30.少女と黒狼~順調~
ちょっと少ないです。
咆哮。
黒狼の口から放たれる音は空気を振動し、離れていても皮膚がビリビリとします。
両手で思わず耳を塞ぐと、近くで咆哮を聞いていた月平さんが吹き飛ばされていきます。
「ぐはっ」
「月平!全体後ろに下がれ!」
「チェルカ君はぁ今すぐに回復を!」
「対象月平。“ホワイトエンチャント”」
「泣き顔!一旦ヘイト貰ってっ」
前衛として動いていた月平さんが吹き飛ばされたことで、戦線が危うくなります。
私はすぐに回復を飛ばしますが、【アクション】の効果的にすぐに回復するようなものではないので、戻ってくるのは少しあとでしょうか。
このままではPTが壊滅してしまうかもしれません。
「先生、サクラさんに使おうと思うけどどう思う?」
「一度試してみるのも面白いと思うんだけどねぇ。リーちゃんが見えないのが不気味でねぇ。」
「背中で色々としているとか?」
「刃が通らないのにぃ?先の会議で眼を狙うという話があったのにぃ?一直線に向かってから一度も顔の方に出てきてないんだよねぇ。」
「何かあったとか?」
「一撃もらってやられたとかなら困るんだけどねぇ。」
「二人共。やるならさっさとやらないと!泣き顔じゃそんなにもたないわ」
私たちは元から離れていたので黒狼から飛んでくる攻撃は変わらず岩のみですが、タンクの月平さんの代わりに、黒狼のヘイトを集めて立ち回っているのは泣き顔さんです。
かなり頑張って回避などを行っています。
「よーしぃ!リーちゃんならどうにかなるかなぁ?まぁ、フレンドリーファイアは避けたいけど、この際試す分にはしょうがないよねぇ。」
「それで、なにをすればいいの?」
「まずは、チェルカ君が煉獄に対して【智により才を通す】を使って5分間だけどレベルを上げてもらおうかなぁ。そのあとはさっき言った“ファイアーチェイン”だけどぉ、緑と青に対して命令をして行ってねぇ。」
「その二つに対して内容はなんでもいいのかしら?」
「特徴は伝達と拡散だよぉ?相性がいいのはわかるだろうし全身を駆け回る感じでお願いするかなぁ。そのあとはとにかく火力。ヘイトが集まろうが一発大きいの当てて様子を見たほうがよさそうだからねぇ。」
「わかったわ。それじゃあチェルカちゃんお願いできる?」
「わかりました。」
私は杖をサクラさんに向け【智により才を通す】を発動させます。
『対象を選択しました。発動させますか?』
杖から放たれる白いマナがサクラさんの周りを回っています。
私からすると大量の白いマナで包まれるサクラさんなのですが、ほかの人だとどうなのでしょうか?
「中々に綺麗だねぇ」
「光ってるわね。」
「光ってるんですか?」
「ええ。淡く光るエフェクトに包まれてる感じね。これで終わったのかしら?」
「多分。確認してもらってもいいですか?」
「ええ。……すごいわねレベル33ばかり。ちゃんと上がってるわ。」
「それじゃ煉獄!さっき話したとおりどんどんやっちゃってぇ?」
「わかってるわよ!」
前で戦っていた泣き顔さんですが、いつの間にか黒狼に捕まり、前足でつぶされそうになっていました。
慌ててサクラさんが黒狼に対して杖を向けます。
「ぐぅ……またかよ……」
「今離してもらうわよ!“弾け弾け連鎖のごとく燃えろ燃えろ業火の如しファイアーチェイン”!!」
詠唱のようにどこか韻をふみながら告げるサクラさん。
虚空に現れた小さな火球。それは小さくとも無数に繋がりまるで鎖のようになっています。
火球は黒狼の足に絡みつき爆発をしながら全身へと駆け巡っていきます。
一発一発はそこまで威力があるわけではないようで、その黒い毛並みは燃えてすらいませんが、火球の連鎖にノックバックのようなものがついているようで、爆発するたびに、黒狼が跳ねます。
その反動により足の束縛から離れた泣き顔さんは急いでこちらへと走ってきます。
「あぶねぇ……はぁ……疲れた。」
「お疲れ様です。HP大丈夫ですか?」
「ああ、平気だ。それよりも月平はいまどうなってるんだ?」
「重装備なので、飛ばされた位置によりますが、対象に選べたので多分死んだりはしてないと思います。」
「なるほどな。おいサクラ!」
「なによ!」
「あのノックバックでダメージは入ってないけど怯んでるんだから、どんどん攻撃しちまえよ!」
