1945年8月18日
混乱したソ連兵は、散り散りに敗走しはじめ、それを播戸達が追撃に入った。
必死に逃げるソ連兵を、ひとりひとり始末し陽が昇る前に、八方山陣地へ戻るつもりの播戸であったが、いつの間にかソ連兵に囲まれていた。
ソ連兵に囲まれ、何か所も撃ち抜かれ瀕死の播戸であったが、最後は自身の判断ミスを悔やみながら、直利達の心配をしながらその生涯を終えた。
「罠だったのか・・・直利あとは頼んだぞ・・・」
昨晩の夜襲は、ソ連軍に取っては捨て石であった。
斥候を張り巡らせ、ソ連側の出方を伺っている事を、ソ連側は察知しており、夜襲を行っている最中に古屯から大隊を呼び戻し、夜中のうちに編成を終え八方山陣地を囲うように進軍していた。
夜襲で疲弊し、何の準備もしていなかった八方山陣地は、昼前にはソ連軍に囲まれてしまった。
ソ連軍は、突撃する事無く一定の距離を保ち、たまに日本軍の生存者を確認するかのように、野砲を単発的に撃ってきていた。
八方山陣地内では、直利が命令を迫られていた
「現在、最上位の階級は能戸少尉であります。八方山陣地の指揮をお願いします!」
「そう言う事になるか・・・しかしソ連軍にはしてやられたよ。一個大隊を捨て石に使うとは思ってもみなかった」
「少尉殿、これからどういたしますか?もう玉砕するしかないのではありませんか!」
「一応ろ助の出方は見るが・・・もう玉砕するしかないな、ただ一人でも多くのろ助を、道連れにする方法を考えるから待ってくれ、無駄死にだけはさせない」
敵が陣地へ突入してくれれば、自分達の何倍ものソ連兵を道連れに出来るが、ソ連軍が仕掛けて来ない状況で、こちらからただ突入しても無駄死だ
既に食料は尽きているので、残った32人には、残された時間は限られていた。




