α-024 ゼノビアの過去(前半)
アンチコメ→作者のレベルが上がります
プロコメ→作者の創作意欲が上がります
評価、ブクマ→作者が一番喜びます
ストーリーのアドバイス→無視です
文章のアドバイス→ありがたいです
「さて、私の故郷は第五だと言うことは知っていると思うが、これは私がそこに居た頃の話だ。私達姉妹はなにやら金属製の球体に入れて捨てられたらしい。
私は5つで、リタリア……妹は2つか3つだった。そこを、通りかかったシスターに拾われ、第五の孤児院で日を10周回るほど過ごした。」
ゼノビアは一息でそこまで言うと、過去を噛み締めるかのようにうつむく。ちなみに日を10周回るとは、この世界でいう10年の事だろう。俺達はただ静かに次の言葉を待つ。
部屋には、パテラスがフェイルノートを分解する音が響き、近くで小さな寝息が聞こえる。話し始めて少ししか経っていないのに、シロは眠りに落ちたようだ。
ゼノビアは、シルコムドルセを1つ口に放り込み、カプルスをすすってから話を続ける。
「それで……あぁ、私が15,6の時だ。
私達は他の孤児と共にいくつかのグループを組んでサバイバーじみた事をしていた。確か総勢20人程で、仙人族の子が7,8人、私達を含めていたはずだ。私が最年長でまとめ役だった。
……今でも忘れない、あの日は近くの中型迷宮……私達は廃戦艦と呼んでいた所にガラクタ漁りをしに行く予定だった。
それで、早朝、私達は孤児院をシスターの鎖を掻い潜って抜け出した。曇り空で、朝の温度差かは分からないが、少し霧がかった天気だったよ。
ただ、ひたすらに……そう、ひたすらに静かだった。風はなく、私の歩に合わせるかのように動く霧が印象的だった。今思えば、吹雪の前の静かさだったのかも知れない。
……壁外に出てから、すぐに異変は訪れた。まず、最年少の男の子が消えた。最後尾でトコトコ付いてくる、内気だが頭の良い、7つばかりの子だった。この霧だ、途中で逸れたか思って少し引き返したら、すぐに見つかったよ。
その子の引き裂かれた服と、まだ白い湯気を立てている血溜まりに浮かぶ、苦悶と混乱、そして苦痛に顔を歪めた首が」
ゼノビアの声は少しだけ震え始めていた。少しだけ聞こえる息づかいは、怯えと怒りの混じったものだった。うつむいたままなので顔は見えない。
ゼノビアはシルコムドルセを2つ取り、喰む。カプルスは飲まなかった。
パテラスがフェイルノートを組み立てる音が遠くから聞こえ、さっきまで気にも留めなかったシロの寝息がいやに大きく聞こえる。
ゼノビアが静かに鼻から息を吐き、話を再開する。
「……首を見つけてからまず、二つ結びの猫人の女の子が駆け寄った。側から見ても微笑ましい恋仲といった所だった。内気なあの子の手を引いていた、負けん気の強い子だった。明らかに死んでいるその子の首を必死で揺さぶったりしていてな。……それで、その子が消えた。
いきなりだ。確か、何か黄色い影が見えた気がした。もちろん、そんな事が目の前で起こったら、ギリギリ正気を保っていた年長の子も恐慌状態になる事は、必然だろう。
皆、壁内の孤児院に向けて走った。逃げ切れたのは、たった1人だったと、後になってシスターから聞いた。
……私とリタリアは、あと少しの所でその黄色の影に捕まった。そのまま空高くまで持ち上げられて霧の上に出た事で、そいつの正体が分かった。
……バイ・テリートスに寄生している、寄生生物の触手だった。他の子らも、そいつらに捕まっているようで、霧の上で数人を視認できた。
私とリタリア、それと隣を走っていた年長の……確かリタイアが好意を寄せていた男の子はバイ・テリートスに捕まったが、他の子は、子分の……生物艦隊のいくつかに捕らえられたようだった。
……それで、その触手が服の中に入り込んで、全身を弄るようにして、顔以外をすっかり包み込まれてしまった。リタリアはライカンスロープだったから、獣化して抵抗していた。
男の子は、確か自前のナイフで触手を切ろうとしていたと思った。……触手は意に解さないかのようにして、それぞれに新たに2本の触手を伸ばしてきた。太いのと、先が尖っているのだ。
……まず、服を引き裂かれた。次に太い触手で巻かれて、最初に巻かれていた触手は新たな獲物を探すかのように霧の中へと消えていった。私達はバイ・テリートスの背中の方へと連れて行かれたが、男の子はそうでは無かった。
……握り潰された。
引き裂かれた。
絶叫と骨の折れる音を立てながら、顔を苦悶と混乱と苦痛に彩っていった。
先の尖った触手が、赤ん坊のように揺れる首を取って、霧の中に消えていった。……ご丁寧に引き裂いた服を付けてな。
もちろん、リタリアは発狂した。怒り狂い、触手を噛みちぎり、まだ未発達な爪を、自分の血が滲むまで振るった。
……だが、そんな抵抗も虚しく、リタリアは先の尖った触手に首筋を刺された。私は怒りで目の前が真っ赤になったよ。
しかし、何も出来なかった。四肢は封じられ、武器もなく、リタリアのような爪や牙、人を圧倒する力もない。……その時程、私は私の無力さを呪った事はないよ。
……それで、私もリタリアと同じ目にあった。首筋に鋭い痛みと、何かを流し込まれるのを感じて、意識は闇に消えていった」
ゼノビアは一息でそこまで言うと、カプルスをすする……が、すでに無くなってしまっている事に気づき、淹れ直しに席を立つ。部屋には重苦しい空気が漂っていた。
はい、こんばんにちは。作者です。
この度は誠に申し訳ございませんでした。
なお、この話は次回に続きます。この先数話はダークな感じに仕上がっております。
では、次回で。




