37.スライムとポーションその3
西の草原に戻ってみると周りは“シルバーイーグル”や他にも鳥類系のモンスターと戦ってる様子が見えますね。
しかし、そうなるとさっきの1羽だけではなく岩の近くでも再び襲われる可能性があるということですね。
そうなると襲われた際に逃げやすいところで“グリーンスライム”を捕まえたいところですが……そもそも、どうしてあの岩の近くに“グリーンスライム”が出てきたのでしょうか?クララベルさんの長年の経験によるものというならばなんとなく納得してしまいそうになりますが、そういうわけではなく、何らかの条件があるものなのでしょうか?
「(茶の魔石でどうして捕まえられるのかとかもわかってないのに、スライムの分布まで調べるにはちょっと時間が足らないよね)」
今回の目的は【錬金】で作れるという特殊ポーションを教わることです。効果は見せてもらいましたので、あとは作るだけですがそのために“グリーンスライム”を捕まえるというのはわかりますが、そのために茶の魔石を調べたり、“グリーンスライム”の発生分布を調べるのは流石に遠回りが過ぎます。
それがRPGの醍醐味と言われればその通りですし、時間があればとことんまで調べたいですが、気分が乗らないこともあります。今日は【錬金】を行いたいのです。
「そういえば……最初に会った時にクラさんマナが見えるのかとか言ってたよね?」
そうです、どこでも大活躍【魔視】の出番です。
この【魔視】はマナが見えるというだけですが、問題はONとOFFを手動で切り替えないとずっと見えっぱなしだったり、見えてない状態だったりとつい忘れてしまうんですよね。
「もしかしたらマナの動きを見てたらわかったりしないかな?」
この世界はマナというものが常に視界に入ります。例えば魔法系統を使ったりしたら、その系統に寄ったマナが乱れたり集まったりします。以前使用しながら戦った時もモンスターの周りに微かですがマナが集まっていましたね。
その辺を目処にどうにか探せないでしょうか?
とりあえず1時間ちょっとモンスターから隠れたり逃げたりしながら探していてわかりました。
「グリーンスライムの癖に草原よりも“草”がないところのほうが出る。」
探索中に3度の“グリーンスライム”を発見しました。1匹目は最初の岩場。
二匹目は南の山岳に行く途中の少し荒っぽい木の付近。
三匹目は北の洞窟に向かう途中の草が低い場所。
そうメインの西の草原フィールドでは全く見つけられませんでした。
そして発見した理由はやはり【魔視】によるものが大きかったです。
“グリーンスライム”は独特な緑のマナを付けていました。どう独特なのか聞かれると困りますが、他のモンスターが身体の周りに微かにあるのに対して“グリーンスライム”は緑のマナを取り込んでいたので、半透明な身体からその緑のマナが見えるという状態だったのです。
「流石にマナが見えることが条件じゃないよね?」
クララベルさんの場所へ行ける条件が仮に【魔視】取得だった場合やはりこの街は、隠し要素がかなりあると思いました。おそらく私の知らないだけで他にも色々とあるのでしょう。もしくは【魔視】を持ってるがゆえに私にはこのクエストが発生した可能性などもありますが……
「その場合どれだけの数のクエストがあるやら」
私は一人呟きながら草が短い場所などを歩き回っています。
先に遭遇した三匹に関しては簡単に捕まえることができました。
実際にクララベルさんの行った行動をそのまましただけです。NPCが教えてくれた方法を真面目にやるのが一番早いのは当たり前でした。
そしてどうして茶の魔石で捕まえられたのか、これは魔石という性質がわからない以上は推測はできませんが、少なくともマナによる好みが関係しているようです。
緑のマナは茶のマナを好むそうですから、おそらくそれが魔石を選ぶ基準なのでしょう。
「あ、あのあたり出そう。」
草原の中央部にクレーターのようなくぼみがあり、そこに緑のマナが多く存在しています。
こういう場所に“グリーンスライム”を見かけます。
それならばと私は残っているキャベツニアを剥き丸め、なるべく端っこに置いて隠れます。
どうやら“グリーンスライム”はそこまで多く食べるわけではないようで数枚まとめて丸めてしまえば良いようです。むしろ多すぎると吸収するまでに時間がかかってしまい時間ロスになります。
少し待つとあの愛らしいゲル状が見えました。
もうすっかり“グリーンスライム”の虜ですね。
