第66話 ロックンロール
「……あのー、すいません?」
「………………」
「……参ったなコレ、どうしよう……?」
……何も語らず、何も動かず。まるで世間や日常から完全に隔離された存在と化していた『第二音楽室』と言う名の忘却の狭間で、私達が遭遇した前髪の長い謎の少年はこちらの問いかけに一切答える事無くただ黙って座ったままでそこにいた。
彼が腰掛けている黒いソファーは肘掛けこそついているもののかなり安物っぽく見える粗末品で、背もたれや腰掛けの部分は表面の皮が破れ中からスポンジが飛び出していた。これはもしかすると校長室などで不要になりここに放置してたのを再利用したものなのかもしれない。
しかし、それ以上にインパクトがあり目を引くのはそれに座っている例の少年。せっかくのソファーなんだから足を伸ばして背もたれに寄りかかれば良いものを、彼はなぜか足を組んであぐらをかき、背中を丸めて頭を垂れて、まるで座禅をしているみたいに静かに佇んでいる。
あまり綺麗とは言えない首周りがヨレヨレした白の長袖のTシャツを着ていて、髪型は目元がほとんど見えないほど長い前髪とパーマを失敗したような縮れたボサボサ頭。ズボンだけはこの学校の制服のものなのでどうやらここの生徒である事には間違いなさそうだ。
しかし、その雰囲気は誰が見ても実に怪しい。生きているのかどうかすらもわからないぐらい身動き一つしないし、寝てるにしてはあまりに体がシャンとし過ぎてる。第一、私達がズカズカと室内に入ってきて、目の前で大声を出しているにもかかわらず何の反応もしないだなんて……。彼は一体、何者?
「……Why!? なぜ、なぜなのぉ!? 今、アタシ達が目の前でこんなに大声上げて大騒ぎしているっていうのに、どうしてこのBoyは身動き一つしないのよぉ!? んもぉう、怖いしキモいしアタシ嫌ぁ〜!!」
「那奈、この人オバケじゃないよね? あたしがワガママ言ったから怒りに来たオバケじゃないよね? 本当はオバケなんていないんだよね? ねっ、ねっ?」
「……返事が無い、タダの屍の様だ、これはやはり、この学校に古くから言い伝えられている校舎内をさまよう自殺した生徒の怨霊た! もしかしたら俺達は、決して生きた人間が踏み入ってはならない死後の世界へと迷い込んでしまったんだ! ここは呪われた漂流教室、不可思議ホラーの第一人者『楳図〇ずお』の世界へようこそ! グワシッ!!」
「誰がま〇とちゃんやねん、オマエは薫ちゃんやろが? 都市伝説やらホラー漫画やら、薫って意外にオカルトマニアだったんやな、スケベで陰気って、最悪やん? キモッ! やっぱりウチ、つき合うのやめよっかなぁ〜?」
「ほーら小夜ちゃん千夏ちゃん、ヘビ少女だよ〜!! オイラの左手は神の左手、右手は神の右手だぜ! ニョロニョロニョロ〜!!」
「きゃあー! 薫ちゃん気持ち悪いー!!」
「何すんのよ、このScrub!! どさくさ紛れてベタベタ体を触ってこないでよ! You suck!! Fuck off!!」
「イタいイタいイタいです、すいませんごめんなさい謝りますこの通りですから顔引っ掻いたりみぞおちパンチしたりすね蹴っ飛ばしたりつむじグリグリするの止めて下さいお願いします」
エロ変態かつオカルト好きの最低男に脅かされ逆ギレしている小夜と千夏の怖がりコンビはさておき、先程から私は例の男子生徒に何度か呼びかけ続けてみてるのだが、やはり返事は一つも返ってこない。近づいて顔を覗き込んでみても前髪が邪魔して目が開いているのかもわからない。寝てるのか、それとも気分が悪いのか? あまりの無反応に少し心配になってきた。
「……先生か誰か、大人の人を呼んできた方が良いかな? もし、具合悪くて俯いているんだったら放っておくのもマズいし……」
「…………保健室、連れて行く?」
「えっ〜!? そんなん面倒やがな〜!? どうせコイツ、昼寝しとるだけやろ? ウチらが余計な事する必要無いがな、放っときゃええねん、こんなキモいヤツ!」
「そうもいかないでしょ? これで何か一大事があったらもっと面倒な事になるかもしれないんだよ、翼?」
「……何やねん、しんどいわぁ〜! 何で小夜のアホのお遊び探しに付き合わされた挙げ句にこんな人命救助までせなアカンねん……」
「じゃあ航、片方の脇から彼の体を支えてあげて! もう片方は私が持つから!」
もし、風邪や熱で体調を崩しているのならば見て見ぬ振りをする訳にもいくまい。とりあえずその場から立たせる為、私と航でうなだれている彼を持ち上げようと両脇に手を通してみた。手がすり抜ける事もなければ死後硬直もしてない。やはり幽霊や死体なんかではない様だ。散々煽りやがって、薫のバカが。
「……ほら、小夜と千夏もいつまでも怖がってないでちょっとは手伝ってよ! この人、全然自分の力で立とうとしてくれない……!」
「きゃあー! 那奈、那奈、那奈! 怖い、怖いよー!!」
「小夜! アンタ、いい加減に……!」
「Oh, my gooooood!! 嫌ぁ〜!! 目が、目が、目が開いてる〜!!」
「……目?」
この世のものでは無い得体の知れないものを見る様に抱き合いながら怯える二人に釣られて、私も恐る恐る抱えている彼の顔に目線をやると、先程まで開いているのか瞑っているのか良くわからなかった彼の両目ははっきりと見開いていて、その目はゆっくりと私の顔を見つめてきた。その動き、まるで映画に出てくるゾンビそのもの!
