α-030 寒空の下で、昔話を
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
「それで、ベン爺さん。油と食糧の取引ってのは?」
とりあえず、敵意はないようなので、聞いてみる。
「言葉通りじゃが。それよりお前さん、腕はどうした。それと、そっちの娘さんも」
ベン爺さんと名乗る老人が、俺とシロを交互に見やる。
「ちょっとな。シロは……あ、そっちで座ってる女の子な。気を失ったままなんだよ」
「ふむ……ちょっと失礼」
ベン爺さんは、シロの額に手を当てて、目を瞑る。
「むぅ、こいつはいかんな。精神をやられておる」
ベン爺さんは目をゆっくりと開け、呟いた。
思わず俺は聞き返す。
「精神?」
ベン爺さんは手招きをして、俺に耳を貸すように促す。
「この娘さん、神族じゃろぅ? 魔力の乱れからして、"破滅の咆哮"でも食らったんじゃろ」
神、族? 前にパテラスがそんな事を言ってたが、あまり気にしてなかったな。これは、詳しく聞く必要がありそうだ……
「ベン爺さん、ちょっと、外で話さないか?」
「ホッホッホ。この老いぼれを寒空の下に連れ出すか」
「あ、いや、そうだな。悪い、気が回らなかった。ここで話そう」
「いんや、大丈夫じゃ。寒さには慣れとる。ただ、懐かしかっただけじゃ」
ベン爺さんは柔らかい笑みを浮かべ、ランタンを持って立ち上がる。
俺はパテラス達に断ってから、外に出る。
外は、もう闇のとばりが落ちていた。空にまたたくは煌びやかな星屑。月は出ていなかった。
「茶は」
ベン爺さんがボソリと呟く。
「え?」
「茶は飲むかの?」
鞄を下ろし、氷に腰を下ろしたベン爺さんが、こちらを見ている。身体は闇に溶け込んでいたが、目が。その目だけが爛々と輝いていた。
尻込みしそうになるが、腕の痛みも相まって"ああ"と応える事ができた。
ベン爺さんは杖を取り出すと、万年氷を叩き割った。
いくつかの塊をフライパンに入れ、カグツチの入ったランタンの上に置く。
静かな時間が流れていた。
「それで、シロの事だけど」
俺が、口火を切る。次の言葉を紡ごうとした時に、ベン爺さんが応える。
「……神族は、神と成った人族の事じゃ」
「神と、成る?」
「人とは思えぬ知識。人を惹きつける魅力。万人に一人の魔法の才能。技と力を極めた者。生物を創る者。
魔を統べし者。それらの者が世界と調和し、不死に近い寿命を手にした、いわば神に近い種族じゃ」
ベン爺さんは、"例外がおるがな"と付け加える。
フライパンの氷が溶け切り、ベン爺さんはやわやわとフライパンをゆする。
「まぁ、神族についてはわかった。あとは、その、破滅の……」
俺が名前を思い出そうと言い淀むと、ペン爺さんが言葉を繋ぐ。
「咆哮。破滅の咆哮じゃ。これは、死神獣が使う技でな……っとと、沸いたな」
湯が沸き、急須によく似た食器に注ぎ込む。優しい、緑茶の香りがした。
「ほれ。口に合うかは知んがのぅ」
「ありがとう」
2人で、茶を啜る。懐かしい、心温まる味が口に広がる。元の世界の緑茶には劣るが、それは紛れもなく緑茶に思えた。
「ほ、ぅ……やはりこの茶は良いのぅ。キーオルを思い出す」
キーオル? どこかで聞いたような……思い出せない。
いや、今は破滅の咆哮とやらだ。
「それで? 破滅の咆哮ってのは?」
「ああ。簡単に言えば、神を滅する力を持つ攻撃じゃ」
「は?」
何それ。確実にヤバいやつじゃん。神属性特攻(ダメージ5倍)みたいなやつか?
「ん? たかが獣が神殺しでもするのか、とでも言いたそうじゃの」
そんな考えは一度も頭をよぎりませんでしたが?
「ま、そこら辺の話はお主は知る必要は無い。獣を滅すればよかろ」
「いや、気になるんだけど」
「ホッホッホ。儂に聞くな。儂も全ては知らんのでな。憶測で物事を語るほど、儂ゃ愚かじゃないわい」
ぐっ、この爺さんに舌戦で勝つことは無理そうだな……
「ま、そんな破滅の咆哮じゃが、掠っただけなら気絶で済む」
俺は、胸を撫で下ろす。
……何で、俺は今ホッとした? 仲間、だからか?
違う。これは、もっと、なんかこう、心? いや、憑き物が落ちたような……
仲間の無事に安心することは、至極当然な事だ。だが、気持ちの上では会ってたかだか数日。俺はそんな短い期間で、そこまで情を入れられない。
俺が悶々と考える中、ベン爺さんは話を続ける。
「さて、治療法じゃが……金色魔法の"カタルシス"をかけてやれば良い」
ん? カタルシス? 俺、そんな魔法、知らない。
「使えるヤツ、いないんだけど」
俺は船を見やりながら、あきらめ混じりに言う。
やわやわと、風が吹き始める。
「見りゃわかるわい。お主は、初期魔法しか使えんようじゃしな」
「じゃ、どうしろと?」
「お主らは幸運じゃ。ここは墓場ヶ原。明日になれば、助けが来る。そうなれば、あの娘さんも、お主の腕も元通りじゃ」
ベン爺さんは、楽しげに笑う。
その笑みに応えるかの如く、風が勢いを増す。
「ホッホッホ、お別れじゃ。風が吹いたら去らねばならぬ。そのコップ……ユノミと言う物じゃが、差し上げよう」
いつの間にか荷物はまとめられ、ベン爺さんは立ち上がる。
「あっ、おい!」
「さらばじゃ、まだ若き芽よ。闇のその先で、また会おう」
いっそう強い風が吹き、目を瞑る。
ベン爺さんと、カグツチの笑い声が、遠ざかっていく。
風がおさまり、目を開ける。残されていた物は、黄金色の瓶が1つ。
それを見たとき、なぜか、ボロボロと涙が溢れる。
凍りつかないよう、慌てて涙を拭うが、止まらない。
「あれ? っ何で……泣くような事は、無かったじゃないかっ」
ひとしきり、わけもわからぬ涙を流す。
船にもどったのは、足下に氷の粒が、見える程溜まった後だった。
やあ諸君! ノーティアだ!
今回の話の続きが"ベン爺さんの旅2"だぞ!
未だに首無し人については触れていないがな。
さて、次回は……作者が覚えていないと言っていたから、スキルとかの確認回かもな!
じゃ、次回でまた会おう!




