episode15: 貴博の物語
Extra1:貴博
――存在しなかった場所
「やっと戻ってきたか」
耕輔が呟いた。
「待たせたな」
その瞬間、貴博が光の中から現われた。
「遅かったな」
「まぁちょこっと面倒なことがあったんでな」
「どうだった?」
「何がだよ?」
「雄大だ」
「あぁ雄大か。元気そうだったぞ」
「そうか……ならばよい」
「さてと、行くとするか」
「……」
耕輔の背中を叩き、貴博が歩き出す。それに続くように耕輔が歩き出した。
――記憶の中の街
「しかし、蒸し暑いな」
うなだれながら貴博が呟く。
耕輔は、ひたすら前にむかって進んでいく。
「早く立ち上がれ。さもなくば置いていくぞ」
無表情で耕輔が言う。
少し間を置いて、貴博が立ち上がった。
「しかし、神ってのも意外に頼りないモンなんだな」
自嘲気味に笑う貴博。
「俺たちを除いてはな」
耕輔がさらに被せる。
――神のいる場所
「機械と言う高次元の媒体を神と崇め、神に逆らうものは皆殺し。恐怖政治もいいところだな。絶対神の名により発せられた大量虐殺の罪で、“001 傲慢なる炎 アクセル”が処刑を実行する」
何者かが剣を振り上げ、そして振り下ろす。
天が割れたかのような轟音が当たりに響き渡り、一瞬にして静寂が生まれた。
そして大地には雨が降り注ぎ、人々は笑いを取り戻した。
――月間荘
「さてと、俺も月間荘に戻ってきたことだし、明日からは月間荘本格始動だ」
嬉しそうに貴博さんが言う。
そこには耕輔さんの姿もあった。
そして僕たちは新たな物語へと足を踏み入れる。
暑い暑い夏の日に……。
to be continued




