鏡影
ふと、鏡を見てみると、知らない少年が映っていた。
一瞬瞠目してから、自分の頭を殴りたくなった。
歯を磨く手を止めて、鏡に顔を近づけてしげしげとよく見てみる。
短い髪と、元々ささやかなものしかない胸が光の加減でもっとささやかに、はっきり言えばなくなって見えたから男だと認識したようだ。
なるほど、写真で間違える人がいたと聞いたが、納得できた。
ただでさえ凹凸がないのに、私はあまり身体の線が出る服は着ない。
おかげで学生だけではなく先生にまで男だと間違われる始末だ。
ちなみにその先生は写真ではなく直接会った上での間違いだ。あの目は節穴なのではなかろうか。
普段鏡は見ないのだが、自分で間違えるくらいだ。
もう少し、女らしくすべきだろうか?
「…まぁ、いいか」
口の中をゆすぎ、私は洗面所を後にした。