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9.少女は休日に情報交換をする。

多少少ないです。ちょっと具合が悪いので今日はこの辺で……明日が終わればおやすみです。

お仕事がある方とか一緒に頑張りましょう、学生も冬休み近いですからそれまでファイトです。

微かにカーテンから入る陽光が目覚ましよりも早い覚醒を促す。

布団の中でもぞもぞと身動ぎ、猫のような声で伸びをする。愛用している眼鏡をかけます。それが私の一日の始まりです。


朝の5時半頃。昨日は少し遅かったので眠たいですが、それでも天気の良い日に日課のランニングをすると1日のスイッチは入るものです。

「ふっ……ふっ……」

「あら?智歳ちゃんおはよう」

「ん、あ、中村さんおはようございます!」


自分のペースで走っているとスポーツウェアの女性が挨拶してくれます。私はそのまま返すと、女性はそのまま走っていきました。

毎朝ランニングをすると挨拶をする人も増えてきます。特に先程の中村さんは時々休憩中にお話をしたりします。

本が好きな私ですが、運動だってします。むしろ健康な身体でいつまでも本を読むために運動をします。


「いただきます!」

ランニングを終え、軽くシャワーを浴びると朝御飯にします。

今日のご飯はベーコンエッグとクロワッサン、緑黄色野菜のジュースですね。平日なら今日の予定を軽く確認して登校時間一杯まで本を読みますが、今日はおやすみなので軽くネットニュースをみながらのご飯です。

「今日のベーコンは成功かな、良い具合にカリカリだし。」


ご飯を食べ終えると簡単に家事をやってしまいましょう。食器洗い機に濯いだ食器を突っ込み、洗濯機を回し、軽く掃除機をかけます。

それらが終わってようやく休日のフリータイムです。


「……見逃してた……」

新作のゲームが出て、そのシナリオが気になったとしても、一番の優先は本です。

基本的に本ならどのような媒体でも読みます、それが紙でも電子書籍でもあまり気にはしませんが、好きな本に限っては紙で買うことが多い気がします。

さてそんな私ですが大体月の頭に今月の新刊をチェックします。そこでお財布と相談して本を買うわけです、そして今回の見逃しはとても簡単で……

「電子書籍限定で新刊を出さないでよ阿久津保母先生!」

そう、電子書籍限定販売で阿久津保母先生の人気シリーズ“臓器のままで”の特別版が発売なのです。

私はすぐに購入ボタンを押してDLをスタート……よし!


「今日はやることないししっかり読もう!ふっふっふ……」

この“臓器シリーズ”は正式名を○○は嘘を付かない。というもので、毎回先頭部分に臓器の名前が入ることから、臓器シリーズといわれています。内容も主人公の刑事が幼馴染みの法医学者が司法解剖を通じて犯人を探すという王道ものではあるのだが、毎回その臓器が奇抜なのだ。何せ一冊目が左心房は嘘を付かないというタイトルだ。臓器単体ではなくその部位名を付けて、さらには本編の死因と関係がなかったりするので、なんともいえなかったりするのだが、主人公と法医学者の掛け合いが面白くてつい買ってしまうのだ。

ついついトリップがちになっていると扉をノックする音が聞こえる。時間をみると10時半、呼び鈴があるのにノックするのは理織ぐらいしかいないでしょうけども。念のため携帯端末で入り口のカメラを確認しますが……やはり理織ですね。


「開いてるよー」

「んーお邪魔しますぅ」

やはり理織でした。髪の毛は跳ね大きめのワイシャツを着崩して、下着が透けて見えてますね。それでも下は下着ではなくハーフパンツをはいてるようですが、流石にこれはまずいでしょう。


「何て格好してるのそれパジャマじゃないよね?」

「ん?寝起きだけどちゃんと着替えてきたよ~」

「……はぁとりあえず座ってて、野菜ジュースと烏龍茶どっちが良い?」

「んー烏龍茶の方が良いな、あとなにか手頃な食べ物があったら嬉しい。」

「クロワッサンが残ってるからそれをあげる。後でお金払ってよね?」

「わかったよ~」

「大丈夫かな……」


私は烏龍茶と自分用に野菜ジュースを注いだコップを持って向かい側に座ります。


「はい、烏龍茶」

「ありがとう~」

「何で身支度もしないで来たの?」

「だって智歳が明日話したいってメッセージ送って来たんじゃん」

「私は暇なときに連絡ちょうだいって送ったと思うんだけど……」

「朝起きて暇だったから来た、以上!はむっ」

「そういうところが妙に猪突的というか……あ、喋らなくて良いから!」

「もぐもぐ…………ごくん、ごちそうさまでした。」

「はいはい、120円になります。」

「今お財布無いから後でね?これ下のパン屋の?美味しいね」

「そ、下のパン屋の香ばしくて美味しいよね」


私はクロワッサンの乗っていた皿を下げると台所に立ち濯ぐ。


「あ、話ってゲームのことでしょ?どうだった?」

「んーグラフィックはまあ従来のVRかな、街から出てないから敵MOBはわからないけど、街の人のAIはしっかり作られてるね、受け答えが違和感ないもん、あとは……」


濯ぎ終わった皿と、先程洗った食器を交換します。軽く乾拭きして食器棚にしまいます。

少し棚が高いんですよね……


「よっと、えっと……そう、読めるのに読めない本って嫌だね。」

「食器割れるよ?そう、図書館ごめんね、第一の街だと隠しになってたんでしょ?βの時は教会の隣だったのに……」

「いいよ、見つけたし何より今は誰よりも情報を持ってると思うよ?」


実際あそこで教会に聞き込みにいったのは偶然ですし、おかげで安全なログアウト場所も確保しています。合鍵とかあったら駄目ですが……そして何より、マナについては第一の街しか開放されてない現在大きなアドバンテージでしょう。


