episode9:ラグナロク本社前
chapter3:失われた秘法
東に向かって草原を歩いていくと、草原から抜け出し、整備された道にたどり着いた。
10kmほど先に街の光が見える。
ということは、この先10kmは建物が無いということだ。
はぁ、とため息をついてまた歩き出す。
1時間ほど歩いたところで、やっと街の建物が見えてきた。
一番大きな建物が中心に建っていて、それを取り巻くように少しだけ小さい建物が群集をなしている。そして、街を外れたところには民家が立ち並んでいた。
街に入り、まず目に入ったのは、ラグナロク本社の看板だった。
街外れにまで看板を立てるのだから、相当な力を持った会社なんだろう。
「すいません、ラグナロク本社に行きたいんですが・・・。」
近くに居た男に尋ねてみる。
しかし、その男は俺を睨みつけて、足早にどこかに行ってしまった。
俺は何を怒ってるんだろうかと思い、他の人に聞くことにした。
「すいません、ラグナロク本社に行きたいんですが・・・。」
と、今度は女の子に尋ねてみるが、その女の子はけたたましい叫び声をあげて走り去ってしまった。
何かがおかしい・・・。
ラグナロクという名前を出しただけなのに・・・。
「あんた、ラグナロクの一員かえ?」
立ち止まっていろいろ考えていると、一人の老婆が俺に話しかけてきた。
後ろには、先ほど悲鳴を上げて走り去った女の子が隠れている。
「俺?」
とだけ聞き返す。
老婆は肯定の意を示すように頭を縦に振る。
「全然関係ないよ。」
と言ったところで今回の依頼内容を考える。確か“失われた秘法”の奪取だったけかな?
あれ、じゃあ結局は関係があるのかな?
「・・・でもちょっとは関係あるかもな。」
と付け足す。
「・・・ラグナロクは悪魔の組織じゃ。」
神妙に口を開いた老婆。さらに続ける。
「この街の人間もいつ殺されるか、いつさらわれるかわからないままに毎日生活をおくっとるんじゃ。ラグナロクの社長ラグナは悪魔のような男じゃ。あんたも知っているとおりラグナは所有者じゃ。その能力を見たものは皆殺され、如何様な能力かはわからんが、おそらく神と呼ばれる男じゃて、Sクラスじゃろう・・・。わかったら早くラグナロクから手を引くことじゃ・・・。」
老婆はそれだけ言うと、足を引き摺りながら、家屋の中へと入っていった。
しかし、ここまで来て引けるわけも無く、ラグナロク本社へとどうにかたどり着いた。
道中、ずっと老婆の言葉の意味を考えてみたが、結局俺には理解の範疇を超えていた。
「遅かったな、雄大。さぁ行くぞ。」
本社前に着くと、皆が勢ぞろいしていて、俺が最後だったみたいだ。
「おっと、貴博さんを待たないとな。」
裕樹さんが思い出したように言う。
時計を見ると、約束の時間まであと5分だった。
to be continued




