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魔法の溢れる世界で君と唄う   作者: 海中 昇
第0章 冒険が始まるちょっと前の話
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第1話 〜少年の、そして物語の始まり〜

始めまして、海中です。

うみなか のぼるって言います。

これが初めての投稿なります。

ではどうぞ、お楽しみください!

  辺り一面に炎が燃え広がり、血の匂いと建物の焦げた匂いが鼻の奥へと流れ込む。つい数刻前まで目の前に広がっていた平穏は、突然現れた謎の集団と、異形の化け物の手により壊されていく。


 父も母も殺された。それも目の前で。圧倒的な恐怖の前では体を動かすことすら出来ず、ましてやまだ5歳の少年が立ち向かうことなどできただろうか。少年は、無惨に家族が食われるところを、何も出来ずにただただ眺めていた。


 何も出来ない自分に絶望しながら……

 圧倒的な力の差に絶望しながら……

 理不尽なこの世界に絶望しながら……


 まぶたの裏には焼き付いて離れない残酷な映像、鼓膜を震わすのは聞くに堪えない気持ちの悪い音。頭が真っ白になった1人の少年は、力の入らなくなった体の震えを抑え、ただただじっと瓦礫の中に身を隠す。すると……


「あら?この辺はもう全部終わったの?」


「えぇ。少し手間取りましたがね」


「それにしても……うん。随分と派手にやったみたいね。何も知らない子供だっていただろうに」


「そうかも知れませんね……。ですが……」


 聞こえて来るのは、聞き覚えのない声色の男達の会話。家族を惨殺した者と同じローブを身にまとい、燃え盛る街の中で平然と会話を繰り広げる。


(いやだ……みつかりたくない……)


 少年は、震える体を必死に動かし、瓦礫の奥へと身を動かす。できるだけ見つからぬようにと、ゆっくり……ゆっくりと……。しかしながらこの状況。そんなに上手くいく物など、何一つある訳が無いのだ。


(あぁ…………)


 己の眼球が捉えたのは、こちらをギョロりと見つめる2つの黒い丸。


 2人のうち片方の男が、鼻歌を鳴らしながら近づいてくる。


 スタッ……スタッ……スタッ……


 足が地面を鳴らす音。それは、鳴る度に大きく、重たくなっていく。


(はぁ……はぁ……はぁ……)


 足音が近くなればなる程、鼓動は早く大きく、呼吸が乱れていく……。


 心の中では『だいじょうぶ……だいじょうぶ……だいじょうぶ……』。そんな、淡く実に薄っぺらい希望で満ち溢れる。そんな事などありはしないと分かっているのに。体と頭では十分に理解しているのに。


 それでも、荒れる呼吸、吐き気を必死に飲み込みながら、口を抑える。


(もう……だめ……)


 今すぐにでも、体の中の液体が溢れだしそうだ。だが、そんなことなどお構い無しに、男は瓦礫の目の前で歩みを止める。


「あーあ、こんなんなっちゃって……。こぉんな立派な家、壊すのもったいないって思わないわけ?」


「まぁ、抵抗されたのですから。仕方の無いことでしょう」


「ふぅん……で?それで?いくつ集まったの?」


「そうですね……。4つ、といった所でしょうか」


「なるほど。ま、この家の大きさ的にも、妥当っちゃ妥当か」


「えぇ。まぁ、こんな話は置いといて。もう時間があまりありません。そろそろ皆さんの元へ急ぎますよ」


「あいよッ♪」


(みつかった……わけじゃない?)


 どうやらこの男、他より一回り大きい建物の残骸が気になっただけのようだ。男達は話を終えたのか、こちらとは反対の方向へと歩いていく。


(よかった……)


 思わず少年の口からは、限りなく小さい安堵の息が漏れる。


 だがしかし……


 ドッドッドッドッドッドッ


 何やらこちらへと向かってくる影が1つ。黒く大きく、人間では無い何かの影が――――


 ヴァウワッシャァアーーーッッ!!!!


 怪物は瓦礫の前で立ち止まると、空気が震えるほどの雄叫びをあげる。すると、実を隠していた瓦礫がはすべて消え失せ、少年の姿だけがあらわになる。


 シギャァーーーーーッ!!!


「なんだ、まだ残ってんじゃん」


「おかしいですね。先程調べた時には何も……」


「ま、そう言う事にしといてあげますよッと。あぁあ……ごめんね?こんな小さいのに……。今度はもっとちゃんとしたとこで生まれてくるんだよ?」


 男は謎の怪物のくちばしを撫でると、一言。


「……よし、殺れ」


 ギョァーーーーーッ!!


