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ネガティブ錬金術師の二重生活(改訂版)  作者: 八(八月八)
第二章 ネガティブ錬金術師、図書館の精霊に会う

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レシピ15 ネガティブ錬金術師と鑑定ゴーグル1号 

『マスター、起きてください!

 作業場で寝ないでくださいと、何度言ったら分かってもらえるんですか!?』


 朝の陽ざしと共に、クレーヴェルも光る。眩しっ!

 さすがの光の精霊の眩しさに耐えきれず、作業場の床から起き上がる。あいたたた、体がギシギシする。

「クレーヴェル……眩しいから発光やめて……」

 クレーヴェルは光の精霊のせいか、感情が高ぶると光が強くなるみたいだ。

 あ、そうだ。こんな時こそ!

『ですからマスターの体の為にですね……何着けてるんですか?』

 

 じゃじゃ~ん!


「鑑定ゴーグル~!」


 ついに!完成したぜ鑑定ゴーグル!

 眩しさも軽減させる優れもの!ゴーグル部分の右横にあるボタンを押すと、鑑定対象選択モードになり、そのまま押し続けると対象を変えて行き、その手前のボタンで決定、情報が表示される。

左側のボタンはズーム機能だ。最大で50倍まで拡大可能だ。

更に右ボタン長押しで効果の変更、翻訳モードも可能だ。


 他にも色々付けたい機能はあるし、改良の余地もあるので暫定的にこれを【鑑定ゴーグル1号】とする。


 早速クレーヴェルを選択。

「出た!」



名前:クレーヴェル

種族:光の精霊

年齢:???


スキル:光の加護

    精霊魔法

固有スキル:稀有なる存在(レアケース)



「……あえ?」

 何これ、「?」ばっかじゃん!

 スキルの内容もよく分からないし。


「え~~~失敗か~~~~」

 オレがゴーグルを外して渋顔で一人ごちると、クレーヴェルが言った。


『私は精霊ですから、人間の言葉や知識で表わすのが難しいのでしょう。ほぼ精神体で寿命も存在しませんから、生命力とかいった概念も存在しません』

 うわ、そうか~。実験体第一号が、もっとも実験に向いていない存在だとか、オレってどれだけ運が無いのだ。

 しかしそうなるとますます、ちゃんと試したい。

 こうなってくるとウズウズが止まらない。


「よし! クレーヴェル、実験に出掛けるぞ!」

『えぇっ⁉ マスターが、外に出るのですか!?』


 失礼なクレーヴェルに今すぐ出ようとするのを止められ、顔を洗って着替えて、朝食と弁当作りを済ませてから、ついでに作った保冷効果のある水筒に水を入れてから家を出た。

 今日は友也のままなので、先日新しく古着屋で買ったローブを被る。

 アイハになる事も考えたが、近くの森に行くだけで人に会う可能性も低いので薬の無駄遣いは止めておく。実はあの薬に作る材料であるペネの実という材料が、元々この家にあった物以外に見つからないのだ。初回で10粒出来ていたから、週1で使うとして2か月は持つのだが、その間にどうにか探し出さないといけない。

 その事もあって、散策はしなければいけないし、薬の使用はなるべく控えなければいけないのだ。


 マジックバッグに弁当と水筒を入れて肩から下げる。

 翻訳の腕輪と詐称ペンダントも念の為に付けたし、よし、出発!

 