「きゃあああああぁぁぁぁ!!!!」
突然の事で驚いた私はその場で尻餅をつき、支えていた彼の腕を放して翼と一緒に小夜と千夏がいる場所まで逃げて四人で団子状態になって震え上がった。さっきまで座りっぱなしの彼はしっかりと二本の足で立ち上がったものの、相変わらず何も言葉を発さずにそこから身動き一つ起こさない。
謎だらけの男子生徒の理解し難い反応にもう何が何だかわからなくなって混乱しまくっている私達。しかし、次に彼が起こした行動は更に私達を大混乱させる衝撃のパフォーマンスだった。
「…………君、大丈夫?
「………………」
航の心配の声が聞こえて無いのか、彼は一言も返事無しで猫背のまま両手をズボンのポケットに突っ込んでかったるそうに教室の黒板の前に移動すると、右手てチョークを持ち準備運動とばかり軽く背筋を伸ばした。そして急に、黒板に何かを書き始めたのだ。
「……何、コレ……!?」
ガリガリとチョークが削れる音と共に書き写される様々な記号。音楽室の黒板は最初から楽譜用の五線が引かれており、彼はその中に音符らしきものを次々と記入していく。教科書の楽譜を写しているのではなく、何も見ないで書いているのだ。
驚くべきはその書くスピード。あっという間に一列の五線を音符で埋め尽くしたかと思えば、二段式の上下に動く黒板をスライドさせて次の五線にスラスラと続きを書いていく。その姿、正に無心の極地。音楽担当の教師でもこうも素早くは出来ないかもしれない。
私には音楽の才能が無いので一切楽譜を読む事が出来ない。だから、彼が一体何の曲を書き写しているのかサッパリわからない。しかし、それでも今、目の前で繰り広げられている光景が尋常ではない事ぐらいは理解出来た。そう感じたのは私だけでないようで、周りのみんなも口を半開きにして呆気に取られていた。
その時だった。突然音楽室の扉が開いたかと思うと、外からギターの様な何かの弦楽器とノートパソコンを持った眼鏡の男子と背の高い肌黒のアフロ頭の男子が室内に入ってきた。眼鏡の方は真面目そうな普通の日本人だが、アフロ頭の方は……、日本人じゃない!? もしかして黒人!? 南米人!?
「Oi! Como vai!? Um amigo!!」
「ロ、ロギ、お待たせ……、って、うわっ! 何だよ、もう始まっちゃってるのかい!?」
「caramba! viva Rogi!! bravo!!」
「ブラボー! だなんて言ってる場合じゃないよザビ! 早くパソコン立ち上げてこれ全部入力しないと! ロギ、ちょっと待って! まだ消さないでくれ!」
カラフルな黄色と緑にカラーリングされた二本のスティックで机をバチバチ叩きながら、リズミカルにステップを踏んで陽気に踊りまくるアフロ頭を後目に、大慌てでパソコンを開き黒板の楽譜を入力し始める眼鏡男子。彼らはまさか、この不思議な無口男子の知り合いなのか? 何か今、彼の事を『ロギ』とか何とか呼んでいたような……?
で、その肝心の彼はそんな二人の姿に見向きもせず、黒板全ての五線譜に音階を書き埋め尽くすと最初に書いた列の音符を消して別のメロディーをガンガン猛スピードで書きまくっていく。どうやら、彼が書いているのは何かの曲の一小節の様だ。一体、誰の何の曲なのだろうか? 音楽の才能の無い私達には全っ然わかりませーん……。
「Katsu, O senhor era a tempo?」
「……な、何とかね、ハァ、疲れた……」
何の前触れも無く私達の目の前でいきなり始まった難解不明な音階速記大会はそれから約二分ほどであっという間に幕を閉じた。高速タイプ打ちでパソコンに書き写していた眼鏡男子は燃え尽きたように机に突っ伏し、アフロ頭は未だに踊り続けている。
そして、例の彼は用事が終わるとソファーに飛び乗りあぐらをかいて再び無言。何コレ? この人達、一体誰? 何者?こんな生徒達、この学校にいたっけ? つーか、ここって何の部活動やってんの? その前に、これって部活動なの?
