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魔法の溢れる世界で君と唄う   作者: 海中 昇
第0章 冒険が始まるちょっと前の話
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第9話 〜異変〜

 謎の男2人が近づく中、2人は遺跡の広間で雑談をしながら受験者達を待つ。


「結構経つのに、戻ってきたのこんだけ?」


「そうですね。もう1日位たちますけど、今年の受験者達は、優秀な人が多いみたいですね♪」


 広間の隅には、死にかけた受験者達に治療が施され倒れている。


「まあ、マグナイルのやつ、あらかた弱そうなの返しちゃったもんね〜」


「へへへ……」


「にしてもあのおっさん、本当に意地が悪いわよね」


「はい。それは否定出来ませんね。遺跡の中心までなんて、そんなの並の冒険者でも難しいのに。それも転移先が中層ともなると……」


「はっはっはっ。それな〜。しかも、真ん中行くか、1回死にかけないとここに戻って来れないとか、鬼畜の所業かよww」


 実はこの試験。ポイント集めなんて名ばかりの試験では無い。あらかじめ冒険者達の総合力を評価し、それぞれの実力よりも、やや高めの中ボス級のモンスターと戦わせるよう仕組まれたものであった。そして、その戦闘をそれぞれの部屋に仕込まれた撮影器具を使用し、各々の評価をする。というものである。


 ちなみに合格基準には、ポイントは全く関係ない。あれはマグナイルの書いた嘘である。遺跡内での戦闘は、各ギルド長にも配信されており、各審査員の評価が一定数以上、又はいずれかのギルドのスカウトがあれば合格となる。


 ちなみに、ティル、シース、ハルナの評価は、大蛇、ゴーレムにトドメを指した時点で、他受験者よりも評価が高い。また先の戦闘から、ソフィア、ガルドもそこそこの評価を得ていた。


「にしてもあのティルって子、あんたんとこの団長気に入りそうよね」


「そうですね。魔力抜きであの技量なら声がかかっても良さそうなんですが……」


「……が?」


「団長。最近遠出していたので、多分この映像見てないんですよね……」


「へ?そうなの?でもアタシ見たよ。北区の方で。な〜んか、でっかい馬車みたいなの運んでたよ?いつだったかな……えと、4.5日前くらい?」


(団長……またサボりですか……。帰ったらお仕置ですね。全く、団長と言い副団長と言い。うちの代表格の人たちはなんで、こんなだらしないのでしょうか…………)


「情報提供ありがとうございます。貴方と話していて、初めt…いえ、なんでもありません」


(危なかった……口が滑るところでした……)


「今、なんか言おうとしてた?」


「いえ何も」


「ふーん。まあ、それならいいけ……。フリアエちゃん。構えて」


「……はい」


 2人が会話をしていると、入口の方から怪しい気配を感じる。


「あんたら誰よ。入口の方は見張りがいたはずだけども?それにその紋様、創星会の人間かな?」


 西洋風の黒い服を纏う男は言う。


「いかにも。覚えて頂いて、光栄です。魔国のSランクギルドのリーダー。メイアさん」


「そりゃどうも!!」


 メイアは男に全速力でも殴り掛かる。この素早さはティルを軽く上回る速度である。


「おっと……」


 しかし、男の前にはバリアが現れ、その拳は防がる。と同時に男の後ろから出現した、大鎌のような武器がメイアを襲う。メイアはそれを軽々と躱すと、フリアエの元へと戻る。


(やるね……あの反応速度……入口の人達じゃ無理かもね……)


