第2話 〜魔石の可能性〜 ①
ティルはハイドに指定された時間よりも、15分程早くギルドに続く道に来ていた。
「確か、こうやってたよな?」
昨日の帰りに、受付嬢のアイラから受け取ったカードを、読み取り機にかざしてみる。すると、カードが正常に読み取られ、扉がウィーンと開く。中が見えると、既にソフィアが来ていたようで、椅子に腰をかけていた。
「おいすー。おはよ〜」
「はい。おはようございます♪」
「アイラさんもおはようございます」
アイラは、カウンター越しから笑顔で返してくれた。すると、2人が揃ったのを見て、アイラはティルとソフィアに対し、手招きをする。
「では、2人とも揃いましたね。ハイドさんは……多分ギリギリにならないとこないと思うので、先にこっちの説明しちゃいますね♪」
するとアイラはが指パッチンすると、天井からモニターのようなものが現れる。
「まずは、これ。この国の地図です」
ティルは地図を見ると、いくつか印が付いてるのが見えた。
「この印は?」
「それは、そこにある魔法陣と繋がっている場所です。2人共、後ろの通路から来ましたけど、今後はこの魔法陣を使っても大丈夫です。ただ、セキュリティ上、この地図を持ち出すことは出来ませんので、今のうちに覚えとくか、他にしている方、今ならイヴさんが妥当ですかね。に聞いてみてください」
「はーい」
「はい」
その後も、アイラからギルドについての注意点などを聞いていると、後ろの方から扉が開かれる音がした。
「お、2人とも寝坊せずに来れたみたいだね」
「ティルさんもソフィアさんも15分前には来てましたよ。ハイドさんも見習ってもう少し早く来ることを心がけてはどうですか?」
「でも言ったよ?俺。10時って」
「流石に8秒前というのは……」
「いいのいいの。1秒も遅れてないわけだし、こん中で1番偉いの俺だし」
「はあ、全く……。もういいです。準備は出来てるので、扉の先にどうぞ」
「ほーい。ごくろーさーん」
ハイドは何も起こらなかったかのように奥へと進む。ティル達もハイドに続こうとすると、アイラから声がかかる。
「2人共、あんな風になっちゃっダメですからね」
「「ははは……」」
ティルとソフィアは、苦笑を浮かべながら、あいらの横を通り抜け、扉へと進む。中に入るとそこには、ひとつの机を囲うようにして並べられた椅子があり、少人数でのミーティングに適した部屋が拡がっていた。
「じゃ、適当に座ってー」
「はーい」
「はい」
2人が席に着くと、ハイドは2枚の紙を取り出し、ティルとソフィアの前に1枚ずつ置いた。
「それは、国全体に宛てられた依頼から、2人に合わせて拾ってきたものだ」
ティルは、自分の前に置かれた紙を見ようと手をかける。
「おっと?まだ見るなよ?それは一人でいる時に見ること。見せ合うのも禁止な?それと、依頼の遂行にあたって、条件を与える。特訓も兼ねてな」
「条件、ですか」
「特訓……」
「そう。まずはティル。お前からだ」
ティルは軽く頷く。
「その任務、先に言っとくとな?とある人物の捕獲任務になってる。標的はお前と同じでタイプで、常に待ち型のカウンタータイプだ」
「つまり?」
「そいつとの戦闘が起こった際、武器以外による攻撃を禁止する。もしも、条件を破ったら退団な」
「は!?」
あまりの理不尽な一言に、大きな声をあげる。
「そんなに驚くなよ。あくまでもここは魔国トップ3のギルドだぞ?こんなので根上げてたらこの先やってけないぞ?」
(う〜ん。その位なら……何とかなるかも?)
「ま、俺が何の為に言って、何を得るための条件なのか。それを考えながら動くこったな」
「はぃ」
「わかった!よし、じゃあGo!!」
「へ?今すぐ?」
「もちろん。期限は1週間。情報収集もあるし、早く行った方がいいぞ?」
「わ……分かりました」
と言うと、ティルは腰をあげ、手配書をポーチにしまう。
「あ、そうそう。今から72時間以内に戦闘を行うこと」
「了解です。じゃ、行ってきます」
「おう。気をつけてな。死ぬなよ」
「頑張って!」
ティルはソフィアに親指を立てた左手で返すと、部屋を後にする。
「よし、行ったな。じゃあ次はソフィアちゃん」
「はい」
ソフィアはやや緊張した顔で、 ハイドを見つめる。
「その以来、とある大型魔物の討伐依頼で、複数ギルドでの討伐になる。多分10~15人位になるかな?」
「それで、私の条件というのは……?」
「そうだな。君にはその討伐隊で、後方での支援魔法部隊として参加してもらう」
その言葉に、ソフィアは顔を曇らせる。
「試験の映像を見たけど、異常なまでの治癒力をもつ回復魔法を使ってたのに対し、支援魔法を使ってた様子がなかった。まあ、途中から映像途切れてたし、その後使ったかもしれないけど。多分ソフィアちゃん、支援魔法使えるよね?」
軽く頷くソフィアに向け、ハイドは続ける。
「何か、使いたくない理由が得るのかもしれないけど、今後のことを考えると、君が支援系の魔法を使えるようになるのは必須項目なんだよね」
「はい……」
「とりあえず、討伐は7日後だから、それまで演習に参加するなり、イヴの元で稽古つけてもらうなり、そこは任せるよ」
「分かりました。やってみます」
ソフィアは、渋々答える。
一方、条件付きの依頼を言い渡されたティルはと言うと。
「あれ?ティルさん、ソフィアさんは一緒じゃないんですか?」
「はい。ソフィアなら、別の依頼の説明中?です。多分」
「そうなんですね。てことはティルさん、今から外出るんですよね」
「このまま行こうかとは思ってました」
「ふふふ。なら、丁度いいです♪どうです?魔法陣使ってみません?多分外から見ただけじゃ分からないような場所にあるので、一旦行ってみるのもありだと思いませんか?」
少し興奮気味なのか、アイラは早口でティルを説得する。
「な、なるほど……。じゃあ、使ってみます」
「やった!(小声)一応、東西南北、どこの区でも転送可能ですけど、どこにします?」
(どうせなら、あまり行かない西区にでもしようかな?南区はいつでも行けるし、北区はあんま面白くなさそうだし。)
「西区でお願いします」
「わっかりましたぁ!じゃじゃ、ちょっとだけ待っててくださいね♪」
そう言うと、アイラはカウンターの下から出てきた、キーボードをカタカタと操作する。1分ほど待っていると、
「準備OKです!!こっちの魔法陣の上にお願いします」
と、声がかかり、ティルは魔法陣の上で待機する。
「じゃあ、いっきま〜す♪」
(はみ出ないように注意しなきゃね。)
なんて考えていると、カウントダウンが……
「よ〜、へ〜〜い、♪」
始まることはなく、ノリノリでアイラはボタンを押した。
(なんか、すごく楽しそうだな……。)
なんて考えていると、古民家のような場所に転送されていた。
「こほっ、こほっ。結構埃すごいな」
本当に今でも使われているのか怪しい程埃っぽいが、意外と整理整頓はされており、こっそり住み込むのもありっちゃありな位だ。
(じゃ、とりあえず観光しながら情報集めますか!)
と意気込み、ティルは古民家を後にした。