公式がグッズを出したら思わず買ってしまうぐらいにはあのデフォルメスライムが気に入りました。
「あ、食べた……可愛い。」
取り込む姿すら愛らしく見えます。時々ほかの場所の音にびっくりして震える姿なども愛嬌があります。ただ逃げ出す可能性があるのでヒヤッとしますが……。
さて、全て食べたようですね。
「よし……ゆっくり近づいて……ホイ」
私は右手に茶の魔石を持ち“グリーンスライム”に見せつつ近づきます。
一瞬警戒しますが、流石に4匹目失敗はしません。
じっとこちらを見てるタイミングで茶の魔石を投げます。
“グリーンスライム”はそれをキャッチするとすぐに取り込みます。
この取り込んだ後の跳ねる動作が可愛いんですよね。
“グリーンスライム”は私の足元をぐるぐる回るので、私は軽くしゃがんで左手で持っていた茶の魔石を当てます。
当たった茶の魔石は少し光ると“グリーンスライム”を中に入れてしまいます。
「この入れる部分がよくわからないんだよね……。とりあえずこれでクリア!クラさんのところへ戻ろう。」
「クラさーん戻りましたー」
「騒がしい娘だね……どれ見せてみな?」
「これです。」
私はアイテムポーチから『グリーンスライムの入った魔石』を4つ取り出して、クラさんに渡します。
「うん、ちゃんと入っているようだ。じゃあこれから【錬金】を用いての作業になるが準備はいいかい?」
「んと、なにか必要なものとかありますか?」
「いいや、ちょいと時間はかかるからねえ。」
現実の時間でもまだ余裕はありそうですね、ならばこのまま続けてしまいましょうか?
「いえ、大丈夫です。お願いします。」
「わかった。ついてきな。」
クラさんに着いて行くと先程の診療所とは別の作業場というべき部屋につきました。
大きめの机の上にはフラスコや、すり鉢、ビーカーなど理科室で見たことのあるものが置いてありますね。
作業場とか思っていましたがこれは完璧に実験室ではないでしょうか?
ある程度奥まで入るとクラさんがこちらに振り返ります。
「さてそれじゃあまず【錬金】と【調合】の違いはわかるかい?」
「前に聞いたように作れるものが違うんじゃないんですか?」
「それはそうだけど、考えてきな話さ。作れるものが違う、それはなぜか?という話さね。」
作れるものが違う理由ですか……ゲームシステムゆえという回答を求めてるわけではないでしょう。
であるならば、今まで読んだ作品の傾向で答えてみましょうか。
「【錬金】は魔術……この世界におけるマナを使用して薬やまじないを作り、その際に対価は対等である。【調合】はそれに対して自然のものマナも自然と言ってしまえばそうですが、マナを関せずに人の手による作業で作るもの。こちらは対価が対等じゃない場合もある。そういう認識です。」
「なるほど、間違ってない。ほとんどあってるよ。ただ、後半に応えた対価が対等なのと対等じゃないというところの理由を教えてくれるかい?」
「【錬金】はあくまでも術式のイメージですね、捧げたものに対してそれと同等を渡してくれるもので、【調合】は道具の使い方次第では1の力や効力を10や100にも変える。ただそこに人の技量なども含まれるって感じですか?」
これは今まで私が読んできたものや、遊んできたものによる考えです。実際に世界で起こったものを考えたら違うのかもしれませんが、そのあたりこの世界ではどうなのでしょうか?
「なるほどね。あんたがどんなところを旅してきたのか少しだけ興味が沸いたね。概ね今話してくれたところで合ってるよ。だからこそ私たちはこれからマナを使って薬を作るんだ。」
クラさんはニコっと笑って先程渡した魔石を天秤に乗せました。
どうやら、私が話した内容は間違いではなかったようですね、よかった……。
魔石を乗せた天秤の皿がゆっくりと上に上がっていきます。かわりに反対側の空のはずの皿が下に下がっていきますね。
限界までお互いの皿の位置が変わると魔石が液状化しそのまま消えてしまいました。
クラさんはそれを見届けると、上に上がっている皿に新たに“グリーンスライム”入りの魔石を置くと置かれた側がゆっくりと下に降りて、また徐々に上がっていきます。
これは一体……
「これは『魔女の秤』といってね魔石に含まれているマナを抽出してくれるんだよ。」
「マナを抽出?」
「茶と緑そしてそれらが濃密になったスライムをそのまま1つの概念として抽出してるのさ。詳しい原理は私も知らないけどね。」
一気にオカルトというかファンタジーになりました!