「……あのー、すいませんけど、あなた達は一体……?」
「……え、えっ? う、うわああああぁぁぁぁ!!」
「きゃああああぁぁぁぁ!!」
私が後ろからスッと眼鏡男子の肩に手をかけ声をかけてみると、予想外の驚きの反応した彼は大声を上げて椅子から転げ落ち、それを見た小夜と千夏は怖がってさらに大絶叫。もううるさいよ、アンタ達! こっちまでビビっちゃうでしょ!?
「Eh pa! Eu estava surpreso!」
「い、いつの間に!? 誰だ君は!? ここに何の用だ!? 君達は一体、何者なんだ!?」
「うわーん! 那奈、怖いよー! 何か頭がモジャモジャのお化けが出てきたよー!」
「Nooooooo!! キモいキモいキモいキモいキモォ〜い!! 何なのよ、あのブロッコリーのMonsterは!?」
「きっと、アレは西洋妖怪の首領、バッグベアード様に違いない! 目を見たら催眠術にかかってしまうぞ! 気をつけろぉ、鬼太郎!」
「猫娘ならともかく、何でウチが鬼太郎やねん!? つか、何でオマエが目玉のオヤジになっとんねん!? 裏声キモいわアホッ!!」
「…………ぬりかべー」
「あーもう! アンタ達みんな全員まとめてうるさーい!! 何かもう色々ありすぎて何が何だかさっぱりわかんない! 今からこれまでの出来事を整理するから、アンタ達全員五分黙りなさい! いいね!?」
「………………」
「……って、わざわざ言わなくてもさっきからずっと黙りっぱなしの人間も若干一名いるけどね……」
とりあえず、人の問いかけに全く反応しない無口クンと何語喋ってんのかさっぱりわからないアフロ頭外人はパスするとして、見た感じではまともな会話が出来そうな眼鏡クンから接触を図った方が良さそう。一体、彼らはこんな人気の無い場所で何をしているのだろうか?
「……勝手に教室に入っててごめんなさい、実は私達、この子に相応しい部活動がないか校舎中を散策してたところで……」
「……ぶ、部活動? 何だ、入部志望の人達だったのか、まさか他に人がいると思ってなかったから正直驚いたよ……」
「初めましてー! 真中小夜っていいまーす! クラスは一年のBでーす! よろしくお願いしまーす!」
「……ず、随分と元気な人だね、何かテンション高すぎてついていけないな……」
どうやら、この教室でも何かしらの部活動をやっているのは確かの様だ。普段使われていないとはいえ音楽室での部活、そして先程の無口クンが黒板に書きまくっていた大量の音符の数々から推測すると、やはりここで行われているのは楽器系の部活かな。念の為聞いてみよう。
「……で、ちなみにここでやってる部活って、一体何ですか?」
「……え、えっ? ここは軽音楽部、つまりはロックバンド部なんだけど……、何も知らないでここに来たの? 入部志望の人なんだよね? 違うの?」
「……ごめんなさい、本当はこんな場所で部活動なんてやってる訳が無いって勝手に思ってたから……」
「な、なるほどね、確かにこんな端っこの教室、普段は誰も来ないからね、この教室の存在すらも知らない生徒もここにはたくさんいるんじゃないかな」
……軽音楽部、よりによってロックバンドっスか。あーあ、最悪。こりゃダメだ。自宅にあるレコーディングスタジオにすら父親の啓介さんから出入り禁止されてる小夜には絶対無理な話だ。
両親が共に才能に溢れた音楽家だっていうのに、この子にはそれがちっとも遺伝されてない事だしねぇ……。しょうがない、部員の人達とは適当に断りの話を合わせてさっさと退散しますかね。
「……あっ、そうだ! 名も名乗らないでごめんなさい、私は渡瀬那奈、この子と同じ一年のBクラスです」
「こ、これはご丁寧にどうも、僕は『中島』って言います、学年は同じ一年、クラスはEです、どうぞよろしく」
眼鏡クンの名前は中島か。この音楽室に入ってくるのにかなり慣れた感じだったから、まさか同じ一年生だとは思わなかった。中学の時には会った事無い顔だから、もしかしたら高校からの入学組かな?
「……で、早速で申し訳ないんだけど、この子にバンドとか楽器とかってまず無理なんで、今回は入部は見送らせて貰おうかな、って……」
「……あっ! せやせやせや! どっかで見た事あるって思たらオマエ、ウチと同じクラスの男子やないかい!」
「……ちょっと翼! 今、私が喋ってんのに……!」
小夜の入部断念の旨を伝えようとした私の横斜め下からでしゃばる様に、迷惑雑音スピーカー人間のちっちゃい小娘が眼鏡クンの前に出て馴れ馴れしく会話を横取りしてきた。せっかく場の空気を読んで丁重にお断りしようとしてたのに、余計な真似すんなっつーの!
