第1章 〜プロローグ〜
現在、夜の11時。真夜中の暗い暗い森、ここははじまりの森のどこか。1人の男が3.4人程連れ、誰かと通話をしていた。
「ええ。計画は順調です。目的も達成しました。今から新しい同士達を連れ、そちらに向かいます」
どうやら先の試験に運び屋と共に現れた、ジェイルという男のようだ。
「そうそう。何人かめぼしい方を見つけたので、もう何本か補充をお願いします。そうですね、3〜4本程あればありがたいです。後、陽動用に精獣の使用許可を頂きたいのですが」
「…………のか?」
「ええ、そうです。あまりこの国を舐めなてると、痛い目を見ますよ?さすがの私でも無理です」
「………………」
「もちろん」
「わ……。す…………ろ」
「ええ。感謝します。では、例の場所で」
ジェイルは懐に何かをしまうと、ポーチから何かの石を取り出す。
「出てきてください。運び屋さん。そこにいるのは分かっています」
すると、背後にある木の影からティルを負かせた男、運び屋が現れる。
「話は通しました。まあ、苦しい言い訳でしたがね。私の信用情報に関わりますので、あまり無茶な使い方はしないでくださいよ……」
「善処はする」
「はぁ、全く。まあ仕方がありませんね。そういう契約ですから」
と、手に持っている石をポンっと投げ運び屋がそれを受け取る。
「……確かに受け取った。それじゃ」
「ふん。しばらく共に行動したというのに、それだけですか……。それもお礼も無しとは……」
運び屋は右の頬にある傷を軽くかいた後、
「…………ありがとう」
と、顔に変化は無いものの、若干照れっぽく返す。
「ふふ、結構長い間一緒に居ましたが、初めてアナタの人間っぽい所を見た気がします」
「……じゃあ、本当にさよなら」
「運び屋さん」
ジェイルが名前を呼ぶと、運び屋は立ち止まる。
「何?まだ何か用?」
「いえ、あなたとの旅、案外楽しかった。と、言っておきたくてですね。ではお気をつけて、さようなら」
運び屋は背を向けながら手を振り、闇の中へと消えていく……。
「さて、私達もそろそろ行きましょうか……」
一方夜が開け昼頃、冒険者協会の一角にて、冒険者になりたての2人、ティルとソフィアが、昼食を取りながら、今後の予定を話していた。
「明日だっけ?ギルド行くの」
「そうです」
「確か…………朝の9時にここだっけ?」
ティルはマグニアの地図を広げ、指定された場所の指を指しソフィアに確認を取る。
「くれぐれも、遅刻しないように」
「へいへーい」
「でも、何やるんでしょう?やはり、書類とか何かの手続きとかでしょうか?」
「まあ、そうじゃないかな。ギルドの説明とか、その位だと思うよ」
どうやら2人共に、Sランクギルド【魔国研究所】への入団を決めたようで、明日の朝に指定された場所に来るよう連絡を受けていた。
「まあ、今のとこやる事ないし、何かクエストにでも行きますか!」
「はいっ♪」
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「まずは、長旅ご苦労様です」
「ま、団長直々の命令っすからね」
ここはどこかの研究所だろうか、白衣を身に纏う男と、やや背の高い男がモニター越しにティルのソフィアの様子を確認していた。
「で、誰なんです?この子達」
白衣を纏う男は、湯気がたつカップに入っているコーヒーをすすった後、答える。
「明日からこのギルドに入る方達です。私、自らスカウトしました」
「マジです?本気で言ってるんすか!?こいつら、見た目からしてルーキーでしょ?」
「まあまあ、そう言わずに」
「そうっすね。団長のスカウトですし……、文句はないっすよ」
と、もう一人の男もカップに入る液体を口に含む。
「そう言ってくれるとありがたいです。2人とも、アナタの下につかせるつもりなので」
「ぶッ、、、、、」
それを聞いた瞬間、男は口に含んでいた飲み物を勢いよく吐き出す。
「すんません」
「まあ、面倒くさがり屋のあなたのことです。そういう反応はすると思ってました。では、よろしくお願いしますね」
男は、嫌な顔をする。
「まあまあ、そんな顔せずに。せめて、この男の子だけでも面倒見てあげて下さい。私の見立てだと、あなた、多分気に入りますよ?」
「…………期待はしときますよ」
「はい、ではよろしくお願いします」
「他に何かご要望は?」
「全て、あなたにお任せします」
「ほ〜ん。ま、精々しごいてやりますか」
と、男は経つとストレッチをしながら扉の方へと向かっていく。
「そうそう、忘れてました。これ、先日行われた試験の映像です。何故か分かりませんが、途中からの映像はありません。ですが、だいたい彼がどういう子か理解出来ると思いますので、参考程度にでもどうぞ。 」
と、キューブ状の物体を机の上に置く。
「ありがとうございます。気が向いたら見ます」
「はい。ぜひ」
男は外へと出ると、ティル達の元へと向かってゆく。
(さて、あの子達はどうなって行くのやら……今後が楽しみですね……。)
こうして、若干怪しい影が蠢きつつも、ティルのソフィアの冒険の幕は開けられた。
第1章 魔都奔走編 「プロローグ」 〜完〜