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第8話 ラララ



「いやはや、手足が凍える辛い時期になりましたなぁ、皆さん」


「ホントよねぇ薫ちゃん、この前まで暑い暑い、って言ってたのがウソみた〜い」


「千夏の言う通りやわ、日が暮れるんが早よなったわなぁ、何か下校時間の時点で結構暗くなってるしなぁ」



航と薫に出会ってから二ヶ月、私達は八人は結局、毎日一緒に下校する様になった。

正直言うと私は最初の頃は一緒に帰るのが面倒くさかったのだが、翔太が居てくれるのでいつも私が見ていた小夜の世話を二人で分担する事が出来る様になった。

しかも翼と千夏は相変わらず薫と仲が良く、麻美と航は帰る家が一緒なので、むしろみんなて一緒に帰った方が都合が良く、私も楽が出来るので最近はもうこれが日課になってきた。



「ねーねーねー、麻美ちゃんは温かい食べ物で何が一番好き?」


「……うーん、そうだなぁ、おでんとか好きかなぁ? あとお鍋とかシチューとか」


「そーだね、シチューとか美味しいよね! お野菜いっぱい入れてね!」


「ところで小夜ちゃんはどんな食べ物が好きなの?」


「あたしは麻婆豆腐だーい好き!」


「……それって別に寒くなくても食べられる料理だよね……?」



途中みんなでコンビニに寄りそれぞれ温かい飲み物を買って飲んだ。一口飲んだ後に吐く息が若干白く変わる。冬はもうそこまで来ているのを実感する。



「……なぁ、そんな事より、一つ言わせてもろうてええかな、薫?」


「ハイハイ、何でごさいましょう、翼姫様?」


「お前、何で缶コーヒー飲む時に小指が立ってんねん?」


「あぁ、これね?」


「何かめちゃめちゃオヤジ臭いわ、なぁ、千夏?」


「うわぁ、薫ちゃん、それはちょっと気持ち悪〜い!」



翼と千夏は薫を避ける様にそばを離れた。しかしなぜか薫はニコニコして喋り出した。



「これさ、何で小指が立っちゃうか知ってる?」


「……まぁ、良く立ってる人おるけど、何か理由があるんかいな?」


「えっ〜、なになに? 何か興味津々〜、何か肉体的や精神的に関係あるとか?」


「コレね、小指じゃなくて親指を離したら缶コーヒー支えられなくなって落っことしちゃうからなんだよ」


「……うわっ、くだらへん、その為にわざわざウチらに指を見せてたんかい!」


「……えっ〜、何か物凄い最悪なんだけど〜」


「しかもこのネタね、人が話してるの聞いてパクった」


「ネタはくだらないわ、挙げ句はパクってるわでもう最悪やわホンマに……」



私達はいつもこんなくだらない会話を交わしながら学校から最寄り駅まで歩いて行く。

私と小夜と翔太は電車に乗って帰る必要は無いが、ついついみんなと長話になって駅まで見送る事が多い。と、いうかほとんど毎回駅まで見送ってる。


そんな楽しい下校時間の中、私は一つだけ気がかりな事がある。航が全く私達の会話に参加してこない事だ。

私達の後をちゃんとついてくるのだが、ほとんど喋りかけてくる事が無い。こちらから話しかけるとしっかり返事はするが会話が終わるとすぐに黙ってしまう。



「……あっ、そうだ、なぁ航、この前上履きのサイズが合わないって言ってたけど、あの話ってもう解決したのか?」


「…………新しい上履きに替えた」