「ホレホレ千夏、アイツやアイツ! オマエが入学初日に『あの眼鏡クン、アキバ系オタクみたいで超キモぉ〜い!』って言っとったあの男や!」
「……キ、キモい……?」
「やぁ〜だ、ホントだ〜! 良く見たらホントに同じクラスのあのキモオタ眼鏡クンじゃな〜い! こんな外見のクセしてバンドとかやっちゃってるの〜? ウッソ〜、信じられな〜い! 超unbelievable!!」
「……キ、キモオタとか、こんな外見とか、ヒドいよ、ヒド過ぎる……」
……あーあ、本当にコイツら、それほど親しく面識も無い人間に対して礼儀も容赦も優しさの欠片も無いなぁ。確かに私も、最初にこの眼鏡クンを見た時にはちょっとオタク臭さを感じ取ってはいたけど、それは本人を前にして口に出しちゃ普通ダメでしょ? ほら、眼鏡クンすっかりヘコんじゃったじゃない……。
「そっか、オマエ中島って言うんやな? その面から察するにオマエ、ろくにクラス内に友達おらんやろ? よしっ、せやったらウチらが友達第一号になったるさかい、そのキモい黒縁眼鏡に免じてウチの脳内メモリーにオマエの顔と名前をしっかり刻み込んでおいてやるから感謝せいや、ナカジマ?」
「……ち、違います、ナカシマです……」
「ハァ? 何やて?」
「ナ、ナカシマです」
「……せやから、ナカジマやろ?」
「ナナナ、ナカシマです!」
「何で軽くキレてんねん!? せやからナカジマやろ!? 何が違うねんな!?」
「で、ででで、ですからナカシマです!!」
「しかも何で喋り出し一発目がそないドモんねん!? 少し落ち着いて喋れや! なぁ薫、『ナカジマ』と『ナカシマ』、何がどう違うんや?」
「ん〜、どうでしょう〜、これはいわゆるひとつのメークレジェンド、巨人軍は永久に不滅で一茂はセコムしてますかぁ?」
「そりゃ『ナガシマ』やろがボケッ!」
「う〜ん、やはりバッティングは構えから脇をキュッと締めて、バッと腰を回してビシッとミートするのが大事です〜、英語で言うと、バットスイング、スピードアップ、ベリーファストOK?」
「全っ然意味わからへん」
ダメだこりゃ。唯一ちゃんと話が出来そうなナカジマ、じゃなくてナカシマ眼鏡クンも完全に翼と薫のオモチャとして横取りされてしまった。相変わらず無口クンはソファーに座ったまま上の空だし、残りはさっきから踊りまくっている南米系アフロ頭……。
「……あ、あのー……?」
「Ya! Boa tarde!」
「……何語喋ってんだか全然わかんないや、どうしたらいいんだろう、うーん……、マイネームイズ、ワタセナナ、んでー、ユアネーム……、じゃなかった、えーと……」
「Nana! 『矢沢あい』のNana! 『木の実ナナ』ノNana! 『夏目ナナ』のNanaネ!」
「……ハァ?」
「ナナ、トッテモ良イ名前ネ! Oreハ『ザビエル』って名前デヤンス〜!」
「……日本語ペラペラじゃん、つーか、矢沢あいや木の実ナナは良いとして、夏目ナナって誰……?」
……何なの、このアフロ頭。さっきから聞いた事の無い言葉を話したり、見た目明らか日本人じゃないから絶対会話が通じないと思ってスゴい緊張してたのに、どうやら私の取り越し苦労だったみたい。しかし、なぜ語尾が『ヤンス』なの?
まぁ、そんなのどうでもいいか。言葉が通じるなら話は早い。さっさと入部辞退の旨を伝えて、バンド練習の邪魔にならないようにさっさとここから楽器よりもやかましいこのお喋り連中を退散させないと……。
「……で、部活入部の話なんだけど……」
「オイオイ、聞いたか薫!? コイツ、ザビエルやて! こんな面にこんなモジャモジャ頭してザビエルやてよ! フランシスコ・ザビエルかいな? 有り得へんがな、メチャメチャおもろすぎるでコイツ!」
「まさかこんなところで歴史的偉人にお目にかかれるとは! 日本にキリスト教と鉄砲を伝来したのはアナタですね!? アナタハ、カミヲ、シンジマスカ〜? アタマノ、テッペン、ツルツルデスカ〜?」
「……だーかーらー! 人が喋ってるところを横から割り込んでくるなっつーの!」
また横取りされた! 眼鏡クンを好き勝手にいじるだけいじって、飽きたら今度は次の獲物にシフトチェンジ。このちょこまかとうざったいチビ女と変態茶髪男、誰か余所で面倒見て貰えないかなぁ? もう本当に迷惑!
