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15.少女は狼の話を知る。

少し時間ができたので、リードに対してフレンドチャットを送ってみました。

「リード今平気?」


送ってから5分ほど待ちましたが返事がきません。

知っている人に聞くのが早かったのですが、聞けないなら聞けないで、自分の足で調べるとします。

言われた場所は西の草原。

ならば西の出口側に聞き込みをすれば、何かわかるかもしれません。

私は西側へ向かいました。

西側には特にNPCのお店などはなく、一部のプレイヤーが露天のようなものを広げているだけですね。

こういうときは門番の人に聞くのが一番です。


この街には四方に簡素な作りの門があり、そこを見張る門番がいます。基本的に冒険者ギルドに登録している者は顔パスで良いのですが、商人などは手続きが必要なようです。門番たちは盗賊などが入らないように見張りますが、メインは魔物らしいので、そこまで調べないそうです。


「あのーすみません」

「はい、どうかなさいましたか?」


全身を革の装備で揃えた門番さんが相手をしてくれます。


「今って草原に何か起こってたりしますか?」

「ん?草原に何かですか?……そういえば最近妙にウルフ系のモンスターが多い気がしますね」

「草原って基本的にどんなモンスターが出るんですか?」

「ウルフ系もですが、ラットやバード種、スライムなんかが出ますね」

「それが今だとウルフ系ばっかりと?」

「そうですね、ラットやバード種は見ないことはありませんが、数は少ないですし。スライムにいたっては明らかに目撃数が減ってますね」

「そうですか……ありがとうございます。」


ウルフ系の増加。これはエリアボスに関係するとみても良いんでしょうか……。

少し情報が足りませんね。

私は悩みながら教会へ足を運びます。

教会に入ると椅子に座って何かを読んでいるゼズペットさんの姿見えます。

こちらに気づいたようで、スッと席を立ちこちらに振り返ります。

NPCとはいえ、こういう自然な仕草はかっこいいと思います。


「おかえりなさいチェルカさん」

「ただいま……。で良いんでしょうかゼズペットさん」

「どうぞ、気軽に戻ってきてください。」

「そう言ってもらえると嬉しいです。」

「何か面白いお話でも聞けましたか?」

「え?」

「こちらを出るときに街を見てくると仰っていましたので。」


確かに私は、行くときに街を見てくると言いましたが、何か面白い話というと少し悩んでしまいます。なにせ今回の目的の練習クエストというのも結局【鍛冶】だけしか受けることができませんでした。

私は少し考えるとふと、街外れのお婆ちゃんを思い出します。


「あ、街外れにあるクララベルさんに会ってきましたよ。」

「……クララベルですか。」

「えっ……あ、はいそうです。」


珍しくゼズペットさんの顔が歪みました。仲が悪いのでしょうか?まあ、あちらのお婆ちゃんは悪魔信仰とかしてそうですし、牧師さん的に相性が悪いとかなのでしょうか?


「すみません、険しい顔をしていましたよね。」

「あ、いえ、はい……」

「ふふ、なんてことはない昔馴染みでして。思わず妙な顔を見せてしまいましたね。」

「それは大丈夫なんですが……仲が悪いんですか?」

「いえ、悪いと言いますか……色々とありまして……。ただ、彼女の腕は確かですので、何かを教わるなら良い方だと思いますよ」

「そうなんですか。あ、そのクララベルさんに聞いたのですが、西の草原が騒がしいとか……。ゼズペットさん何か知りませんか?」


この流れなら気になることも一緒に聞いてしまいましょう。私のなかではなんでも知ってるゼズペットさんです。直接でなくともヒントぐらいはいただけるのではないでしょうか?


