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episode3: 初めての依頼〜雄大の場合〜

chapter1: 始まりの始まり

この1週間、俺はおじさんからの手紙の内容について考えていた。

不可解な内容、“なんでも屋”という存在、そして“公にはさらせない仕事”どういうことなのか、ずっと考えているが、いくら考えてもわからない。

「雄大、ちょっといいか?」

「うわぁっ。」

裕樹さんが声をかけてきた。

いきなり声をかけられたので、びっくりして、大きな声で叫んでしまった。

「ぼんやりしすぎだろ・・・。それより、仕事が入ったんだ、従業員控え室に来てくれるか?」

「・・・はい。」

不振に思いながらも答えて、腕にまいている時計を見た。

ぼんやりとしているうちに、2時間も経っていた。


従業員控え室とは、従業員が休憩を取ったり、仕事に出るときに道具を置いておいたりするところで、俺は普段はここでは休憩しかとっていない。


従業員控え室に着くと、裕樹さんが、どこから現われたのか地下室へと続く階段の中から、手を招いているのが見えた。それに続いて地下室への階段を降りる。


階段を降りると、そこはまるで特撮物でよく見かけるような、そう、言うならば秘密基地みたいになっていた。階段を降りた真正面には100インチはありそうなモニターがあり、個別に設けられたデスクの上には、小型のモニターが備え付けられていた。部屋に入って右を見ると、トビラがあった。トビラはどこに続いていくのだろうか・・・。


基地内に見とれていると、裕樹さんが一番階段に近いデスクの椅子に座るように言った。

「この話はするべきかしないべきか考えていたんだが・・・。まぁ遅かれ早かれいつかは知ってしまうことなんだ。」

そこで一度句切る。

間の明けかたが、異様なまでに長く感じられた。

「じつは、俺たちが経営している月間荘という旅館業は・・・その、なんと言うか・・・仮の姿で、本当の姿は、“ほしはざま”という・・・何でも屋なんだ。」

言いにくそうに、句切り句切り言って、頭をぽりぽりと掻いた。


「おい、雄大、聞こえてるか?」

裕樹さんが身体を揺さぶってきて、そこで初めて自分が固まっていたことに気づいた。

「何でも屋って・・・。」

聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。

「お前の意向に関係なく、耕輔がお前を使っていいとさ。」

裕樹さんは手紙を胸の裏ポケットから取り出して、広げた。

まじすか・・・。

「でも、何でも屋って、俺は何をすればいいんすか?」

まぁ普通に疑問に思うことだろう。

裕樹さんは、一瞬驚いて、考え込むような素振りを見せた。

「まぁ最初は簡単なやつからいってみるか。」

1分ほど考えてそう言った。

「簡単なやつ?」

「あぁ。そうだなぁ・・・まずは運送業からいこうか。」

にこやかにそう言うと、俺の服の首根っこを掴んでずるずると、右側のトビラを開いて、俺を中に放り込んだ。


トビラの中で目を覚ますと、明かりが点いていた。

トビラの中の世界は、タイル張りになっていて、トビラの正面には受付があり、その中には受付嬢が二人並んでいた。

受付の横には、エスカレーターがあり、人がひっきりなしに行き来している。


「ようこそ、神奈カンパニーへ。今日はお仕事のご依頼ですか?」

受付の前に行くと、右側にいた女の子が話しかけてきた。

「いや、実は、月間荘ってところから来たんですけど・・・。」

「星の間様ですね。ではお仕事の受付ということで。」

間髪入れずに答える。なにがなんだかわからない。

右側の子が、かしこまりましたとお辞儀すると、左側の子がパソコンのキーボードをパチパチと打ち出した。


「お待たせいたしました。ただいま受付されているお仕事の依頼リストです。今日はいかがなされますか?」

数分が経った後、左側の女の子が、プリントアウトした紙を右側の女の子に渡した。右側の女の子は、その紙を俺に差し出しながら言った。

正直、その紙を見てもまったく意味がわからなかった。

「じゃあ、この一番上のやつを。」

わけがわからないまま一番上にかかれているやつを指さした。

「かしこまりました。ラグナロク様からのご依頼の、“失われた秘法”の奪取ですね。」

「あぁ・・・はい。」

かっこいい名前だなと思いながら、依頼内容の書かれていた紙を受け取って、その場を後にした。


このときはそれから起こる惨劇など考えてもいなかった。

to be continued

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