プロローグ1
私、月宮奏は生まれた時から、年を重ねるにつれて筋力が低下していき、20歳になる頃には心臓も止まってしまうという恐ろしい病気にかかっている。それも、絶対に治ることはないと医師から言われている。こんな病気にかかっているから生まれた時からずっと病院に
私はこの病気が原因で、学校には小学校すら行っていない。もちろん、友達と呼べる人はいない。私が普段喋る人といえば、父さんと母さん、妹、お医者さん、看護師さんくらいだ。
私は毎日が本当につまらなかった。朝起きて、朝食を食べ、リハビリをして、昼食を食べ、それからは日向ぼっこをしながら勉強をしたり、ゲームをする。そんな一日がずっと続いていた。
そんななか、妹の月宮結愛がこんなことを言ってきた。
「お姉ちゃん、このゲーム一緒にやらない?」
そう言って見せてきたのはVRMMOだった。
きっと、この一言がなければ、私は死ぬまでずっとつまらない人生を送ることになっていただろう。
初めてVRMMOをやったとき、私は本当に感動した。五感もリアルとほとんど変わらないのだ。
リアルでは杖がなければ歩けない私も、なんの補助もなく歩ける。また、食事や、ものづくりなどたくさんの経験が出来る。そして何よりも、モンスターとの戦闘だ。仲間と一緒に相手と戦い、勝った時はみんなで喜び、負けた時はみんなで悔しがる。これがたまらなかった。
これを切っ掛けに、私はVRMMOにドハマりしてしまった。
それから数年間、色々なジャンルのVRMMOゲームをして、プレイヤースキルを磨きに磨いた。自慢じゃないが、私は誰よりも暇人だった自身があったので、じっくり時間をかけて、剣術や歩法、料理なども学んだ。無理ゲー、クソゲーと呼ばれたRPGもクリアできるようになった。自分でもかなり強くなったと思う。
さて、なぜ私がこんな一人語りをしているか。それは今朝までさかのぼる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝、比較的早い時間。私は専属の医師に呼ばれて車イスに乗っていた。おそらく検診だろうな。でもなんで、いつもよりも早い時間に呼ばれたんだろ?きっと予約キャンセルでもあったのだろう。そんなことを考えているうちについた。
「失礼します。」
お医者さんともけっこう仲良くなったが、親しき仲にも礼儀ありってね!
「こんにちは、奏さん。どうぞこちらへ。」
なぜだろう。心なしか少し暗い雰囲気だ。
「先生、今日はなんでこんなに早い時間だったんですか?」
私が質問すると先生は一瞬、さらに暗い雰囲気になったが、次の瞬間真面目な顔に戻ってこう答えた。
「今日は真面目な話があってお呼びしました。」
先生は一息つくと、
「奏さん。残念ですが、あなたはあと、一年で亡くなってしまいます。」
……マジですか