α-028 氷原に散るは英霊か
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
薄暗い部屋。そこにあった連絡船こと脱出船は、傷一つ無い、完璧な状態で鎮座していた。
全長6mほどのシルエットが、天井のランタンの光で浮かび上がる。ちょっとしたクルーザー程度の大きさだった。
部屋には4人の男達の声が響いていた。
「早く乗り込め! 運転は誰ができる!?」
「某は出来ぬ。故に、障壁を張ろう。赤吹雪が近づいている」
「おいおい、俺は言わずもがな、シロとゼノビアは気絶。パテラス、あんたが聞くって事はあんたも出来ないんだろ? そこの、ニグリス……さんが都合よく運転出来るとでも言うのか!?」
「あっあのー」
「あーあーあー、聞こえねぇなあ! こういうもんはよ、赤いボタンを押しゃあいんだよ!」
「ぬぅ……足場が不安定だな」
「おい、メチャクチャに触るな! だいたいこの整備室か何かから出なきゃだろ! っ痛つつ……」
「あの!」
「「何だ!」」
「自分、運転できます」
◇ ◇ ◇
爆煙と魔法、暴力と理不尽に支配された戦場。毒槍の刺さった怪物が咆哮を上げる。愚かにも立ち向かった勇者は蹂躙され、その身を貪られる。既に怪物の傀儡に堕ちてしまっていた。それはもはや、在りし日の栄光は見る影もなく、只々巨大な何かへと成り下がっていた。
赤い雪が舞う中、1つの船が巨大な何かから飛び出した。
船は雪煙を立て、西へ西へと向かう———
外は、酷い有様だった。月食は、バイ・テリートスとその配下の生物艦隊に取り憑かれ、黄色の触手で包まれていくところだった。
「「「「………………」」」」
俺達は、船の中から敬礼をする。
「また1つ、氷原に墓標が増えたな……」
パテラスがボソリと呟き、狭い床に腰を下ろす。
「英霊に」
また、パテラスが一言だけ呟くと、ハーモニカらしき物を吹き始める。
それは、どこかで聞いたことのある、この世界には似つかわしくない曲だった。ほとんど聞き取れない歌詞だったが、確かに、小さい頃に歌った歌だった。題名は思い出せない。
ただ、赤吹雪の景色と妙に合っていた。
演奏を終えると、パテラスは寝てしまった。
「痛つつ……痛みがぶり返してきた。回復薬とか無いか?」
「……止血出来る程度の物しかないな」
「それでいい……悪いな、ココノエ……さん」
「ココノエで良い。某は貴方に付いて行く事にしたのでな」
「そうか……ゼノビアは、いいのか?」
俺は、副操縦席に座らされたゼノビアを横目で見ながら、ココノエに聞く。
「恩義は、ある。だが、裏切るような真似をした。」
「付いて行かせて貰え無くなりそうだから、俺に付いて来る、と?」
「意地の悪い言い方だな……まぁ、それもそうか。これは、某の、その……何だ」
「業?」
「……それだ。某の業だ。……恐らく隊長は、起きたら即座にヤツを追うだろう」
「この極寒の中、それも夜になりそうな時に?」
「そういう人だ。故に、某は彼女を止める事で、恩を返した事にする」
「そうか……」
ココノエは、ゼノビアを見る。その前にある窓からは、憎いくらいに美しい夕日が見えていた。
キュルキュルという音と共に、船が失速を始める。
「? おい、若ぇの、どうした」
「……エンジンが止まりました」
「はぁ? じゃ、なんだ、こっから徒歩で行けと?」
「修理出来るならしますけど……それ以前に、エンジンが止まったんで、暖をとらなきゃ凍え死にますね」
あ、そっか。フブキ号もそうだったけど、この世界の船の暖房って、エンジンの熱を使ってるのか。
「……こん中で、赫色魔法使えるヤツ、いるか?」
「一応、シロが使えるけど……」
シロは気を失ったまま、眠り続けている。顔色も悪いままだ。
「はぁ……しゃーねぇ。船を調べろ、何かあるだろ」
パテラスの声で、俺含め4人が狭い船の中を漁り始める。
俺は、痛みと眩暈が治らず、喋るのもおっくうになっていたため、アナライズを駆使して探す事にした。
装甲、イス、断熱材、蒸気式魔導エンジン……素材と機関しか引っかからねぇ……
と、イスの下に取手のようなものが……
イスをどかし、取手を引くと、蓋付きの鍋が入っていた。鍋の蓋を開けると、中には携帯食糧が8つと、小さな瓶のような物、黒いナイフのような物が入っていた。
「パテラス、これは?」
「ん? どれどれ……携帯食糧8に、水ランプ、それとアイスカッターか。」
アイスカッターはそのまんまだとは思うけど……
「水ランプ?」
「大量に見つかる古代の道具……らしき物だ。詳しいことは知らん。まぁ、浄水装置だ。できる水が光るがな。あんまし使いたくは無ぇ」
えぇ……大丈夫なのか? 光る水って。身体に毒そう……
「とりあえず、氷を切って来ればいいか?」
「頼めるか? 俺はエンジンを見てくる。若ぇの、外出るぞ」
日も落ち、既に幾千の星々が輝く空の下、俺は地面にナイフを突き立てる。アイスカッターの名は伊達じゃなく、バターのように氷が斬れる。
ちょっとアナライズしてみよ……
《吸魔のナイフ:魔力を吸い取り、大気中に放出する。現在は万年氷の切り出しに使われる》
《万年氷:光る水が凍った超硬質の氷。多量の魔素を含み、魔素がなくなると液化する。形状記憶力を持つ》
……一緒に地面の氷までアナライズされたが、思った以上にヤバい物って事がわかった。
この地面の氷、魔素を吸い取ると液化するって……この世界の船底には、魔素を吸い取る装置でもついてるのか。
まぁ、それなら氷の上を走る理由も解けるけど。
氷を切り出し終わり、パテラス達の方を見る。
パテラスとニグリスは、船の後方でエンジンを見ていた。
「パテラス、氷は切り終わったぞー。そっちは?」
「あー、油が漏れてる。熱が溜まって、部品が溶けたんだな……油と、パテさえあれば直る」
つまり、都合よく油が手に入り、なおかつ穴を塞ぐパテのような物があれば良い、と。無理じゃん。
「あ、パテは銅貨があるんで何とかできます。ので、今やりますね」
ナイスニグリス! あ、獣脂とかから油が取れるんじや……アイスワームから取れないかな?
「んじゃ、赫魔石をいただいてくかね。1夜は越せるだろ」
パテラスが、エンジンから赤い結晶を引き抜きながら言う。
「そういえば、パテラスさん達は、寒く無いんですか? 自分は、もう、中に入りたいんですけど」
ああ、ニグリスの口数が少なかったのはそういう事か。
俺は女神に肉体改造されてるから特に寒くないけど……パテラスは寒く無いのかな?
「俺は、腕輪に加えて、この外套と帽子があるからな」
あれ、パテラスの着てる物って何か特別な物なのか? そういえば、迷宮で会ったツチクレの攻撃を痛がる程度だったし……
「クラビスさんは?」
「特には」
今気づいたけど、俺、腕輪付けて無かったな。リタリアに貰ったはいいけど、アイテムボックスにしまいっぱなしだったな! ……後で付けとこ。
そんなこんなで船に入ると、重苦しい空気が充満していた。
あ、ゼノビアが起きてる。
やあ諸君! ノーティアだ!
今日も今日とて、内容が暗いな!
作者に喝を入れるのが遅かったか……
さて、次回はとある爺さんが出てくるぞ!
じゃ、次回でな!




