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26.少女は鍛冶を行う

薄暗くじめっとした空気、突き抜けているはずなのに聞こえてくる反響音。

ツルハシで叩いては甲高い音を出しながら弾かれます。


「効率よく採取できないかなぁ」



*** *** ***

私はログインしたあとすぐに鍛冶屋へと向かいました。

【鍛冶】のレベルを上げるためですね。

気兼ねなくゴンザレスさんのお店に行くと強面が出迎えてくれました。


「杖持ちの嬢ちゃんか。何か用か?」

「鉄鉱石ってありますか?」

「鉄鉱石?北の洞窟で掘ってくればいいだろ。」

「その……売ってたりとかは?」

「買取はしてるが、売りはしてねぇな。旅人同士の販売所も王都にはあるが、この街にはねえしな。」

「旅人同士の?それって露店とか冒険者ギルドとは違うんですか?」

「違うな。露店は買取はそこの主人次第だから何とも言えんが、基本は販売だけだろ。冒険者ギルドっていうのは正規の値段だな。旅人同士の販売所っていうのは価格設定を自分で決めて販売してるところだよ。」


所謂市場のようなところでしょうか?ゲームによっては掲示板だったり端末から買い物ができるという。なるほど、いらない素材でも言い値で売ったりできるのはそういうところですね。

大体どこの街でも出来ると思ったのですが、そういうのがあるのは、王都だけのようですね。


「それじゃあ、北の洞窟で鉄鉱石を掘ってくるしかないんですね。」

「そうなるな。まあ冒険者ギルドに対して依頼を出すのもありだとは思うが、取りに行ったほうが、原価としては安い。」

「ですよね……ありがとうございます。掘りに行く場合はやはりツルハシですかね?」

「そうだな。西区の道具屋で売ってるはずだぞ。」

「ありがとうございます。行ってみますね!」

「おう。集まったらまた来い。」



私はゴンザレスさんと別れると西の区画を目指します。

西の区画にある道具屋ですが、以前はその付近の露店だけで中に入っていませんでした。

今回の目当ては鉄鉱石を掘るのに必要なツルハシです。

やはり、こういうゲームでの採掘はツルハシですよね。そのうちドリルとか使えるようになったら楽しそうですよね。何よりいちいちカンカンと叩かなくてもいいですし。


「すみませんー」

「は~い?いらっしゃい?」

「……」


外見は街並みにあった一軒家。扉を開けるとそこには大柄な男性がいました。

ただしその外見に思わず私は見つめてしまいます。


筋肉質なのか、太い腕をそのままに、髪の毛を上でヘアゴムでまとめ、服装はピンク色のタンクトップ。下はズボンですがフリルがいっぱい付いていますね。おネエさんなのか、普通におにいさんなのか迷うタイプですね。でも挨拶の時のイントネーションは……。

