α-029 ベン爺さん
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
ゼノビアとココノエは向かい合い、剣呑な雰囲気を発していた。いや、正確にはゼノビアが、床に座ったココノエを睨みつけていたのだが。
すっげえ入りたくねぇ。ニグリス、どーすんだろ。
寒さに耐えられなかったニグリスは、船内に飛び込むように入ったまでは良かった。が、ゼノビアの睨みに固まってしまっていた。
ひゅるり、と、風が身体をすり抜ける感覚に襲われる。
思わず身震いするような、あの感覚だ。
「それで、ココノエ」
ゼノビアが、口を開く。
「……なんでしょう」
「私に不意打ちをし、間接的とは言え部下を見殺しにさせた事だが……私が納得のいく説明があるのだろうな?」
ゼノビアが、ゆっくりと、怒りを押し殺すように言葉を紡ぐ。
「そう、ですね。まず根本として、我々フブキ隊の隊員は、隊ち……」
「隊がないのに隊長?」
「失礼。我々元フブキ隊の隊員は、ゼノビアさんに恩返しをしたい、ということを念頭において下さい」
「……続けろ」
「まず、不意打ちについてですが、説得するには時間が無かった為です」
俺は、よく知らなかった為、小声で隣のパテラスに聞く。
「そうなのか?」
「いや、時間はあった。確実な方法を取っただけだ」
なるほど。ココノエは口と頭がよく回るらしい。
因みに、この辺りで最後尾の俺が船内に入ったため、ゆっくりと扉を閉めた。
「ふん……まぁ、確かに。私がその説得に応じる見込みは無いな」
一応、ゼノビアは納得したようだ。
「……続けます。部下の見殺しについてですが、傭兵のハイエナ含め5名の生存を、通信により確認済みです」
あ、これは嘘だ。そんな暇はなかった。バイ・テリートスにヘラクレスらしきものが刺さってるのも見たし。……そういや、リタリアの頼み、達成できなかったなぁ……
「記録は、あるのか?」
「無い故、信じていただきたい」
ココノエが、拳を床につき、頭を深々と下げる。
「はぁ……分かった、お前達の件は不問にする。……さて」
ゼノビアがゆらりと立ち上がる。近くにあったランスを持って。ココノエが"しまった"的な顔をするが、時既に遅し。
「パテラス殿……いや、パテラス。貴殿は私の部下を危険に晒し、私がついていくと言ったクラビスの腕を失わせた。これについて、どう、落とし前をつける気だ?」
パテラスを包み込むように、ランスの先が20に分かれ、展開される。
「なんだ、気づいてたのか」
「私の部下なら、初対面に近い貴殿を作戦に組み込まないからな」
「ありゃりゃ、やっぱり俺は詰めが甘ぇなぁ」
パテラスは、額に手を当てて天を仰ぐ。
「それで? どうする気だ?」
「そうだなぁ……んじゃ、クラビスが危険に遭いそうになったら、庇うって事でどうだ?」
ええ……俺? それで納得するわけ……
「ふむ……部下は、ココノエを信じるならば生きているし、腕一本の対価としては安いが……良しとしよう」
しちゃったよ! 本人の意見ガン無視!
それと、ココノエは青ざめていた。たぶん、傭兵達の無事を心から祈っているのだろう。
「あー、じゃあ、パテラス、よろしくな」
「ああ、任せろ」
良い笑顔じゃねぇか、コンチクショウ。
「はぁ……じゃ、とりあえず暖をとって、飯を食おうぜ」
扉がそれなりの時間空いていたから、室温もかなり下がっているだろう。あと、腹が減った。
「それもそうだな。ココノエ、鍋を取ってくれ。飯が入ってたやつだ」
パテラスがココノエに頼み、蓋を開ける。水ランプと携帯食糧を7つ取り出し——7つ?