 メイアは、入口の惨劇を予想する。2人の動きを見たフリアエも何となく察する。


「あんた、名は?」


「まあ、ジェイルとでも言いましょうか」


「それ本名?まぁいいわ。ジェイルさん?あんた、そんな能力あるのに、どうしてそんな犯罪集団に加担するわけ?」


「いやはや、人の所属する組織を犯罪集団とは……。いたたげませんね。まあ、組織に入ったからこその力、と言えば分かっていただけますか?」


「なるほど。聞こえはいいけど、それって悪魔に魂売ったってことでしょ」


「いい加減、私の組織を馬鹿にするのはやめて頂けませんか?これでも一応、崇高な目的を掲げているつもりなのですが…………」


「どうせそんなの、くっだらない理由でしょうが……正直あんたらのこと、嫌いなのよね。早急にこの国から出て言ってくれると、アタシとっても嬉しいんだけど」


「理由を聞いても?」


「仕事が増えるから」


「なるほど、話に聞いていた通りのお方だ」


「ふーん。それは誰から?」


「教えられません。こちらもビジネスなので」


「なるほどね……」


「まあ、もう御託はこれくらいでいいのでは無いですか?時間も惜しいので早く始めましょう……」


 すると、2人の会話に運び屋が口を挟む。


「おい、別に戦わなくてもいいだろう。君の言う通り時間が惜しい」


「それはおそらく無理でしょう。彼女たち、相当やるようですよ」


「そうよ。そんなみすみす逃がすほど、あたしら甘くないわよ」


「あの、巻き込まないでもらっていいでしょうか……。まあ、確かに戦いはしますけど」


「頼もしんだか、ないんだか……。じゃ、あの黒ローブは任せるよ」


「はい。こちらはお任せを」


「わかってると思うけど、周囲への被害は最小限にね」


「ええ。勿論!」


 こうして、2対2の戦いが始まった。


 -----------------------------


 一方、ティル達はと言うと……。


「兄貴!俺を弟子にしてください!」


「えぇ……嫌なんだけど」


「そこをなんとか!!」


「ねぇ、シースーー」


 シースは他2人の男、ギルとグルと会話を弾ませていた。


「兄貴ーー!」


(なんなんだよこいつ……元気すぎでしょ。さっきまでハルナにボコボコにされてたじゃん。)


 そう。つい先程までこの男達3人は、ハルナによる【ソフィアちゃん強姦未遂】の処罰が執行されていた。それは、無抵抗の人間を殴り続ける、見るも無惨な刑だった。


 最初は、そんなでは無かったのだが、だんだんノリノリになっていくハルナを誰も止めることは出来なかった。アニキと呼ばれていたこの男。ガルドは終盤、当たりどころが悪くぶっ倒れていたが、ソフィアがちゃんと治療を行ってくれた。


 ぶっ倒れた瞬間、遺跡の内部に入る時と同じような光に包まれかけていたが、あれはなんだったのだろうか。まあ、そんなこんながあり、今に至る。


「ねえ、ガルドさんだっけ?なんでそんな元気なのさ!さっきまでハルナにボコられてたじゃん!?」


「はい!あんなもの、屁でもないです!」


(嘘つけよ、お前……)


 すると、後ろから指をならす音が聞こえる。と、同時に背中に悪寒が走る。


「ふーん。屁でもない。ねぇ……」


「ヒェッ」


 ハルナがニヤニヤしながらガルドの方を見る。


(ハルナぁ……怖いからやめてよ……)


「てかさぁ、弟子なんか無理だって。戦い方なんか、見て覚えただけだし、教えることなんてないよ?」


「でも、俺ァ惚れたんです!あんたに!その、惹かれるような戦い方に!」


(まぁじでうっとおしいなァ…………)


 仕方がないので、自分のコンプレックスを利用し、諦めさせる作戦に出る。


「ならほらこれ!見て!魔力ゼロ!俺のステータス!総合評価、最低ランク!!こんな師匠でも胸張れる?」


(なぁんで俺がこんなに悲しいこと自慢しなきゃ行けないのさ……)


「ま、魔力…………ゼロ……?ランク………E……?」


 ガルドは目を見開いたまま、硬直している。


(ほぉらこれだよ……。あーぁ。悲しい。僕は悲しいよトホホ……。)


 完全に自爆だが、めんどくさい事に比べれば些細なことだった。だがその行為は、男の魂に火に油を注ぐ行為だった。


「魔力ゼロであのゴーレムを真っ二つ!流石は兄貴!いや師匠!!もう俺は決めました!何があっても、師匠について行きます!!」


(……失敗した。本当にやんなきゃ良かった。まじで。)


