19.彼女は黒狼と相対する。
リード目線でのおはなし。戦闘描写が想像しにくかったら申し訳ないですわ……
昨日は念願の“ウルフ”系で且つフィールドボスでもある大白狼を討伐することができた。
流石に私はほかの人たちみたいにフィールドボス相手に一人で大立ち回りをして倒すなんてことはできない。
今回手伝ってもらったのは、βテストの時にも度々PTを組んでいた月平、サクラ、泣き顔の三人。通常1PT6人が最大だが、6人で組んでいる人は少ない。理由としては色々とあるが一番は【スキル】に入る経験値があんまりおいしくないのだ。モンスターの経験値は決まっているようで、モンスターを倒すとPT内にその経験値が分配される。そのため、PT人数が少ないほうが経験値が入りやすいということになる。
まぁ、フィールドボス相手なら、経験値よりも6人で安定を取ったほうがはるかにいいのだが、私の場合は分担のできる4人の方が安定する。
昨日は倒せた喜びから、次の街へのポータルを登録してそのままログアウトしたが、智歳の様子が少しおかしなことに気づいてはいた。
次の日智歳はぐったりしていた。風邪とかではなく明らかに寝不足。
授業などもほぼ寝ているような感じで、お昼休みでさえご飯を食べたらすぐに寝てしまった。
放課後になっても智歳が起きる様子がなかったので、ある程度の時間までは待っていようと掲示板を見ながら時間を潰した。西の草原の走破が既に話題になっていたのは少し嬉しかった。
起きた智歳に私は話しかけたが、その後に智歳に言われた一言が強烈的だった。
「草原の裏ボスみたいな存在を倒して欲しいの」
昨日の今日で裏ボス。しかも当人はどこでそんな情報を見つけてきたのか、まあ智歳だからなと不思議な納得もしてしまう。
しかも、裏ボスと智歳がいうからには隠し要素なのは間違いない。
それをリリースして数日の段階で見つけてくるのだこの幼馴染は。
なんて楽しいのだろう。
私は早くログインしたい気持ちで話を聞いた。
「さーて……まずは、先生に連絡しなきゃ」
ある程度智歳から話を聞いた私は帰ってすぐにログインしました。
ログイン先は第二の街。周りを見ると一緒にここまで来たPTメンバーはログインしてないようだ。
実は今日は昨日のメンバーと一緒にこの街を探索する約束をしていたのですが、ひとまず置いておく。
フレンドを確認すると、先生はログインしているようだったので、フレンドチャットを飛ばす。
「先生、今大丈夫ですか?」
「おや?リーちゃんからデートのお誘いかな?」
「暇ですねわかりました。ちょっと第1の街のどこかで会えますか?」
「わかっていたけどスルーだねぇ?だったら、ギルドに来るかい?ついに出来たんだよ」
「あ、おめでとうございます。うーん、そうですね。会議するにはちょうどいいかも。」
「会議とは、仰々しいね。何かイベントかい?PKKでもするのかなぁ?」
「そういう対人は刺突独楽さんに任せます。」
「確かに彼は好きそうだけどねぇ。それじゃあ、ギルドで待っていればいいかい?」
「いえ、今回はチェルカからの案件なので、どうせならチェルカを迎えに行きませんか?」
「ほう?ついに動き出したかい。待ちきれないねぇ……どんな案件かだけ軽く教えてくれるかい?」
「昨日クリアした西の草原の裏ボスを発見したかもという話です。」
「……あははははこれはまた面白そうな案件だねぇ……いざとなったらジンちゃんや、ローくんも頼らないとねぇ。」
「そういうことなので、一度話を聞くために噴水近くで待ってもらえますか?」
「良いよ~それじゃあ待ってるね。」
これでひとまず先生を巻き込むことはできた。
では私もこれから第一の街でチェルカと合流をしないと……その前に、PTメンバーになんて言おうか。
素直に用事ができたら落ちる?フレンドでバレるし……ギスギスするのは良くないから、嘘は付きたくない。
素直に用事ができたから第一の街に行くと伝える。これなら、嘘はついてないけど、どのくらいか聞かれたら……。
「お?リード先に来てたんだね」
「あ、サクラ」
第二の街のスポーン地点は噴水ではなく石像。
そこから、サクラが歩いてきました。
さて、どうやって誤魔化そうか……。
「ん?こんばんは、どうしたの?」
「え、いや、なんでもないよ?」
「ふーん……それで今日なんだけどさ」
「え、うん!」
「……何隠し事?」
なんでいきなりバレるの!?
