12.少女は子供達と触れ合う。
テンポは悪いと自覚してますが、今後もスタンスは変わらないと思います。どうかよろしくお願いします。
午後一番。
子供たちを起こしたあと今度は私が外の担当に、シスターフォルが室内の担当になりました。
私を見て怖がったり警戒をしている子達です。
ならばと私はひとつ遊びを提案しました。
「私とこれから鬼ごっこをしましょう!私が鬼で、タッチして捕まった人が次の鬼!」
こういう子達は一緒に遊ぶことで心を許してくれたりします。
それに半獣とはいえ、まだ子供このあたりはすぐに捕まるでしょう。
「え!?」
「ど、どうする?」
「えっと」
「ほら?行くよー?3,2,1スタート!」
「「「わー!!」」」
勢いよく駆け回る子供たち、そこまで広くはない庭ですので四隅に逃げたり少し固まって様子を伺っています。私はとりあえず最初の獲物はライム君と決めていたのでライム君を探します。
ライム君は少し離れた集団の先頭に立って様子を見ていますね。
私は少し緩急をつけつつ、集団に走っていきます。
散り散りに走る子供たちの中、私をじっと見ているライム君。
半獣の中でも特に獣色が強いのか金色の毛並みが美しいですね。
「もらっった!」
「よっ!」
一回フェイントを挟み、右手でその身体に触れようとしたら、更に右大回りでよけられました。
そのまま追随するため、左足で一度止まり、その反動で飛びつきます。
しかしそれでもライム君にあっさりと避けられてしまいました。
「くぅ……」
「それぐらいじゃ捕まらない!」
一人ばかり狙っては、他の子達が飽きてしまうので、別の子をタッチしなければなりませんが、初めてはライム君と決めていたので、他の子というと少し悩んでしまいます。
周りを見て、今度のターゲットは背中に翼を生やした男の子に決めました。
私はその子以外に狙いを定めたふりをして近づき、一気に足に力を込めて距離を縮めます。
「もらった!」
「あっぶなーい!」
狙っていた子はひょいっと翼を使って空に飛びました。
浮かぶというよりも、羽ばたいて飛んでいるようですがどのような原理でしょうか。
「空を飛ぶのはずるいよ!」
「え、だってつかまるのいやだもん!」
「ぐぅ……」
中々にひどい子達です。
結局私は約10分近くひたすら鬼で捕まえることもできず翻弄されました。
どうやら半獣の子達は軒並み身体能力が高いようです。
「はぁはぁ……疲れたー……」
私は窓際に座り一休みです。
子供たちは子供たちで、私から鬼を受け取って新しく鬼ごっこを続けているようです。
「大丈夫ですか?」
「あーシスターフォル……子供たちの元気がすごいです。」
「まぁ、人よりも身体能力が高い子たちが多いですから……」
「それでも、一回ぐらい鬼を交代させられると思ったんですけどね、悔しいです。」
「ははは、チェルカさんも十分元気ですよ」
「そうですかね?……さて、少し休みましたので私も参加してきます!」
「頑張ってくださいねー」
「よーし私も混ぜてー!」
今度は最初から逃げる側ですが、鬼になった子も空を飛んだり巧みにフェイントをかけてきたりするので、気が休めません。
しかし、タッチするのとタッチされないようにするのはまた別。フェイントは上手く見切り避けていきます。
気が付くと年少の子から鬼をもらったライム君が、今度の鬼のようです。
ライム君はこっちをジッと見つめると、にこっと犬歯を見せます。
どうやら、狙いを私に絞ったようですね。
良いでしょう、攻守交替。先ほどのリベンジです。
ライム君は独特なステップを踏みつつ近づいてきます。
少しずつ追い詰めるようですが、先に仕掛けさせてもらいます。
私は、一度右に体重をかけ左に跳ぶようにフェイントをかけます。
右から左への体重移動の後、すぐにブレーキをかけて左足で右側に飛び跳ねます。
一度は釣られたライム君ですが、その獣足ですぐに追いついてきます。
このままではジリ貧です。私は全力で走り後ろから迫るライム君の方に振り向きます。