 と、己の行動に深く後悔する。あー、今後どうしようか。遺跡から出たら、どうやってこいつらを巻くか。等と考えていると、シースから声がかかる。


「おーい、もういいかーい?」


「シース。横目で楽しんでたでしょ」


「そんなことないよ〜」


「本当に?ほんとにほんとう?」


「本当。本当。ワタシウソツカナイ。こんな俺だけど胸張れる」


「はぁ、もういいよ。シースがどんな奴かは知ってるよ」


「はっはっはっ〜。そういうこと。まあそれはさておき……」


 シースは手を叩き、注目を集める。


「はーい、全員集合!!」


 すると、今後の予定を7人で話す。大体の内容は、まとめるとこうである。


 ・とりあえず7人で行動。

 ・ティルとグルが最前衛、ガルドとシース、ギルが中衛、ハルナとソフィアが後衛でサポートをする。


 の、2つのざっくりとしたルールだ。ガルドはティルのそばに行くため、最前衛に行くと駄々を捏ねていたが、ハルナに脅されると直ぐに大人しくなった。


「てかあんたらさぁ。大丈夫なの?ポイント。ソフィアちゃんのポイントはあるけど。あんたらの分、無いわよ?」


「まあ、大丈夫でしょ〜。先進めばモンスターの数十匹位いるでしょ。それに、ガルド達も自分達のポイントくらいなら集めれるんじゃない?」


「はい!シースの兄貴の言う通り、自分達のケツは自分で拭きます!!」


「まあ、それならいいわ。言葉汚いけど」


「しかも、この広間での戦闘とかさっきの蛇とか。もう、ポイント集めとか関係なく、合格間違いないでしょ。多分。協会のことだから、俺たちの行動くらい把握してるかどっかで見てるはずだし」


「それもそうね」


 そして、7人は各々の荷物を分け、中心への道に繋がるであろう扉の前へと進む。よし!これで出発!!そう歩き出すと、グラグラと床が揺れ始める。


(地震かな?すぐ治まるといいけど。)


 だが、地震は収まることを知ずに更に強まる。


「こりゃぁ、まずいんじゃない?」


「大丈夫です!兄貴も師匠も姐さんも!俺が体張って守ります!!」


「いいから構える!」


「はい!師匠!」


(はぁ。この人といると、調子狂うなぁ……)


 しばらくすると、地震は収まる………。


「なんだっんだ?今の……」


 すると、なにかに気づいたハルナが叫ぶ。


「みんな!!!下ぁッ!」


 ハルナがそう叫ぶと、床が崩れ始める。


「きゃぁぁぁっ!!!」


(まずい!!)


 ティルは誰よりも早く、落下するソフィアに反応し、落下するソフィアの元へと駆けつける。


「おい、ティル!!」


「俺は大丈夫!そっちは任せた!!」


 こうして、せっかく合流したティル達は、再び別れることとなってしまった。


 -----------------------------


 一方、ティル達が落下する少し前。遺跡の入口では、激しい攻防が繰り広げられていた。


「はぁ、はぁ、はぁ、あんたら、やるじゃん。テンション上がるわ本当……」


「おや、そうですか。それは理解し難いですねぇ。私としては、もう少し楽な戦闘を期待していたのですが……」


 そんな2人の攻防は続く。メイアの放つ、四方八方から襲う、雷魔法。更には、メイア本人が自由自在に操る水魔法の鞭。どちらか一方を体に受ければ死へのコンボへと繋がる。そんな状況。しかしながら、そんな魔法を全て捌きつつ、己の武器、槍と鎌のような武器を宙で操りながら、これでもかと首を狙う。


 メイアの本領は、近距離戦闘。短剣と魔法、スピードを活かすものだが、このジェイルという男。メイアをその優位な間合いへ入らせない。


(本当厄介なんだから。それにあの目……)


「あんたさあ、何狙ってんのよ。必殺技でも打つつもり?」


「さあ、なんの事やら……」


 そんな2人を横目に、フリアエは運び屋に武器を構える。


「あなたは戦わないのですか?」


「特に戦う理由は無い。それじゃ」


 と、遺跡の奥へと歩く。


「ダメです行かせません!!」


「多分、君じゃ止めれないよ?」


「それでも!!」


「じゃあ、仕方がない」


 すると運び屋はフリアエを睨む。


「ッ!?」


(なにこれ、怖い?震えが止まらない……)


 フリアエは得体の知れない恐怖のせいか、震えにより体の自由が奪われる。


「ほぅ、気絶は無しか……なかなか……」


 すると運び屋は、フリアエの腹を狙い切りかかる。フリアエはなんとか体を動かし回避するも、運び屋の攻撃は止まらない。そのまま、運び屋は上方向へフリアエを蹴っ飛ばす。


「フリアエちゃん!」


「おっとよそ見ですか?それはいただけませんねぇ」


 ジェイルはメイアの一瞬の隙をつき、宙に浮かぶ槍をメイアに放つ。メイアはギリギリ避けるが、頬にその槍を掠めてしまう。


「今ので決めれなかったのは痛いんじゃ……?」


(この感覚、毒?)


