第2話 〜魔石の可能性〜 ④
手配書の依頼、もとい試練を受けて2日目。ティルは宿屋のベッドの上で目を覚ます。
「ふあぁぁ。よく寝た……。今何時、まだ6時か……。あと4時間は寝れるな……。ん?なんだあれ」
ティルは時計の方を見ると、1枚の手紙が置いてあった。一体誰だろうか、こんな常識外れなことをする人に心当たりがない。
(え?誰?普通に泥棒じゃん。盗まれるものはないし……。冒険者手帳も、財布もあるしな……。)
とりあえず、手紙の中身を確認する為に封を開ける。名前を見た瞬間、なるほどとは思ったが、まさか、こんな奇妙なことをする人だとは思わなかった。いや、少しだけ思った。
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やあ、手紙で失礼するよ。ティル君。
本当なら、直接会って教えてあげたかったんだけど、本職の都合で魔国を出なくちゃならなくてね。こういった形で伝えさせて貰うよ。
まず、昨日の手配書の件だけど、この封筒に同封している地図の、目印がある所に目撃情報があったよ。名前はグレイスって言うらしいけど、しばらくその辺に滞在してるんだって。
ま、ティル君のことを考えると、そう簡単に手こずることは無いと思うけど、頑張ってね♡
もし無事だったら今度魔国に帰った時、またご飯にでも行こうよ。無論、今度はティル君の奢りでね。
後、最後にひとつ。君の部屋に勝手に入ったことは謝るから、このことはぜひ内密にね♡お姉さんとの約束だぞ!!
〜謎の美少女 アルマより〜
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ティルは手紙を読み終えると、ありがたいんだか迷惑なんだか、少し複雑な気持ちになった。
(部屋に入るのは良くないけど、こんな情報どうやって調べたんだろ。たった一夜で。まあ、ありがたく参考にさせて貰うよ。)
アルマからの温厚?によって調べる地域を絞れたティルは、朝食を取り、捜索の準備をした後、宿を発つ。
封筒に同封されていた地図を頼りに進んでいると、徐々に人が減っていき、ガラスが割られた建物などがチラホラ見えてくる。場所は西区と南区の境目。それも魔国の1番端っこの小さな区画。どうやらここは南区で散財し、家・財産等を無くした人が住むためのゴーストタウンになっているようだ。おかげであまり整備もされておらず警察なども滅多に来ないため、追われる身となった人が姿を隠すにはうってつけという訳だ。
(おわっ……怖いなぁ……。)
ティルがゴーストタウンに踏み入れると、道に佇んでいる人、すれ違う人、ほぼ全ての人に睨まれる。それはそうである。ここにいる人はほぼ全ての人が自己破産をした人。またはそれに準ずる人。目の前に可能性の塊が現れれば何をするか分からない。そんな一触即発のような場所なのだ。
その後、あまり目立たないよう、物陰を移動しながら手配書の男を探す。だが、その行動は自分の首を絞める行動となってしまう。
「おい、そこの兄ちゃん。止まってもらおうか」
ティルは背後からナイフを突き立てられ、謎の男5人組に囲まれる。
「君、ここがどういう場所か分かって来てるのかな?」
ティルは自分が子供だと舐められぬよう、あえて強気の口調で返す。
「そうだけど?ちょっと人探しで来ただけで。長居するつもりは無いよ?だから見逃してくれると嬉しいんだけど?」
「おいガキ!!舐めた口聞いてっと全身剥ぐぞゴラァ!!」
すると、落ち着いた口調で喋る男、恐らくこの中のリーダー格なのだろう。その男は、ティルを脅した男を無言で蹴り倒す。
「ごめんね?うちのバカが。僕達もね?あまりことを荒らげたくないんだ。で、君は誰を探しに来たのかな?まさか、僕って訳じゃないよね?魔法研究所のティル君?」
ティルは振り向き、相手の顔を確認する。どうやら手配書の男では無いらしい。しかし……。
(僕の情報がバレてる……この人何者だろう。)
「別に、話す筋合いはないけど、探しに来たのはあんたじゃないよ」
「ふ〜ん。ほんとかな?」
男はティルの首元にナイフを滑らせる。ティルは危険を感じ、剣に手をかざし、戦闘に備える。だが男はニッコリと笑うと1歩後ろに下がる。
