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俺が世界を救うまでの物語  作者: 椎尾光弥
第一拠点 始まる物語
29/56

α-029 ベン爺さん

アンチコメ→作者のレベルが上がります

プロコメ→作者の創作意欲が上がります

評価、ブクマ→作者が一番喜びます


ストーリーのアドバイス→無視です

文章のアドバイス→ありがたいです

 ゼノビアとココノエは向かい合い、剣呑な雰囲気を発していた。いや、正確にはゼノビアが、床に座ったココノエを睨みつけていたのだが。


 すっげえ入りたくねぇ。ニグリス、どーすんだろ。


 寒さに耐えられなかったニグリスは、船内に飛び込むように入ったまでは良かった。が、ゼノビアの睨みに固まってしまっていた。

 ひゅるり、と、風が身体をすり抜ける感覚に襲われる。

 思わず身震いするような、あの感覚だ。


「それで、ココノエ」


 ゼノビアが、口を開く。


「……なんでしょう」


「私に不意打ちをし、間接的とは言え部下を見殺しにさせた事だが……私が納得のいく説明があるのだろうな?」


 ゼノビアが、ゆっくりと、怒りを押し殺すように言葉を紡ぐ。


「そう、ですね。まず根本として、我々フブキ隊の隊員は、隊ち……」


「隊がないのに隊長?」


「失礼。我々元フブキ隊の隊員は、ゼノビアさんに恩返しをしたい、ということを念頭において下さい」


「……続けろ」


「まず、不意打ちについてですが、説得するには時間が無かった為です」


 俺は、よく知らなかった為、小声で隣のパテラスに聞く。


「そうなのか?」


「いや、時間はあった。確実な方法を取っただけだ」


 なるほど。ココノエは口と頭がよく回るらしい。

 因みに、この辺りで最後尾の俺が船内に入ったため、ゆっくりと扉を閉めた。


「ふん……まぁ、確かに。私がその説得に応じる見込みは無いな」


 一応、ゼノビアは納得したようだ。


「……続けます。部下の見殺しについてですが、傭兵のハイエナ含め5名の生存を、通信により確認済みです」


 あ、これは嘘だ。そんな暇はなかった。バイ・テリートスにヘラクレスらしきものが刺さってるのも見たし。……そういや、リタリアの頼み、達成できなかったなぁ……


「記録は、あるのか?」


「無い故、信じていただきたい」


 ココノエが、拳を床につき、頭を深々と下げる。


「はぁ……分かった、お前達の件は不問にする。……さて」


 ゼノビアがゆらりと立ち上がる。近くにあったランスを持って。ココノエが"しまった"的な顔をするが、時既に遅し。


「パテラス殿……いや、パテラス。貴殿は私の部下を危険に晒し、私がついていくと言ったクラビスの腕を失わせた。これについて、どう、落とし前をつける気だ?」


 パテラスを包み込むように、ランスの先が20に分かれ、展開される。


「なんだ、気づいてたのか」


「私の部下なら、初対面に近い貴殿を作戦に組み込まないからな」


「ありゃりゃ、やっぱり俺は詰めが甘ぇなぁ」


 パテラスは、額に手を当てて天を仰ぐ。


「それで? どうする気だ?」


「そうだなぁ……んじゃ、クラビスが危険に遭いそうになったら、庇うって事でどうだ?」


 ええ……俺? それで納得するわけ……


「ふむ……部下は、ココノエを信じるならば生きているし、腕一本の対価としては安いが……良しとしよう」


 しちゃったよ! 本人の意見ガン無視!

 それと、ココノエは青ざめていた。たぶん、傭兵達の無事を心から祈っているのだろう。


「あー、じゃあ、パテラス、よろしくな」


「ああ、任せろ」


 良い笑顔じゃねぇか、コンチクショウ。


「はぁ……じゃ、とりあえず暖をとって、飯を食おうぜ」


 扉がそれなりの時間空いていたから、室温もかなり下がっているだろう。あと、腹が減った。


「それもそうだな。ココノエ、鍋を取ってくれ。飯が入ってたやつだ」


 パテラスがココノエに頼み、蓋を開ける。水ランプと携帯食糧を7つ取り出し——7つ?


