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ネガティブ錬金術師の二重生活(改訂版)  作者: 八(八月八)
第一章 ネガティブ錬金術師、女商人になる

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レシピ1 ネガティブ錬金術師と変化薬

 今日も一日が始まる。

 オレは朝日の眩しさに目を覚ます。時計を見ると、いつもと大体同じ時間。この世界の時間設定もオレのいた世界と同じ24時間だった。

今は朝の7時15分。目覚まし時計は無い。作ろうと思えば作れるが、必要性を感じないので目が覚めた時に起きる事にしている。


『マスター、いつまで寝ているんですか?健康のためにも、生物は太陽と共に行動すべきですよ!』


起きたくなくてゴロゴロしてようが、どうせお節介でオレの契約精霊となったクレーヴェルがこうして起こしに来るのだ。


「起きてる。いくらオレでも起きる位は出来る」

 もそもそと毛布から這い出るも、クレーヴェルの小言は終わらない。

『また作業場で寝て。体に良くないから、夜はベッドで寝なさいと何度も…』

 あーうるさいうるさい。契約した途端、クレーヴェルの言葉遣いが丁寧語になったのに、小言が増えた気がする。タメ口よりも叱られてる感が大きいのはなぜだ。


「昨日はずっと作りたかった薬が良い感じだったから、最後までやってて遅くなったんだよ。

 途中で止めちゃうと、上手くいかなくなる気がして」

 これは本当だ。あの日から7日。ずっと考えていた薬がようやく完成したのだ。



 それはそうと、まずは腹ごしらえだ。

クレーヴェルが採って来てくれていた栗に似た形の木の実の皮を剥いて、あく抜きをして鍋で多めの水と一緒に茹でる。

そこに葉野菜を刻んで入れて、味付けに香辛料の本に載っていて作ったジースと呼ばれる調味料を入れる。この辺で採れる材料で作れる調味料がこれくらいだったのだ。味はちょっと甘くて薄い出汁って感じだ。

 物でごちゃごちゃとした机の上の物を端に除け、スープもどきで朝食をする。

美味くも不味くもない。栗もどきはほくほくとしているが、味はしない。

やはり、覚悟を決めねばならない。

 それからいつもなら少し家の中の片付けをするのだが、今日は特別だ。


「クレーヴェル、ちょっと来て」

『どうしました、マスター』


 食器を片づけてクレーヴェルを作業場に呼んだ。

「クレーヴェルは回復魔法使えるんだよね?」

 契約して間もなく、クレーヴェルがあまりにもオレを褒めてくれるので、もしやオレは異世界ではチートキャラなのかと勘違いして壁にパンチして、手の骨にヒビがはいった際、クレーヴェルが治してくれた。


『あぁ、私は光の精霊ですからね。回復系は得意としていますよ』

「それって状態異常的なのもいける?毒とか、麻痺とか」

『いけます……が、何をしようとしているんです?マスター』

 いや、本に書いてあったのに多少のアレンジを加えたので、もしかしたら失敗するかもだし、副作用とかも怖いから保険だ。

「これから新しく作った薬を試すから、もし失敗したら回復して」

『そ、そんな危険な薬試すのですか!?』

でも試さないと使えないし。

 クレーヴェルは精霊だから薬が作用しないかもしれないのもある。


「だからクレーヴェルにいてもらうんじゃないか。

もしオレが毒で吐いたり麻痺で痺れたり目が潰れたり耳から血を出したりしたら回復頼むな」

『そこまで悪い考えあるのに何で積極的なんですか!!?????』



 必死で止めようとするクレーヴェルの言葉を聞き流し、オレは用意していた薬を出した。

瓶に入れた、直径1.5cm程度の丸薬だ。色は紫。毒薬にしか見えないが、この色にしかならなかった。

一週間頑張ったのだ。

 もし失敗しても死ぬ事は無い。……と思う。クレーヴェルもいるし。


 思い切って飲み込む。

 味は無い。痛み……は無い。

 メキメキと変化すると思ったけど、違った。ブルッと震えがきたかと思ったら、すぅっと体を何かが駆け抜けた感じがして軽くなる。


『ま……マスター……?』

 クレーヴェルの震え声は初めて聞いた気がする。

 手を見るがあまり変化は無い。

 そうだ、鏡を用意するのを忘れていた。

 しかし掌と共に視界に入る膨らみ。

 そして長く黒い髪の毛。

 これは………




『マスター何で女になっているのですか!!!??????』




 そう、全ては肉の為だ。


 町での活動に大失敗したオレだが、豊かな食生活への憧れは捨てきれなかった。さすがに草と木の実だけでは、中学生男子の胃は満足しない。


 そしてオレは考えた。


 食料を得るには金が要る。金は鉱石や錬金術で作った物を売れば手に入る。と思う。

 それには町中に行かなくてはいけない。

 しかしあの日行って付きつけられたオレの評価は、”乞食のガキ”である。

 あと移民。ジロジロ見られるのも、子供扱いされるのも、保護されるのも、嫌悪の目で見られるのも、疑われるのも、物を取られるのも嫌だ。

 それらをされない為にはどうすれば良いか?


 オレの貧相な容姿を変えれば良い。


 家中にある錬金術の本を読み漁り見つけた、見た目を変える薬。

 幻術の応用で自分は変わらず周りからの見え方を変える方法もあったが、それだと不特定多数の相手を錯覚させるオレの目的には合わない。

 それにあの店主しかり、町には道具や魔法を見破る人もいるに違いない。幻術で周りを騙してるのを見破られたら、何を疑われるか分かった物ではない。


 そうした中でようやく見つけた『変化薬』。


 そのものズバリ、実際の体を違う物に変化させるものだが、自分の体積以上の体にはなれない。

引く事は出来ても、足す事は出来ないのだ。

そうなってくると変化する姿も絞られてくる。

動物では買い物出来ない。

子供では保護されるか相手にされない。て言うか今でさえ子供扱いされているのに、これ以上小さくなってどうする。

身長が低くても、少なくとも子供に見られない姿。


 そう、女性だ。


 背が低くても、別の発育が良ければ大人に見られる。

 あとは移民丸出しな髪色を、本に載っていた髪染めで一般的に多いらしい薄茶色に染めよう。


 クレーヴェルが持って来てくれた大きな鏡で確認する。

 今のところ黒の髪、そこそこの胸、身長は前より低い。おっぱいに体積回したからな。


 よし、ちゃんと女に見える!

 細かい所はあとでこっそり確認しよう。何を隠そう、オレは思春期真っ只中なのだ。

 しかし顔はほぼオレだなぁ。あと目の色は黒だが、これはどうしようもない。

カラーコンタクトレンズを作ろうかとも思ったが、初心者で目の中に入れる物は怖すぎるから止めておこう。

まぁ目色はじっと見ない限りそう気付かれないだろう。これで良しとする。


「という訳で、女になってみた!薬は成功だ」



『あああああああ後ろ向きが一周回ってあらぬ方向に爆走してるうううううううう』



 クレーヴェルは頭を抱えた。なぜだ。



タイトル回収

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