「Sim! 『タネガシマ』ニ『キリスト教』ト『火縄銃』を伝来シタノハ、Oreノ祖父チャンデヤンス〜!」
「見え見えの嘘つくなやアホッ! 何やねんコイツ、頭モジャモジャでロナウジーニョみたいな顔してるクセに、日本語ペラペラでアホなくらいノリが軽いウザ系インチキ外国人、ほとんど薫とキャラ被っとるやん!」
「Ronaldinho!! 我ラノ黄色イ『カナリア軍団』ノサッカーハ世界最強デヤンスヨー! KakaモRobinhoモ最高ノ『セレソン』デヤンス〜!」
「な、何やと〜! オマエ、ブラジル人かいな!? ウチら日本のサムライブルーを差し置いて何が世界最強や! せやったら今からウチと勝負せい、日本のサッカーレベルの進歩、国内最強のファンタジスタのテクニックをウチがオマエに存分思い知らせたるでぇ!」
あらま、本当に南米人だったんだこのアフロ頭。ブラジル人ねぇ、そうと聞いたらサッカー一途の翼は黙っちゃいられないか。しかし、ブラジルの人は本当にみんなサッカーが上手なのだろうか? ちょっと疑問。サッカー大国の血を引く人間を前に興奮するチビ子とは別に、金髪変態男はもう一つの華やかなブラジル文化の方に興味津々。
「サッカーも良いけどカーニバルもねっ! やっぱりブラジルと言えばリオのカーニバルっスよカーニバル! 小麦色の南米美女がキワどい衣装でおっぱいプルプル腰クネクネのセクスィーダンスはエロさ満点で、もう薫ちゃんはノックアウトっスよ!」
「Let's samba!! リオノカーニバルモ最高ニ陽気デ過激デ世界最強ノオ祭リデヤンス! デモ、ブラジルノリゾートハモット過激デヤンスヨ! ビーチデハ美女ガトップレス姿デ日光浴トカ当タリ前ノ光景デヤンス〜!」
「そうそう、アタシも以前、ママと一緒にブラジルの西海岸のリゾートに遊びに行った時、たくさんの女性がありのままの姿で休暇を満喫していたわ! アタシもママもついついその気になって真似しちゃったもん、あの解放感はたまんないの〜!」
「うおぉぉぉぉ!! 薫ちゃんもヌーディストビーチ行きてぇぇぇぇ!!!!」
「いやぁ〜ん! 薫ちゃんったら、そんなにアタシのトップレス姿が見たいのぉ〜?」
「いや、千夏ちゃんはあんまり、うん、何となく想像つくからどうでもいいや」
「何よソレ! どうでもいいとか想像つくってどういう意味なのよぉ!?」
「薫はオマエなんかに興味ないって事やボケェ! わかっとるで薫、やっぱり薫はウチの天真爛漫なありのままの姿を見たいって事やねんなっ!」
「翼って、わざわざトップレスになって見せるだけのものがあるのぉ〜? 絶対現地で迷子扱いされると思うんだけどぉ〜?」
「じゃあかぁしいわボケカスどアホ! 放っとけやこのクソビッチ女が!!」
……以上、アフロブラジル人を取り囲むチビ女と変態茶髪とセレブビッチのたわいもない雑談をお届け致しました。一体誰かどのセリフを喋っているのか全部わかる貴方はもう『Be Ambitious!!』一級です。かなりのマニアです。重病です。インターネットも程々にして、たまには外の空気でも吸ってリラックスしましょうね。お薬出しときます、お大事に。
「ねーねーナカシマ君、このロックバンド部は、ナカシマ君とザビエル君とあのモップみたいな髪の毛したあの男の子の三人でやってるのー?」
小さい頃から慣れ親しみ、自宅のスタジオでも毎日の様に見慣れている演奏楽器に囲まれているせいか、さっきまでの部活見学とはまるで違うキラキラした目をして小夜の受信アンテナが精度を増している。さっさと入部を断ってここから離れたいのに、何か余計な事したり話したりしないかかなり心配……。
「え、えっ? あっ、うん、そうだよ、僕とザヒと、あとそこにいるロギの三人でスリーピースバンドをやっているんだ」
「ロギ?」
「あ、あそこのソファーに座ってるアイツのあだ名だよ、本名は興梠一寿、僕達は『ロギ』って呼んでるんだ」
「コオロギさん? はーい、あたし知ってるー! コオロギさんってキレイな音で鳴くんだよねー! リーン、リーンって!」
「そりゃ蟋蟀やろがどアホッ!」
「アタシ、蟋蟀って未だに見た事無いのよねぇ、どんな虫なのぉ?」