私は内心でドキドキしながらも、平静を装う。
「な、んでもないよ?」
「リード……今二人だから言うけどね?何か思う事があって、隠したりしようとするときに、リードはすごくわかりやすいんだよ?社会人になったら苦労するからね?」
「あ、ありがとうサクラ。」
「うんうん。そんな素直なリードに質問なんだけどね?」
「うん、何かな?」
「今日このあと街を見学する予定だったけど、どこか行きたいところがあるんでしょ?どこ行くの?」
「……」
さて、困った。サクラは半ば確信を持って話している。
ここで誤魔化すにしても無理がありそうだし……
そもそも、智歳自身PTの選別は私に任せていいと言っていた。
だったらいっそ慣れている3人に一緒に来てもらってもいいかもしれない。
PTの総合火力は低いが連携や罠などで昨日もフィールドボスは倒した。
だったら、このままの勢いで倒しに行ったら案外いけるかもしれない。
話を聞いた限りエンドコンテンツのようなボスだけど、序盤のフィールドゆえにもしかしたらがあるかもしれない。
だったら、素直に巻き込んでしまおう。
「実は、これから知人に会いに行こうと思ってね」
「あ、そうなの?だったら構わず行ってもいいけど……どうして深刻そうに悩んでたの?」
「実は昨日倒したフィールドの裏ボスを見つけたかもしれないそうなんだ。」
「え?!裏ボス?……なるほどね。それに私たちは参加してもいいのかしら?」
「まだ、なんにも決まってないからいいと思うけど、まずは話を聞きに行こうと思ってね」
「わかったわ。月平と泣き顔が来たら一緒に行ってもいい?」
「うん。大丈夫だと思う……あ。」
「どうしたの?」
「ううん。なんでもないよ。」
失敗した。智歳に夜に噴水で会おうとは言ったけど、こっちの時間か現実かは言ってなかった。もしかしたら、もう待っているかもしれない。
そう思ってフレンドリストを開くと、チェルカがオンラインになっていた。
私はすぐにチェルカに対してフレンドチャットを送る。
「ごめん……いま噴水にいる?」
「何に対して謝ってるのかわからないけど、噴水の近くのベンチに居るよ」
「了解ー……先生は捕まったんだけどほかにもいるからよろしくね。」
「え?ちょっと?」
「じゃあ待っててね」
よし、これで問題はないはず。あとは、全員揃ったら第一の街に向かえば問題ない。
少しすると月平と泣き顔がログインしてきたので、合流し、第一の街へ向かいました。
このゲームでは、一度訪れた街に対してワープポイントというのが設定でき、そこから街と街の間を省略することができます。
「あ、来たねぇ?おやおや“鉄壁”に“煉獄”“索敵”とは懐かしい。」
「あ、先生こんばんは」
「その索敵とかの呼び方嫌いなんだけど……」
「自分も鉄壁と呼ばれるほどではないのである。」
「まあまあ、とりあえず噴水のところに……あ、あれかな?」
ワープ先は噴水近く。すぐに先生は見つけたのでそのままチェルカを探したら、直ぐに見つかった。
初心者装備でベンチに座って観察しているなんてチェルカらしいけれど。
私はチェルカに手を振りながら駆け寄った。
それから先はお互いの自己紹介を先生のギルド“探究心”の会議室で行ったり、最低限の戦力確認と説明を行った。
改めて話を聞くとやはり序盤のボスという設定にしては強い印象を受ける。
そもそも、属性攻撃が弱点というのがまず厳しい。
掲示板や先生の話によれば、四方のボスは今のところレベルを上げればある程度は力押しで倒せるようだ。その中にもしかしたら属性攻撃に弱いボスがいるのかもしれないが、わざわざ、属性攻撃を行わなくても問題はない。
とりあえず、チェルカはこのまま本で情報を探すことに、私たちは一度チャレンジしてみようということになった。
チェルカの予想では、フィールドボスである大白狼のドロップを使うのではないかとのこと。
私はなんとなくあることをもちかけた。
「とりあえず、通常のフィールドボスの召喚条件のウルフ5体討伐してみない?」
「それは夜まで待つってこと?」
「いや、今の時間で。ほら、フィールドボスが夜に5体だったから、反対とかあるかもしれないでしょ?」
「ありえない話じゃないけど、どうだろうな。」
「そもそも、昼間の時間でフィールドボスの挑戦権である“狼の牙”はドロップしないのである。」
「うーん。僕は賛成かなぁ?やってみないことには何とも言えないし?」