「西の草原ですか……すみませんお力になれそうに無いですね……。」

「え、あ、そうですか……」


勝手に期待していただけですが、少しショックです。

まあ、なんでも答えるNPCがいたらいたで問題ではありますけどね。

そうなると、あとはシスターフォルとかに聞きに行った方が良いのでしょうか。

私が少し考えているとゼズペットさんがボソッと呟きます。


「……倉庫に面白い本があるかもしれませんよ。」

「え?」

「あとはあなた次第ですチェルカさん。」

「え、はい!ありがとうございますゼズペットさん。」


ゼズペットさんはにこっと笑ってそのまま奥へと進んでいきました。


情報をくれたことには、感謝はしていますが、本音を言えば本のタイトルまで教えてほしかったなと思いました。

しかし、情報が本にある。そしてこの間と違い今回はあることは確定しています。ならばあとは見つけて読むだけです。

私は早速倉庫へ向かい本を探し始めます。

今まで読んできた本は五十音順に棚に整理してあるので、タイトルだけ軽く確認をします。もしかしたらフラグを踏んだことで新しく本が増えてる可能性もありますからね。

意識して見る単語は“草原”“狼”“ウルフ”辺りでしょうか。


読めない本や今回関係ないであろう本などを分類分けをして、少しでも関係のありそうな本をまとめていく。読むのはあとで一気読みです。

そんな単純作業を始めて大体1時間半ぐらいした頃でしょうか?

ふと伸びをすると視界にあのテロップのように流れてくるログが入ります。


『リード▪オルタナティブ、月平、(T_T)、サクラが草原を走破しました。』


私は伸びをした姿勢のまま思わず固まってしまいます。

草原というと今現在は西の草原が当てはまります。もちろん東の森林や北の洞窟の先に草原という場所があるのかもしれません。しかし、流石に昨日の今日で開放された場所の更に奥を攻略するのは考えにくいでしょう。

つまり、私が調べていた1時間半の間に事態が進展してしまい、この作業が半ば無駄ということに……

私が放心していると、当の本人であるリードからフレンドチャットが飛んできます。


「おつかれー!ごめんね返事できなくて!ちょうど西の草原のボスと戦っててさー!」

「あ、うん。おめでとう、ログが流れてきたから見たよ……」

「うん!ありがとうー!狙ってたボスドロもゲットしたし良かったよ~」

「うん……よかったね」

「なんか暗い?何かあった?クエスト失敗したとか」

「いや、【鍛冶】のクエストは簡単に終わったよ。ほかにやろうとしたのはできなかったけど。」

「そうなんだ……どうかした?」

「あー……情報まとまったら連絡する……」

「う、うん。今日はもう少し進んでから落ちるから、場合によっては明日聞くからね?」

「うん、ありがとう……それじゃあね」


リードとのフレンドチャットを終え、さてどうしたものかと。

走破されたということは、恐らく西の草原は大人しくなるでしょう。ということはクララベルさんのところで【錬金】の練習クエストを受けることが出来るはずです。


「まあ、一度確認してみて、平原のボスの背景とか……フレーバーだろうけど。」

この時間が無駄ではなかったとそう思いながら私は、クララベルさんの家に向かいます。



「日に何度こられても、今は無理だよ。」

クララベルさんの不気味な屋敷に入ると第一声がこれでした。


「え、でもその……草原がこのあと静かになるかもしれませんから……」

「草原が?……伴侶がいなくなったら多少なりとも静かにはなるだろうけど、まだ無理だね。」

「え?伴侶?」

「そうだよ。伴侶。ウルフ達は基本的に群れを雄が守り、狩りを雌が行う。今さっき大きな気配が倒れたけど、ありゃ雌の方だよ。雄じゃない。」

「え、でも狩りは雌が行うから、大人しくなるんじゃ?」

「何にも知らないんだねぇ」

「ごめんなさい……」

「はあ……まず、どうしてあたしが草原が大人しくなってからと言ったかわかるかい?」

「え……わからないです。」

「まったく、【錬金】を学びたいというなら、最低限素材ぐらいは把握しときなよ。」

「ごめんなさい……【錬金】の使用は薬草やモンスターの素材とかじゃないんですか?」

「そりゃ追加素材だね。基本的に【錬金】を使うときはスライムの素材を使う。」

「スライムの?」

「そうだよ。スライムが落とすスライムジェルやスライムボールなんかを使うんだよ。」


今まで色々なゲームをしてきましたが、錬金に使用する材料でメインがスライムというのは、初めてです。そもそも、だいたいのゲームでは錬金で既存の素材を複製したり、等価で何かを作ったりといったことが基本でした。場合によっては調合や合成の下位互換の場合さえあります。