「なーんてね。君。もう少しポーカーフェイスを覚えた方がいいよ?振り向いた時の一瞬の安堵の表情。その一瞬の綻びが後に自分を傷つけることになる」
その後、男は近くにあるソファにトスンと腰をかける。
「君のことはある人から聞いてる。僕は……そうだな、アセットとでも呼んでくれよ。ここら辺で情報屋をやっている。君、グレイスを探してるんだろ?」
「そうだけど……。それってアルマから?」
「僕の口からは何も言えないよ。些細なことであれ、顧客の情報は機密事項だからね」
「何故、僕のことを襲ったの?」
「ただの興味本位だよ。もしかしたら、今後のお得意様になるかと思ってね。品定めみたいな物?まあ、こうして無事顔合わせも済んだことだし、今後ともよろしくね」
「は、はぁ」
「じゃ、今日のところは 1つサービス。おい。例のやつ見張ってるか?」
すると、後ろからガタイのいい男がアセットに耳打ちをする。
「なるほど。ティル君。グレイスは今、ここから2km北にいる。追うなり、捕まえるなり、好きにするといいよ。今僕が君にできるのはここまで。頑張ってね」
「……どうして僕にここまで?」
「さっきも言ったろ?君の将来のことを見据えてさ。こう見ても僕、人を見る目と直感だけは自信があってね。それよりもほら、こうしている間にグレイスはどっかに行っちゃうよ?」
(なんだか怪しいけど……、ここは素直になっておくかな。)
「なんかよく分からないけど、ありがとう」
ティルは礼を言い、グレイスが居るであろう場所まで急ぐ。
「さてと、僕も行くかな」
アセットが立ち上がると、他の男たちも構える。
「おっと、君たちはもうここまででいいよ」
そう言い手を鳴らすと、アセット以外の男たちは意識を失い、膝から崩れ落ちる。アセットは男たちの安否を気にせず、建物を後にする。
一方その頃ティルは、アセットの情報に従い、北方向を探していると、ボロボロの店頭で買い物をする、手配書の男を見つけていた。
(あ……本当にいた。)
髪型、身長、正面からは見ていないが、恐らく本人だろう。相手の姿を確認した後、バレないよう距離を開け、尾行を開始する。
尾行を開始してから約20分。相手は気付いていなさそうだが、徐々に人後ない方へと移動していく。
(段々寒くなってきたな……。それに、この雰囲気、もしかして誘導されてる?)
そう思ったのもつかの間、グレイスと思わしき男は、急に走り出す。ティルも逃すまいとスピードをあげる。チェイスが始まり、しばらく見になりに進んでいくと、建物が倒壊した、開けた広場のような場所に出る。
ティルは男を探すため、広場の真ん中に立ち、キョロキョロする。すると、どこからか謎の男の声が響き渡る。
「おい、お前!何もんだ!!わざわざ俺を尾行するなんざ、ただの民間人じゃねえだろうさ!!」
ティルは武器をかまえ、周囲を見渡す。
「いいねぇ!そういうの!むき出しの敵意ってやつ?」
ティルに向けそう言うと、手配書の男、グレイスは姿を現す。と同時に、なにかの魔法を唱え始める。
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妨害型範囲氷結魔法【ホワイトエリア】
指定した範囲内の温度を徐々に下げ、氷の耐性を持たないものに速度低下、意識低下など、感覚に作用する様々なデバフを付与する魔法。なお、使用から時間が経つにつれ、威力は徐々に増していくが、寒さに耐性を持つものにはあまり効果がない。
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グレイスが魔法を唱えると、周囲の温度が下がり始める。こうして、なかなかの悪環境の中、ティルの初任務、初の戦闘は開始された。
「ほらほら!どこ見てんだよ!ギルドの冒険者さんよ!!こんなんじゃ、俺を捕まえることなんざ出来ねぇぞ!!」
グレイスはティルに突撃すると、下半身や腕など、直接的な致命傷ではなく、ティルの機動力を奪うような攻撃をしてくる。ティルも負けじと応戦するが、寒さで色んな感覚が鈍り、いつもの受け流しが上手く決まらずにいた。
