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無垢な死者

警察署につくなり、アランは署長であるアレル・ヨガッタ警視と上司であるエルモンド・ネス警部の、似通った仏頂面と対面することになった。

「また死体が!?」

「その通りだ。今度は『働く兄弟たちの家』で起きた。発見してまだ現場はまだそのままにしてある。」ヨガッタ警視は暗い顔で答えた

「被害者は?」

「ダグ・ゴグを含めた三名だ。」今度はネス警部が声をあげた。

「いずれも頭部を切断されていて服装や体つきでしか判別できていない。」



この街に、俺らとは関係ない殺人鬼の無法者がいやがんのさ。普段武装してるはずのゴブリンギャング五人を一人で殺る様な奴がな。



オーリンの言葉が反芻されながら、二人の仏頂面に自分も加わったことを、二人の様子から察した。

これは、戦争になる。

ゴブリンギャングにとって、『働く兄弟たち』の事務所は言わば自分達の半身だ。一抹の良心という名の。そこが襲撃されたのだ。彼らが黙っているはずがない。


「兎に角、犯行現場に向かいます。」


嗜好品にしては苦すぎる聖霊煙草を吸いたいと思った。組織犯罪ではない。これは殺人課でみる案件だと放っておければどれだけ良いか。


アランとネスが現場についた時は、既に遺体は安置所へ送られていた。

アランはこれから起きるであろう報復に次ぐ報復に、早まるなよと暗澹たる気持ちになりながら、鑑識の話を通り一辺聞いていた。

ネスは沈黙していた。

「これは検死官の話なのですが、」鑑識官のモスの声が少し戸惑いをみせた。

「頭部を切断した凶器は、同じ凶器と思われるもので、首を何度も切りつけてあって、刃物ではあるのですが鋭く磨かれた、その、それが斧ではなくナタ等の、棒状の刃物ではないかと。」

「どういう意味だ?」アランが尋ねる。

「その、あの、」モスがどもりながら話した。

「つまり、ドワーフ達の仕業ではないのではないか、と。」

「思い込みは間違いの元だな。気をつける。」

アランは、聖霊煙草に火をつけた。

「そう言えば、今回の件は、皆思い込んで行動している。生前のダグは赤い髭のせいと思い込み、オーリンは他所から来た無法者といい、そして君はドワーフではないというのか?」

「ナッシュ警部補。」モスは声を震わせた。

「今回の件は戦争になります。少なくとも、その火種には十分なってる。これ以上は連邦警察や州兵の出る所ではないでしょうか?」

「戦争を避けるために、思い込みのない真実事実だけを掘り起こすんだ。その為には、」

アランがモスの眼を睨み付けた。

「少なくとも今は、マスコミ(ブンヤ)に警察情報を流さないことだな。モス。」

真っ青になったモスの顔色など無視して、アランの頭のなかは冷静さを取り戻しつつあった。

「抗争を避ける上では、まず、ゴブリンギャングにコンタクトをとる必要があるな。だが、繋がりの強いダグは殺されてしまった。誰に尋ねるのがいいだろう?」


「アラン、それなら適任がいる。」アランはネス警部に相談した。ネスは普段から口数が少ないが、その捜査力は抜群だ。

「ダグには娘がいる。まだ十代だが、ゴブリンギャングのリーダーの女として、ギャングの一味に加わっているはずだ。」

「それなら急がねば!」最悪のシナリオが一気に襲いかかってきた。

「ダグの仇をとる気で赤い髭と全面抗争が起きたら、それこそ我々だけで対処できるか分からない!」

アランはネスと共に車に乗った。

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