第2話
「優雨亜、昨日はありがとう!助かったよ」
優雨亜は登校してくるなり、蓮に話しかけられた。
「ほんとっ、良かった~。また力になれる事があれば、教えてね」
「ありがとう。じゃ、また教室で!優雨亜、今日日直だよね」
「あ、そうだ。ありがとう」
優雨亜は蓮と別れると、職員室へ配布物を取りに行った。
途中の階段を一段飛ばしで駆け上がる。あと少しで職員室のある階につく、というときだった。
「君っ!」
優雨亜は急に誰かに腕を引かれた。と、その拍子にバランスを崩して、階段から転がり落ちた。
「いたた~。あ、すいません、大丈夫でしたか?」
「いや、こっちこそごめん」
「えっと、さっき呼んだのはあなたですか?」
「そう、これ渡したかったの。昨日落としたでしょ、グラウンドのフェンスの向こうで」
「あ、ほんとだ、気付かなかった…。ありがとうございます。えっと…」
「ああ俺、氷童 星空。氷に児童の童で氷童で、星空って書いてかなたって読むの」
「氷童君…、ってもしかしてあの学学年トップの…?」
「ああ、そうだよ。てか、君は?」
「大内 優雨亜です。大きい小さい大に内側の内で大内で、優しい雨に亜熱帯とかの亜で優雨亜です。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
「それじゃあ、私は職員室へ行くので…」
「ああ、また」
星空と別れた優雨亜は、そのまま職員室へ向かった。
「おはようございます、河野先生」
「おはよう、大内。あれ、葉木はどうした?あいつも今日日直だろう?」
「海渡は…、多分寝坊ですよ。今まで日直の仕事しに来たこと、何回かしかないと思いますもん」
「ったく、あいつも困ったもんだな。一人で大変だと思うけど、頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」
優雨亜は職員室前の棚から配布物をとると、今来た道を歩いていった。
"キーンコーンカーンコーン"
「おーすっ、ギリギリセーフ!」
「いやいや、アウトでしょ!全く何度遅刻したら気がすむの!」
「フワァ~」
「聞いてる⁉海渡、あんたに言ってるのよ⁉」
「はいはい、そんなに怒ると老けまっせ、優雨亜サン」
「やかましいわ!」
優雨亜と海渡が言い合いをしていると、先生がが入ってきた。
「おい、二人ともいい加減にせんか。廊下まで響いとるぞ」
「さーせん」
「ごめんなさい」
二人が席に着くと、SHRが始まった。
また、1日が始まる。
昨日は違う風を連れて。
_______優雨亜はそんな気がした。