ティルとグレイスのスピード・パワーは、ティルの方がやや上。しかし、この魔法のせいでそのアドバンテージが維持できるのは時間の問題。それに、この男、ティルと剣を交し合いながらも、何か余力を残しており、更には後ろにふたつ、青い玉のような何かを展開させている。
(なんだろう……あれ。何かの魔法だろうけど、知らないままなのは怖いな。)
そこで、ティルはブラフを試みる。二人の攻防の中でタイミングを狙い、グレイスの剣を弾き返すことに成功し、隙を見せながら懐に入る。
「ヒュ〜♪やるねぇ!」
グレイスがそう言うと、青色の玉は氷柱の形へと姿を変え、ティルの足元へと放たれる。ティルは魔法が着弾する前に大きく後ろへ下がり氷柱の魔法を回避する。
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槍状氷撃魔法 【アイシクル】
氷属性を得意とする人間が、好んで使用する一般的な魔法。大きさやスピード、連射力は使用する人間の能力に依存し、殺傷力はやや高め。
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「お前、今の誘ったな?」
「へっ、もちろん!」
ティルは相手を煽るように、口角を上げながら返す。
「ほーん。じゃあ、これならどうかな?」
するとグレイスは剣を構えると、今までとは違い、自分から攻めることはなく、ただただティルの攻撃を待つ戦法に切替える。
(あいつッ。クソッ。そりゃそうだよね。時間が経てば経つほど有利になるのはあいつなんだから。)
ティルはチィッと、舌を鳴らし、自分からグレイスの元へと突っ込む。
「その切り替えの速さ!いいね!見た目の割にはやるじゃん!」
「今見た目は関係ないだろッ!!」
相手の憎まれ口に反応しながらも、果敢に攻めるティル。しかし、前情報の通り、グレイスは攻撃の捌き方が上手い。ティルの攻撃を捌きつつ、距離を取りながら反撃をしてくる。更に、隙あらば後ろに待機させてある魔法で、死角からの追撃を狙ってくる。
(ほんっと厄介。戦いにくいし、そろそろ寒さが限界だ……。)
そんな弱音を心の中で吐いていると、それを悟ったのか、グレイスはついに動き出す。
「あれれ?もしかして限界かな!?」
「全ッ然!まだまだ平気だよ!!」
「空元気なのは見え見えだぞっと!!」
と言い、グレイスは思いっきり剣を振る。ティルは、この角度、この距離なら!と思い、お得意の受け流しを試みる。が……。
(うっそだろ!?いつの間に氷仕込まれた!?)
いつの間にか、足元に仕掛けられた氷により、足を滑らせ体勢を崩す。相手の剣はギリギリ避けられたものの、グレイスが振り上げた右足はティルの重心を確実に捉え後方へと吹き飛ばされる。
「グァッ……」
ティルはそのまま4m程体を転がした後、壁に激突する。
「これで勝負ありだな。じゃあな少年。頼むからもう俺を追うなよ?」
(ちくしょう。何も出来なかった。終始圧倒されっぱなしで、出来たことといえば、魔法を誘っただけじゃん……。もし、僕に魔法が使えたら……。)
ティルは背中を向けて歩くグレイスを見つめながら、昨日アルマに言われたことを思い出す。
【魔法を使えないのは君が使い方を知らないだけだよ……】
(確かにそれはそうだけど、使ったことなんて、そもそも炎を剣で纏っただけ……。)
【魔法を使った時の感覚を思い出すといいよ……。】
(感覚は覚えてる。シースの出した炎が魔石と反応して……。でも炎の魔法なんてどこにも……。)
【その魔石は、迷ってるだけなんだよ。自分が何の魔法なのか……。】
(何の……魔法……。)
ティルは胸にしまっている魔石を取り出し、その透明な魔石を見つめる。
「魔法……か……。魔石は、魔法の塊……なのかな?どうせこの状況なら……。やってみる価値ありかもね」
ティルは、仰向けのまま魔石を握りしめると、剣に炎を纏わせようと、集中する。
「違う、あの時、シースの魔法は僕の中を流れていない。剣に直接纏わせてたんだ」
すると、魔石は若干赤く光り出す。しかし、あの時とは違い、若干剣の辺りが暖かくなるだけで、大蛇と戦った時のような猛々しさは全くない。
(違う。そうじゃないだろ!理屈は多分正しい。もっと鮮明にあの時、あの状況、緊迫さを思い出せ!あの時の高揚した感覚を!!)