「初回だからとりあえずやってみようよ?」
草原に出るとチラホラとモンスターが見られるが、やはり“ウルフ”系が多い。
フィールドに出現する敵は“レッサーウルフ”“ワーウルフ”“ホワイトウルフ”“ウルフ”レアなところで“大狼”が出てくる。
今回狙うのはその中でも“ウルフ”だ。
索敵するのは【鷹の目】という広範囲を把握する【スキル】を持つ泣き顔だ。発見から最初の攻撃までは泣き顔が行うことが多い。
あまりレベルの低い個体だとその最初の攻撃で倒してしまうことがあるぐらいだ。
それに、既にフィールド内のモンスターの行動パターンは調査済みのためサクサクと倒していく。
目標の5体目まで結局一人で倒しきってしまった泣き顔をよそに先生が呟く。
「大白狼のドロップ……大白狼の条件と同じなら焼くのかねぇ?」
「その場合は私の大白狼の皮を焼くつもりです。」
「おやいいの?だってそれがあれば君の狙ってるものに近づくのに?」
「私はドロップで皮も牙も部位破壊である爪までゲットしてるので、皮は最悪なくてもいいかなって。それよりも、黒狼のドロップなら、相性もいいだろうしそっちを使いたいと思ってますよ。」
「なるほどねぇ?それじゃあ是が非でも倒したいねぇ。」
「まあ、倒せなかったら倒せなかったで目標にする程度で?」
「普通序盤で裏ボスなんて見つけないからねぇ。いや~本当あの子は変わらないねぇ。」
先生とは以前やっていたゲームでも一緒に遊んだりしていたのでチェルカの事を知っている。というよりも、先生自身もそのチェルカが見つけた何かに対して一緒に騒いで楽しんでいたようにも見える。
私はどちらかといえば、前に出ていたので後ろで騒いでいた時は少し羨ましく思ったりもした。
それでも、その時の顛末を面白そうに話してくれるチェルカの話を聞くのも楽しかったので、私は満足だった。
「さて、終わったようだから、リーちゃんお願いできるかな?」
「あ、はい。」
少し思考が乱れたが、私はアイテムポーチから昨日のドロップである“白狼の毛皮”を取り出す。
すると運営メッセージで“警告”が出てきた。
『警告。この場所で“白狼の毛皮”を出した場合イベントが発生しますが、よろしいでしょうか?』
どうやら、チェルカの予想は当たりだったようだ。
私は一旦アイテムポーチに戻してみんなに伝える。
「どうやら当たりみたいだよ。運営コメントで警告が出てきた。」
「そうなの?」
「“ウルフ”は関係なかったのか?」
「そうとは言い切れないのではないか?条件が整った上での警告の可能性もあるのである。」
「うん。初めてだからまだ何とも言えないね。」
「特定フィールドで特定の素材アイテムの提示。この場合消滅するのかな?そうなったら、ちょっと面倒だけど……。うーん、あとはこれは事故、つまりは何も知らなくてフィールドで素材を出した場合でも起こるのかねぇ」
「そのへんは先生にお任せします。みんな準備はいい?」
私はメンバーの顔を見ます。
「まあ、準備もなにも、一回目だ。勝てたら運が良かった。負けてもしょうがないだろ?」
「その通りではあるが、それを言ってしまうのはどうかと思うのである。」
「勝つ気がなければ勝てないってね。」
「まあねー?失敗はつきものだけど、負けるつもりだと何も得れないからねぇ~?」
「だ、誰も負けるつもりなんて言ってないだろ!」
「はいはい。それじゃあみんな行くよ。」
私は再び“白狼の毛皮”をアイテムポーチから出そうとする。
すると、再び警告が表示された。
『警告。この場所で“白狼の毛皮”を出した場合イベントが発生しますが、よろしいでしょうか?』
今度はそのまま、アイテムポーチから取り出す。
『プレイヤー“リード・オルタナティブ”とそのPTを今から10秒後エリア移動させます。』
「え、エリア移動?」
「カウントが表示されてるわね」
「今のはPT組んでいたら全員に見れるみたいだねぇ」
「さーてどんなのが出るのか!」
「自分は役目を果たすだけである。」
各々が気合を入れ10秒後私たちは別の場所へ飛ばされた。
移動直後は少し視界があやふやになる。
ログは確認ができるので見てみると“黒狼の狩場に移動しました”と出ていた。
どうやら特殊エリアのようだ。
特殊エリアへ移動するのはこれが2回目だったりする。
1回目はβテストの時にあった大規模レイド。あの時は確か“神魔の遊技場”だったかな?
