プロローグ
思いついたので書きました。
投稿作品の欄がただのネタ帳と化しているのに危機感を覚えます。
「この村から出て行け異端者め。貴様の奇行は目に余る。これ以上許容は出来ん」
偉そうにふんぞり返っているエルフは私を見てそういった。
「どうして理解しようとしない!貴方はこの村の長老だろう!この森の土は、増え続けている木々のせいでやせ細っている。私は森を破壊しようなどとは考えていない!このままでは、この森は枯れてしまう!自然の本当の美しさは、闇雲な保全ではなくその再生にあるとなぜ分からない!」
「木々が生い茂っているのはこの森が豊かだからだ。貴様は一体いくつの木を切り倒した?一体いくつの木を腐らせた?一体どれだけこの森を汚せば気が済む」
「木を切り倒したのは、これ以上大地が痩せないため、そして他の木々が生きやすい環境を整えるためだ!それにあれは腐らせたんじゃない!栄養が足りなくなった土に与える肥料を作っていたんだ!」
「訳の分からぬ事を」
「どうしてこの里で最も長く生きているあんたが理解できない!どうしてこの森の異常性に気付けない!この森が本当に豊かだというのなら、なぜこの里は食糧難に陥っている!原因は明白だろう!森の植物たちに栄養が足りていないせいで、実を実らせることが出来ていないからじゃないか!このままじゃ、新たな命が芽吹く事もなくなるぞ!それの意味が分からない訳じゃないだろう!今あるこの森がなくなれば、ここには何も」
「黙れッ!!」
「ッ!?」
「……先ほど言ったことが理解できないか?これ以上無駄な抵抗はやめろ。これ以上里の者を惑わすな。荷物をまとめる時間はくれてやる。貴様は仮にも、あの二人の子供だからな。それに免じて慈悲をくれてやる。この村から出ていけ、拒否権は無い」
「ッ……わかっ……た」
私は長老の家を追い出された。
「……はぁ、諦めよう。これ以上はお父さんとお母さんに迷惑が掛かる」
あのクソ老いぼれエルフめ。
腐ったリンゴみたいな匂いの加齢臭で、部屋の匂いがヤバかった。
馬糞の方がまだましだ。
「ルアナ!!」
「モーゼス……」
「その、どうだった?」
「里を追い出される事が決まったよ」
「……え?」
「お父さんとお母さんのお陰で、荷物をまとめる時間はもらえたよ。直ぐにでも出て行かないと、何をされるか分かったもんじゃないし、早く準備を整えないとね」
「そんな……ふ、ふざけるなよ!俺たちが今日まで食いつないでこれたのは、ルアナのお陰じゃないか!森の一角だって、ルアナの言った通りにした場所は昔のような綺麗な森に戻りつつある。なのにッ」
モーゼス、私の幼なじみだ。
小さいころからよく一緒にいた。
私がやっていた事も、最初はよくわからないと言いながらも、よく手を貸してくれていた。
実際に効果が表れると、凄く喜んでくれたし、褒めてくれた。
お父さんとお母さんは、この里の守護者をしている。
モーゼスの両親は、家の両親の部下で、昔から家族ぐるみの付き合いだ。
「そ、そうだ。皆でもう一度長老の所に行こう。大勢で行けば、きっと長老も無視できない筈だ」
私はモーゼスのその言葉に首を振る。
「無理だよ。皆、長老に逆らおうとはしない。それに、力づくでやったって、長老には勝てないんだから」
「クソッ!!あんなザコ、世界樹様の加護が無ければ……どうして世界樹様はあんな奴に加護を……」
「それは世界樹様が決める事だから、私たちが何か言ったところで、何も変わらないよ」
戦う力であれば、長老は強くない。
しかし、世界樹の加護と言って、無尽蔵ともいえる世界樹の魔力を扱えるだけでなく、魔法に対する強い耐性を与えられる。
これのせいで、誰も長老を傷つけられない。
「ねぇモーゼス。お願いがあるの」
「なんだい?何でも言ってくれ」
「私はこの里から居なくなってしまうけど、まだ、この里を救うチャンスはある。あなたには、森を救う術がある。私と一緒にいた貴方だから知っている。だから……今は耐えて。そして時が来たら、あなたがこの里を率いるの。そうすれば、この森を救える」
「そ、それじゃあ間に合わないよ。俺が長老になんて……」
「誰が長老になれって言ったの?次期長老になる必要なんてない。要は、貴方が世界樹様から加護を貰えればいいの。だから、じっくりと準備を整えて。こまったら私の両親を頼って。私が教えたことをひっそりとやり続けるの。そうすれば、一先ず飢えることは無い。だから焦らないで」