「アレだよ千夏ちゃん、夏の田舎のトイレなんかでピョンピョン飛び跳ねてるヤツさ!」
「…………それは便所蟋蟀、似てるけど蟋蟀じゃない」
「……つーかアンタ達さ、最初の小夜の大間違いにちゃんと的確なツッコミ入れなさいよ、リーン、リーンって鳴くのは蟋蟀じゃなくて鈴虫だって!」
……最近の若ぇもんは鈴虫と蟋蟀の違いもわかんなくなっちまったのかい、古き良き日本の時代はどこへやら、おいちゃんは情けなくて悲しくて涙が出てくるぜチクショウめ。
……アレ、何言ってんだろ私? 何かお姉みたいな言い回しになっちゃった。確かに最近、都会じゃ蟋蟀なんて見なくなったなぁ。まぁ、そんな事今はどうでもいいか。今は蟋蟀じゃなくてこっちの興梠さんの話。
「ぼ、僕はベースとパソコンを使ったシンセの打ち込みを担当しているんだ、で、ザヒはドラム担当」
「SIM! 音楽ノ原点トハ心を跳躍サセル野生ノ『Rhythm』ト魂ヲ奮イ立タタセル熱イ『Beat』デヤンスー! 考エチャダメダメ、体デ感ジルデヤンスヨー! Don't thinK, feel〜!!」
「オマエはブルース・リーかいな!? しっかしアレやな、ベースとかドラムは知っとるけど、シンセや何やらなんて物まで使うてやっとるって事は、かなり本腰入れたバンド活動やってんねんなぁ?」
「ねぇねぇ、三人はもうライブとかやった事あるのぉ? 将来プロとか目指しちゃってる訳ぇ? あなた達の音楽センス次第では、アタシ達がこのバンドのファン第一号になってあげても良いわよぉ? こんなカワイイ女の子がファンだなんて、凄く光栄な事だと思わない? ねぇねぇ、どうかしらぁ?」
……初対面相手にこの馴れ馴れしい失礼な上から目線、このチビ子と腐れビッチの礼儀知らずコンビはどうにかならないのかねぇ? ナカシマ君、完全にドン引きモードになっちゃったじゃない……。
「……し、将来プロを目指すかどうかは僕らが決める事じゃないので……」
「ゼ〜ンブ、Rogiノ気分次第デヤンスヨ〜」
「えっ、じゃあ彼がこのバンドのリーダーなの?」
「う、うん、そうだよ、ロギはボーカルとギター担当で、僕らにベースやドラムの演奏を教えてくれたのもロギなんだ」
「Rogiハ音楽ノ天才デヤンス! 全テノ楽器ノ演奏ヲ小学生ノ時ニマスターシテ、中学生ノ頃ニハオリジナルソングヲ三十曲近クモ作ッタデヤンスヨ〜!」
「……さ、三十曲!? じゃあまさか、さっき彼が黒板に書いていたヤツって……?」
「ロ、ロギの新曲だよ、ロギはいつもこの音楽室に一人籠もって、楽曲の創作活動をしているんだ」
「ソノ楽曲ヲパソコンニ写スノガ、KatsuトOreノ役目デヤンス! ソシテ、ソレニ更ニ色々ナ伴奏ヲ加エテ編曲スルノモOre達ノ役目デヤンスヨ〜!」
「ロ、ロギの楽曲創作はいつも突然なんだ、僕らには良くわからないけど、何か上から、天から降ってくる様にメロディーが思い浮かぶらしくて、それを凄いスピードで黒板や五線紙に書き写していくから、パソコンに転送する僕の作業はいつも大変で……」
ここにきても、まだ一言も喋らずにソファーにあぐらをかいている『ロギ』こと興梠一寿と言う少年。まさかそんな超人的な能力を持った人間だとは思いもしなかった。外見だけだと奇妙な感じだが、もしかするとこれが天才肌ってヤツなのだろうか? 天才か、私にはどうもにわかに信じがたい話だ。
人によって何かしらの特別な才能を持ち合わせているのは、私達も以前に目の前で見た事があるから理解出来る。それが音楽の才能なら尚更。私達が見て聴いて感じた才能、それはあの遠藤麻美子の絶対音感の才能。
小夜の父親、世界中で大活躍している偉大なミュージシャンでもある真中啓介ですらも認めた麻美子の音楽センスは私達の想像の域を軽く凌駕するものだった。ほとんど楽譜を見なくても、超難解な曲をスラスラとピアノで弾いてしまう彼女は正に天才と言うべき存在だった。
そんな彼女を知っているからこそ、正直この『ロギ』の実力がどれほどのものなのかどうもピンとこない。突然楽譜を書き始めたあの行動には驚いたが、実際に書いたその曲のメロディーってどんなもんなのか? 果たして実力のほどは……?