スピードを落とそうとしているところに、スライディングで脇を抜けます。
「よっしゃー!」
「!?くっそ!」
一瞬呆けたライム君ですが、すぐにとりなおし私を追ってきます。
私は結局3度ぐらい同じ方法を使って横を抜けましたが、最終的にはそのタイミングを見破られ捕まってしまいました。
「はぁはぁ…‥あぁー捕まったぁ~……」
「はぁ……びっくりした。先生すごいな、あんなに苦戦したのフォル先生以来だ。」
「捕まらないことはできるけど、結局捕まえることはできなかったからな~」
「俺を捕まえることが出来るのはエメダ先生ぐらいだよ!」
「そっかそっかーはー楽しかった。」
「ほら、せんせー!つぎせんせーがおにだよー!」
「あ~そっか……よーし頑張るぞー!」
私はふとあることを思いつきます。
そう、こういう場合大体は肉体強化系、もしくはエンチャントなどで強化をするものです。しかし、私の魔法系の【スキル】は全体的に低く正直未だボール系しか使えません。
それでも【魔視】を取得したみたいにマナに直接呼びかけたりしたらできるのではないでしょうか?
肉体強化……いえ、この場合はDEXに対して上昇するような効果が好ましいですね。
「えっと……強化だから、赤と白でいいのかな?よーし!“赤、白のマナ私の足に力を貸して”」
今回は【魔視】を取得しているので、発動状態にしてあります。
私が口にしたらすぐに赤の線を包むように白が合わさり私の足に当たっていきます。
痛みなどはありませんが、足には特殊なエフェクトのようなものがかかっていますね。
「行くぞ!」
私は勢いよく足に力を込め一歩進みました。
気が付くと私は孤児院の大部屋で寝ていました。
「あ、れ?」
「あ、気づかれましたか?大丈夫ですか。凄かったですが……」
「すご……え?私何をしました?」
「先生すごい勢いで壁にぶつかったんだぞ」
「びっくりしたー!すごかったよ?こう、ブーンって!そしたらドーン!っていうの」
「えっと……盛大に暴発?」
「暴発というか、前に進みすぎて止まれなかったといいますか……」
「なるほど……」
どうやら私は、勢いよく外の仕切り用の壁にぶつかった様です。
このゲームHPなどが確認できないようでよくはわかりませんが、デスポーンしたわけではないようですね。むしろ、セーフティエリアである街中なので、本当にぶつかって気絶したのでしょうか。
これは、お願いするマナを間違えたのか、それとも私の魔法系のレベルが低すぎてダメだったのか……どちらにせよ、直接マナにお願いして強化するのは今はまだ無理そうですね。
「もうびっくりしたよ先生。」
「あーライム君もごめんね?」
「俺よりも他の子に謝ってあげてくれ、すごく心配してたし。」
周りを見ると少し離れたところでみんなが心配そうにしています。
ゲームの中とはいえ、子供に心配させるようではいけませんね。
「みんなごめんね、先生はもう大丈夫だから!」
「ほんとう?いたくない?」
「本当本当痛くないよー!」
「だいじょうぶー?」
「大丈夫大丈夫!ほらほら、続きして遊ぼう?」
「はーい!」
私は子供たちの背中を押しつつ再び庭先へと向かうのでした。
しばらくすると、シスターエメダが帰ってきました。
「チェルカさん、この度はお手伝いいただいてありがとうございました。」
「いえ、私も楽しく一緒に遊ばせてもらっただけでしたから。」
「本当にありがとうございました。」
「シスターフォルもありがとうございます。楽しかったですよ」
「手伝ってもらったお礼ですが、少しですがどうぞ、受け取ってください」
『クエスト:教会のお留守番をクリアしました。報酬:1000Rを獲得しました。』
「あ、ありがとうございます。」
「いえいえ、子供たちも喜んでいたようですから、また是非とも来てくださいね」
「はい、また是非とも」
私はシスターフォルとシスターエメダに挨拶をすると、そのまま孤児院をあとにしました。
最後に子供達と挨拶をしたかったけど、ぬるっと抜け出してきちゃったな……。