「……そっか……」



いつもこんな感じだ。私達女子との会話どころか、翔太との会話でも全く盛り上がらない。



「まだまだ成長期なんですなぁ航は、牛乳ばかり飲んでるしねぇ」


「……ホンマかい薫? このノッポ、これからまだデカくなるんかい……?」


「翼、少し航ちゃんから成長ホルモン分けて貰ったらぁ〜?」


「やかましいわ千夏! ほっとけや!」



本当に薫とは対照的だ。うるさいのも困るが、デカくて目立つのに無口過ぎるのも困ったものだ。

航が何でこんな無口なのか気になって私の心はどうもパッと晴れない。余計なお世話だろうか。


そんな事を考えながら温かい飲み物を飲んで歩いていると、いつもの駅前の交差点の信号に着いた。



「おーい、那奈! 早くしないと信号が変わっちまうぞ!」


「那奈、早くー! 信号変わっちゃうよー!?」


「…えっ? あ、あれ?」



翔太と小夜の声が聞こえてきた時には信号は赤に変わってしまった。考え事をしていてどうやら私だけ置いて行かれてしまったみたいだ。


……いや、私以上にトロくて渡りそびれた人間が一名隣にいた。麻美子だ。



「……み、みんな早いよ、ハァ、ハァ……」



見た目通りに運動神経の無い娘だ。もしかしたら小夜よりも足が遅いかも知れない。



「那奈、先に駅まで行ってるよ」


「うん、翔太、先に行ってて」


「麻美ちゃーん! ゆっくりでいいからねー!」


「……は、はい、ハァ、ハァ……」



待っていた翔太達を先に行かせて、私と麻美子は信号が変わるのを待った。しかし、ここの信号はなかなか変わらない。

ジッと待っている空気が少しもどかしくなってきたので、私は隣にいる麻美子に話しかけた。



「あのさぁ麻美子、ちょっといい?」


「は、はい! な、何ですか!?」


「……そんな緊張しなくていいからさ、大した話じゃないし」


「……あっ、そうですか、ごめんなさい……」


「……謝らなくても無いからさ」


「……あっ、はい、すいません……」


「だから謝るなっつーの!」



どうやらこの前、私がうるさかった翼と薫をシメたのを見て、完全に麻美子に怖がられてしまったみたいだ。また変な誤解をさせてしまったなぁ……。



「あのさ、ちょっと聞きだいんだけど、航っていつも家でもあんな無口なの?」


「……えっ、航君ですか?」


「アンタの家で一緒に住んでるんでしょ? 家の中で家族の人と話したりするなんて事ないの?」


「……そうですね、一緒に住んでるっていっても航君はあまり私達と一緒に行動したくないみたいで、いつも一定の距離を置いてるし……」



どうやら誰に対しても素っ気ない態度を取るみたいだ。やはり過去に親を亡くした影響とかがあるのだろうか。



「余計な事を聞くかも知れないけど、何で麻美子の家族と航が一緒に暮らす事になったの?」


「……私のお母さんと今のお父さんが再婚する前からの事情で……」


「……何か、あまり話をしたくなさそうだね……」


「……航君に確認を取らないで、私が話してしまっていいのかどうかって……」



麻美子の表情から察するとかなり重たい事情があるみたいだ。何か聞くのが申し訳無くなってきた。



「……那奈さん、気になりますか……?」


「……いや、気になるっていうかね、私と翔太の事情とちょっと似てるから何か理由があるのかなって」