「あんたさぁ、悪趣味ね……」


「褒め言葉どうも」


(あーあ、こりゃまずったねぇ。あたしはともかく、フリアエちゃん。ありゃ本格的にまずい。どうする……。助けに……いや、この気配。全く、来るのが遅いんだから……。)


「またまたよそ見とは、そんなに死にたいのですか?」


 そう言い、ジェイルが指を鳴らすと、ジェイルの頭上からレーザービームのようなものが放たれる。しかし、メイアは体を全く動かさず、ニヤッとジェイルを見つめる。


(なんだ、その顔は……)


 レーザーはメイアへと向かう。そしてメイアに直撃すると思われた次の瞬間、二人の間に何か、黒い影が通り過ぎる。すると、メイアに向け放たれたあその攻撃は、何故かジェイルの方向へと反射した。


「なっ、何が……」


 やや慌てるジェイルの隙を見逃さず、メイアは己の得意な戦闘の領域へと距離を詰めた。


 一方、フリアエの方はと言うと、


(どうしましょう、このままでは……)


 フリアエは、手に魔法を集中させ、風の魔法の準備をする。おそらく着地の瞬間を狙っているであろう運び屋に対し、風魔法で垂直に避ける算段だ。


 そして、着地までおよそ1m、魔法の準備をし、運び屋を視界に入れる。


 残り、50cm。運び屋は武器を構え、攻撃体勢に入ったようだ。残り10cm、運び屋の剣がフリアエの首を狙う。


(今!)


「風よ!」


 すると、フリアエは運び屋の反対側へと方向を変える。


「嘘っ……」


 先程の攻撃はブラフであった。運び屋はフリアエの考えを読んでいたのか、一瞬のうちに距離を詰め、正確無比にフリアエの首へと大剣をふりかざす。


「マグナさん…………」


 ああ、もうダメだ。もう一度だけあの人に会いたい。そう思い覚悟を決め目を瞑ると、目の前でぶつかり合う金属音が聞こえる。目を開けるとそこには、既に帰ったはずの男。マグナイルが己を守ってくれていた。


「呼んだ?ドジっ子受付嬢さん?」


「ド……ジ……?」


 フリアエは自分が倉庫の鍵を持っているのを思い出し、鍵を保管している左胸に手を当てる。


(もしかして、これのおかげ……?)


「おいおい。女の子にこんな仕打ち、酷いんじゃない?」


「敵に女も男も無い」


「なるほどねぇっ!!!」


 マグナは運び屋に攻撃をする。運び屋はそれを躱し、懐から何か刃の着いた、瓶のようなものを2個取り出す。1つは発光しており、もう片方は何も無い変哲のない瓶である。


(なんだ?ありゃ。)


 すると運び屋は、マグナへと剣で顔面に突きを行う。


(まあまあ、こんなおそまつな攻撃……、じゃないよな。)


 運び屋は、その剣から既に手を離しており、剣へ意識を集中させていたマグナの死角から、低い姿勢での体術による攻撃をする。


 マグナは剣を避けると、次に備えるため距離をとる。だが、腹に何か違和感を感じる。


(ん、これは……)


 手で腹を拭うと、しっとりとした感触があり、見ると血が付着していた。


(大丈夫。深くは無い。というかあいつ、今なんか不自然だったよな。一瞬ぶれたみたいな………… )


「お前、今何をした?それにその瓶。さっきまで光ってなかったよな」


「別に、話す筋合いは無い」


 と言い、マグナから距離をとる。マグナはメイアの方を見る。


(あっちは大丈夫そうだな。)


 どうやら!フリアエを守りに行くついでに何となくで反射させたレーザーを起点に、メイアは間合いに入ったようだ。だが、


(あ、やっべ。あいつあっちいっちゃったよ……)


 一瞬目を離した隙に、運び屋はメイア達の方に行ってしまい、2対1の状況を作ってしまった。


「どおーーりゃァっ!!」


(よっしゃその首貰った!)


