パーティーを追放されまして・3
ギルドからの情報を基に、街の南の平原までやってきた。そこでは既に、例のパーティーとサイクロプスが戦いをはじめていた。
「俺が前に出て攻撃を引きつける!! エヴァとニコルは魔法で援護してくれ」
今、指示を出していたのがナイトさんだろう。金属製の防具を身につけ、手には剣と盾を持っている。
宣言通りに前に出たナイトさんに、サイクロプスが殴りかかる。二者の体格差からを鑑みるに、ナイトさんが圧倒的に不利にみえたが、サイクロプスの攻撃を見事に盾で受け止め、弾いてみせた。
その後ろでは、ニコルと呼ばれた男とエヴァが魔法で攻撃をはじめた。サイクロプスに致命的なダメージは入らないが、体勢を崩し、膝を地面につけたとき、やつの頭が下がる。
その瞬間を待っていたかのように、ミリアがサイクロプスに接近し、眼を剣で抉ると、たちまちそいつは地面に倒れた。
素人目でみても、とても鮮やかな勝利だった。
パーティメンバー各々に突出した凄みは無いが、それぞれの長所を適材適所で活かし、連携で補うことで、強敵にも勝利を収めることが出来たのだろう。
「今の戦闘をみてどうでしたか? 元プロ冒険者のミラさん」
「私なら1人で倒せていた」
はい、素晴らしいドヤ顔ありがとうございます。実際、この人なら倒せてしまえるのだろうから恐ろしい。
彼らは倒したサイクロプスから角を剥ぎ取っていた。おそらく、討伐した証拠としてギルドに持っていくのだろう。
一段落ついたようなので話を聞きに行こう。
「お疲れのところすみません、僕らなんでも屋をやっている者で、ちょっと、お伺いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「なんでも屋? 聞いたことがないなあ。まあいいさ。なにが聞きたいんだい。」
あら、がっかり。まあ、なんでも屋の知名度なんて、まだまだそんなものか。
それよりも、ナイトさんの第一印象が、ジャックくんから聞いていた話とは全く違うのだが、これはどういうことだろうか?
ジャックくんからの依頼だと悟られないように、いろいろ聞いていこうか。
「最近、あなた達のパーティから一人抜けたと聞いたのですが、どうして抜けたのですか」
「ああ……抜けたというよりは、俺たちが追い出したかたちだな。あいつは戦闘は得意じゃなかったから。これから、より強い敵と戦っていくには危険すぎると考えていたんだ」
ふむ、大体はジャックくんから聞いていた通りだ。受ける印象は全く違うが。
「ああ、でも、何もしていなかった訳じゃないんだ。あいつ自身で出来ることは率先してやっていたからな。真面目なやつなんだよ」
「それでも、ギルドへの手続きみたいな雑用だけしかやっていないのに、同じ報酬が払われるのは、少し不満を感じていたわ」
エヴァさんは、ジャックくんのことを煙たがっていたようだ。
「まあ、そういった事情もあってこのパーティからは抜けてもらったんだ」
抜けさせたのは本当だったけど、ナイトさんはジャックくんのことを思って、仕方なくという感じだったようだ。
「その人が抜けて何か困ったことはありましたか?」
「ジャックのやっていた雑用を、私たちでやらなきゃいけなくなったことくらいかしら。だから、私は止めたのよ。彼がいる間は、お茶汲み、部屋の掃除、料理から何でもやってくれて快適だったのに」
おい、ジャック。お前の話の中のミリアさんは、君に唯一手を差し伸べてくれた天使のような人物だったのに、蓋を開けたら、ただ自分のいいように使いたかったから引き止めてただけじゃねーか!!
「まあ、それも大した苦労はないし、あいつには悪いけど、新しく入ったニコルのおかげで、俺達はワンランク上のパーティーになれたからな」
ニコルくんについて、ジャックくんからは何も説明が無かったのはそういうことか。
「彼はバフの魔法が使えるの。私はデバフが使えるからバランスがいいの」
バフ、デバフ? 新しい入浴剤かなにか?
「バフというのは、かけられた味方の身体能力を強化する魔法で、デバフはその逆で敵にかけて弱体化させるものです」
流石だなルーク君。僕が疑問に思ったことをすぐに気づいて説明してくれる。
あのとき、サイクロプスの強力な攻撃をナイトさんが防ぐことができたのは、それらのおかげなのだろう。
それよりも、ジャックくんが抜けた穴は、実際には大したことがなく、代わりのニコルくんの加入により、パーティーの強さを盤石のものとしたことが発覚してしまった。
これをジャックくんに伝えるのはかわいそうだな。
ナイトさん達に感謝と別れの言葉を告げて、僕たちは街へと帰った。