「……そうですね、言われてみれば良く似てますよね……」


「あまりこういった家庭環境って他じゃそんなにないから、どんなものか知りたくてね、余計な事を聞いてごめんね」



まぁ、人それぞれ誰もが色々な事情を持っているものだ。これ以上出歯亀みたいなマネは止めておこう。



「……あっ、で、でも言っておきますけど、私と航君は那奈さんや翔太君みたいな仲じゃないですから!」


「……何それ、どういう意味?」


「……い、いや、あの、その、特に深い意味は……」



余計な一言が入ったが、とりあえず航の無口は何かしらの理由があるのはわかった。この話はここで止めておこう。


ちょうど信号も青に変わったので、私と麻美子は横断歩道を渡りみんなの後を追った。しかし麻美子が私から逃げる様に少し早足なのが気になる。



「あー、来た来た! 麻美ちゃん、こっちこっちー!」


「……ごめんね小夜ちゃん、待たせちゃって……」



やっとこさ駅に到着したら、翼と千夏と薫のお喋り三人組の姿が無い。



「あれ? 翔太、翼達は?」


「あぁ、ちょうど電車が到着しちゃったからもう乗って帰っちゃったよ」


「……薄情だねぇ、アイツらは……」



まぁいいか、これで少し静かになったし。見送りも済んだ事だから家に帰ろうと思ったら、小夜が麻美子と遊びの予定をし始めた。



「ねーねーねー、麻美ちゃん! 今度のお休み、また井上さんのスタジオ行かない?」


「……スタジオもいいけど小夜ちゃん、今度は私の家に遊びに来てよ!」


「えっ? 麻美ちゃんのお家に?」


「うん! いつも小夜ちゃんの家に連れて行って貰ったり、井上さんのスタジオに連れて行って貰ったりしたから、今度は小夜ちゃんを家に招待してあげたくて……」



麻美子の家か。確か診療所だって聞いているけど、小夜なんかが行って大丈夫だろうか?また何か壊さなければいいけど……。



「私のお母さんも、一度小夜ちゃんに会ってお礼が言いたいって言ってるから、もし小夜ちゃんが良かったら家で遊ぼうよ!」


「うん、いいよ! じゃあ麻実ちゃんのお家にお邪魔するね!」


「本当!? 良かったー! 航君、邪魔しないから安心してね!」


「…………了解」



小夜と麻美子は手を繋いでキャッキャッと飛び跳ねて喜んでいるが、私は何か不安だ。小夜が医療薬品などをブチ撒けてバイオハザードとか起こさなければいいが……。



「……でも、麻美ちゃんのお家って、どこなの?」


「……この駅から6つ先の駅なんだけど、わかる? 大丈夫?」


「うん、大丈夫! 那奈と一緒に行くから平気平気!」


「……ハァ!?」



突然、私の名前が出て来てビックリした。何で私が一緒に行かなければならないのか?



「那奈、一緒に行こうよー! 今度のお休み、空いてるでしょ?」


「……小夜、アンタさぁ、そんなの一人で行きなさいよ……」


「だってあたし一人で電車に乗った事無いんだもん!」


「……私はアンタのママじゃ無いっつーの!」


「えー? 一緒に行こうよ那奈ー!」


「あーもう! うるさいうるさいうるさーい!」



……しかし結局、週末の休日に私は小夜と一緒に麻美の家に行く事になった。小夜の言う通り私には特に予定は無かったし、第一、診療所が小夜に破壊されないか心配だったからだ。



