し、俺の身体を縛っていく。
ちょうど、ニグリスが縛られたように。
「よく頑張りましたね。貴方はこれから幸せになるのですよ。さあ、身を委ねて……」
つい先程聞いたセリフが、近くで聞こえる。
甘い声に支配された脳に、嫌にハッキリと染みるように伝わる。
鎖が頭に巻きつき、ゆっくりと力が加えられていく。
抵抗する気力は、残っていなかった。
どうやら、精神力を吸い取る効果もあったようだ。
甘い言葉の中で、俺は多幸感に満たされて———
やあ諸君! ノーティアだ!
いやぁ、スカッとしたな! ん? どこにそんなシーンがあったかって?
……こっちの話だ。
さて、次回は戦闘の終了だな!
なんて短い戦闘なんだ作者!
じゃ、次回でな!