捕まえてどうするのかと思ったらそういうことですか!?
しかしそれだと最初の時のは……
「じゃあ最初の時に言ったポーションの材料のスライムボールとかは?」
「それも材料だよ、ただ中核を成すのはこれで抽出した“スライムの魔核”だ。スライムボールとかは餌を渡した時にくれたりするからねぇ、ストックはあるんだよ。」
なるほど、ドロップの他にモンスターに何かすることでもらえる場合もあると……
私が一個ももらえなかったということは、そこまで高い確率ではないということでしょうか?
クラさんは4つ目の魔石を乗せ、反対側の皿が下に下がったところで何かを呟きます。
《JSJOY》
ん?機械音というか発音がちゃんと聞き取れませんでしたね……これはもしや。
「クラさん今の言葉って?」
「古い昔の言葉だよ。年の功ってやつさね。さあこれで出来たよ。」
古い言葉……!これはやはり【古代語】だったのでは?ならば、あの絵本クラさんに読んでもらえる可能性も……?いや、しかしそういうのは自分で読みたいところです。
私が唸ってるとクラさんは不思議な色合いの石を手に持っていました。
おそらくあれが“スライムの魔核”というやつなのでしょう。
「これをこっちの粉砕機で砕く。」
「砕く。」
「そしてそれを粉末にして水をかける。」
「水をかける。」
「それが溶液になるというわけさ。」
「なんというか時間がかかるという割にはそこまでじゃないというか……」
「粉砕して粉末にするまでに最低でも2時間かかるさね。さらに、溶液に足していくことで再生ポーションを作るんだよ。その際のほかの材料の準備とか色々とあるというわけさね。」
「なるほど……」
砕くのに2時間ということは相当硬いのでしょうか。
そもそも、この工程は多分普通のプレイヤーじゃ無理……
「あ、あの!」
「なにさね?」
「これ、私ができる工程はあるんですか?」
「基本的に溶液に関しては私が取り扱ってるからねえ。あんたが自由に出来るとしたら溶液に足していくところだね。」
「ですよね……?でもこれから2時間かかるなら一旦出て行ってもいいですか?」
「なんだい、何かあるのかい?」
「え、いや……そうです!ここに本ってありますか?」
「あるけれど、どうするんさね?」
「読みたいんですけど良いですか?どうせ待ってるだけですし」
「……なるほど、そっちの虫だったわけか」
「虫?」
「いいや、ジジイが気に入ったわけがわかっただけさね。ちょと待っとれ」
クラさんはそういって部屋から出ていきました。
本は別の場所にあるのでしょう。
しかし2時間以上もクラさんとひたすらに一緒で待ってるというのはきついです。
多分途中で黙ってしまって気まずくなってしまいますね。
あと、時々口から出るジジイはきっとゼズペットさんですよね。一体どんな関係なのでしょうかそこも気になります。
しかし、【錬金】が練習できる家の本です。どんなのがあるのでしょうか?
少しすると5,6冊ぐらい積み重ねてクラさんが戻ってきました。
「ほら、これさね。少し埃っぽいだろうけど読めなくはないだろう。読めないところは素直に諦めな。」
「そこは教えてくれないんですね。」
「そこまでする義理はないよ。」
「わかりました!ありがとうございます。」
「ふんっ。溶液が出来たら作ってもらうからね」
「わかりました!」
私は返事半ばで本に手を伸ばします。なになに“魔導錬金”“錬金の心得”“課金の危険度”“錬金作法”“魔女の失敗談”
くっ……どれも面白そうですね。なんですか課金の危険度って……最初はこれですね。
その様子を見てたクラさんは呆れた顔をしながら粉砕機の方に戻って行きました。
さて読書の時間です!
この主人公最初の街から動かない……
あとやっと読書ができました!久々です。




