α-017 死にたがりと死神
「俺は死ねないし、歳をとれない。簡単に言えば、不老不死なんだ」
ソルが、首を鳴らしながら言う。
「……実際に首が飛ぶのをこの目で見たし、疑うつもりはねぇが……そりゃ本当か? アンデッドの類じゃなく?」
「正真正銘不老不死だよ。何でかは、知らない」
パテラスが疑いつつ聞くと、特に気にした様子もなく、ソルが応える。
あー、死神と不老不死……読めたぞ?
「つまりアレか? その死神のルナ……」
「ルナで良いわよ。こいつはソルで」
あっはい。
「ゴホン……死神のルナがソルの魂を刈り取りに来たら、不老不死だったと。それで、魂を刈り取るまで帰れないから、ソルが死ねる方法を一緒に探ってる。そんな感じか?」
ソルが"死なない"じゃなくて、"死なない"って言ってたからな。大方こんな成り行きだろうなー。
「死ねる方法って……言葉にされるとなんかやだな。大正解だよ。どこかの古代迷宮の最深部にその方法があるんだってさ」
ソルが応える。
大当たり〜。やったぜ。……でも、5階層のボスを倒すのを手伝って欲しいって言ってたし、本当に最深部まで潜れるのか?
「……なんで攻略済みの迷宮に潜ってんだ? 死の方法……タナトスは確かにまだ見つかって無いが」
パテラスが尋ねる。
それ以前の問題だった。そうじゃん、攻略済みって事は、ゲームでよくある伝説の武器的な物も持ってかれてるだろうし、最深部に着いても何も無かったってオチの可能性の方が高い。
「列車代が……」
「何処かの迷宮の最深部って事は確かなのよ。この迷宮、30階層までしか無いでしょ? 他の迷宮は50階層以上あるのに」
ソルの言葉を遮ってルナが質問に答える。その答えにパテラスは納得したように頷く。
「ああ、最深部への道が隠されてるみたいな事を考えたのか」
俺がそう一人ごつと、ソルを睨みつけていたルナが応える。
「そう言う事。……そろそろ武器を下ろしてくれる?」
っと、忘れてた。
俺は短剣を鞘に戻し、パテラスは銃を背負う。
「さて、と。お喋りはこのくらいにして進もうぜ!」
俺がそう声をかけ振り向くと、パテラスが吹き飛んで来る。通路の先を見ると、そこには5mはあるだろうか、棍棒を持った人型のモンスターがいた。
《ツチクレオーク:オークを模したツチクレ。アルテナの迷宮のみに生息》
咄嗟にアナライズすると、ツチクレと言うモンスターの一種らしい事がわかった。
見た感じパワータイプだな。ここまだ迷宮の1階層だよな?
「大丈夫か!?」
「痛つつ……ガードしたから特に問題無ぇが……パワータイプか。運が無ぇなぁ」
「ったく、なんで迷宮初エンカウントがこんなデカイやつなんだよ! 普通スライムだろ!?」
「もしそうなら今頃俺は、床のシミになってんなぁ」
収めたばかりの短剣を抜き、敵を睨む。ソルは腰に佩いた剣を抜き、両手で構え……
「うぉおおりゃあぁ!!!」
敵に突っ込んだ。もちろん、そんな攻撃をしたら棍棒の餌食になる事は想像に難くない。
「£€$>>$£^\#||*!<$¥.4!¥9!,/?@+~|?!кьрн?!!」
ツチクレオークが何かを叫びながら、ソルの頭に棍棒を叩き込む。心地良い頭蓋の砕ける音と肉の爆ぜる音を立てながら、ソルが消し飛ぶ。
……うわぁ、グロテスク。SAN値が削れそう。
棍棒を振り下ろし切り、隙が出来た頭にパテラスが銃から放った光の条が吸い込まれる。ツチクレオークの頭に風穴が開き、戦闘終了……とはならなかった。
「ん? ……チッ、ツチクレかよ! おい、クラビス! そいつはコアを破壊しなきゃぁ倒せん! 俺とは相性が悪いから任せた!」
そう言ってパテラスは、ツチクレオークの脚を撃ち始める。
……アナライズ出来るのって俺だけなのか?
「わかった! 何処にある!?」
「基本的には胸部だ! 魔法結界が張ってあるから、魔法付与されてない武器で叩き壊せ!」
胸部ね。とりあえず腰辺りを切って動けなくするか。
アイスワームを切った時みたいに切れるかな〜と思いながら上半身を左に大きくひねり、振り払うように剣を振るう。
ゲームでよくある回転斬りの要領だ。
気合いを込めて切り抜くと、ツチクレオークの上半身と下半身が泣き別れる。
「?!!!!ooooasksdr×〆6<|々「…]×%€!!!」
ツチクレオークが困惑するかのように叫びながら、背中から倒れ伏す。
《報告:回転斬りを思い……習得しました》
おお、技を習得出来たみたいだ。後で確認しよう。……っと、その前にこいつにとどめを指さなきゃな。
俺はツチクレオークの腕を切り落とし、胸部を切り裂く。ツチクレと言うだけあって手で掘れるほど脆かった。切り裂いて小分けにした胸部の中を漁ると、緑色の正八面体のような結晶が出てきた。
「パテラス、これか?」
「……そうだ。叩き壊せ」
床に打ち付けて結晶を割ると、サラサラと砂になって消えた。それと同時にツチクレオークも大気に溶けるように消える。
パテラスが恐ろしいものを見たような顔をしていたが、どうしたんだ?
「痛ってえぇぇえ! ルナぁ! 死にそうになったら介錯してくれってたのんだろぉ!? って、うわ、なんで壁が切れてんだ!?」
「忙しくてうるさいヤツね! いきなり突っ込む馬鹿がどこにいんのよ! 2回目は防御に必死だったのよ!」
ソルが絶叫を上げながら生き返り、ルナに食ってかかる。
介錯は気になる発言だけど……壁?
「……うわぁ」
床から1m上ぐらいの所の壁が、水平に消失していた。
先っからチラチラ視界の隅に映ってたけど……改めて見ると凄いな。あ、パテラスの三角帽子の先っぽが無くなってる。だからかぁ。……回転斬りは場所と高さを考えよう。
やあ諸君! ノーティアだ!
え? 休暇はどうしたって?
……もう1ヶ月は休んだが。あぁ、コッチとソッチの世界は時間軸がずれているからな。気にするな。
ソルとルナか……良い思い出は無いヤツらだ。
いや、やめよう。
さて、次回は……あ、蟹食べたいな。ちょっと探してくる。