正直、スライムメインで何が作れるのかさっぱり見当もつきません。


「スライムで何を作るんですか?」

「スライムの素材を使ってポーションを作る。」

「それは、薬草や水を使うのではないんですか?」

「調薬ではそれでいいかもしれないが、それでできるポーションは最低限のHPポーションさ。【錬金】で作るポーションはスライムを基礎素材にしたり、中間素材として効果を変えていく特殊ポーションだよ。」

「特殊ポーション……。」

「だから今はその素材となるスライムを捕まえることもできないから、大人しくなってからまた来るんだね。」

「ど、どうしてスライムを今捕まえられないんですか?」

「なんでもかんでも、なんでどうしてと人に聞くばかりかね。」

「ご、ごめんなさい……」

「はぁ、知識欲が旺盛ならば調べるといい。と普段なら言うが、あのジジイのお気に入りだ。答えてやるよ。」

「え、ジジイ?」

「こっちの話さ。スライムは臆病でね、基本的に自身よりも圧倒的格上の存在がいると出てくることが少ないんだよ。その上様々なところに住み着くから種類や数はいるんだが、その住む場所で特性を変えるんだよ。だから、私がメインで作っているHPポーション系の材料であるグリーンスライムの生息地であるこのあたりに住んでるっていうのに……あの黒狼が住み着いたもんだから、一向に姿を見せない。」

「黒狼……。じゃあそいつを倒すか、撃退すれば?」

「そりゃ、圧倒的格上がいなくなれば自然と出てくるだろう。そうすれば、教える分の材料ぐらいは入手できるさ。わかったかい?」


なるほど、つまりはその黒狼を倒せばスライムが湧いて出てくるということですね。しかし、先ほどのログでは走破と出ましたが……。もしやこの黒狼というのは裏ボスとかフラグを立てないと出てこないタイプのボスでしょうか?どちらにしろ、これは私一人では絶対に無理ですね。

何しろ戦闘はおろか、フィールドに出たことがないのです。厳しいどころか無謀ですね。

それならば、リードを巻き込んでしまいましょう。ウルフ系ならばここのボスを倒したリードの方が慣れてるかもしれませんから。

そうと決まれば、情報を集めてリードに連絡を取らないとですね。


「はい!ありがとうございますクララベルさん!」

「クラとお呼び!」

「あ、はい!クラさん。ありがとうございます、また来ますね!」

「騒がしい娘だよ……」


私はクラさんの屋敷を出ると教会へ戻りました。

リードにフレンドチャットを送ろうと思いましたが、オフラインになっていたので、明日リードには言いましょう。

だったら先にゼズペットさんが教えてくれた本を探すとしましょう。


「キーワードは黒狼だね。」


私の1時間半はどうやら無駄ではなかったようですね。集めていた本の中に、黒狼について書かれている本を見つけました。

タイトルは“狼王”。

モデルは恐らくアメリカの動物記に出てくるオオカミでしょう。


「“狼王”真っ白な毛並みのウルフ種の中でも1代につき1体生まれる真っ黒な毛を持つ特異体。真っ黒な体毛は矢を弾き、剣を物ともせずに群れを守る王。時に雷を操り火を吐くと言われている。ウルフ種は基本的に雌が狩りを行い、雄は群れを見守り、場合によっては自身を盾にして群れを守るのが役目である。しかし、狼王の第一は群れではなく伴侶となる狼であると言われている。大昔、伴侶を亡くした狼王によって国が2つ破壊されたという記録も残っている。そんな絶大的な狼王だが、××に弱く×を嫌う。また、狼王の第二の心臓とも言われる×××は非常に脆く、しかし×××を手に入れればその狼王の力を手に入れることができるとも言われている。……私の【言語】のレベルいくつでしたっけ!?」


どうしてこう、本当に大事なところだけ必要レベルが高いのでしょうか!?いえ、そりゃ当然のことなんです。わかっています、わかってはいるのですが、いくらなんでもあんまりです。きっとほかのレベルの低い方だったら、もっと読めないところが多くて大変なのでしょうけど、私の場合はレベルが高いがゆえにこう……なんでピンポイントで読めないのでしょうか!

それに絶対複雑に書かれてるだけで、内容的には簡単に違いありません。もうすぐレベルが30いくはずなのに、読めないのは【言語】を進化させないといけないということでしょうか?


「わかったよ……ええ、わかりましたよ!こうなったらガンガン本読んで進化させてやるー!!」


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