◇◇◇◇◇



 町を出て、シノラスの平原を馬で駆ける。

 今日は天気も良いし風も吹いていて、馬を走らすには絶好の日和である。

「ジェレミ! あんまり飛ばすなよ、郊外視察が目的なんだからな」

 後ろから同じ様な鎧を身に付け、馬で追いついてきた茶髪の男が声を掛けた。

「分かっている」

「それにホラ、お前が目立つとノーブルの奴が張り切ってめんどうだからさ」

 ジェレミの返事に、男は苦笑顔で小声で囁いた。この男は知り合った時からこうやって、場の空気を読み、嫌味なく立ち回るのが上手い。


「ジェレミー! 早駆けで俺と勝負しろ~~~~!!!」


 彼の指差す方向から、ドドドと地響きとともに怒声が響いた。

美しい黒毛の馬で駆けてきたのは、これまた同じく鎧を身に付けた若い男。その後ろから、同じ鎧のスレンダーな茶髪の女性も追ってくる。

「待ちなさいっノーブル! これは任務なのですよ!? 自分勝手に動かないで!!」

 女性から凛とした声が響く。

「先に駆けて行ったのはジェレミだろう!」

「すまなかった」

 非難されて心外だと言わんばかりにがなる男に、ジェレミは素直に謝罪した。

「全く……こんなんだから私たちは騎士団から浮くのですよ」

「いや~それは扱いにくい貴族だから一まとめにした上層部にも問題あるだろ~」

 女性の呆れたと言わんばかりのため息に、茶髪の男が笑った。彼らは王国騎士団に所属する騎士であった。尚且つ、正当な血筋の貴族でもあった。


 ジェレミ=ドミノフ=ガルシンは王家の血も入っているという正真正銘の四大公爵家の三男であり、騒がしかった紺色の髪の男は、宰相も輩出した有力侯爵家の息子だ。

 そして女性騎士団ではなく正規騎士団に入団してきたリズボンは、男爵家だが一大商業を立ち上げた家で、要はお金持ち貴族の令嬢なためこれまた扱いが難しい。

 そんな人物が同時期に王国騎士団に入団をしてきたもので、上層部は扱いに困った。

 そこで厄介な貴族同士を組ませ、イザコザを回避しようとしたのだ。ついでを言うと彼らはなかなかキツい任務にも就かせてもらえない。貴族様の大事な嫡子に何かあったら、騎士団の存続に困るからだ。

 ちなみにグラースはその人柄を買われ、彼らの世話を押し付……任された。


 グラースは貧乏子爵家の出で、兄弟も多いので一人で生計を立てられるようになろうと騎士団に入った。一応は貴族であるので、冒険者などになってフラフラするより体裁も良いと思ったからだ。

リズボンは昔から剣技を磨き、国を守る強い女になりたかったので、当然幼い頃から騎士団入団を目指していた。

 問題のジェレミも、国を愛し人々を守る為にと騎士団に入った。彼は聖人君子と呼ぶにふさわしき真面目さと高潔な魂を持っていたが、いかんせん由緒正しい貴族一家なので、若干世間知らずではあった。

そして紺髪の男、ノーブル・ハリスは……残念な男であった。

 家柄も顔も頭も良い。彼の不幸は、物心ついた時から聖人君子のハイスペック貴族:ジェレミが傍にいた事だ。

もう一度言うがノーブルは家柄も顔も頭も良い。運動神経も良いし剣技も馬術も優秀だ。…………普通の人と比べたら。


 ジェレミは彼よりも全てが勝っていた。

 しかも天然で悪気も無い。

 幼い頃から比べられ、挙句初恋の女の子がジェレミにお熱だった事から、ノーブルは全てにおいてジェレミに張り合う様になってきた。よせば良いのに、ジェレミの方も挑まれた勝負は真摯に受け止めてしまっていた。

 そんなノーブルが、ジェレミが王国騎士団に入ると聞いて、黙って見送るはずが無かった。つまりは……そういう事である。


 そんな訳で、入団直後から組まされた貴族4人は仕方なく剣技を磨きながらも、今日の様に街の周囲のパトロールに精を出すのであった。



「そろそろ休憩を取るか? もう昼飯時だろう」

 空を見ると太陽は真上に来ていた。

「そうね、魔物も猛獣も相変わらず出ないし……朝にスライムが出たくらいだったわね」

 そうと決まれば休憩に適した場所を探す。水場が近くて馬がつなげて辺りが見渡せる、森との境目に決まる。

「あ~お腹すいた!」

「携帯食あったよね」

 そこでふと、ジェレミが動きを止めた。

「……何かいる」

 全員が臨戦態勢をとり、五感を研ぎ澄ます。

ガサッガサ、と草を踏みしめる音がする。重さ、早さを察するに獣ではない事はすぐに分かった。この不規則で軽い足取りは……人間か?

「あっ! 待てジェレミ!」

 誰よりも早くジェレミが足を動かし、それにノーブルが追随する。出遅れた2人が追いかける前に、その声は聞こえた。


「うわあっ!!」


「この声……」

 顔を見合わせた2人の想像を察したかの様に、続いてノーブルの大音声が響いた。


「何でこんな所に子供がいるんだ!?」


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