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俺が世界を救うまでの物語  作者: 椎尾光弥
第一拠点 始まる物語
30/56

α-030 寒空の下で、昔話を

アンチコメ→作者のレベルが上がります

プロコメ→作者の創作意欲が上がります

評価、ブクマ→作者が一番喜びます


ストーリーのアドバイス→無視です

文章のアドバイス→ありがたいです

「それで、ベン爺さん。油と食糧の取引ってのは?」


 とりあえず、敵意はないようなので、聞いてみる。


「言葉通りじゃが。それよりお前さん、腕はどうした。それと、そっちの娘さんも」


 ベン爺さんと名乗る老人が、俺とシロを交互に見やる。


「ちょっとな。シロは……あ、そっちで座ってる女の子な。気を失ったままなんだよ」


「ふむ……ちょっと失礼」


 ベン爺さんは、シロの額に手を当てて、目を瞑る。


「むぅ、こいつはいかんな。精神をやられておる」


 ベン爺さんは目をゆっくりと開け、呟いた。

 思わず俺は聞き返す。


「精神?」


 ベン爺さんは手招きをして、俺に耳を貸すように促す。


「この娘さん、神族じゃろぅ? 魔力の乱れからして、"破滅の咆哮"でも食らったんじゃろ」


 神、族? 前にパテラスがそんな事を言ってたが、あまり気にしてなかったな。これは、詳しく聞く必要がありそうだ……


「ベン爺さん、ちょっと、外で話さないか?」


「ホッホッホ。この老いぼれを寒空の下に連れ出すか」


「あ、いや、そうだな。悪い、気が回らなかった。ここで話そう」


「いんや、大丈夫じゃ。寒さには慣れとる。ただ、懐かしかっただけじゃ」


 ベン爺さんは柔らかい笑みを浮かべ、ランタンを持って立ち上がる。

 俺はパテラス達に断ってから、外に出る。


 外は、もう闇のとばりが落ちていた。空にまたたくは煌びやかな星屑。月は出ていなかった。


「茶は」


 ベン爺さんがボソリと呟く。


「え?」


「茶は飲むかの?」


 鞄を下ろし、氷に腰を下ろしたベン爺さんが、こちらを見ている。身体は闇に溶け込んでいたが、目が。その目だけが爛々と輝いていた。


 尻込みしそうになるが、腕の痛みも相まって"ああ"と応える事ができた。


 ベン爺さんは杖を取り出すと、万年氷を叩き割った。

 いくつかの塊をフライパンに入れ、カグツチの入ったランタンの上に置く。

 静かな時間が流れていた。


「それで、シロの事だけど」


 俺が、口火を切る。次の言葉を紡ごうとした時に、ベン爺さんが応える。


「……神族は、神と成った人族の事じゃ」


「神と、成る?」


「人とは思えぬ知識。人を惹きつける魅力。万人に一人の魔法の才能。技と力を極めた者。生物を創る者。

魔を統べし者。それらの者が世界と調和し、不死に近い寿命を手にした、いわば神に近い種族じゃ」


 ベン爺さんは、"例外がおるがな"と付け加える。

 フライパンの氷が溶け切り、ベン爺さんはやわやわとフライパンをゆする。


「まぁ、神族についてはわかった。あとは、その、破滅の……」


 俺が名前を思い出そうと言い淀むと、ペン爺さんが言葉を繋ぐ。


「咆哮。破滅の咆哮じゃ。これは、死神獣が使う技でな……っとと、沸いたな」


 湯が沸き、急須によく似た食器に注ぎ込む。優しい、緑茶の香りがした。


「ほれ。口に合うかは知んがのぅ」


「ありがとう」


 2人で、茶を啜る。懐かしい、心温まる味が口に広がる。元の世界の緑茶には劣るが、それは紛れもなく緑茶に思えた。


「ほ、ぅ……やはりこの茶は良いのぅ。キーオルを思い出す」


 キーオル? どこかで聞いたような……思い出せない。

 いや、今は破滅の咆哮とやらだ。


「それで? 破滅の咆哮ってのは?」


「ああ。簡単に言えば、神を滅する力を持つ攻撃じゃ」


「は?」


 何それ。確実にヤバいやつじゃん。神属性特攻(ダメージ5倍)みたいなやつか?


「ん? たかが獣が神殺しでもするのか、とでも言いたそうじゃの」


 そんな考えは一度も頭をよぎりませんでしたが?


「ま、そこら辺の話はお主は知る必要は無い。獣を滅すればよかろ」


「いや、気になるんだけど」


「ホッホッホ。儂に聞くな。儂も全ては知らんのでな。憶測で物事を語るほど、儂ゃ愚かじゃないわい」


 ぐっ、この爺さんに舌戦で勝つことは無理そうだな……


「ま、そんな破滅の咆哮じゃが、掠っただけなら気絶で済む」


 俺は、胸を撫で下ろす。


 ……何で、俺は今ホッとした? 仲間、だからか? 

 違う。これは、もっと、なんかこう、心? いや、憑き物が落ちたような……


 仲間の無事に安心することは、至極当然な事だ。だが、気持ちの上では会ってたかだか数日。俺はそんな短い期間で、そこまで情を入れられない。


 俺が悶々と考える中、ベン爺さんは話を続ける。


「さて、治療法じゃが……金色魔法の"カタルシス"をかけてやれば良い」


 ん? カタルシス? 俺、そんな魔法、知らない。


「使えるヤツ、いないんだけど」


 俺は船を見やりながら、あきらめ混じりに言う。

 やわやわと、風が吹き始める。


「見りゃわかるわい。お主は、初期魔法しか使えんようじゃしな」


「じゃ、どうしろと?」


「お主らは幸運じゃ。ここは墓場ヶ原。明日になれば、助けが来る。そうなれば、あの娘さんも、お主の腕も元通りじゃ」


 ベン爺さんは、楽しげに笑う。

 その笑みに応えるかの如く、風が勢いを増す。


「ホッホッホ、お別れじゃ。風が吹いたら去らねばならぬ。そのコップ……ユノミと言う物じゃが、差し上げよう」


 いつの間にか荷物はまとめられ、ベン爺さんは立ち上がる。


「あっ、おい!」


「さらばじゃ、まだ若き芽よ。闇のその先で、また会おう」


 いっそう強い風が吹き、目を瞑る。

 ベン爺さんと、カグツチの笑い声が、遠ざかっていく。

 

 風がおさまり、目を開ける。残されていた物は、黄金色の瓶が1つ。

 それを見たとき、なぜか、ボロボロと涙が溢れる。

 凍りつかないよう、慌てて涙を拭うが、止まらない。


「あれ? っ何で……泣くような事は、無かったじゃないかっ」


 ひとしきり、わけもわからぬ涙を流す。


 船にもどったのは、足下に氷の粒が、見える程溜まった後だった。

 やあ諸君! ノーティアだ!

 今回の話の続きが"ベン爺さんの旅2"だぞ!

 未だに首無し人については触れていないがな。


 さて、次回は……作者が覚えていないと言っていたから、スキルとかの確認回かもな!


 じゃ、次回でまた会おう!

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