episode6: 「イチ」と「ニ」の狭間
chapter2:繋がる世界
・・・どれくらい眠ったのだろうか。
意識がぼんやりとし、曇った鏡のように記憶が曖昧だ。
ふと、手に持った銃を見る。残弾が残り少ないのをみると、あぁまた人を殺めたのかと思う。
辺りには腐敗臭が漂よっていて、不気味な空気を醸し出している。
銃に弾を込める、ずっしりとしたその銃は、私の手の中で不気味に光った。
・・・弾を込める瞬間は快感だ。銃に新たな息吹が吹き込まれるような気分になり、なんとも言いがたい気分になる。
ふと考える。いつから私はこんな人間になってしまったのか・・・。
答えは簡単だ。なんでこんなことを考えてしまうのかわからないくらい答えは明白なのだ。
そう、答えは最初から・・・。生まれてから今に至るまで、私はこんな人間なのだ。
人を殺すという快楽にのみ身をゆだね、血を血で洗い流すことしかできない、死神なのだ。
あぁ死神さ、私は死神だ・・・。醜い、銃を撃つことしか考えない魂の媒介になるだけの、ちっぽけな器。私に許された快楽は目の前にいる物を破壊することだけだ。
目の前にいる物・・・か、不思議な言葉だな・・・。
立ち上がると、そこは大草原だった。
いつか見たことがあるような景色だな、と思い歩き出す。
今日もまた、仕事をこなすだけの、機械のような一日が過ぎて行った。そう私は機械のような人間なのだ。
イチかニか、それだけしか考える脳を持たない虚しい人間・・・虚しい?
何が虚しいのだろうか?
私は昔からそう生きてきた。だったらなにが虚しいのだろうか?
―――プツッ
頭の中で音がした。何かが切れたような音。ここちよくもあり、不快な気分にもなる。
首を横に曲げると、コキコキと気味のいい音が鳴った。
銃を握り、構えてみる。
「なにも言わずに死ね・・・。」
面白くもないはずなのに、口が勝手ににやける。
パスッ。
空気と物体が触れ合った時の音が軽く響いた。
ドスッ。
鈍い音が響いてくる。
目の前には人が横たわっていて、微動だにしない。
しだいに血が広がり始め、すぐに辺りに血が広がった。
「だから言ったんだ。俺様に逆らうなってな。」
にやけている口は、閉じられ、俺様は何も言わず、何も感じず、ただ目的地へと向かい、歩き出した。
あぁ俺様は死神さ。死神になるべくして生まれた男なんだ。
全ての物は正しい形にあるべきなのだ。
それを正すのが、死神たる俺様の役目なのだ。
服についた血は、しだいに酸化して、どす黒く染まり始めた。
もう、どれくらい歩いたろうか・・・。
イチかニか脳に刻みつけられた数字は、深く刻み込まれ、脳から離れない。
“ツギハ、「ニ」ト「サン」ノハザマダ”
頭の中で重低な声がした。頭が締め付けられるように痛い。
そして、その場に倒れてしまった。
to be continued