ティルは目を瞑り、あの時の感覚を鮮明に思い出す。深く深く集中し、深呼吸をする。すると、背中にはそう。今まで何度か感じた、ゾワッとした感覚、魔法が付与される感覚を感じる。そして…………少年の持つ剣に炎が灯る。
(これだ……。行ける……。)
ティルは、目を開け武器を構えると、
「こっから……反撃開始!!」
と意気込むと同時に、剣に纏わりつく炎は猛々しく燃え盛り、かつて大蛇と対峙した時と同じくらいの炎となる。ティルの周囲の温度は、その炎により急激に上昇し、心地の良い温かさがティルを包む。炎を纏う剣を見て、ティルは初めて魔法が使えた喜びと、相手と再び戦える興奮で再び立ち上がる。
(火を纏う刀か……。名付けるなら……。)
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火纏刀【カマトト】
とある魔力のない新人冒険者が、魔石を利用することで初めて使用した魔法。炎を剣に纏わせることで、炎属性を付与し攻撃をする。また、纏わせる炎の状況により、威力が変わる、何かしらの恩恵を得るなど副作用が変化する。
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ティルは叫びながらグレイスへ突っ込む。
「まだだ!!僕は、終わってないぞーーッ!!」
「なーに言って……、は?何じゃありゃ?」
グレイスは、炎を纏うティルに驚きを隠せずにいた。更に、己の最も得意な魔法【ホワイトエリア】の一部が、その炎により無効化されていることにも驚いた。
(おいおい、なんだよありゃ、さっきまでそんなの持ってる様子なかったじゃん。こりゃ、ちとまずいかもな……。)
目の前に立ちはだかる、炎を纏う少年に、今展開している魔法は無意味だと悟り、己の魔力消費削減も兼ねて【ホワイトエリア】を解除する。
(相手は火属性。相性は悪い。ここは一旦引くか。)
しかし、流石のティル。己の素早さを活かし、グレイスとの間合いを最速で詰める。
(軽い……。剣が、いや体が軽い!今なら空でも飛べそうだ!!)
ティルの放つ一撃は、グレイスの剣と交わる度、炎の余波と共に、激しい衝撃が走る。
「ッチィ。なんなんだよその魔法!どんな仕組みだよ!何でパワーもスピードも上がってんだよ!!」
ティルは一瞬だけ考え、攻撃しながら答える。
「……。これは、火を纏う刀!名付けて【カマトト】!!」
「なんだよ、そのふざけた名前はよ!お前、センス無さすぎだろ!!」
ティルはその返答に少しだけイラッとし、判断が遅れてしまう。グレイスはティルと距離をとった後、最後の足掻きか、巨大な氷の壁を作り出す。
(もう、これで魔力無ぇや。さっさと逃げるが吉だな。)
だが、その思惑は失敗に終わる。後ろから聞こえる少年の叫び声と共に、自分へと迫り来るおぞましい気配を悟る。
(まッじッでッ!なんなんだよあの子供!!)
その頃ティルは、少しでも距離を詰めるべく、今の状況を頭の中で整理する。
(この壁が出来てからまだ10秒も経ってない。横から回るのは……少し厳しいかな。壁は分厚そうだけど、この剣なら何とかなるかも!!なら今とるべき行動は1つ!!)
と、剣を構え息を整えると……。
「どおォォォォりゃァァァァァ!!!!」
そう叫びながら、己の出せる最高・最速の剣撃で、巨大な氷の壁に対し、炎で溶かしながら削る。削る。そして、氷の壁の反対側から、太陽の光が見えだし、ついに、グレイスの姿を捉える。
「これで!!終わりだァァァァァッ!!!」
グレイスは、ティルの気迫に押され、一瞬躊躇うも、何とか反応し、体勢を崩しつつもティルの剣を弾く。ただ、ティルも甘くない。そんな隙を見逃すはずがなかった。
「これ!さっきの仕返し!!」
そう言うと、先程蹴られた時のように、グレイスを思いっきり蹴っ飛ばす。
「お前ッ……。鬼かよ……」
そして更に距離を詰め、最後の駆け引きを行う。
グレイスは、何とか受身を取り、迫り来る驚異に対し、武器を構える。ティルはその構えを見て、これからのプランをイメージし、更にスピードをあげる。
(こいつ、早い!)
(ここで絶対に決める!!)
そうして、二人が剣をを交えると、初任務の決着は着いた。
ティルは勢いを剣に乗せ、右、左、縦へと3回剣を振る。グレイスもタダでは終わらない。ティルの放つ3連撃を受け止める。更に、最後にティルの足元に氷の罠を張り、体制を崩すその瞬間を待つ。そして、氷の表面にティルが足を着いた瞬間。
(かかったな!同じ手に引っかかるなんで、まだまだひよっこだな!!)
無論、ティルは最後の一歩を踏み込んだ瞬間体勢を崩し、前方向に倒れ込み始める。
(急所じゃなくていい。機動力さえ奪えば逃げれる。結果を焦るな。ここは確実に足を奪う。)
そう。わざと体勢を崩したように見せただけである。ティルは倒れ込みながら体を反転させながら、片手でグレイスの剣を弾き飛ばし、相手の攻撃手段を奪う。
(くっそ。また誘いやがった!こいつッ!)