気にしたら負けですね。とりあえずツルハシだけ買ってさっさと堀りに行きましょう。


「あの、ツルハシって売ってますか?」

「ツルハシ?あるわよ。一本でいいのかしら?」

「……ええ、大丈夫です。」

「これから北の洞窟にでもいくのん?」

「……はい、そうですよ。」

「それなら、一緒にランプか灯りで照らせるものがあるといいわよ、あそこ暗いから」

「あ、そうなんですか……まぁ、そこはなんとかなると思います。」

「あら残念。一緒に買ってもらおうと思ったのだけど。それじゃあはい、ツルハシね。」

「……はい、ありがとうございます。それでは」

「ええ、また来てよねん。」


初めてNPCに対して会話が厳しいなと思いました。なんでしょうね、この見た目と声と言動の差というのは。偏見などはありませんが、これは慣れるまでは大変そうですね。

でも、お目当てのツルハシは買えました。予備でもう一本あってもいいのかもしれませんが、まあ耐久力が無くなったら戻れば良いですね。

とりあえず、ツルハシは買いましたので、そのまま北の洞窟へ向かいます。



ツルハシを振り下ろしながら大体30分ちょっとした頃ですかね。


「疲れた……振るだけの作業は飽きる……」


そう、飽きました。単純作業は別に嫌いではありませんが……


「流石に風景も変わらないし、ずっと壁を見てカンカン振ってるだけ。しかも素材獲得に限界があるわけじゃないみたいで、ずっと同じところでも鉄鉱石採れるし……飽きた。」


普通ゲームなら素材が取れるポイントというのは決まっていたり、量が決まっていたりするのですが、このゲーム壁に対して5回ぐらい叩いたら素材がゲットできます。

それをずっと同じところでやっていても変わらず採れるので、止め時もわかりませんし、すごく困ります。


「それに失敗したな……まさかインスタンス系なんて……誰も通らないし」


インスタンスダンジョンとは、一時的に生成されるダンジョンで入ったパーティメンバー以外は同じ入口なのに、中では遭遇しないというものです。

どうやら、この洞窟はその系統なようで、誰も来ません。

私は奥に入らずにとりあえずという気持ちで、入口付近で採掘を始めてしまったので、モンスターも来ません。


「入り口付近でもモンスターは湧いてもいいと思うんだけどな……」


しかも、ずっと叩いているのにログが全部鉄鉱石です。

確かに入口で石ではなく、鉄鉱石なのは嬉しいですよ、嬉しいのですけれども……


「低確率でレア鉱石とか出ないかな、やっぱり入口付近だとダメかな……いや、練習用で鉄鉱石でいいんだけど、うーん見てみたい……あ。」


そうです。ずっと単調で忘れていましたけど【魔視】を使っていませんでしたね。

もうずっと使ってるほうがいいんでしょうけどね。

でも使ってみてもあまり変化はないですね。パッシブスキルではないんですけど、ONとOFFだけでほぼパッシブスキルですね。


「どうせインスタンスダンジョンだったらもうガンガン【土魔】とか使ってみてもいいかも。」


昼間に確認したように、魔の力を使うことで素材に変化が出るのはわかっています。鉱石系がどう変わるのかわかりませんが、使ってみるのはありですね。


「えっと……爆発系は【火魔】に属するのかな?【土魔】だと“ストーン”と“クラッシュ”……クラッシュで砕く?」


【土魔】の二つ目の【アクション】が“クラッシュ”ですね効果としては破裂する岩をぶつける感じですね。【土魔】なんか魔の力を使って物理系ですね。


「うーん。想像つかないから難しいなー」


オートの場合は【アクション】があるのである程度システム任せにできますが、マニュアルだと汎用性がある分想像がつかないとかなり難しいです。


「……【裁縫】で型を作って【鍛冶】で上から乗せることで防具ができる。だったら、魔の力でもできる?」


【スキル】の複合は使い方次第では出来ると思います。

ただマニュアル操作をするような方々が試さないとは思えません。

私が知らないだけというのもありますが……。


「多分出来るなら先生が情報としてマナの対価で出してくるよね?」


それに先生は複合属性について調べて欲しいと言っていました。ということは先生は知らないということでしょう。

なら、試してみるもの面白そうですね。


「試すなら爆発をイメージしたいよね……爆発で掘削!」



系統なら間違いなく【土魔】と【火魔】ですね。問題はどうやって爆発をさせるかです。

マナに命令をすることでどうにかなるかもと考えると、しっかりとしたイメージを持たせるべきですね。中途半端なものは中途半端な結果しか出ませんし。


「ふぅ……少し離れた位置を狙って……“燃え盛る火球包むは岩、破裂する青の炎、強固な岩。私に供物を顕にせよ”」


まず現れるは火球。燃え盛るその炎は徐々に青い炎へと変わっていきます。

口に出す呪文に合わせてその炎の周りを包む岩。

中から熱がもれてきます。

その塊を狙った場所に放ちます。


ゆっくりと進んでいく岩の塊ですが、ぶつかった瞬間に強烈な音を発し周りの岩が炸裂します。破片がこちらに飛んでくるのでちょっと身を屈めます。


「凄い音……うわぁ。」




当たった場所は言うならば溶けてました。岩が当たった場所は抉れるように、そして中の炎をもろにかぶった場所はマグマ溜りのようにグツグツと溶けています。


「イメージは手榴弾だったけど……これはダメだね。掘削は出来るけど、採掘は……あ、でもアイテムポーチに結構アイテム入ってる。」


今の一撃で石や溶けた石、鉄鉱石、固まったマグマなど……アイテムとして怪しいものも手に入りましたね。

それよりもこれは改良の必要がありますね……そして、改良するぐらいなら……


「今日のメインは【鍛冶】だから、だったらカンカンと振ったほうが良さそうかな」


今日練習するための鉄鉱石は集まっていますし、このあたりで切り上げてしまってもいいかもしれませんね。とりあえず、明日先生にこの結果は伝えておきますか。これでますますマナの知識は必須になりそうですね。


「よし!鍛冶屋に行こう」


目標は【鍛冶】の進化です!





「ゴンザレスさん鍛冶場貸してください!」

「ん?あー杖持ちの嬢ちゃんか。鉄鉱石は集まったのか?」

「ちゃんと用意してから来ましたよ。」

「なら何も言わねえ、わからないことがあったら聞きに来い。」

「わかりました。ありがとうございます。」


私は鍛冶屋の奥に進みます。中では数人が黙々と作業をしていますね。

ならこちらもあまり気にせずに空いているスペースで練習をしましょうか。

まずは、一本作ってみましょう。必要なのは明確なイメージですね。

作るとしたらこの間作った短剣をリベンジですね、失敗するのは仕方ないですし、数をこなしましょう!



