第10.5話 〜生きる理由〜
休息を取りながらティルは、仰向けに寝転がり天井に手を向けていた。
(やっぱりおかしいよな、今回の試験。死ぬ覚悟どころか、これじゃ全滅必死だよ。)
ティルは難しい顔をしながら、今回の試験のことを考えていた。すると、ソフィアから声がかかる。
「あの……1つだけ、聞いてもいいですか?」
「ん?どうしたの?いいけど」
「いえ、その……ティルさん……死ぬの、怖くないんですか?」
ティルはふと考える。
「すみません。その、なんと言いますか。どんな相手が来ても、真っ直ぐ進むのが凄い、というか、流石?というか……」
「う〜ん。あんまり考えたことないからな〜。ごめん。よくわかんない……」
「そうですか」
少しの間沈黙が続く。流石に答え方に問題があったな。と、反省をする。ソフィアも、失敗したな……と思いつつ、別の質問に変える。
「ティルさんってなんで受験したんですか?」
「そうだなぁ。まあ、母親からの宿題ってとこかな……」
「宿題、ですか?」
ティルのよく分からない回答に、ソフィアは若干困惑する。
「そ。まあ、直接って訳じゃないけどね」
「それって、どんな宿題なんです?」
「【生きる理由を見つけろ】って」
「生きる理由?」
ソフィアは不思議そうな顔をする。ティルも、そんなソフィアの顔をみて少し笑う。
「変な家庭でしょ?僕の家」
「いえ、そんなことは……」
「まあ、僕のお母さん、本当の親じゃないんだけどね……」
そして、ティルはソフィアに自分の昔話をした。
昔、襲撃されたこと。
今の母親に救われたこと。
その母親と共に冒険をしたこと。
その他にも、笑い話や、苦労した話などを話した。
「なんか、壮大な人生を送ってきたんですね……」
ソフィアはティルの話を聞き、どんな反応をしていいのか分からず顔を若干引き攣らせていた。
「じゃあ、シース達も心配してるだろうし、そろそろ行こうか!」
「はい!」
こうして一旦休憩していたティル達は、入ってきた道の反対側を進んでいく。そして、恐らく最深部であろう、今まで見た扉よりも豪華な扉の前へとたどり着いた。
「ここ、最後の部屋かな?」
「恐らくそうでしょう……」
2人は目を合わせ、扉に手をかける。そして、開けようとした瞬間……。
「グァァァァッッ!!!!」
部屋の中から、聞いたことある声色の悲鳴が聞こえてきた。
(この声、シースッ!!!)
ティルは勢いよくドアを開け部屋の中に入ると、ハルナを庇うようにして、シースの腹に剣が刺されてるのが見えた。
「遅かったじゃん……ヒーロー……」
バタッ。
シースは目の前で倒れる。
ティルはこの国に来て、いや冒険者になって初めてできた仲間と呼べる存在。シースの瀕死に、腸が煮えくり返る程の怒りを覚える。
「オマエーーーーーーッ!!!!!」
ティルは見覚えのある謎のローブの男に、全速力で突っ込んでった。
第10.5話 「生きる理由」 〜完〜