ティルは着地した瞬間に受身を取ると、グレイスに思いっきり足払いをかける。すると、頭から前方に倒れ込んだグレイスは四つん這いの形になった。その後、ティルはグレイスのうなじに剣を突き立て、ティルの勝利で戦いの幕は降りた。
「はい!僕の勝ち!」
「ったく……なんなんだよ。お前。一体何者?で、俺をどうするつもり?」
「僕は、ギルド【魔法研究所】の新人!ティル!とある人の命令であなたを捕まえに来た」
すると、グレイスは何か、思い当たる節があるのか、溜息をつきながら仰向けに寝転がる。
「そんで?」
ティルは首を傾げながら続ける。
「これ、あなたの手配書。だから捕まえに来た……んだけど……?」
この問答に何か違和感を感じ始める。
「で、それは誰から貰った?」
「……ハイドさんから、国中の依頼の中から選んだと……」
【必ず、1人でいる時に見ること……こと……こと……】
ハイドの言葉を思い出すと、目の前から深い溜息が聞こえる。
「はぁーーー。あの、自由人。まーためんどくさいの仕込みやがって……」
すると、グレイスは、胸のポケットから、とある物を取り出す。何となく、見た事のある物。そう、つい先日、受付嬢のアイラから受け取ったものと同じ見た目だ。ティルはこの状況を何となく察する。どうやらそれは正しく、グレイスから説明を受けた。
グレイスはギルドの情報を狙う奴がいるから炙り出して欲しいとハイドから依頼されていたようで、それでティルと戦ったとの事らしい。また、敵に場所がバレないようにと、愛用している剣ではなく、市販の剣を渡され、ティルと五分五分の戦いになるように仕組まれていたとの事。
「てか……いくら相性悪いとはいえ、新人に負けるとか……。俺自信なくすわ……」
「たまたまですよ……」
「止めてくれ。そういうフォローされると、さらに傷つく。それに、気にしなくてもいいよ。君が強いのは確かだよ」
そう言うと、グレイス立ち上がり手を出す。
「色々順番おかしくなっちゃうけど、俺はグレイス。主に情報収集担当。よろしくね」
「こちらこそ、ティルです。これからお世話になります。よろしくお願いします」
と、ティルも手を取り、自己紹介を返す。その後、2人はとある人物に対しての不満をぶつけ合い、ゴーストタウンを後にする。
一方その頃、激しくぶつかる氷と炎の戦いを見る2人の姿があった。
「何さ何さ!かまとと〜って!ティル君名前のセンススゴすぎでしょ!」
「それってあの子の事バカにしてるよね?」
「いや〜。そんな事ないよ?私は好きだな〜あの名前」
「あの子一体何者?」
「ん?気になる?気になる?」
「そりゃぁ、ね。あんなの見せられたら」
「あの子。魔法が使えないんだよ。で、魔石を使って戦うんだって〜」
「ほう、魔法が使えない、ねぇ。で?なんであんたともあろう人が、あんな大層な魔石を貰わなかったんだい?」
「ふふ〜ん。なんでだと思う♪」
「さあね、君のことだから……あの子のことが気に入ったとか?」
「ブー。いや、ぷっぷーかな?」
「なんだそれ?」
「半分正解」
「と言うと?」
「あの魔石、僕には扱えない。1回使おうとしてみたけど。あれ、まるで生きてるみたいでさぁ。魔石から拒否されちゃったみたいなんだよねぇ。それに、たとえ使えたとしても、常人じゃ耐えきれないよ。あんな魔力を体の中に入れるなんてさ」
「はぁ……。つくづく分からないな。魔石っていうのは……」
「え〜、なんでわっからないかなぁ〜。君は。そういうところが面白いんじゃん!魔石ってのはさ!!人生の半分損してるよ〜」
「で、次はいつ帰ってくるんだい?」
「お?なんだなんだ?僕と別れるのが寂しいのかい?」
「ま、そんなところさ」
「次はねぇ多分3ヶ月後くらいになるかな♪」
「君にしては、なかなか時間がかかるみたいだね。そんなに大きな山なのかい?」
「そうだねぇ。なかなか大変だろうけど。何とかなると思うよ?じゃ、時間ないし、そろそろ僕行くね。えと、今なんて名乗ってるんだっけ……、あ、アセットか!アセット!まったね〜」
「ん。また」
こうして、ティルの初めての任務は、無事終わりを迎えた。
第2話 「魔石の可能性」 〜完〜