「……ねぇ、さっき彼が書いた曲のメロディー、今からナカシマとザビで簡単な演奏とかつけられる?」
「え、えっ? 即興かい? うーん、出来なくはないけど、ザヒ、どうする?」
「Katsu、ヤッテヤリマショ〜デヤンス〜! ヤット来テクレタ待望ノ新入部員、歓迎ノ気持チヲ込メテ、Ore達ノ実力ヲ見セテヤルデヤンスヨ〜!」
二人はそう言うと、椅子から立ち上がって演奏の準備をし始めた。ナカシマは肩に背負っていた皮のカバーから黒一色のベースギターを取り出しスピーカーに音源を繋げてチューニングを開始、ザヒは音楽室の倉庫から様々な大きさの太鼓を引きずり出しドラムセットを組み立て始めた。その姿は一端のミュージシャンって感じだ。
「……なぁ那奈、オマエ一体どないしたん? さっきまで早よ入部断ってさっさと帰ろうとしてたやんか?」
「……うん、何か急にこのバンドが気になっちゃってね、何か、麻美子の時と同じ様な、予感って言うか、期待って言うか……」
「わかったわ! 那奈ったら、アタシを出し置いてこのバンドのファン第一号になろうって企んでいるのねぇ!? そうはいかないわよぉ、これはアタシが一番最初に見つけたMy favoriteなのよっ!!」
「無い無い無い、それは無いから、安心して第一号名乗ってろこのミーハー女」
そして、私達を観客に二人の演奏が始まった。
曲調はかなりハードロックな早いメロディー、それに合わせて二人の演奏も力強いものだった。ドラムにベースだけという編成の為に地味目ではあったが、ナカシマのベースの演奏は高校生のお遊びとは比べ物にならないくらい繊細で、ザヒのドラムはブラジル人という国民性からか、とてもリズミカルで強烈だった。
『……うわっ! この人達、本物だ……!』
それは麻美子のピアノの時とは少し違う、しかし衝撃的な演奏だった。私自身、さほどプロミュージシャンやバンドのライブ会場に行った経験は無いのだが、小夜と共に人生を歩んできた関係上啓介さんの演奏などを聴いた経験もあり、彼らがプロと比べても遜色ない実力の持ち主である事は直感で理解出来た。
そして、肝心のロギオリジナルのメロディーもハンパないもので、とても高校生が作曲したものとは思えない完成度を誇っていた。ハードロックながら、すんなりと耳に馴染んでくる美しい音符の旋律。確かにザヒが言う通り、彼は麻美子とはまた違う音楽センスを持った天才なのかもしれない。
しかし、ベースとドラムだけの即興演奏でこれだけの音楽を奏でる事が出来るなんて、これに本格的にギターやシンセや詩やボーカルが加わったら一体どんな歌が出来上がるんだろう? うちの学校にこんな凄いバンドがいたなんて、今日の今まで全然知らなかった……。
「……こ、こんな感じにしてみたけど、どうだったかな?」
「……コレ、かなり凄くね? 薫ちゃん、ちょっと感激しちゃったんスけど」
「オイオイ、ナカジマ! オマエ見た目に似合わず結構やるやないかい! タダのパソコンオタクやなかったんやな、ウチは見直したで!」
「決めたわ! アタシ、喜んであなた達のバンドのファンになってあげる! アタシがファンになるってスゴい名誉な事よ、あなた達のサクセスはもう決まった様なものだわ!」
どうやら、一欠片の音楽の才能も持ち合わせていないおバカ連中も、この演奏に心惹かれたみたいだ。麻美子がプロデビューを諦め主婦業に専念する事になった今、知り合いがプロミュージシャンになる可能性があるのはこの三人? 今の内に仲良くしとけばライブとかにタダで招待して貰えたりして……?