ようやく目が慣れてきて周りを見渡す。
そこは草原だった。
しかし、今までいた草原はフィールド全体が芝生みたいな、草原というよりも運動場な雰囲気だったが、こちらは違う。
短い草でさえ私の胸元まで伸びている。草が地面が見えないぐらい覆っている。まさしく草原といった具合だった。
「これはまた……動きにくそうだねぇ。」
「【鷹の目】は使えるからある程度見渡せるが、そこまでフィールドは広くなさそうだな。」
「これ、しゃがんだら身は隠せそうだけど、何も見えないわね。」
「位置取りが大変そうであるな。」
「そうだね……。とりあえず泣き顔は黒狼が来るかもしれないから警戒しといて、先生は基本的に戦闘になったら月平に対してポーションを投げてください。余裕が出来たらダメージ与える形で。」
「わかった。」
「はいよー。まあ、色々とポーションは持ってきてるから試してみるよぉ?」
「私は【詠唱】使っておいたほうがいい?」
「氷が弱点らしいから【氷魔】で、もしかしたら水も効くかもだから、ある程度試したら水もやってみて?」
「わかったわ。」
私はある程度の指示を行う。
私も私で左手に大槌、右手には長剣を構える。いつ来ても不意打ちだけは食らわないように。
しかし、そんなものは無意味だった。
エリアに飛ばされてから約3分ほどして、地響きが聞こえてきた。
地面も揺らすそれは自然に起こる地震のようなものではなくまるで巨大な何かが歩いてくるような音だ。
音が大きくなり近づいて来るのが分かる。
最初に声を上げたのは警戒をしていた泣き顔だった。
「マジかよ……」
「泣き顔どっちの方向?!」
「いや、あれは……PTで勝てるのか?」
「泣き顔!」
「あ、わりい。東側あと少しでもしたら見えてくると思うぜ」
最初に見えたのは顔。
半開きになった口からヨダレを垂らしつつもこちらを……獲物を狙う眼光。
真っ黒な毛並みに覆われゆっくりと姿を現す巨大な狼。
モンスター名“狼王ロボ”。モデルもなにもそのままだが、そんなことを思ってる暇はなかった。
あれはβテストの時のレイドボスと同等のモンスターだ。
正直PTで勝てる気が全くしない。むしろ本当にエンドコンテンツに類するモンスターなのではと思ってしまうぐらいには。
昨日倒した大白狼も大きかったが、それでもせいせいが大型トラックぐらいだったのに、コイツに至っては大型のダンプカーレベルだ。
そうまさに、以前テレビで見た採掘現場などで使う重ダンプ。
それぐらいの大きさの黒狼だ。ゲームということを忘れて少し怯えてしまう。
「これは……やばいね」
「無理。無理……」
「これを防ぐのはまた至難であるな……」
「これ、勝てるのかな……。とりあえず、泣き顔!一発攻撃!」
「はぁ……一発目のヘイト貰うから月平ちゃんと引き受けてくれよ!!“一射強弓”」
泣き顔はため息をはきながらもすぐに切り替えて長弓の【アクション】である“一射強弓”を使う。
泣き顔は未だこちらを見ているだけの狼の眼球。
右目に赤色のエフェクトを纏った矢を放つ。
当たったと思った。しかしすぐに違うとわかった。
黒狼の右目に当たる直前黒狼は口を開けて吠える。
それはフィールドの草木を揺らし、赤色のエフェクトを纏った矢を吹き飛ばした。
空気が揺れる。そうとしか表現できないような圧を感じ、私はすぐに動き出す。
このまま固まっていたら何もわからないままやられてしまうと思ったからだ。
「さっき話したとおり!各自動いて」
「了解!」
「防御貫通無視っすか……」
「あぁ……みんなー気をつけてぇ?あの咆哮確率で麻痺入るよ~痺れるよ~?」
「先生いきなり!?……月平1分持って!」
「了解したのである。」
私は急いで麻痺緩和のポーションを取り出し先生に駆け寄る。
序盤では手に入りにくいアイテムだが、こんないきなり一人減るのはきつい。だからこれは必要経費なので先生に請求しましょう。
「流石にあれは対策しないとまずいねぇ……」
「ですね!はい、これで大丈夫でしょ!先生もカバーお願いします。」
「了解。気をつけてねリーちゃん」