「わかってるわよ!でも終わったら盾よろしくね。」
にっこりと泣き顔さんに笑いかけるサクラさんは、真剣な表情になり杖を構え深呼吸をして一拍。
「“赤く燃えるは炎のごとく青く散らばるは水のごとく混ざれ混ざれ溢れる白は何を思う?”」
杖から放たれたそれは中心が業火のように燃え盛っているのに、それをなぜか氷が包み込んでいます。【アクション】のような単語は聞こえませんでしたから、オリジナルでしょうか。その凍った炎はまっすぐ黒狼にめがけて飛び───爆発しました。
凄まじい水蒸気を上げ強力な爆発を出した凍った炎ですが、その中心の黒狼は直撃ではなく右足だけに掠ったようです。
しかし、掠ったという割には爪は割れ毛は燃えその下の皮膚は爛れています。
「くぅ……外した。ごめん。」
「でもこれで右足は使えなくなったねぇ。それに予想通りなのかはわからないけど、炎も効いてるみたいだね。」
「火力が高すぎてわからなかったけどね。サクラさん?他にもまだ出せますか?」
「大丈夫!氷系の30【アクション】もあるからどんどんいくよ!」
「今なら毒とかも効きそうだな。おっしゃ撃て!」
私も“ファイアーボール”などを放ちます。
しかし、右足にダメージを負っている黒狼ですが、その動きは俊敏で上半身をずらしたりして、よけられてしまいます。
それでもサクラさんの強烈な攻撃や泣き顔さんの弓が眼に当たったりして、黒狼は大きく仰け反り怯みます。
そこに月平さんが戻ってきました。
「すまないのである。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ゆえ、助かったのである。」
「いい具合に押せ押せムードだ、月平はすぐに盾やってくれ!」
「わかっているのである!“ウォールディフェンス”」
月平さんが茶色のエフェクトを纏わせながら黒狼の近くで盾を構えます。
黒狼はサクラさんに対して岩を放ちますが、近寄ろうとすると、月平さんの盾で遮られています。
「おかしいねぇ。前に行ってきた裏取りをしてこないねぇ。」
「裏取り?」
「後ろに急に回ってきたんだけどねぇ。あれはなにかの特殊行動だったのかねぇ。」
「今回使ってこないということはそうなのかもね。あとリードが何をしているのかが全く見えない。」
「それも疑問だよねぇ。一体何をしているやら。」
「ごめんチェルカちゃん!五分経っちゃった!」
五分が経過したことで私は完璧にお荷物ですね。
そうなると、離れたところで考察をするぐらいしか、できることがありませんね。
「わかりました!ごめんなさい皆さん!私もう役立たずです。離れてますね」
「このペースならもしかしたらあっさり倒せるかもしれねえしゆっくり見てろよ!」
「そういうフラグを言うんじゃないの!ほら、前見て!」
「っと!」
皆さんが立ち回ってる中少し離れて、観察をするとしましょうか。
先生は戦線に出てはいますが、次へ活かすために色々と見てそうですね。
サクラさんはレベルが戻ってしまっていますが、それでも氷の槍などを出して火力貢献してますね。
泣き顔さんも眼を狙ってうまい具合に立ち回っています。
そして月平さんが一番すごいですね。サクラさんに爪などのなぎ払いが来そうになると、ヘイト【スキル】で狙いを変えたり間に合わなければ盾で無理やりガードしてます。
先程から見ていれば黒狼は前側上半身とも言える部分は見えますが、下半身後ろの足は見ることができません。
大きい上に木の陰などのせいといえばそうなのですが、狼といえばその機動力で走り回るイメージです。ですがこの黒狼は基本的に前足によるなぎ払いがメインで、あまり足を使って何かをするということがありません。
もしや、リードが後ろ足を攻撃していたりするのでしょうか?
今のこの場所なら移動できなくはないですね。
それならば、移動してリードに今の現状を伝えたりしましょうか。
文字数が少ないのは戦闘が苦手だというのもありますが、切りどきが少し迷子になってるからですね。
毎回毎回誤字脱字報告ありがとうございます。
本当不甲斐ない限りです……
何度かご指摘をいただきましたが“しろのじょうおうとくろのおう”に関してですが、“じょうおう”は誤字ではございません。
ご指摘頂いた方ありがとうございます。しかしこれに関しましては仕様です。
今後共よろしくおねがいします。