「ま、まだ仮の演奏だから聴きづらいところがあったかもしれないけど、これからギターやシンセのサウンドを合わせていけば、これもきっと良い曲に仕上がると思うよ」
「はーい、あたしシンセサイザー知ってるー! 良く井上さんが曲を作る時に使ってるんだよー! おとーさんは『機械に頼らずもっと生の音源を大切にしろ』って怒ってたりする……!」
「バカッ! 余計な事を喋るんじゃないよ小夜!」
「い、井上さん? おとーさん? 真中小夜さんって言ったよね、君の家族ってまさか、何かの音楽業界関係者……?」
「いやいやいや、ちょっとした趣味が講じて音楽やってるだけで、そんな関係者とかレーベルとかプロデュース活動みたいな凄い事やってる訳じゃないんで、あまりこの子が言ってる事を気にしないで下さい! 本当に何でもないんで、アハ、アハハ……」
……まずい。もしかして将来プロを目指すかもしれないバンドメンバー達に、小夜の父親が泣く子も黙る邦楽音楽界の重鎮である事を喋ったりしたら、変な影響や誤解を与えるどころかプロデビューの為に小夜自身が彼らに悪用されたりする事も十分に考えられる。
「小夜、彼らには絶対に啓介さんやサンライズ・ファクトリーの話をしちゃダメだよ」
「えー、何でー?」
「何でも何もないの! 絶対に話しちゃダメ! いい、これは私と小夜の約束! 破ったら針千本飲ますよ!?」
「針千本ヤダよー! うん、わかった! 絶対に話したりしない! 約束!」
幾ら将来有望なバンドとはいえ、私達と彼らは今日が初対面。まだどんな人間か良くわからないのに、こちらの細かい詳細や身分を証したりするのはちょっと危険だ。小夜をこの部活に入れるのはマズいね、やっぱりさっさと退散しますか……。
「……カツ、コード進行が単調過ぎ、曲が生きてない……」
「……え、えっ? あっ、うっ、そうかな? ご、ごめん……」
「……ザヒ、もっとリズミカルに激しくアグレッシヴに、あまり形に拘らないで……」
「アチャ〜、手ヲ抜イテタノバレバレデヤンス〜、流石ハRogi、ゴマカシ効カナイデヤンスネ〜」
突然、教室の端から聞こえてきたボソボソ声。耳を澄まさないと聞き漏らしてしまいそうなその声の主は……、まさか!
「……やっと、喋った」
「……いやぁ〜ん! 薫ちゃん、今聞いた? 初めて喋ったわよぉ!」
「ワ〜イ、喋った〜! クララが喋った〜!」
「何でクララやねん! クララちゃうわ、ロギやロギ! 何やコイツ、ちゃんと喋れるんやないかい!」
さっきの二人の演奏にも参加せず、ソファーに座ったまま眠っているのかと思っていたバンドリーダー、遂に開口。つーか、ボーカル担当の割には随分と弱々しくて今にもかき消されそうな小さい声。この人、これで本当にボーカルなの?
「……ところで君達は、誰……?」
「……渡瀬那奈です、つーか、さっきからずっと名乗ってるんだけど、話全然聞いてないの?」
「……初めまして興梠一寿、です……」
「……やっぱり、何か変だなぁ、この人……」
いざ喋ったら喋ったで普通の人とは若干違う言葉のトーンと不思議な口調。いまいち会話が噛み合っていない様な妙な不快感はこれまで出逢ってきた人達には無かった感覚だ。また変なキャラが登場してきちゃったなぁ。航と初めて会った時とちょっと似ている感じ、アッチもボソボソ喋りだし……。
「……あれ? そういえば航はドコ……?」
「……渡瀬那奈さん貴方に、一つ質問があります……」
「……えっ? な、何でしょうか?」
「……さっきから後ろでボクの、ギターを勝手に弄っている背の高い彼は、誰ですか……?」
「……ハァ?」
ロギの言葉に私達が一斉に教室の後ろを振り向くと、確かに背の高い坊主頭が壁に立てかけてかる数本の高価そうなギターを持って勝手にイジイジ。姿が見えないと思ったら、何やってんのよコイツは!
「ロ、ロギのギターに勝手に触るだなんて! 彼は何て事をしてるんだ!」
「Ora bolas! Rogiが怒ルデヤンスヨ〜!」
「ヤバくねヤバくね? 航先生、それはいくら何でもちょっとヤバくね〜!?」
「ゴラァ! オマエ何しとんねん、航!」
「いやぁ〜ん、ギターって高いヤツだと十万百万一千万したりするのもあるのよぉ〜! 壊しちゃったらどうしましょ〜?」
「航! アンタ何する気なのよ!? 今すぐそのギターを戻しなさいってば! 聞いてるの、航……!?」
……あれ? ちょっと待った。そういえば航って、ギター弾けるよね? 亡くなったお母さんの形見のフォークギターを持ってたよね? 麻美子が私達にデビュー曲を披露しようと小夜の家に集合した時、確かちょこっとギターを演奏していた記憶が……。
「あっ、そーだ! ねーねー、ロギ君にナカシマ君にザヒ君、航クンもギターを弾く事が出来るんだよー! いつも妹の瑠璃ちゃんに聴かせてあげてるんだー! 航クン、みんなにも聴かせてあげなよー!?」
「…………了解」
ロギの天才的音楽センスと不思議キャラ、そしてナカシマとザビエルのいまいち絡みづらい人間性と凄まじい実力を備えたスリーピースバンドとの出逢い。これだけでも相当な出来事なのに、それを遥かに超えた本当のサプライズはこの後に待っていた。
それは後に、航や彼ら三人だけでなく、小夜の将来までも左右する事になる人生のクロスポイント。航とロギの運命の出逢い。まさかその瞬間を見届ける歴史の証言者になろうとは、この時まだ私達は想像すらしていなかった。