「あなた、非常に趣味が悪いようで……」


「はいは~い、そうですよ〜と」


(あぁ、にげないと……)


 そう考え、怪物に背を向け逃げ始めると、背中から腹にかけ、今まで感じたことのない感覚を覚える。


(なに……これ……)


 痛みの発信箇所を確認すると、赤い液体と共に突き出る1本の大きなトゲ。そのトゲを追ったその先に繋がるのは怪鳥の尻尾。


 あァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ…………


 少年はそのまま薙ぎ払われ、数メートル後ろへと吹っ飛ばされる。


 ゲフッゲフッ……ゴポッ…………


 体の中から溢れ出る液体が逆流し、口を通して地面へと溢れ流れる。


「あぁ……ぁ……ぁぁ……」


 地面へとひれ伏す少年を覗きながら、怪物はゆっくり、ゆっくりと近づく。卑しい笑みを浮かべながら、1歩ずつ、じわじわと。


(いや……だ…………ま……だ…………)


 少年は傷口が、体が熱くなるのを感じながら、生への執着心に縋り付く。


 体は動かせず、ただただ見つめるしか無いその先には、ゆっくりと近づいてくる黒いくちばし。時を重ねる毎に、目の前に映る映像の1コマ1コマが引き伸ばされていく。


(あぁ……もう……だめ……だ……)


 脳裏に浮び上がるひとつの未来に全てを諦め、目をゆっくりと瞑る。


 スタッ――――


 その時だった。()()に光が現れたのは――――



 ブワンーーーーー



 ドゴーーーーーン!!



 きっと目の前で何かが起こったのだろう。まぶたの裏側で謎の閃光が弾けたのち、不思議な音が周囲に鳴り響く。


「大丈夫かい?少年――――」


 一体、何が起こったというのか……。絶望的なこの状況の中で……。少年はきっと、あるかもしれない1つの希望にかけ、最後の力を振り絞り目を開ける。


「安心しなよ。君のことは必ず私が助ける」


 目の前にあったもの。それは、()()()()()()()()()()()。それと、こちらに優しく微笑む女性の姿であった。


「まぁ、その傷だ。無理もないさ、今は無理せずに……そら、おやすみなさい」


 女性はそう言うと、何か不思議な言葉を口にする。いや、言葉ではなく()()()()()()()()()を。すると、女性の周りに光が現れ、やがてその光は少年を優しく包み込む。


(あ……たた…………かい…………)


 意識が朦朧(もうろう)として、何も考えることが出来ない。ただ、全身に感じる痛みは、徐々に和らいでいき、少しずつ心が落ち着いていく……。


 きっと助かる……。まだ生きられるんだ……。先程まで黒く塗りつぶされ、何も見えなかった己の未来に、一筋の光が差し込んだような気がした。


「大丈夫さ」


 少年は、女性のその一言に安堵し、ゆっくりと眠りにつく……。


 この辺境の地で起こった事件の後、少年と女性は旅をすることとなるが、それはまた別の物語である――――。


 ・

 ・

 ・


 ゴロゴロ……ガタッ……ゴロゴロ……ガタンッ……


 時は流れ10年後。広大な草原を走る馬車の中で、少年が1人眠りに痩けていた。


「おう、兄ちゃん!そろそろ到着するぜ!」


 馬車に揺られて約3週間、運転手の声で目が覚める。


「ふわぁ……。おっはようございます……」


「おうッ!おはようさんッ!!どうだ?よく眠れたか?」


(ははは……あんな夢、見させられたら……そりゃ、まぁね?)


 すごく鮮明で嫌な夢だった。もう二度と思い出したくない、そんなあの日の夢。おかげで最ッッ高に気分が悪い。


「まぁ、ぼちぼちは……」


「ガハハ!すまんな、寝心地に関していやぁ、謝るっきゃあねぇ!!まあ、そんなことよりもよ!ほら、外見てみな!!」


 運転手の言葉を聞き、馬車の窓から外の景色を眺める。するとそこには、広大な草原の中にそびえ立つ、ひとつの大きな円形の街が見える。


「なんじゃありゃ、でっけ〜」


「あれが、魔法大国【マグニア】だ!!」


「すっげえ……」


 見た目からでも伝わる、今までの“知らないこと”に対し、思わず脱帽の声が漏れる。


「そうだろ!そうだろ!」


「なんでおっちゃんがそんなに嬉しそうにしてるんですか」


「ダハハハ!そりゃあれだ、俺はあの国が大好きだからだな!!」


 そんな他愛もない話をしていると、目的地である魔法大国マグニアへと到着する。天高く立ちはだかる門を潜ると、そこには西洋を思い立たせるような街並みが広がっていた。


 辺りには色々店や屋台が並び、溢れんばかりの活気と賑やかな人々。そんな景色に、歩くことを忘れ、口を開けたまま突っ立つ。


「兄ちゃん!見蕩れてるとこすまねえが、ほら。受け取りな!」


「オワッ!?」


 運転手おっちゃんはそう言うと、ぽんっと何かを投げる。


「これは……地図?」


 どうやらこの国の地図のようだ。今まで見てきたような地図とは違い、小さな店でも細かく書き記されている。さすがは大国と言われてるだけはある。


(でもなんか……異常に詳しく描かれすぎてる気も……)


