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ゴブリン退治

「こちらアラン・ナッシュ警部補。現場に到着。これから現場検証に立ち会う。」

メスのカブトムシを思わせるずんぐりとしたパトカーの無線を切った。


今日のセイリンは霧だった。

霧は殺しもつれてくるらしい。


散弾でズタズタにされたゴブリンの死体が郊外の森の中で五人並ぶ事件現場で、アランは聞き込みをしていた巡査達の報告を聞きながら聖霊煙草に火をつけた。


ドワーフが鉱山の発破の為に火薬を発明し、森と長寿をすてた平地のエルフがそれを銃という武器に変えて広まっていった有史以来、ドワーフが持つ銃の代名詞と言えばショットガンだ。

殺人課の刑事が出張らなくとも街のドワーフマフィアとゴブリンギャングとの抗争は、この街の名物であり、頭痛の種だった。


「アラン」

巡査達が去った後、殺人課の刑事ダノリがゆっくりとアランに近づいた。

「今回もあんたの出番になりそうだ。鑑識のモスが首を振っていたよ。連日、ドワーフと『緑肌(グリーンスキン)』共の死体の山で検死所が満杯だ。」

「それを毎回イエロースキンの俺が捜査して尻を拭う、か。泣けるな。」

ゴブリンと、噂だがハイエルフとのハーフであるアラン・ナッシュは肩をすくめた。彼の顔はエルフのそれだが肌は黄色い。

純粋な平地エルフのダノリは聞き飽きたとばかりに鼻を鳴らしてそっぽを向き、手でさっさとモスの所へ行け、とジェスチャーした。


彼の半分の血であるゴブリンの地位は低い。

略奪型民族だったゴブリンは、平地エルフを中心とする『自称光の戦士達』が手に持つ銃による激しい虐殺の後に奴隷として扱われる様になり、

スメタナ大陸に渡ってきた後に一部の平地エルフの市民運動の気運に便乗する形で、自由市民獲得のための運動と秘密市民集会を行い、

その結果、認める州と認めない州とで一年内戦という争いが起きて、ゴブリン奴隷だけでなく多くの血が流れた後、自由市民として彼等の街での定住が始まっていった。


そうした経緯から彼らはよく結束して市民団体をつくったのだが、もう一つの手でギャングをもつくるようになっていた。

それは今でも州によってゴブリン同士の集会の禁止や、居住地区を限定するアパルトヘイトの対象になっている彼等の、いわば防衛本能とも言うべきものだった。


一方、貴金属を求める純粋な開拓者として、平地エルフより遅れてスメタナにやってきたドワーフ達は、鉱山の枯渇の後、禁酒法下にあるスメタナ合衆国で酒を売りさばくことで莫大な財産を築いた反面、荒事までしきる様になりマフィアと化して街を支配しようとしてきた。


一つは奴隷からの這い上がり、もう一つは脱法による成り上がり。


共通するのは暴力装置として、街を牛耳ろうとする野心だった。

ましてや、ゴブリンギャングが安い強い不味い酒を地下で売り出した為に暴力は加速化した。彼等の抗争を避ける事は出来ないだろう。


(いや、)

アランは聖霊煙草の煙を深く吸い込んだ。

(それでも誰かが止めなくては)

覚悟を決めて、雑な鑑識の終わった死体と対面する。

「アラン警部補」

鑑識官の一人、ハーフリングのモスがやってきた。

「今回もまた抗争の線が濃厚かと。持ち物はソルト紙幣が何枚かポケットの中に入っていただけで、誰も市民証は持っていませんでした。ご覧の通り顔が散弾で潰れているため、身元は分からず終いになりそうです。」

「それは妙だな」アランは吸い殻を地面に捨てた。現場は保存すべきだが、この時代ではよくある行為だ。

「市民証は自由市民であるゴブリンの誇りだ。常に携帯してるはずのそれがなくて金だけもっている。顔が潰れてるのはマフィアの仕業としても、市民証までわざわざ持っていくものか?」

半ば独り言になりながら、吸い殻を足で踏み消す。足元のコケが黒く焦げ付いた。

「単にギャング側が市民証不携帯なんじゃないんですか?彼らはゴブリンの中でも無法者の集まりですよ?前にあった橋の下の時でも現場では市民証は見つかりませんでしたし。」

モスの言葉に、アランは引っ掛かりを強く感じた。

「ギャングがギャングとしての面子だの誇りだのを保つ上で、『働く兄弟たち』みたいな政治的に効果のある市民団体を利用してきたのに、象徴である市民証を不携帯にしてるのはやはり変じゃないか?ドワーフマフィア『赤い髭』とドンパチやってる昨今だからこそ、自由市民をアピールして少しでも正当性を保とうとするものと思っていたのだが…。」

「さぁ。私に聞かれましても…。」モスは話は分かるが早く仕事を終わらせたがっていた。

「まぁ、いいさ。ネス警部におうかがいをたてた後で例のごとく市民団体に当たってみる。お疲れ様」

アランはモスに労いの言葉をかけると、ため息一つでモスはアランから離れていった。

(第一発見者によると銃声は数発。一人が撃ってる様に鳴り響いていて気づいたという。身の危険を感じ音が止んで、しばらくたってから見に来て通報した。賢明だな。だが、それゆえに撃ったやつはみていない。九分九厘ドワーフマフィアとは思うが…。)


アランは何故か胸騒ぎを覚えた。

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