「あれ、携帯食糧って7個だっけ?」


「……いんや、8あったハズだ。シロの嬢ちゃんは……起きてねぇな。どっちだ?」


「某では無いな」「私では無い」


 じゃあ、誰が……船内が不気味に静まり返る。


 ……と、モチモチという、携帯食糧独特の音が小さく聞こえる。操縦席の方から。


 改めてよく見ると、赤い布の切れ端が見える。

 誰か座っていることは明白だった。


 俺達は無言で頷く。パテラスが音もなく武器を構え、ゼノビアの口角が上がる。……どちらも目はマジだったが。


 ココノエは、もしもに備えて障壁を展開。俺は……武器が強力すぎるため、金色魔法で作り出した鎖を剣状に束ねる。

 ニグリスは、残念なことに偵察要員。


 これだけの連携が組めたのも、この状況下だからである。もし、食糧がここよりも多い拠点内ないし迷宮ならば、こうはいかなかっただろう。


 ……と、その誰かもこちらの敵意に気づいたのか、声を発する。


「……おや、思ったよりも気づくのが早かったのぅ」


 老いた、されど力のある声が言葉を発する。


「爺さん、割と本気で怒ってそうだけど? それに加えて約1名、ヤバいのがいるぞ?」


 若い、子供のような、元気に有り余った声が、また言葉を発する。予想外に、2人組のようだ。


「ほう、どっちじゃ?」


「分かってるくせに〜」


「ホッホッホ、愚問じゃったな……どれ」


 見え隠れしていた布切れが消え、次の瞬間、ニグリスが吹き飛ばされてきた!


 それにより、がたいの良いココノエが体制を崩し、視界が大きく失われる。


 が、そんな中ゼノビアが瞬間移動をするかのごとく、ココノエの前に出る。


 あれ、本当になんの魔法か能力だろ。


「!? いないっ!!!」


 が、いるはずの敵は見当たらず、またもや不気味な静けさが広がる。


「ふむ、クロノスタシスか。上位の銀色じゃな」


「ぐっ……」


 ゼノビアは、何をされたのかは分からないが、頭を抑えて倒れた伏した。


「お主は……歳を取ったのぅ。それとも動揺かの?」


 隣から、声が聞こえる。音もなく、パテラスが組み伏せられていた。恰幅の良い、髭を蓄えた老人が、茶を啜っていた。


 俺は咄嗟に剣を抜き、頸動脈を貫かんと突きを放つ。

 忘れがちだが、俺は筋力が常人の10倍はある為、かなりの速さの突きが放たれる。


 しかも相手の右手は、パテラスを封じる事によって塞がれており、左手は湯呑みを持っている。多少の遅れはあるはずだ。


「ふーむ、武器の性能は見事じゃが、身体に合ってないのぅ。持ち主はお主のようじゃが……記憶喪失かの?」


 剣は、突然現れた鉄板……いや、フライパンに阻まれた。

 ものの数秒で、死傷者ナシの決着がついた。


「爺さん、出番が一回しか無かったんだけど」


「ホッホッホ。カグツチ、お前の出番が多い時は来ない方が良いのぅ」


「……それで、爺さん。何で全員襲った?」


「……………………」


「はぁ……油と食糧の取引をするだけだって言うから黙ったのに」


「……さて、と。交渉を始めるかの」


「今更無理だろ」


 老人は、謎の声との会話を打ち切り、俺達を助け起こした。



「さて、儂の名はベン。ベン爺さんと呼んどくれ。それと、こいつが……」


 恰幅の良い老人は、ベンと名乗り、どこからかランタンを取り出す。


「カグツチだ。ウチの爺さんがすまなかったな」


 老人が掲げたランタンの炎が名を名乗る。


 うーん、ついに精霊的なものが出てきたか……


 やあ諸君! ノーティアだ!


 今回はタイトル通り、ベン爺さんの旅-1の続きになるな! 私としても、懐かしい爺さんだ!


 さて、次回は……また物悲しい雰囲気だな。気が滅入りそうだ。


 じゃ、次回でな!

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