「……ルアナは、どうするんだよ」
「…………」
私はそう聞かれて言葉に詰まる。
「……私の事は、忘れて」
「出来る訳ないだろッ!!」
「……ごめんね」
「ぐぅ!?ル、アナ……何、を……」
モーゼスはそのまま倒れた。
魔法で意識を失わせたのだ。
きっと、モーゼスの事だ。
無理をして私についてくるつもりだったのだろう。
それはダメだ。
この里を救う術を持っているのは、モーゼスだけだ。
私が追い出されてしまった今、知識を持っているモーゼスがここに残らなければいけない。
私は魔法を使ってばれないように、モーゼスを家まで運んだ。
「……ただいま、お父さん、お母さん」
「ルアナ」
二人とも、帰りを待ってくれていたようだ。
お父さんに名前を呼ばれた。
恐らく、長老に何と言われたのか聞いているのだろう。
「……異端者だって」
「……そうか」
「そんな……じゃあ、もうあなたと、こうして話す事も、抱きしめてあげる事も、出来ない、のね」
お母さんはお父さんに抱き着いて泣き出してしまった。
「モーゼスをお願い」
「……眠っているようだが」
「ついてきそうだったから、ちょっと強めにやった。この里を救えるのは、もうモーゼスだけ。守ってあげて」
「わかった。どうすればいいのか、モーゼスは知っているんだな?」
「うん。……ごめんね、お父さん。守護者としての教育が無駄になっちゃった」
「そんな事言うな。それに、無駄になった訳じゃないさ。それが、お前の生きる力になってくれるのなら、父さんは嬉しいよ。謝らなければいけないのは父さんの方だ。娘を、最後まで育ててやれなかった」
「ルアナ!」
お母さんが抱きしめてきた。
「お母さん……」
「ごめんなさい、ごめんなさい……私たちが守護者じゃ無ければ、あなたと一緒に行く事も出来たのに……」
「いいんだよ。お父さんとお母さんが守護者だからこそ、安心してモーゼスとこの里を任せられるから」
「絶対、絶対にこの里を変えてみせるわ!そして、必ずあなたをこの里に迎え入れる。だから……どうか、その時まで……」
「大丈夫だよ。二人に鍛えられたんだもん。外でも生きていけるよ」
「ルアナ、これをお前に託す」
「これは……」
突然、お父さんにある物を渡された。
「剣……ッ!?これって!?」
「気付いたか。これは世界樹の枝から削り出した、守護者のみが持つことを許される宝剣だ。お前が守護者になった時に渡すつもりだったが、今、お前に託そう」
「……ありがとう、お父さん」
うっすらと青白く輝く、鋭く、しかしどこか優しくもあるその剣を、私は背に差す。
「ルアナ、私からはこれを」
「……お母さん?」
お母さんの様子が少しおかしい。
さっきとは、目つきが……
「うっ!?……お、お母、さん?な…なに、を」
強く、閉められる首。
お母さんの爪が、首に刺さっているのが分かる。
自分の暖かい血が、身体に流れていく。
「お、お父…さん……?」
お父さんに助けを求める。
が、
「…………」
動かない。
お父さんもまた、雰囲気が先ほどとは全然違う。
「ルアナを放せぇえええ!!!!」
大きな声が聞こえたと共に、私は解放され、床に倒れる。
「う、ゲホッ!ゲホッ!」
顔を上げると、そこには、両親と争うモーゼスの姿があった。
「ルアナ!ここは俺に任せて、早く逃げろ!」
「う……あ、あり、がとう。モー、ゼス」
ふらつく体に鞭を打つように無理やり動かし、家を飛び出し、森へ駆けていく。
「はぁ、はぁ、はぁ」
何も考えられない。
がむしゃらに森を走り続ける。
体中が悲鳴を上げても、止まらない。
後ろを振り返る事もしない。
薄暗く、不気味で、動物の声一つしないこの森の中を、だた一人、走り続けた。
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「ん……んぅ……はぁ、朝か」
窓の開き戸を開け、日の光を浴びながら伸びをする。
「あ~、汗でびっちょりだ。またあの時の夢か」
あれ以来、その時の事を夢で見るようになった。
「……私に出来る事は、皆を信じる事だけ。考えたって、何も変わらない」
自分に言い聞かせながら、汗を拭いて顔を水で洗う。
「さて、今日も一日頑張りますか!まずは汗かいたからお風呂だね!朝風呂、なんて贅沢な……フフフフフ」
鳥のさえずる、森の中、木漏れ日を浴びている一軒の家。
里から遠く離れたその場所で、ルアナはただ一人、そこで悠々自適に暮らしていた。