「おうよ!この国は広いからよ!これがあると便利だろ!そういや……確か兄ちゃん、冒険者志望だよな?ならこの噴水を目指すといい!この周りに協会があるからよ!」


「なるほど……、ここに協会か……。うん!ありがとうございます!!……でもこれ、本当に貰っちゃっていんですか?」


「おう!ぶっちゃけた話、俺にゃこの地図は必要ねぇからよ。ま、俺からの餞別せんべつってやつさ!ただ、俺から貰ったってのは内緒な、色々と面倒くさいことになるからよ……。じゃ、俺は行くところがあるんで失礼するぜ!そんじゃな!!頑張れよ!!」


 運転手おっちゃんはそう言い残すと、手を振りながら人混みの中へと消えていく。こちらも今までの礼を込め、背中が見えなくなるまで手を振り返す。


「よし、じゃあ僕も行きますか!」


 そう意気込むと、己の新しい未来へとむけ、噴水の方向へと力いっぱいの1歩目を踏み出す。


 ・

 ・

 ・


 街の入口から大体30分は歩いただろうか。地図で確認した最後の坂を登っていると、奥の方に一際目立つ噴水のようなものが見えてくる。


「やぁっと着いたよ。それにしても広すぎじゃない?この国」


 ひとまず目標の噴水まではたどり着いた。辺りを見渡すと、他の建物とはあからさまに立派な建物が目に入る。


 建物の入口の上に掲げられている文字は【魔国冒険者協会本部】の9文字。そんな文字の羅列に、どこか心をワクワクさせながら、重厚感のある色の扉をガチャリと開ける。


 ガヤガヤガヤガヤ…………


(ここにいる人達みんな、冒険者なんだろうな)


 少年の目に映るのは、多種多様な人達。杖を抱える若者から、ごつい顔したムッキムキのおじさん。他にも、露出多めの動きやすい格好をした同い年くらいの女の子から、セクシーな獣人のお姉さんまで、実に様々な人であった。


 そんな人達をヒラリと躱しながら、ゆっくりとカウンターの方へと進む。


「あの、すみませ〜ん…… 」


「いらっしゃいませ♪本日は何の御用でしょうか?」


「えと……今年の冒険者試験の申し込みに来たのですが……」


「あら!左様ですか!分かりました♪では私、本日担当させていただく、【エリー】と申します。よろしくお願いしますね!ではでは……えぇと、あ、これだ!はい、こちらの紙に名前をご記入の上、その下の質問にも回答をお願いします」


 ティルは軽く返事を済ませると、紙を持って近くの席に座り記入を始める。質問は全部で50問ほどあり、主な内容は自分の得意な魔法、使用している武器など……。簡単に言えば、戦闘に関するものだった。


「お疲れ様でした!お次は身体検査に移りますので、あちらの右奥にあります、赤いドアの方へお願いします!」


(あ、やっぱしあの紙だけじゃないのね……)


 なんて思いながら、ドアの方へと向かっていく。何故か、こちらをジロジロ見てくる人がちらほらいたが、気にしたら負けだ。そう思い、胸を張って真っ直ぐ進む。


 測定の内容は、反射速度や攻撃力。どんな魔法が使えるか等々。こちらもやはり、戦闘に関するものばかりであった。


その後、全ての検査を終え、ふかふかのソファに腰を填めていると、元気の良い明るいアナウンスが鳴り響く。


「ティルさーん、受付へお越しくださーい!」


 ティルはアナウンスの指示通り、再びカウンターへと向かう。


「お疲れ様でした!登録はこれで完了となります。試験は今日から7日後になりますので、武器やアイテムなどの支度等はご自分でお願いします。また、開催場所や内容に関しましては、試験前日に本協会の掲示板にて発表されます。それまでの情報の開示はありませんのでご注意を」


「はい、分かりました」


「そしてこちら、仮にはなりますが、ティルさんの冒険者手帳です!本物と同様、ステータスや資格、実績などなど……。色々な情報が自動で記入される物となっております。また、試験に参加する際、必ず使うことになりますので、大事に持っててくださいね!くれぐれも無くさないように!!」


「はーい♪」


 ティルは礼を言い手帳を受け取ると、協会を後にする。


(これから……始まるんだな!!)


 そんな今後への期待を胸に秘め、この広い街の流れに身を任せ歩き始めるのであった。


 第1話 「少年の始まり。物語の始まり」 〜完〜


どうでしたか?楽しんでいただけたでしょうか?


私自身、物語を執筆するのが初めての作品なので、文章構成や言い回しが上手くいかないところもあると思います。


それでも、続きが読んでみたい!面白い!って思ってくれた方。是非、ブックマークやコメント等など、よろしくお願いします!!

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