「ほほう?それはご相伴に預かっても良いのかな?」

「別に理織にまで隠すようなものじゃないからいいけど……あ、烏龍茶のおかわりいる?」

「貰う~だって智歳ほぼ二日間ずっと籠ってたでしょ?」

「まぁそうだけどさ、ちなみに理織の【言語】ってなんレベル?」

「看板ぐらいしか見てないから……今4レベルだね、そっちは?相当読んだんでしょ」

「んと……レベル23だったはず、はいおかわり」

「ありがとう、23かー。一日でそこまでいくのは凄いね、βの時は派生まで見つけてなかったはずだよ。」

「そうなの?まぁ、派生かはわからないけど一つ進化先は見つけたけどね」

「おー流石、先生に言ったらいくらで買ってもらえるかな?」

「あ、先生今回も情報屋なんだ、まだ会ってないんだよね」


前のゲームでも情報屋をしていましたね。

とりあえず私は昨日見つけた情報を【魔視】と【白】のところを除いて教えます。

理織曰く絵本については今後のアップデートだろうと言いますが、マナに関しては必須情報とまで言いました。

確かにこの知識を持ってることでマニュアル操作が相当変わってきます。

一通り言った後で、あえて伏せていた話をします。


「まあここまでが昨日得た本の情報なんだけどね?」

「結構出たね……スタートダッシュで図書館を探すだけはあるね」

「ありがとう、でね?まだ検証どころか使い道もわからないのがあって……」

「まだあるんだ……それでなにかな?」

「【魔視】と【白】っていう【スキル】」

「まし?マシ?それとも“ましとしろ”でひとつ?」

「音だけだとそっか……2つの【スキル】で悪魔の魔に視力とかの視るって漢字で【魔視】、もう1つは色を表す【白】」

「……確実にユニークだろうけど、多分【魔視】は量産可能だと思う。だからまだ秘匿しておいた方がいいかもね。【白】についてはマナ関係なのはわかるけど……うーん、これに関しては先生に投げた方が良いね……」

「やっぱり?私一人にしても情報が少なすぎてちょっと悩んでてね……」


実際問題効果が全くわからないのが【白】です。まだどのようなものかゲーム内で確かめてないので、情報を売ったりするにしても少々気が引けます。

それに、まだ誰も知らないというのは少しばかり気分が躍るものです。


「まあ、そのあたりは智歳が決めればいいと思うよ。」

「うん、そうだね……あ、それでさ」

「ん?どうしたの」

「私まだフィールドにほぼ出てないんだよね、だから今日の夜にでも一緒に調査してくれない?」

「別にいいけど、街の方の探索は終わったの?」


理織の言うとおり、昨日は図書館で時間を使ってしまい、ほかの場所は何一つ回れていません。

しかし、気になる場所といえば、一箇所教会のそばの孤児院だけですので、このあといけば夜にはフィールドに行けるでしょう。


「孤児院ねえ……βの時にはなかったんだよね……」

「そうなの?」

「うん、そもそも孤児院があったらしい場所付近に図書館があったわけだからね。」

「ふーん……フィールドよりも先に孤児院に行くつもりだけど……もし時間がかかりそうだったら、フレンドチャットでも送るね?」

「了解!さて、私も情報交換は出来たし……あ、そうだ!今度フレンド紹介したいんだけどいい?」

「理織のフレンド?別にいいけど」

「わかったその辺はこっちで調節するね、それじゃあ私も帰ってゲームしようかな」

「私も……あぁ……」

思い……だしました……理織が来る前に私が何をやっていたかを……。


「どうしたの急に?」

「私読みたい本を見つけちゃったから、先にそっち読む……」

「あぁーそれじゃあ仕方ないね、それじゃあ昼間は本で夜に孤児院に行くの?」

「うん、そうする、ごめんね?」

「いいよ、智歳と一緒に遊べることには代わりないから、本を優先にするのは今に始まったことじゃないしね?」

「う……ありがとう!それじゃあ明日……クロワッサン代と一緒に学校で!」

「忘れてなかったか……了解!また学校でね、何かあったらフレンドチャットとかメッセージ送ってね」


私はぼふっとベッドに倒れると、手元に端末を手繰り寄せVR機器につなぎます。

VR技術を使うことで普段よりも早い時間の中で本を読むことができます。

電子書籍ゆえの特権ですかね。

ものによってはそのまま一部映像にもできるものもありますが、私にとっては字を読むことこそが全てです。

さて、準備は出来ました。

新しいゲームにも心躍られますが、やはり私の一番は本です。

さあ本の世界へとのめり込むとしましょうか。

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