「那奈! 早くー! 早く行こうよー!」


「……アンタさぁ、人を巻き込んでおいてさっさと先に行くなって! 私以外の人間だったら今頃大激怒だよ!」


「だって電車来ちゃったら乗り遅れちゃうよー!」


「まだ来ないから心配すんなっつーの!」



逸る小夜をなだめながら、私達は小銭を用意して切符の自販機へと向かった。



「小夜、六つ先の駅だよ、わかる?」


「うん! 切符は前にお母さんと買った事あるから大丈夫! まずはこれ押して……」


「ちょっとちょっとちょっと! 『こども』ボタンを押すな! アンタ中学生なんだからもう大人料金でしょ!?」


「あっ、そうだった、間違えちゃった、エヘッ!」


「……エヘッ、じゃないよアンタ! 一歩間違えたらキセルだよ……」



もしかしたら一緒に行って正解だったかも知れない。この調子じゃ目的地を忘れてどこに飛んで行ってしまうかわかったもんじゃない。



「うわー、すごーい! 走ってる車より早いよ那奈ー!」


「後ろ向いて膝を立てて座るな! ちゃんと前向いて座って静かにしなさい!」



散々車内の他のお客さんに迷惑をかけながら無事に目的地の駅に着くと、家までの道案内の為に麻美が改札の前で待っていてくれた。



「あっ! 麻美ちゃんだー! 麻美ちゃーん!」


「小夜ちゃん、那奈さん、いらっしゃーい!」


「悪いね麻美子、随時待たせちゃったかな?」


「いえ、大丈夫です、私も今来たところですから、じゃあ、家まで案内しますね!」



やはり六つも駅を移動すると、街の景色はかなり変わる。ここの街は私達の街よりどこか古い歴史があり、緑も多く見える。



「……はっきり言えばちょっと田舎なんですよね、この辺」


「でもいいじゃない、何か落ち着いてていい感じだよ、海も結構近いしね」


「わー、那奈! 八百屋さんとかお魚屋さんがあるよー! スゴーい!」


「私達の家の近くじゃ商店街みたいな通りはないからね、大体買い物は駅前のスーパーマーケットぐらいだしね」



商店街を抜けてしばらく歩いていくと、小高い丘の登り階段の先にとても大きな公園があった。



「わー、公園だー! 那奈、ちょっと寄っていこうよー!」


「……全く、ホント元気だねぇ小夜は……」


「ここの公園、春になると桜がいっぱい咲いて綺麗なんですよ」


「へぇ、じゃあ今度は春にみんなでお花見に来たいね」



公園内を走り回る小夜の後を、私と麻美子は青々と茂った木々を眺めながら歩いた。

公園を抜け、小さい坂道のバス通りからさらに小さい横道に入ると、大きな駐車場の先に一軒の診療所が見えて来た。



「あそこです、あれが私の家です」


「わー! 真っ白なお家だー!」


「『遠藤医院』って看板があるね、本当にお医者さんだったんだね、お父さん」


「……あれ?」



麻美子の家に向かおうとすると、小夜が突然立ち止まって一点をジッーと見つめていた。



「……どうしたの、小夜?」


「……小夜ちゃん?」


「……今ね、麻実ちゃんのお家の二階の窓から誰かがこっちを見ていた様な気がして……」


「……えっ、誰か?」


「……二階の、窓?」


「……うん……」



私と麻美子は小夜が言う二階の窓を見上げてみたが、カーテンが風に揺らいでいるだけで人影は見えなかった。



「……誰もいないみたいだけど本当に見たの? 小夜の気のせいじゃないの?」


「……気のせい、かなぁ……?」



小夜は不思議そうに首を傾げた。でもまぁこの娘の事だ、何か妖精さんでも見えたのだろう。



「……と、とりあえず小夜ちゃんも那奈さんも家の中にどうぞ! 今日は診療所お休みだから患者さんもいないし……」


「じゃあ麻美子、お邪魔させて貰うね」


「……確かに誰か見てたのになぁ……?」


「小夜! 早くおいで!」


「……あっ、はーい!」



診療所の入り口から建物の裏を回って住居用の玄関の前へと行くと、二人の女性がせっせと箒を持って掃除をしていた。



「お母さん、ただいま! みんなを連れてきたよ!」


「……えっ、もう来ちゃったのかい? お母さんまだ掃除終わってないよ……」



頭に三角斤を被ってエプロン姿に突っかけサンダル。麻美子のお母さんはいかにも日本のお母さんといった格好をしていた。



「初めまして、渡瀬那奈です、小夜、ちゃんと自己紹介しなさい」


「えーと、初めまして、真中小夜です! 宜しくお願いします!」


「初めまして、いらっしゃい、麻美子の母の美代子です、ごめんなさいね、おばサンまだ掃除も終わってなくて、汚い家で本当にごめんなさいね?」


「……お母さん、もういいから、ねっ?」


「何を言ってるんだい、麻美子が向こうのお家でいろいろお世話になったんだろう? こんなんじゃ失礼じゃないか、二人とも本当ににごめんなさいね、大したお出迎えも出来なくて……」



