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ダークエルフ

聖霊煙草を取り扱うのはシティでは専門の煙草屋しかなかった。街の中でも三軒。その内一軒が、大量の聖霊煙草の買付を行ったと証言した。

「ええ、茶色いジャケットを着た平地エルフの男が、何箱も箱買いしていきました。」煙草屋の店主は、その奇妙な客を詳しく覚えていた。

「人相書きの者を後で手配させます。以前にも来たことはありますか?」

「いいや。この辺りでは見たこともない男でしたよ。それに、」店主は気味が悪そうに話し始めた。

「どうも男の癖に化粧をしてたみたいなんです。茶色いクリームといいますか、エルフではあるんですが、白い地肌が隠れていて、手袋からも薄茶色に日焼けしたような肌が見えてました。」

「化粧…。」呟き、ある考えが浮かんだ。魔法が存在するのなら。

「あ、聖霊煙草ですが、一箱買っていきます。私も愛好家でね。」店主のビックリしたような顔を尻目に、アランの頭のなかでは、ある目星がついた。


店主による人相書きが、新聞協力もあり、センセーショナルな見出しと共に印刷されて出回ると、街中では「ゴブリン殺しの化粧男」に噂が集中した。

警察ではパトロールの回数を増やして対応する一方、コヅク達ゴブリンギャングの居場所は未だに不明のままだった。

風の噂ではギャング達は自然の地に避難する為に街を出たらしいとまで噂されていた。


一週間後、事態は突然動き出した。

警察署に、ゴブリンが化粧をしたジャケット男を拳銃で撃ったと言ってきたのだ。

連絡してきたのは、鳴りを潜めていたはずのゴブリンギャングの男で、自分のことをコヅクに代わるリーダーバロムだと名乗っていた。


「それで、その男は何と?」警察署長のヨガッタ警視がネス警部から報告を受けていた。

「市中の噂通り、ゴブリンギャング達は五人のギャングが殺害されたときから、郊外の森や沼に活動拠点を移していた様です。」

「街中からゴブリンギャングが消えた理由はそれだったか。」

「はい。どうやらギャング連中は今回の事件でマフィアと一戦構えるかで揉めていたらしく、静観派のコヅクと武闘派のバロムで分かれていたそうです。そして、バロム一派がマフィア赤い髭を攻撃する前に、ゴグ達が殺されたことで、マフィアの仕業ではないと気づいたのだそうです。」

「ほう、それは何故かね?」

「ゴグはゴブリンギャングの協力者だけでなく、マフィアとも繋がりをもつ、言うなれば相互連絡員(バランサー)の働きもしていたのだそうです。近々酒の扱いを巡って調停までしようとしていた。そんな彼をマフィアが消すはずがない。そこで、武闘派に転じたコヅクが調べていて、我々より先に犯人の手懸かりを見つけたようなのです。」

「手懸かりをどうやって手に入れたのかは分かりませんが、それはバロムによれば、昔、平地エルフの貴族の間で流行った日焼けした肌に見せかけるという化粧で使うクリームを見て判断したものだと言っていました。殺人犯は化粧で顔を隠したダークエルフのはすだ、と。そして、コヅクはタラをわざとマフィアに捕まえさせて、情報を流していたようなのです。」

「もしもいるならば、ダークエルフなら魔法が使えても不思議じゃないかもな。」

「まだあります。他の署に向けて化粧やダークエルフについての情報を共有モールスした所、州境の警察署が化粧をしているという男の情報を握っていました。名前はベン・シマイ。二件の殺人事件、他人の家の家畜の屠殺及び略奪の容疑で、指名手配を受けていました。」

「州の端からここまでやってきた無法者というわけだ。今度の出方として、署内の警官を全員駆り出すだけでなく、郊外の自然地帯にいる保安官にも応援を要請し、速やかにそのシマイとかいう男を逮捕する。ネス警部、この件での管内での陣頭指揮を引き続き頼む。」

「お任せ下さい。署長。そういえばアランの処遇ですが、」

「分かっている。」皆までいうなという顔をした。

「一連の事件でマフィアに情報を流したと言いたいのだろう。だが、長年蔓延ってきた犯罪組織と賄賂抜きで対等に付き合ってきた男を、今回の一件だけで他の部署に回すわけにはいかん。」

「署長。彼は最早ドワーフマフィアの手先の様な真似をしています。」

「私には彼は市民に被害が及ばないように尽力している様に見えるがね。これでこの話は終わりだ」

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