 と思ったが、運び屋がその攻撃を弾き、メイアに反撃をする。しかし、マグナがそれを受止め、メイアを抱え距離をとる。


「おい、おっさん!なんであいつが来んのさ!足止めくらいちゃんとしなさいよ!」


「うるさいなぁ。まあ、今のは8割くらい俺が悪かったな。すまん」


「8?いやいや、12割くらいあんたが悪い」


 と、マグナとメイアは若干言い争いをする。


「大丈夫か?」


「感謝します。まさか、あの男。あんな芸当ができるとは……。魔国団の副団長。流石です。もう油断はしません」


「いや、もうその必要は無い、準備は出来た。Bプランだ」


「なるほど……先ので」


「あのぉ、そろそろいいですかぁ?」


 マグナは2人の元へ切り込む。運び屋は瓶をジェイルに渡し、マグナの攻撃を受け止める。


「時間は稼ぐ。任せた」


「ええ。任されました」


 すると、ジェイルはその瓶を掲げ、何か言葉を唱える。


「こんなもの、本当は使いたくないんですがね……。こんな、汚らわしいもの……」


「させるかよっ!」


 マグナは運び屋を蹴っ飛ばし、ジェイルに攻撃を向ける。


「それはこっちのセリフ」


 運び屋も綺麗に受身を取ると、つかさずジェイルの援護に戻る。そして、メイアは2人の攻防の開始を確認し、ジェイルに向け最速で魔法を放つ。しかし、運び屋はそれを予想していたのか、地面を思いっきり蹴ると、飛び上がった床の破片でジェイルへの攻撃を防ぐ。


「あんた、何者?ちょいとばかし、強すぎやしないかい?」


「こんなことない。僕はただの運び屋。それに、そっくりそのまま返す。どこでその力を?」


「一体なんの事やら……」


「時間だ」


 運び屋がそう言うと、ジェイルの掲げた瓶から光が溢れ出す。その光はマグナ、メイア、フリアエの3人を包む。どうやら、ティル達受験者を移動させたあの光と同じらしい。


「は?これ、俺の!?」


「では皆さん、ごきげんよう」


「おい、まて!」


 すると、3人は遺跡の外へと転送された。


「おい、2人とも大丈夫か!?」


「私は、大丈夫です。ですけど、周りに………」


「やっぱりねぇ、あの2人が入ってきた時から覚悟はしてたけど……。まさか、こんな事になるなんてね。予想外とはいえ、これじゃSラン失格だよ」


 メイアは己の失態に、そのせいで失われた多くの命に、心を痛める。


(反省は後、今は対処!)


 と、両手で頬をパンッパンッと叩く。


「じゃあ、早速戻りますか!」


 謎の男二人を止めるため、遺跡へ向かおうとする。すると、地面が揺れ始めた。


「うぉっ、なんだこれ?遺跡か?」


「遺跡……なんでしょうね。ですが、こんなのデータにないです。やはり、あの男達なのでしょうか……」


「まずい、早く行かないとな……」


「おっさん、転送行ける?」


「無理だ。次使えるまで時間がかかる」


「ッチ。使えねーなっ」


「えー、酷くなーい?せっかく助けたのに……」


「ま、正門から行きますか」


「そうですね」


「はぁ、無視ですかい。ん?」


 マグナはメイアの歩き方に、若干違和感を感じる。


「いや、メイア。あんたは残りな」


「……」


 メイアはなにか思いあたる節があるのか、頬の傷をさする。


「あんた、さっきの毒まだ残ってるでしょ。それに今の地震。恐らくここにギルドから人が来るはず。ならある程度顔があって説明ができる人が必要だよな」


「……ふんっ。分かったわ」


「フリアエちゃんもここに残って、メイアのサポート。敵が2人だけとは限らないからね。ちなみにこれ、副団命令」


 フリアエは、納得いかないながらも、唇を少し噛みしめ、了承する。


「……了解です」


 そしてマグナは、この試験で起きた異常事態。運び屋とジェイルを追い、 遺跡の中へと 足を踏み入れるのであった。


「せっかくのデートのチャンスごめんね」


「うるさいです。黙らないと、その傷さらに開くことになりますよ」


「はいは〜い。黙りますよ〜っと」



 第8話 「異変」 〜完〜


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