何て腰の低いお母さんだろう。話を聞いているだけで優しい人なんだろうな、と推測出来るいいお母さんだ。私の家には絶対に有り得ない環境だ。



「あの、結構ですからそんなに気にしないで下さい」


「気にしないで下さーい!」


「小夜! アンタが言うな!」


「痛いよー、那奈! パチパチ叩かないでよー!」



私達が美代子さんと話していると、玄関の奥からひょろっと背の高い人影が見えた。



「…………じゃあ、今から買い物行ってきます」


「あら航君、ごめんねぇ、お使い頼んじゃったりして」


「……ごめんね航君、本当は私が行かなきゃいけないのに…」


「…………いや、いいよ別に」



出て来たのは航だった。麻美子が言った通り、本当にこの家に同居しているみたいだ。どうやら麻美子の代わりに買い物を頼まれたらしい。



「航、悪いね、お邪魔するね」


「航クン、こんにちはー!」


「…………やぁ」



航は言葉少なげに私達に返事をすると、自転車にまたがり商店街へ走っていった。



「相変わらずだね、航は……」


「……でも、色々と手伝ってくれるんで、私達は助かってます……」



私の麻美子が喋っている後ろで、美代子さんはせっせと玄関の靴を揃えて私達の分の隙間を作ってくれた。



「あんまり大したものを用意出来なかったけど、もし良かったら二人とも上がって行ってね」


「どうぞ、二人とも上がって下さい」


「はーい! お邪魔しまーす!」


「ちゃんと靴を揃えて脱ぎなさい、小夜!」



麻美子に案内されて玄関から居間に入ると、ちゃぶ台の上にたくさんのお菓子や飲み物が並んでいた。



「うわー! すごーい!」


「おばさん、こんなものしか用意出来なかったけど良かったらいっぱい食べていってね?」


「すいません、何かこんなに……」



恐縮する私をよそに、小夜は目の前のお菓子を夢中になって眺めていた。



「……あとね、小夜ちゃんが好きだって言ってたから、私、麻婆豆腐作ってみたの! お口に合えばいいんだけど……」


「わー! 麻婆豆腐だー! おいしそー!」


「小夜、少しは遠慮しなさいよ……」



遠慮を知らないのか素直過ぎるのか、小夜は落ち着きなくあれやらこれやら食べ物を物色し始めた。

と、思ったら、何か自分が座っている畳に興味を持ち出してザラザラ触り始めた。



「……あれー?」


「何よ小夜、どうしたの?」


「ここの床、変なのー? 何か草が生えているみたーい!」


「こら小夜! 口を慎みなさい!」


「……そっか、小夜ちゃんは畳って知らないんだね、そうだよね、小夜ちゃんのお家って全部フローリングだもんね……」


「ごめんなさいお母さん、ごめんね麻美子、小夜が失礼な事を言って……」


「いいのよいいのよ、気にしないで頂戴、古い家なのはおばさんも麻美子も良くわかっているからね」



美代子さんはクスクスと笑って話を受け流してくれた。やっぱり良いお母さんだ。



「でもこの床、何かフカフカしてて気持ちいいー!」


「良かった、何か小夜ちゃんに気に入ってもらえたみたい」


「全く、もう……」



小夜の発言にビクビクしながら私もお菓子を頂いていると、居間の隣りの部屋から何かカバンの支度をしている音が聞こえてきた。誰かいるのだろうか。



「……あら? ちょっとごめんなさいね……」



美代子さんはそそくさと立ち上がって、スリッパをパタパタ鳴らしながら隣りの部屋へと向かっていった。



ボーン、ボーン、ボーン



麻美子の家の居間にある古い振り子時計が私達に時間を知らせた。その音は、何か懐かしさを感じさせてくれる。


緩やかに、穏やかに流れる休日の午後。しかし突然の嵐は私達のすぐそこまで近づいていた。



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