まずは、炉に火を入れ温めます。

ある程度まで温度が上がったら型に鉄鉱石を置き、炉に入れて溶かしていきます。

中の様子を見ながら溶けた頃に引き出し一度叩く。

ここで大まかな形を整えて、もう一度熱する。

熱しすぎると溶けてしまうので、鉄が脆くなりすぎないぐらいに軽く熱したあと、炉から抜きます。

最後に冷めるまでの間細かいところを叩いて整える。

終わったら、水で冷やす。これで完成ですね。

ゲームの設定のために実際の鍛冶とは違うのでしょうけど、そこは雰囲気です。


さて、一本目どうでしょうか?


名前:粗い鉄の短剣(星1)

説明:粗の見える作りの短剣。

効果:ATK+7


「やった、この間よりも良かった。……でもやっぱり粗いのかぁ」


前回よりも効果も上がってますが、それでも出来は良くないですね。

今回は出来も大事ですが、感覚を覚えて【鍛冶】のレベルを上げていくことが目的です。


「だったら、時間の限り打つしかないよね」


一本あたり10分ぐらいでしょうか?色々な工程がありますから、とりあえず素材が無くなるまで作りましょうか





どのくらい時間が経ったでしょうか。

何本作ったのかわかりませんが、その中でも一本だけまだまともな短剣ができました。


名前:未熟な鉄の短剣(星1)

説明:試行錯誤の見える短剣。

効果:ATK+12


それでも店売りの剣よりも威力は低いですし、未熟なとかついてますから外したいです。

【鍛冶】のレベル自体は12までは上がったのですが、まだ慣れていませんね。


「ん~……。短剣のつくり方はなんとなくわかったけど、上手くいかないな。」


アイテムポーチを見ると軽く20本以上ありますね。ということは4時間ちょっとですか、集中していましたね。鉄鉱石も残りはあまり多くはないですね。


「あとは……あの妙なドロップ品かな」


溶けた石や、固まったマグマ。その中に、こっちに来てから気づいた鉄鑑石というドロップがありました。

ぱっと見だと漢字表記でわかりにくかったので見逃していましたが、おそらくは特殊ドロップかなにかでしょう。

昼間のようにマナを帯びたアイテムはなかったのが残念ですね。


「ここで試してみてもいいけど……まあ、何度か行けば手に入るでしょうきっと。」


ならこの場で練習として使ってしまってもいいでしょう。

先程までレベル上げのために集中していたので使えませんでしたが、これは出来れば良いものを作りたいですから【魔視】を使ってみてもいいでしょう。


「あ、でも先に鉄鉱石で試したほうがいいかも……」


ぶっつけ本番で【魔視】を使いながら叩くのは視界が辛そうですから、まずは練習です。



名前:鉄の短剣(星1)

説明:変わった作りの短剣、切れ味がいい。

効果:ATK+15


「嘘……」


今までよりも視界が悪かった分叩くところはわかりやすかったです。色のマナというよりも、無印というか、無色のマナのようなものが見れて、そこを叩くと綺麗に作れました。

説明にも書いてありますが、これは普通の作り方ではないのでしょう。いえ、工程は変わりませんが、叩き方とかタイミングが違うのでしょう。


「こ、これで、作るの?……よーし!」


私は鉄鑑石で短剣を作ろうとします。基本の工程は一緒ですが、叩く時に先程は無色だったのに、今度は茶と赤が見えますね。なるべくそこを叩くように行ってみます。

でも、この石叩きすぎると割れそうで怖いです。

鉄鉱石よりも耐久が低いのでしょうか?

少し叩く回数を減らして水で冷やします。


「……できたのがこれ。」


名前:火鉄鑑の短剣(星2)

説明:薄く燃えるような煌きを放つ短剣。力を込めることで火を灯すという。

効果:ATK+20、INT+10


「これは素材もだけど……うわぁ……【鍛冶】のレベルも15に上がってる。これは、もうちょっと……全部終わったらもう一回取りに行こう」


この性能だともしかしたら、相当なレア素材だった可能性もあります。

明らかに鉄以上ですし、もう少しレベルが高かったりPSが良かったら絶対もっといいものが出来ましたよねこれ?

それに、マナを使えば属性を付与することもできるかもしれません。

実際に【剣】の【スキル】を持っていないので試すのはリードにしてもらいましょうか。


もしも、魔法剣とか出来るなら、色々と試してみるのも面白いですね。それこそMPを注いだら刃が出てくる剣とか、マナに命令することで属性を変えることができる武器とか。

武器作りはこういうのがあるから、ついつい時間を忘れてやってしまうんですよね……。


「うわぁ……良いもの出来たのに悔やまれる……知識と時間が足りない。」


鉱石図鑑は冒険者ギルドの貢献度ポイントによって見れるものです。

ということは、冒険者ギルドへ通う理由が増えました。

はからずも装備としては良いものでしょうから、明日は持っていきましょうか。


「はぁ……今日はもう寝ましょう。明日もありますからね」


流石に続けて色々としすぎました、疲れました。

今日は区切りをつけて明日に備えて寝ましょう。


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