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妹のためなら人生を賭してもいい  作者: ポーティフォン
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第七話 恩人

 生き残るため、必死に腕を上げては振り下ろす。6歳の子供の腕力では、頑張っても20回できればいい方だろう。しかし、それでは足りない。


 (まだ、まだだ。ここで倒しきれなければ、こいつは自分の次にミウを襲うだろう。そんなことは絶対にさせない。)  

 

 そう思い、腕だけではなく上半身全体を使ってさらに繰り返す。だが、腕がだんだん上がらなくなってきた。もう限界だと思い、諦めつつもゴブリンの様子を見る。


 (ゴブリンが動かない?さっきまでもがいて苦しんでいたのに、今はもう反応がない。)


 ゴブリンの後頭部から頸椎部にかけての肉が、自分が石で殴り続けたことでぐちゃぐちゃになっている。

 首からは大量の緑色の血を流し、手足をだらりとして生命の活動が停止しているみたいだ。


 「ーーーやった、倒した・・・ゴブリンを倒した。助かった・・・あっ、そうだ!」

 

 ゴブリンを倒した達成感と命拾いしたことに安堵していたが、命の恩人のスライムのことを思い出した。


 さっきまでゴブリンの顔に張り付いていたので、まだ顔に張り付いているかもしれない。

 ゴブリンの顔を横に向けると、顔が酸で溶かされたみたいになっている。1番溶かされて少し変形しているゴブリンの口から青紫色のドロドロした液体が流れてきた。


 液体が全て口の中から流れ出たのだろう。その液体が地面で少しずつ集まっていき楕円体となって、先ほどまでよりだいぶ小さくなったスライムが姿を現した。


 「あぁ、よかった!無事だったんだ。お前に救われたのに、なんのお礼もできないかと思ったよ。」


 ゴブリンの顔に張り付いたスライムを、必死に排除しようともがいたのだろう。スライムは、両手にちょんっとなるくらいにまで小さくなってしまった。


 スライムを両手で掬い上げ、命の恩人に感謝を伝える。


 「ありがとう!お前がいなかったら、後少しで僕は死んでいた・・・お前は僕の命の恩人だ。言葉は伝わらないかもしれないけど、願い事があるなら出来る限り叶えるよ!」


 僕の言葉にスライムは、プルプルと反応を示して、手のひらから飛び降りると、落ちていたハンカチを拾ってくる。

 そして、小さな触手でハンカチをちょんちょんと、指し示す。

  

 「?」


 何を言いたいのかわからない。

 スライムは、触手を厚みのある円盤に変化させて食べるような動きをする。


 「あっ、クッキーか!あはは、そんなに母さんのクッキーが気に入ってくれたのか。わかった!母さんに頼んで作ってもらうよ。」


 スライムは、飛び跳ねながらプルプルと体を震わせる。喜びを表しているみたいだ。まるで人間の子供みたいな喜び方をする。


 「そうだ!ずっとお前とかスライムって呼んでると命の恩人に失礼だと思うんだ。だから、名前を付けようかと思うんだけど、どうだろう?」


 名前を付けようと自分が提案するとスライムは、ピクンと反応させたと思ったら、さっき以上に飛び跳ねて喜ぶ。


 そのようにスライムの名前を決めようとしていると、ついさっきまでは雲ひとつない青空だったが、急に空が暗くなり雨雲が立ち込めてきた。

 

 (えっ?急に天気が怪しくなったぞ。わからないが、何かの前兆か?)


 急激な空の変化に、何か新手が出現したのかとすぐさま立ち上がり、あたりを警戒する。


 先ほどの戦いで、自分はボロボロで満身創痍だ。もし、もう一度戦闘となっても、次は助かるとは思えない。だが、命の恩人であるスライムだけは絶対に守らなければ。


 スライムを守るように、身を少し縮めながら手の上にいるスライムを胸に引き寄せる。


 何がきても、対処できるように警戒していると、いきなり、ブワッと強烈な突風に襲われて、反射的に目を瞑ってしまう。

 突風に煽られて転倒しないように、さらに身を縮めて身を守る体勢になる。


 少し風が弱まったと感じ、目を開けると目の前に足が見えた。


 (だ、誰だ?少なくも、またモンスターに襲われるという感じではないみたいだが。)


 その人物を確認するために、顔を上げるようとすると。


 「リン!」


 声が聞こえた。そして、いきなり抱きしめられ、体を拘束される。

 反射的に体がビクッと反応したが、その声に聞き覚えがあった。


 「か、かあさん?」


 少し拘束が弱まっので、顔を上げて自分を抱きしめている人物を確認する。


 ミウと同じ金髪で長さは肩にかかるくらい。

 まだ20代とは言え、二児の母とは思えないくらいの若々しい美少女。

 僕とミウの母、『アイシャ・アストライヤ』である。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます


面白い、続きがもっとみたいと思っていただけたら

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