「あれ、携帯食糧って7個だっけ?」
「……いんや、8あったハズだ。シロの嬢ちゃんは……起きてねぇな。どっちだ?」
「某では無いな」「私では無い」
じゃあ、誰が……船内が不気味に静まり返る。
……と、モチモチという、携帯食糧独特の音が小さく聞こえる。操縦席の方から。
改めてよく見ると、赤い布の切れ端が見える。
誰か座っていることは明白だった。
俺達は無言で頷く。パテラスが音もなく武器を構え、ゼノビアの口角が上がる。……どちらも目はマジだったが。
ココノエは、もしもに備えて障壁を展開。俺は……武器が強力すぎるため、金色魔法で作り出した鎖を剣状に束ねる。
ニグリスは、残念なことに偵察要員。
これだけの連携が組めたのも、この状況下だからである。もし、食糧がここよりも多い拠点内ないし迷宮ならば、こうはいかなかっただろう。
……と、その誰かもこちらの敵意に気づいたのか、声を発する。
「……おや、思ったよりも気づくのが早かったのぅ」
老いた、されど力のある声が言葉を発する。
「爺さん、割と本気で怒ってそうだけど? それに加えて約1名、ヤバいのがいるぞ?」
若い、子供のような、元気に有り余った声が、また言葉を発する。予想外に、2人組のようだ。
「ほう、どっちじゃ?」
「分かってるくせに〜」
「ホッホッホ、愚問じゃったな……どれ」
見え隠れしていた布切れが消え、次の瞬間、ニグリスが吹き飛ばされてきた!
それにより、がたいの良いココノエが体制を崩し、視界が大きく失われる。
が、そんな中ゼノビアが瞬間移動をするかのごとく、ココノエの前に出る。
あれ、本当になんの魔法か能力だろ。
「!? いないっ!!!」
が、いるはずの敵は見当たらず、またもや不気味な静けさが広がる。
「ふむ、クロノスタシスか。上位の銀色じゃな」
「ぐっ……」
ゼノビアは、何をされたのかは分からないが、頭を抑えて倒れた伏した。
「お主は……歳を取ったのぅ。それとも動揺かの?」
隣から、声が聞こえる。音もなく、パテラスが組み伏せられていた。恰幅の良い、髭を蓄えた老人が、茶を啜っていた。
俺は咄嗟に剣を抜き、頸動脈を貫かんと突きを放つ。
忘れがちだが、俺は筋力が常人の10倍はある為、かなりの速さの突きが放たれる。
しかも相手の右手は、パテラスを封じる事によって塞がれており、左手は湯呑みを持っている。多少の遅れはあるはずだ。
「ふーむ、武器の性能は見事じゃが、身体に合ってないのぅ。持ち主はお主のようじゃが……記憶喪失かの?」
剣は、突然現れた鉄板……いや、フライパンに阻まれた。
ものの数秒で、死傷者ナシの決着がついた。
「爺さん、出番が一回しか無かったんだけど」
「ホッホッホ。カグツチ、お前の出番が多い時は来ない方が良いのぅ」
「……それで、爺さん。何で全員襲った?」
「……………………」
「はぁ……油と食糧の取引をするだけだって言うから黙ったのに」
「……さて、と。交渉を始めるかの」
「今更無理だろ」
老人は、謎の声との会話を打ち切り、俺達を助け起こした。
「さて、儂の名はベン。ベン爺さんと呼んどくれ。それと、こいつが……」
恰幅の良い老人は、ベンと名乗り、どこからかランタンを取り出す。
「カグツチだ。ウチの爺さんがすまなかったな」
老人が掲げたランタンの炎が名を名乗る。
うーん、ついに精霊的なものが出てきたか……
やあ諸君! ノーティアだ!
今回はタイトル通り、ベン爺さんの旅-1の続きになるな! 私としても、懐かしい爺さんだ!
さて、次回は……また物悲しい雰囲気だな。気が滅入りそうだ。
じゃ、次回でな!