私と先生はすぐに分かれ先ほどの手はず通りに動き出します。
負けるかもしれないと思っていても、諦めて負けるのはゲームでも……ゲームだからこそ私は許さない。
月平は愛用のタワーシールドで黒狼の攻撃を受けている。
かなりきつそうな顔をしているが、それでも耐えているあたり流石だと思う。
ただ、黒狼はまるでじゃれているような前足で盾に対してなぎ払いのモーションだけだ。
それでも十分な威力を出している。
私はなるべくかき乱して一撃を与えるのが役目だ。
だったら、まずは接近をして先程失敗した眼球に一撃を入れてみる。
生物ならまず目と喉は急所の一部だろう。
【跳躍法】を使って一気に跳ぶがそれでも黒狼の半分までしか届かない。
それでも、一度黒狼の身体に足をつけて再び跳ぶ。まるで二段跳びのようだがそうでもしないとこの身体に乗ることができない。
「乗ったねぇ?」
「まあリードですから!ふぅ……“アイスジャベリン”!」
時々サクラからの氷の槍が黒狼に突き刺さる。
サクラも色々なところに撃ってくれているが、身体や足でも場所によっては弾かれてるようだった。
私は乗ったあと、身体に対して長剣を振り下ろすが黒い毛に覆われているその身体には突き刺さることもできない。
ならば、多少無理をしてても眼を狙いに行く。
長剣を鞘に収め両手で大槌を持つ。斬撃が効かないなら打撃を通す!
なるべく【跳躍法】を使いつつ移動していくが黒狼自身も身動ぎをしたり振り下ろそうとしてくる。
その間も下では月平が足止めをしたりサクラがダメージを与えている。これは案外パターンも決まっているなら簡単に倒せるのではないか?
そう思った瞬間私は足場を失い落下していた。
咄嗟に“受身”を使いHPの減少を最小限にしたが何故だがわからなかった。
状況を把握しようと見たとき、サクラの悲鳴が聞こえた。
「いや、ちょ、っいやあああ」
「くっ……そ……」
見ると先程までこちらにいたはずの黒狼は後ろを陣取っていたサクラ、泣き顔、先生の近くに。
サクラは赤いダメージエフェクトを出しながら噛まれていた。
泣き顔も前足に踏まれダメージエフェクトを出しながら……そのまま粒子になった。
そのすぐあと、サクラは黒狼に噛み砕かれ、粒子となった。
近くにいた先生もゆっくりと退避しているのが草の隙間から見えるが、あれではすぐに、やられてしまうだろう。
「どうするであるか。」
「……とにかく、弱点を探して次につなげよう。」
「……それしかないのであるな!」
月平は重装備ではあるものの、なるべく先生を守ろうと黒狼に近寄っていく。
先生もそれに気づいているのか、月平の近くに寄ってきてた。
二人が合流し、月平が守りに入った時に、私は見た。
横薙ぎに行われる前足での攻撃。それは今までの月平が守ってきたものよりも幾分も早い攻撃だ。月平はギリギリで間に合わずその爪に引き裂かれた。
先生自身も何かしようと色々と投げたりしていたが、戻ってくる横薙ぎの攻撃で爪に刺さって粒子になった。
さて……残りは私のみ。
迫り来る黒狼からはとてつもない殺意が感じられる。
もしかしたらイベントプレイヤーは最後に戦う事になるのかもしれない。
この状況で打破するすべは私にはない。
それでも足掻かない訳にはいかない。
私は再び黒狼に接敵するために走り出す。
今度は身体に乗るのではなく、直接顔を殴るために。
【跳躍法】はレベルが上がれば滞空時間が延びる。
私のレベルはまだ3なので、できても16秒。
ならばぎりぎりまでは、跳ぶのではなく駆け上がる!
黒狼の前足を駆け上がりある程度の位置で跳ぶ。
「くっらえええええ!」
両手で握った大槌を思いっきり顔にぶつけようと振り切る。
しかし、それをあざ笑うように黒狼は口を開け大槌は口の中を通る。
ギリギリで方向を変え牙の一本でも折ろうとしたのだが、牙の方が固く折ることができなかった。
「くそ……」
そして最後に黒狼は口を閉じ私を噛み砕いた。
なんか色々と吹っ切れまして、自分のペースで頑張っていきます!
これからも読んでいただけたら嬉しいです




