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episode4: 大草原

chapter1: 始まりの始まり

雄大君が旅館に帰って来た。

神奈カンパニーでもらった紙を裕樹さんに渡すと、頭を殴られていた。

どうやら間違った仕事を取ってきたみたいだ。

なんだか大変なことになってきたみたい・・・。


――――――――――――――――――――明恋の日記より抜粋


「この馬鹿やろう。」

頭を殴られた。

「簡単な仕事を取って来いって言っただろ。」

もう一度ポカリ。

「そんなこと言っても・・・。」

ぶつぶつと口ごもった声で言い訳を呟く。

「初めて行った場所で、初めて仕事を取ってきたのだから失敗も当然あるだろう。でもな、ラグナロクの仕事は無いんじゃないのか?」

「・・・知ってるか、ラグナロクを。悪の組織として名高いラグナロク。社長のラグナはな、表では真面目な会社社長だが、裏では強盗、殺戮、なんでもありの悪魔のような奴だ。」

「わかってるのか?」

裕樹さんが立て続けに攻め続けてくる。

これだけ言い続ければ流石にのどが渇いたのか、息を切らしていた。

ぜぇはぁと肩で息をしていた裕樹さんは、まぁしかたないかと一人納得し、部屋へと歩き出した。

「明日、13時00分、きっかりに従業員控え室に全員集合だ。」

思い出したように立ち止まり、それだけ言うと、裕樹さんは再び部屋へと歩き出した。後を追って小恋さんが走って裕樹さんを追いかけていった。

そして、裕樹さんととうとう夜まで部屋から出てこなかった。

晩御飯の準備のために部屋から出てきた小恋さんに、裕樹さんのことを尋ねると、「なんでもないから大丈夫、気にしないで。」と言われた。その表情では嘘を隠しきれていないんだけど。


その夜、寝つけなくて、夜風に当たりたくなり外に出ると、月が眩しく輝いていた。

眩しいまでに輝く月を見ていると、なんだか切ない気分になってきた。

上手く表現できないけど、もう二度とこの旅館を見ることができないような気がした。


結局一睡もできないまま、部屋で一人うずくまっていた。

気がつくと夜が明けていて、部屋に差し込んできた朝日が眩しかった。


「・・・生まれ来る朝死んでいく夜。昔の人はそう言った。夜に太陽が死んで、朝に太陽が生まれてくるという意味らしい。昔の人は、世界のことを何も知らなかったけど、世界に太陽が存在することはわかっていたみたいだ。レインの時代から続くこの世界の中で確かなことは一つだけ。歴史の中には必ず人間が存在し、人間によって歴史が作られたということだ。」


・・・どうやら、うとうとしていたみたいで、目が覚めると12時を回っていた。急いで服を着替え、従業員控え室へと走る。

まだ人は集まっていないみたいで、俺が一番乗りだった。

待っている間、することもなく、ぼんやりしていると、裕樹さんが入ってきた。

「・・・来てたのか。」

疲れきった顔でそう言うと、裕樹さんは椅子に腰掛け、目をつぶった。

その後、5分もしないうちに小恋さん、乙姫さん、涼奈さんが来た。

小恋さんは、裕樹さんを心配しているようだった。

その後、明恋ちゃん、千尋ちゃんが入ってきて、これで全員が揃った。

全員が揃ったと同時に裕樹さんが目を見開いた。

「実は、今日は大事な話がある。」

おもむろにそう言い、立ち上がる。

「昨日この話を耕輔さんに話すと、貴博さんをこちらによこしてくれると言ってくれた。これは大きな戦力アップに繋がる。」

そう言って一旦息を吸い込む。

「では、準備は整っているか?」

全員が口々に、「はい」と言った。


「よし、じゃあ出発するか。」

裕樹さんが机にペンで変な模様を書くと、その模様が光だした。その瞬間、床が消え、壁が消え、天上までもが消えてなくなった。


目を覚ますと、そこは大草原だった。

道も無く草むらが延々と広がっていた。

「ここは・・・?」

辺りを見回してみたが、誰もいなかった。

みんなは、月間荘のみんなはどこに行ったのだろうか。

ふと、手に持った携帯を見ると、メールが届いていた。

“目を覚ましたら東に向かって歩いて来い。東に向かって歩いていたら大きな建物があるからそこの前に明日の昼12時に集合だ。”

と書かれていた。


アバウトな説明だなと思いつつ、携帯の画面を消す。

そして、東に向かって歩き出す。その惨劇に向かって歩み寄るように・・・。

to be continued

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