とりあえず、目的の孤児院を見るは達成しました。
現実の時間ではもう夜も遅くいい時間でしょうか……。
「どうしようかな、ゼズペットさんに聞きたいこともあるんだけど、それだけ聞いてログアウトすればいいかな。」
私が現在仲良くさせてもらってるNPCは教会のゼズペットさんと、孤児院のシスターフォル。一応面識としてシスターエメダといった感じです。
時間があったらまちの探索を進めて鍛冶屋や食堂などにも顔を出したいところですが、そう焦るものでもないでしょう。
私は慣れた歩みで教会へ向かいます。
幸いなことにゼズペットさん以外には誰もいないようですね。
「ただいま、でいいんでしょうか?」
「おかえりなさいと、答えておきましょうか?」
「ははは、ありがとうございます。またあとで倉庫はお借りすると思います。」
「どうぞいくらでもご利用ください。あ、教会へありがとうございました。」
「いえ、おかげでシスターフォルや子供たちと仲良く出来ましたので。」
「そう……ですか、シスターフォルや子供達と。」
何やら考え込むような仕草を取るゼズペットさん。これは何らかのフラグが立ちましたか?
「チェルカさんは……あの子達を見てどう思いましたか?」
「……どうとは?」
「そうですね……私たちと違う外見や力を持つ子達を見て何を思いましたか?」
私は別に種族などに対して偏見などは特にない。
今時天使が堕天することもあれば悪魔が良いことをするお話だってある。
そんな中で、見た目や能力だけで嫌悪を覚えたりもしない。
むしろ子供たちは元気で可愛かったのだ。ならば私の答えは一つだろう。
「とてもいい子達だなと。ただそれだけですね。」
「いい子達。なるほど、チェルカさんはそういう御方なんですね。ありがとうございます。」
「いえ、どういうふうにゼズペットさんがとらえられたのかはわかりませんが、お役に立てたなら。」
「そうですね、私からは……。ああ、もうひとつよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ?」
時々この会話の間が本当に人が入っているんじゃないかと思うから、このゲームのAIはすごい。
「旅人というのはあなたのような方ばかりなのでしょうか?」
「うーん。どうでしょう、旅人といっても私たちはあなた方と同じですよ。」
「ははは、確かにその通りですね。これは不躾でした。申し訳ございません。」
「いえ、大丈夫です。あ、私からもひとついいですか?」
「はい、なんでしょうか?」
「この世界の半獣についてお聞きしたいのですが……。」
「私から語れることは多くはありませんが……そうですね。おそらくは旅人であるあなたの想像通りかと。」
「それは答えとは言いませんよ。」
「では、“世界の始まり”という本をお探しください。あなたならば読めると思いますので。」
そういうとゼズペットさんはお辞儀をすると、奥へと歩いて行ってしまう。
「結局質問の答えになってないじゃん……でも、本を探せって言うなら探すしかないよね!」
私はすぐに倉庫へと向かいます。
倉庫へつくと早速本を探し始めますが……。
「“世界の始まり”……無い?【観察】も特に反応はしてくれないし……これはあれかな?ここにはないけど、探せという?」
NPCに答えを聞いてものを探せというのはRPG的には基本でしょうが、最初の街で情報を聞いたのに、その本自体がここではなく他の場所にあるかもしれないというのは、いかがなものでしょうか。
「そもそも、ここにないなら読む読めないどころじゃないし……やっぱり答えになってないじゃん!」
こういうところは開発の意地の悪さを感じでしまいます。しかしこのゲームのAIは割と自分で考えてるようなところもあるので、あれはゼズペットさんの設定なのでしょうか?意地悪ですねゼズペットさん。
「はぁ……時間もいいし、今日は寝よう。明日は学校だし……理織にもちょっと聞いてみよう。」
その日私はすっかりおなじみになった倉庫でログアウトしたのでした。




